タイトル:ちょこぼーる来襲マスター:KINUTA

シナリオ形態: ショート
難易度: 易しい
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2011/03/11 04:32

●オープニング本文


 某製菓会社の某ロングセラー商品。金のクチバシか銀のクチバシを一定数集めて送ると謎の缶詰が貰えるという例のアレ。
 その酷似商品がこの世界にもあった。
 作っているのは無論別会社だが、とりあえず名称は「ちょこぼーる」でほぼ一緒である。ついているあの鳥のキャラクターも「きょろちゃん」で同じだ。
 ただ違うところと言えば、こちらはクチバシを集めて云々はない。カードがついている。
 そのカードを集めるのが子供たちの間で最近すこぶる流行っていて、それがゆえに、問題を引き起こしていた。
 カードが目当ての子供たちはそれだけとって、お菓子を食べずに捨ててしまうことが多いのである。
 教育上これを由々しい事態と見た保護者関係者は、ひとまず「食べ物を粗末にしてはいけない」という旨を学校や家庭で指導した。
 が。

「だって食べ切れないもん」

「そうだよ。大人って分かってないよな」

「いいよ。家のじゃないゴミ箱ならだれが捨てたかわかんないしさ」

 素直に聞き届けてくれるはずもなく、相変わらずその傾向は続いた。
 そしてクレームは菓子メーカーに転化され、担当関係者が頭を悩ませる運びとなる。

「どうでしょう、もうカードだけ別売りしては」

「いかんだろ。それじゃお菓子が売れないじゃないか。うちはあくまでも菓子メーカーであって、おもちゃメーカーではないんだから。作ったものが食べもせず捨てられるのは、我々にとっても切ないことだ」

「そもそも食べ物を粗末にしないようにと教えるのは家庭の役目ではないかね、なんでうちに尻を持って来るのかね」

「言ってもしょうがないですよ。あ、そうだ。ひとつCMで呼びかけてみるってどうでしょう。お菓子を捨ててはいけないと」

 というわけで、急遽新作CMが作られることとなった。
 内容は、ちょこぼーるを食べてくれなくなったので、怒ったきょろちゃんが巨大化し、都市を襲うというものである。
 しかし、最近の子供たちがこんなもの素直に受け止めるはずもない。

「あんなの来るわけないし」

「うん、来るわけないし」



 しかし、世界のどこかで真面目に受け止めたバグア関係者はいた。



 とある地方都市の港。まだ朝霧の晴れぬそこから出港し始めていたフェリー関係者は、沖に出た所で、行く手の海上に妙な突起物を2つ見つけた。

「なんだ。おい、速度落とせ。確認しよう」

 船員はサーチライトを点け前方を照らす。
 その途端、突起物たちが接近してきた。
 船員は光に照らされた姿に驚愕する。
 それはまさしく、怒りに震える巨大きょろちゃんであった。
 彼らに激突され、船はあっと言う間に穴があき沈没する。
 海上で大騒ぎする人間たちを尻目に、きょろちゃんたちはCM通り、大波を蹴立てて町へと向かって行く。

●参加者一覧

弓亜 石榴(ga0468
19歳・♀・GP
天・明星(ga2984
13歳・♂・PN
聖・綾乃(ga7770
16歳・♀・EL
紅 アリカ(ga8708
24歳・♀・AA
三枝 雄二(ga9107
25歳・♂・JG
メルセス・アン(gc6380
27歳・♀・CA
煌 闇虎(gc6768
27歳・♂・DF
綾瀬 宗司(gc6908
20歳・♂・EP

●リプレイ本文

 燦然と光り輝く東〇の文字。
 続いて画面が暗くなり出演者名流れる。



 聖・綾乃(ga7770)KV機体・アンジェリカ
 弓亜 石榴(ga0468)KV機体・オウガ
 天・明星(ga2984)KV機体・バイパー
 紅 アリカ(ga8708)KV機体・シュテルン・G
 三枝 雄二(ga9107)KV機体・A3型フェニックス
 メルセス・アン(gc6380)KV機体・パラディン
 煌 闇虎(gc6768)KV機体・ワイバーンMK2
 綾瀬 宗司(gc6908)KV機体・ディアマントシュタオプ



