タイトル:金返せ!マスター:KINUTA

シナリオ形態: ショート
難易度: 易しい
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2011/04/28 12:46

●オープニング本文


人間研究はバグアにとって興味深いことである。主にその精神活動について。
「人間は老化した際、突発時について、どこまで判断力や思考力が鈍るのだろーか。どこまで明らかな嘘や異常事態を、そうと気づけないでいられるのだろーか」。
 はた迷惑なこの課題について、研究熱心な彼らはさっそく実験してみることとした。
「どこまで報酬を高くすれば、一般の人間も、他人に害を与える作業に心理的抵抗を消し、素直に従事するのだろーか」という、別の実験とあわせて。

● 



 ここは東北方面の田園地帯。
 のんびり一人暮らししているおばあちゃんの家に、突如電話がかかってきた。

「あ、もしもしおばあちゃん。ぼくだよ」

 とても親しげな若い男の声。その上で「ぼく」とくると、おばあちゃんの思考回路は、「孫」という認識をまず真っ先に浮かべてしまう。

「まあ、タケシちゃんかい」

「ああうん、タケシだよ。タケシタケシ。あのさー、実は今困ったことになっててさあ」

 孫の言うに、自動車事故を起こしてしまったのだが、示談金が調達出来なくてもめているのだという。
 運悪く衝突した相手の車に妊婦が乗っていて、容体を悪くし入院してしまったのだとのこと。

「頼むよ、おばあちゃん、後で返すから、とりあえず金貸してくれないかな」

「まあまあ‥‥分かったよ。大変だったねえ。そうしたらおばあちゃんがね、ひとまず用立ててあげるからね、泣くんじゃないよ。ええと、どうしたらいいのかね」

「ありがとうおばあちゃん。それならさ、今からそっちにATMが行くからさ、それに振り込んでよ。それじゃあ‥‥」

 折よくピンポーンとチャイムが鳴った。
 おばあちゃんが玄関に出てみると、確かにそこにはATMがある。
 誰が運んできたのだろう。不思議に思うおばあちゃんだったが、とりあえずその機械にお金を振り込むとする。
 操作は実に簡単だった。ATMが自分で教えてくれたので。

『紙幣ヲ入レルダケデ結構デス。後ノ手続キハ当方デ全テ行イマス』

「まあ、そうなのかい。便利になったねえ」

 札束が投入口に入り消えて行く。
 その途端ATMの体から。

 ガキッ。
 バキッ。
 ガシーン。

 メカっぽく手足が生えた。
 おばあちゃんびっくり、目を白黒させる。

『ゴ利用アリガトウゴザイマシタ』

 一応お辞儀のような仕草をし、手足の生えたATMは去って行く。ガスィーン、ガスィーンと足音を響かせて。
 一定地点まで行ったところで背中から翼を生やし、ロケット噴射して飛んだ。
 空の彼方へ。

「まあ‥‥最近は本当に便利になったねえ‥‥全部ロボットになるんだねえ‥‥」

 多分あれが孫のところまで行くのだろう。
 思ったおばあちゃんは安心して縁側に戻り、お茶を飲んだ。
 数分後、巡回診察にミーチャがやってきた。
 そしておばあちゃんから話を聞いて、大声を出した。

「何やってんだ、完全に騙されてるじゃねえか!」




●参加者一覧

新条 拓那(ga1294
27歳・♂・PN
終夜・無月(ga3084
20歳・♂・AA
魔神・瑛(ga8407
19歳・♂・DF
宵藍(gb4961
16歳・♂・AA
昂宮榎乃(gc4849
22歳・♂・ST
トゥリム(gc6022
13歳・♀・JG
フロン・M・カーン(gc6880
18歳・♀・AA
緋蜂(gc7107
23歳・♀・FT