 タイトル文字

「きょろちゃん来襲」



 キメラ達は埠頭を破壊し、無理やり上陸を果たした。
 巨体を支えるに、二本の足は怖いほど貧弱だ。右に左に大揺れしながらのろのろ歩行。
 恐らく体の半分は取っている頭と嘴とが周囲の建物に当たりまくる。
 クレーンがへし折れ、石油貯蔵のタンクに穴が空き、火災も起き始める。
 明星と雄二は一行に先立ち、飛行形態で乗り出した。その光景を上空から確認する。
 事前報告は受けていたものの、やはり驚愕せざるを得ない。キメラの姿に。

「バグアはなんて馬鹿なことを‥‥許せませんね」

 手にしたちょこぼーるキャラメル味のパッケージにあるきょろちゃんと、目の前のキメラ。
 両者を見比べ100%パクリを確認した明星は、義憤にかられた。ちょこぼーるファンとして。
 最近このシチュエーションに酷似したCM――ちょこぼーるを捨てられて怒り怪獣化するきょろちゃん――が流されているので、なおやるせない気持ちだ。

「怒る気持ちはわかりますが、まずは落ち着いて!」

 と、上空から呼びかけてみたりする。むろんきょろちゃんキメラは聞く耳持たず、無表情に進んで行くのだが。

「こちらドラゴン2目標をレーダーにて確認目視確認後攻撃に移る」

 雄二のほうは言葉でなく、攻撃によって呼びかけた。
 ひとまずナッツに――といってもキャラメルと距離はそんなに離れてないのだが――ロックオンし、機体の高度を下げ、急接近する。

「目標視認ドラゴン2ロケット発射」

 キメラたちの前面で爆発が起きる。
 ナッツがよろめいて仰向けに倒れそうになり、後方のキャラメルが支えとなって危うく持ち直す。
 怒ったのだろう、大きな口をパカーと開き、体に見合うほどのサイズのちょこぼーるを吐いてきた。
 いや、ちょこぼーる形態の爆弾を吐いてきた。
 その時にはすでに雄二の機体は上空に回避しており、ダメージ皆無である。
 そもそも発射速度が遅く、命中率が著しく低そうなのだ。
 とはいえ目標物に行き当たらなかった爆弾はそのまま近場の地面に落ちて爆発するわけで、無害な訳では絶対ない。
 爆発の黒い煙を背景にじわじわ市街地へ迫り来るキメラ。
 恐怖したいところだが、形が形なのでどうも難しい。
 空戦部隊に少し遅れて現場についた陸戦部隊の面々も、微妙な気持ち。
 そうでないと知りながら、一瞬ここはどこかの特撮現場かと思ってしまうくらいだ。
 ひとまず石榴は現場に着くや、明星と同じくCMを意識した説得をしてみた。コンビを組んでいる綾乃が、かわいいかもなんて思っている隣で。

「怒りに身を任せるな! マスコットキャラの心を取り戻せ! キミたちの暴虐に子供たちは泣いているぞ!」

 やっぱりだが、きょろちゃんたちは応じなかった。地響きを立て手近なビルに頭突きしまくっている。
 明星の機体がソードウィングで、それをくい止めにかかる。
 よくよく見ると、どっち向いてるんだか分からない目ん玉が、若干血走ってもいるもようだ。