●リプレイ本文

 依頼主からことの次第を聞かされた終夜・無月(ga3084)は、静かな、しかし気圧されるほどの怒りを発した。

「許せませんね‥‥孫を想うおばあちゃん騙すとは‥‥必ず根絶やしにしましょう‥‥」

「そうか。頼もしいことだ。まあとりあえずロボットの概要は、警察が絵にしてくれている。一応渡しておくぞ」

 メカな手足とジェット噴射仕様の翼を生やし空を飛ぶATMという、マンガ的イラストがそこにある。
 宵藍(gb4961)は、ふと遠い目をした。

(ツッコミどころ満載過ぎる)

 満載過ぎてツッコめない。
 あえて一つだけ言うなら。

(こんな奴出てきたら変だと思おうよ。まず)

 よく晴れた空の青の眩しさに目を細め、しばし世の不条理について考える彼。
 新条 拓那(ga1294)は、このATMロボに興味津々だ。

「へー、形変わるの。バキッガシーンて」

 同じものを見た昂宮榎乃(gc4849)が頬をかいて評するところは、こう。

「‥‥見るからに知能の低そうな‥‥いえ、馬鹿そ‥‥えーっと、機械的な思考をしそうな敵ですね」

 とはいえ問題の本質はロボではない。これはただの道具であり、後ろに悪質な詐欺グループがいるのだ。
 そいつらが人の心を踏みにじる最低の行為を行う張本人どもなのである。
 思えば、緋蜂(gc7107)の憤りは深い。

「後悔させてやりましょう。被害者のためにも無事、遂行させて見せます」

 フロン・M・カーン(gc6880)も大きく頷いた。

「悪いことをする人は捕まえないといけません」

 一日一膳。それが彼女のモットーだ。
 字を間違えているのではないと思う。多分。

「まったくセコイ真似して他人様のゼニを狙うなんてよぉ‥‥。いっちょキツイお灸を据えてやろうじゃないか」

 魔神・瑛(ga8407)はパキパキ拳を鳴らし、既に殴り込みの情景を想像しているのか、半笑いを浮かべている。

「お年寄りを食いものにするなんて、許せないよね」

 トゥリム(gc6022)は言った。その彼から少し距離を取りつつ。

(この人、ちょっと怖い‥‥)

 彼女、実はかなり人見知りが激しい。淡々としつつ、荒っぽい相手が苦手なのだ。
 本当のところ瑛の内面は、見た目ほどでないのだけれど。

「‥‥ま、善良なじーちゃんばーちゃんが貯めた金巻き上げるのは許せないからな、きっちり締めてやろう」

 気を取り直し空から視線を戻した宵藍は、拳を手のひらに打ち付けた。
 対なんちゃってATM戦に向け傭兵団、始動である。

●フロンと榎乃の場合。

 彼らは警察と連携し、覆面パトカーで巡回にあたることとした。
 どう考えても目立つしかない形態をしているロボットなのだが、いざ探すとなるとなかなか見つからない。
 田舎であり、人口も家もさほど密集していないからだろうか。それともすでに全て、どこぞに飛んで行ってしまって、見当たらないのだろうか。
 はやる気持ちを抑えフロンは、ひとまずATM繋がりで、地方銀行を訪問する。
 受付窓口にて挨拶、そして質問。