「‥‥まさかこんな事が本当に起こりえるとはね。とにかく、被害が拡大する前に片付けましょう‥‥」

 アリカに続け、宗司は痛ましげに呟く。

「見るに忍びないな‥‥アレは」

 闇虎はぼそりと言った。通信機に向かって。

「‥‥なあアン‥‥バグアって時々頭おかしいだろ‥‥」

「否定はしない。なんとも冗談みたいな絵だな‥‥時に煌、お前はキャラメル味と、ナッツ味、どちらが好きだ?」

「どっちって言われてもなあ‥‥特にこだわりねえけど」

「私はキャラメル味が好きだ‥‥故に、ナッツ味を叩く!! ‥‥全機、思うところはあるだろうが、これ以上街に被害を出してはならない、一気に殲滅するぞ!」

 アンの発破に、どこからも否やはない。
 当局からの連絡によれば、一般市民は既に逐次緊急避難を始めている。キメラの速度が遅いのが幸いして、大規模な人的被害は出ていないそうだ。
 敵が2、こちらは8。
 というわけで二手に分かれることとした。
 キャラメル組は。

「ひとまず今ならまだ港まで押し返せそうだね。行こうか、綾乃さん」

 石榴。

「了解ですぅ、石榴さん。明星さん、誘導お願いしますねぇ」

 綾乃。

「分かりました。これ以上暴れさせません!」

 明星。

「キャラメル味は大好きなんだがね」

 宗司。

 ナッツ組は。

「‥‥愛馬よ、駆けるぞ!」

 アン。

「‥‥番犬は伊達じゃねえんだ、GARMシステム起動!!」

 闇虎。

「再度侵入攻撃に移る」

 雄二。

「‥‥CMの決着を私たちがつけなくちゃならないというのは、どうなのかしらね」

 そして、アリカである。

 二手に分かれて接近してきた彼らにきょろちゃんたちは、きょろりと視線を向けてきた。



「とにかくあのデザイン、絶対に首関節が動かないと思うわ」

 かくいう綾乃の読みは正しかった。
 石榴に前面を任せ後ろに回り込んだ彼女が、機刀で軽く攻撃を加えてみたら、キャラメルきょろちゃんは振り向けなかった。
 一時停止し、ちこちこやりにくそうに小股で体を回転させる。
 その間完全なタイムロスなので、振り向いたとき綾乃は既に場所を移動している。
 きょろちゃん少し考えた。
 そうしていると背後から今度は石榴に攻撃されたので、そちらへよちよち向き直った。
 当然だが、既に相手は脇に避けている。

(これ絶対思いつきで作ってるよな‥‥それでも動くのか‥‥キメラ‥‥)

 日々機体の向上に切磋琢磨しているKV研究者たちの労苦を思いやり、宗司はなんとなくほろ苦い気持ちになった。
 兎に角きょろちゃん苦戦である。
 一応相手を追いかけて行くも(誘導にはまっているともいうが)、捕まるわけがない。
 しかし、途中で彼はキレた。あたり嫌わずちょこぼーるを吐き出し始めた。
 飛距離がないため周囲がたちまち被弾して、黒煙と瓦礫が飛び散る。

「こらこら、何すんのキミは!」

 石榴は大急ぎでその無駄に大きい口に飛びかかり、KVの腕で力いっぱい閉めた。
 きょろちゃんの口の中でボガンと音がした。
 出し損ねたちょこぼーるが爆発したらしい。黒い煙が噴き出る。
 熱かったのか、きょろちゃんは全力で暴れ始め、すぐさま転げてしまった。
 そうなると、これはもう起き上がれない。
 だが歩いているときと比較にならない素早さでローリングしだした。
 口を押さえていた石榴も巻き込まれて一緒に回る。

「のわあああああ!?」

「危ない、石榴さん!」

 綾乃は急いで建物の密集している側へ機刀を突き立てた。
 きょろちゃんはそれにぶつかり、反動で大きくバウンドし、奇跡的に起き上がった。身を傷つけつつ。

「‥‥お願いだからコケないで?」

 不本意ながら綾乃が後ろから支える。宗司も手伝った。

「石榴、あまり無茶するなよ? ふざけた外見だが、キメラには変わりない」

「あ、ああ、そうね。いやー、びっくりした」

 少し目が回り気味になりつつ、石榴はすぐさま起き上がって、きょろちゃんの後押しに加わった。
 どうも今ので発射口が詰まるかどうかしてしまったか、きょろちゃんは口をパクパクさせるだけでちょこぼーるが出せない。旋回している明星から無線が入ってくる。