「振り込めサギに使われている悪質なATMロボがありまして‥‥」

 とその時、同行していた榎乃が彼女の肩を叩いた。
 何事かと振り向くと、ガラス扉の向こう。

 ガスィーン。
 ガスィーン。

「あら?」

 歩行するATM。
 両者急いで外に出る。

『こちら魔神、誰か見つけたヤツはいるか?』

 榎乃は無線機からの問いかけに、早速の報告を始めた。

「はい、1台発見しました。事前情報どおりの姿をしています。今のところ走ってはいませんが」

 その間にフロンが間を置かず、相手に駆け寄り飛びついた。

「えいやあ!」

 真っ白な煙幕が周囲に撒き散らされるのと、背中の翼からジェット噴射が出るのと、ほぼ同時。
 煙幕の直撃を受けた榎乃は、咳き込む。

「ボク、お先に行ってますうぅぅぅぅ‥‥」

 遠ざかって行くフロンの声が聞こえたような。
 無線の向こうから、瑛が再度尋ねて来る。

『おい、そっちどうした。大丈夫か』

「はい、大丈夫です。ちょっと煙幕をかけられただけですので‥‥それと、フロン君がロボと共に飛んで行ってしまいまして」

●瑛とトゥリムの場合。

「おう、よろしくなトゥリム。じゃあ俺達はこのルートで巡回するぞ」

 最初にそう挨拶はされたものの。

(やっぱり何か怖い‥‥)

 地図を膝に、無線を耳にしている運転席の男に、どうしてもそう思う。
 外見で判断してはいけないのだと自分を戒めるも、苦手な相手といる気詰まりな気持ちは消えず、そわそわしっぱなし。

「大丈夫、大丈夫、怖くない、怖くない、ブツブツ‥‥」

 呟き続けても効果は薄い。
 最終的にATM捜索という大義名分にのっとり、監視のみに集中する。
 瑛は無線機相手に、不機嫌さ一杯(と彼女には聞こえる)な声でがなっている。

「飛んだだぁ? おいおい、人間乗せて飛べんのかよあれ」

 双眼鏡を手に空ばかり眺めていた彼女は、いち早く話題になっているものを見つける事が出来た。
 予定外の荷物を背負っているせいか飛行が安定していない様子だが、とにかくATMが飛んでいる。
 なので報告。

「そうか、どっち向かってる」

「えーと、あっちです。鉄塔のある山の方」

 瑛は今一度地図を見、そちら方面への進路を確認した。
 車をバックさせ、別車線に入って行く。

「よーし、そんならそのまま目視しててくれよ。俺がよそ見して事故る訳にはイカンからな。頼むぜ嬢ちゃん」

「了解、魔神さん」

 勢いよく答えて少女は思った。

(あ、よく考えたら今、初めてこの人の名前を呼んだかもしれない‥‥)

●無月と拓那の場合。

 自前の車とバイクでATM捜索を続けている二人は、瑛から入ってきた報告に少し心配していた。

「フロンさん、ATMにそのまま連れて行かれてしまったそうですよ」

「え、本当に。大丈夫か、途中で落ちたりしないかな」

「さあ、そこはなんとも‥‥」

 信号で一旦停止していた彼らは、直後民家の玄関先に変なものがあるのを発見した。

「あー‥‥あそこ。何か、あからさまにおかしくないかな? いかにも「振り込んでください」と言わんばかりの‥‥」

「ええ、確実に変です」

 それはまさしくATM。
 車とバイクを路肩に近づいてみると、どこかで見たよなロゴマーク。
 無月は声に出して読んでみる。

「東享三蔆UFJoy銀行」

「んー、なんか微妙なギリギリ感」

 そんなこんな言っていると、玄関から腰の曲がったおじいさんが出てきた。
 老眼鏡をかけて財布を手に、ATMへ呼びかける。

「ここにお金を入れたらいいんかいのう‥‥」

 いかん。また新たに被害者が。
 2人は急いで老人を押し止めた。
 これは絶対ATMではありませんと無月が説明している間、拓那が代理で子供銀行のお札を振り込んでみた。