「大丈夫ですか」

「あー、大丈夫。天さん、港まで後どのくらいかな。も少し広いところに出たら、もうこれ転がして運んで行くからさ」



 アリカはナッツきょろちゃんを相手に数回機体での直接攻撃を繰り返し、ちょこぼーるの被弾を盾で押し止どめた。
 最初から銃器を使わなかったのは、演出である。
 なんだかよく分からないが、とにかくこのキメラは例のちょこぼーるCMから生まれたと言って過言ではないだろう。
 そして何故あんなCMが作られたかと言えば‥‥。
 お粗末ならくがき足に向けて銃撃を加え、侵攻を防ぎつつ、彼女は中継しているだろうテレビに向けて訴える。

「‥‥もしこれを見ている子供たちがいるなら聞いて。今はこんなあり得ない事でも起こる時代なのよ。‥‥食べ物を捨てるという、貴方達にとっては些細な事であっても、こんな大事になっているわ。貴方達はこれを見てどう思っているのかしら‥‥?」
 じりじり後方の港側に押されて行くきょろちゃんは、上空を飛ぶ雄二の機体にも煩わされていた。
 首が動かないから体ごと回っている。その点、ナッツと一緒だ。
 最終的に回り過ぎてどっちが正面か分からなくなってきたのか、逆方向に歩きだした。

「三枝機、ヤツの足を止めろ!」

 アリカの側面に展開していたアンは、上空の雄二に支援要請する。

「了解スラスターライフル用意アプローチ‥‥‥ドラゴン2掃射開始」

 フェニックスが急降下し、きょろちゃんの進行を押し止めた。
 届かないながら応戦のつもりだろう、ちょこぼーるがばらまかれ、爆発する。
 今回の依頼より初めて使用する愛機、パラディンを使う機会を心待ちにしていたアンは、攻撃を仕掛ける前に、高々と宣言した。

「‥‥我が愛馬は強暴だ!」

 彼女はきょろゃんに目がけて突撃する。きょろちゃんが動くよりずっと早く。
 強烈な打撃により巨体はたやすくバランスを崩し、倒れ込んできた。アン目がけて。
 その時には闇虎が加速をつけ、既に彼女に追いつき、タックルをかけ、下敷きにされないよう避けさせている。

「っぶねぇ‥‥間一髪ってとこか?」

 きょろちゃんは支えがないので倒れた。
 しかし諦めず、口を開く。
 ちょこぼーるが発射されそうになっていた。
 闇虎はその口内に目がけ撃ち返す。

「させねぇっ!」

 きょろちゃんの口から煙が上がった。
 機を逃さずアリカ、そしてアンはちょこぼーるを転がし始めた。
 ナッツ組と連絡を取り合っていたので、きょろちゃんがローリングするという情報も入手済み。相手が自分で動き出す前に全力で転がして持って行く。
 雄二から随時進路をナビゲートしてもらいながら。



「あ、そっちも片付いた?」

 ナッツきょろちゃんをごろごろ回している石榴は、後ろから追いかけてくるキャラメル班に呼びかけた。

「おー、片付いたぞ!」

 闇虎から返答が返ってくる。
 デザイン上きょろちゃんたちは、文字通り手も足も出せず酒樽よろしく転がされ、壊れた埠頭からこぞって海にほうり込まれた。
 水飛沫と共に彼らはいったん沈み、反動でがぼっと浮き上がってきた。
 あんまり転がされてしまったせいなのか、黒目が上下左右回転している。そして大波に揺れるまま両方の頭をがつんがつんぶつけあっている。