「これにだまされたらちょっと笑うけど、さてさて?」

 紙幣投入口が閉まる。枚数計測が始まって数秒後、彼の顔目がけてお札が吐き返された。

『偽札ノ使用ハ違法行為デス』

「‥‥きみがそう指摘するのは何かが間違ってると思うよ」

 拓那は渋々自腹を切り、現金10万C紙幣を入れた。

『ゴ利用有リ難ウゴザイマシタ』

 言うなりATMは、

 バキッ。
 ガキッ。
 ガシーン。

 手を生やし脚を生やし、翼を生やす。
 拓那はいささか感動し、見とれてしまう。

「中々に見事なギミックの変形。ちょっとカッコいいじゃないか!」

 ロボットは彼の称賛の元玄関先を離れ、噴射で飛び始めた。

「こちらも飛び始めました、今から追って行きます、どうぞ」

 無月は仲間に無線で連絡を入れ、バイクに飛び乗る。
 拓那も口笛を鳴らし、車に飛び乗った。なるたけ相手を見失うまいと。

「イージーカムイージーゴー、ってね。やっぱ人間真っ当に稼がなきゃ♪って、皆バグアだっけ」



「こっちからもきっちり見えてるよ」

 宵藍と緋蜂とは町の中心部から離れ、高台にある運動公園に陣取り、全体の様子を逐一観察していた。
 フロンたちのATM、無月たちのATM、それぞれが飛んで行く方角は、間違いなく重なっている。

「あの山の方へ向かっている‥‥ようだな」

 呟くと、別の場所からまた1台、続いてもう1台と飛んで行った。

「ええ、あの方角で間違いありません――何か心当たりはございませんか」

 地元警官は緋蜂の質問に少し考え、はたと何事か思いついたような顔をした。

「そういえばあちらの山の奥の奥には、閉鎖された産廃場があります。既に出入り口は封鎖され、立ち入り禁止区域に指定されているのですが‥‥」

 産廃場。
 ならば車両による人間の出入りも比較的簡単に違いない。機械の運搬なども。
 一度山を切り開いているだけに、大掛かりなことをする場所にも恵まれているだろう。

「‥‥そこで間違い無さそうだな」

「ですね。さあ、案内してもらいましょうか」

 宵藍と緋蜂は地元警察のパトカーに乗り込み、一路その場所へと向かうこととした。
 無論チーム全員に、情報を全部伝えている。
 車内に置いて緋蜂は地図を借り、目的地の確認を取った。
 出来るだけ居住区から遠くということなのだろう、山また山の後ろ側となっていて、視界が遮られがちだ。
 こうなると気になってくるのは、仲間の一人のことである。

「フロンさんはどこまで行きましたかね」

「うーん、どっかで振り落とされてないといいんだけどな」



「うんうん、そうだよ、オレだよ父さん。事業に失敗してさ‥‥」

 山奥にある電話詐欺のコールセンター。
 作り話が熱を込めて演じられている中、ロボットたちが次々帰還してくる。お金を吐き出し、また新しい受け取り先を入力されるために。
 しかし、先程から3台しか帰ってこない。

「おい、4号が遅いな。どうしたんだ」

 現場チーフが気を揉んでいる所、そいつはやっと戻ってきた。体に一杯折れた木の枝や土埃をつけて。
 それと似たような状態の、見慣れぬ娘と一緒に。

「職場環境の悪い中、皆様いつもお仕事お疲れ様です〜今日からお世話になりますバイトのフロンと言います〜」

「そんな話上から来てねえぞ」

「あれ、そうなんですか。それじゃボク、早く来過ぎたのかも。遅刻しないよう大急ぎでしたもので」

 確かにそう見えなくもない様子なので、チーフは一応納得。
 本当は目的地手前でロボットが墜落したのでこうなっているのだが、別に説明する必要もなかろう。
 彼女はまだ新人なので電話作業には加わらず、掃除やお茶くみなど始めた。
 後それから、書類コピーも。

「この現場マニュアルとか増刷しておきますねー」

 そう言って勝手にやり始める。
 しかし誰もさほど気にとめていなかった。
 これは組織でなく単なる雇われ群衆。
 金のためなら道徳くらい捨てるという人間が、集まっているだけなのである。