「‥‥そろそろ遊びは終わりにしましょうか。これで‥‥決めるっ!」

 そんな2匹目がけ、岸辺から、アリカを初めとするKVたちは総攻撃を仕掛けるとした。

「狙わせてもらおう。全力全開だ」

 宗司が言うようにしたとして、破壊してしまう気遣いのあるものは回りにないので。

「明星版ちょこぼーる、発射!」

 陸ばかりでなく空からも、銃撃が、巻き上げた水煙によって相手の姿も見えなくなるほど浴びせられる。
 あまりの轟音に周囲の音は全てかき消された。
 きょろちゃんたちはその中で穴だらけになり、そこから浸水して行くかのように沈んでいった。
 ゆっくりゆっくり――やがて全身が水面下に入ってしまう。
 そして刹那の輝きを放ち水中爆発した。
 天高く2つの水柱が上がる。

「キメラでもやっぱり‥‥可哀想ですぅ〜‥‥」

 とは、綾乃の言葉。
 上空を旋回する雄二は、簡単な事実確認を述べるに止まる。

「全敵の沈黙を確認、ドラゴン2RTB」

 爆発によって起きた大波を前に、明星は機内で手を合わせた。

「ちょこぼーるを粗末にしてすみません」



 町は平穏を取り戻した。
 今回のキメラ騒ぎに、早速テレビ局が現場への取材を試みる。傭兵にもインタビューを求めた。
 快くそれに応じたのは、アン、雄二、アリカ、石榴である。

「今回のキメラは一体何を目的にして現れたと考えますか?」

 かような質問にアンは、壊れた埠頭に足をかけ、抜かりなくカメラ目線で応答した。

「あれは本当にキメラだったのだろうか‥‥、もしかすると本当にきょろちゃんの怒れる姿が具現化したのやもしれんぞ‥‥?」
 予想外の回答に戸惑う記者たちに、雄二が続ける。

「とりあえずあれが最後のきょろちゃんとは思えない」

 アンが返す。

「人類が愚かなことを続けるならば、第二第三のきょろちゃんがまた世界のどこかに現れることだろう」

 また雄二が引き継ぐ。

「ああ子供が食べ物を無駄にする限りまた来るだろう」

 それらを受けたアリカは、海原へ向け遠い目をした。

「‥‥おまけをつけるって事は、こうなるという事よね。もう一工夫必要だと思うわ‥‥」

 石榴は拳を握り締める。

「うん、出来ればこの戦闘映像をCMに使って欲しい。私はそう思うんだけど、どうかなメーカーさん。ギャラは特別いらないからさ」

 全然質問と関係ないことになってないだろうか。
 取材陣は思うも、何しろ相手は名にし負う傭兵たちであるため、なかなか突っ込みづらかった。

 かくして彼らがテレビ画面を使い訴えている頃、残りの傭兵たちは町の駄菓子屋に立ち寄っていた。
 なんだか急にちょこぼーるを所望したくなって。

「ほらね、あのお姉さんお兄さんが言うように、きょろちゃん怒らせたら、またいつ来ちゃうか判らないですよぉ? あんなきょろちゃん‥‥可哀想でしょ? ね?」

 店内のテレビを指さし綾乃は、集まってきた子供たちへ言い聞かせている。

「美味いぞ? 食べるか?」

 宗司は購入したキャラメル味とピーナッツ味のちょこぼーるを、仲間のみならず彼らにもまた配っていた。
 明星と闇虎は、ひとまずキャラメル味を食している。商品棚を見やりながら。

「これイチゴ味も出てんだな」

「あ、本当ですね」


(暗転。場面転換)


 はるかな沖合。遠い町を眺めながら水面に頭だけ出しているものがいる。
 真ん丸い大きな頭、クチバシ。どこ見てんだかな目。
 イチゴ色のペイント。
 そいつは無表情にくるりと向きを変え、はるか深みへ潜って行った。



 恐らくは、来るべき次なる怒りの日に備えて――





 画面一杯に、「完」の文字。