「いやー、ジジババはチョロイよな」

 だがその安っぽい悪も、ついに倒れるときが来た。

「そこまでだ!」

 前触れなくアジトの扉が蹴り開かれる。

「だ、誰だ!」

 逆光で顔を見えなくさせている宵藍は、それがしたかったこともあって、月並みに返答しようとする。

「俺か、名乗るほどのものじゃないが」

「派手に壊れな!」

 だが緋蜂が先に飛び込んで行き、セリアティスでロボ1体の両足を砕いてのけたものだから、霞んでしまった。

「はい‥‥大人しくして下さいね‥‥」

 無月が瞬時に当て身を食らわし、5人沈めてしまったので余計に。

「子供だからって、なめないでよね」

 トゥリムが倍以上ある相手を軽く巴投げしてしまったので尚更。

「動かないでね、うっかりすると切れてしまいます」

 バイトのふりしていたフロンが豹変し、チーフの喉元に切っ先を突き付けたので一層――注目されなかった。
 少し悲しい思いをする宵藍。
 だが気を取り直し、アジト裏口へ回り込んだ。そちらから逃げようとする動きが見えたので。

「はい、ここは通行止め」

 バグアでもなし強化人間でもなし、一般人の相手はどうも気を遣う。
 思いながら殴り掛かってきた相手の鳩尾へ膝を入れる。



 拓那はツーハンドソードでロボに挑む。
 逃走だけは阻止しなくてはならないので、手足の間接から狙った。
 それと、背中の翼部分。
 ロボットは攻撃に対し、煙幕を張ることで対抗する。
 彼が相手をしている奴だけでなく、緋蜂が手足をもいだ奴も、無月が拳で凹ませ、明鏡止水で斬り付けた奴も、同じことをした。
 あたりは消火器を撒き散らしたよう、真っ白になる。
 その隙に出口付近にいた詐欺人員は、手探りで外へ逃げようとした。
 ロボットのうちの1体もまた。
 トゥリムはそれを背後から、クルメタルP−56で撃ったが、止めるまでには至らない。
 しかし彼らが出てみれば建物はパトカーに取り囲まれ、榎乃と瑛とが待ち構えている。

「こんなことをしておいて逃げ出すなんて悪人の風上にもおけないですねぇ‥‥根性見せて最後まであがいてみろよ?」

 榎乃から回し蹴りを食わされなおあがける者は、当然ながらいなかった。

「同感だな。お前ら素直にパクられとけ」

 瑛がクロムブレイドを抜き、ロボへ向けソニックブームを放つ。
 風圧に押され動きが止まったそこに、怒涛の如く切りまくる。無論、手足をもぐために。

「さぁーて、ぶっ壊した後はバラバラにして部品活用したら少しは役に立つのかな?」

 榎乃はその補佐として、背中の翼、及び煙幕を出す噴射孔を潰しにかかった。



 全体的に言えば、ATMのロボットとしての機能は比較的すぐ停止した。
 しかし手ごわかったのが金を入れている金庫部分。比類のないほど丈夫に作ってあったのだ。
 それでも殴ったり蹴ったり切ったり突いたり銃撃したり、傭兵たちが全員力を合わせたおかげで、どうにかこうにかこじ開けられた。

「‥‥これだけの金、よく集めたもんだ」

 破壊作業にくたびれ果てた宵藍はぼやく。開いた金庫の透き間から中に詰まった札をかいま見て。
 そこでハリセンを手に拓那が、10万C紙幣を抜き取り始めた。

「ま、俺の分は先に返してもらうよ」

 その横で滞りなく詐欺メンバーが、パトカーに乗せられて行く。

「こんなことしている間に働いたら、綺麗なお金が稼げたはずなんですよ? 全く‥‥」

 彼らにいちいち積極している榎乃は、いくらか残念さも感じていた。この事件に拘わったバグアの手掛かりが、どこにも残されてなかったために。

 とまれ傭兵たちの任務、これで全完了である。
 ‥‥はずなのだが。

「いい加減にしろやゴラァ! ネタは上がってんだ! キリキリ吐けや!」

 緋蜂は取り調べまで付き合っていた。
 覚醒ONの彼女が殴ると壁がヒビ入り、机が割れる。
 それから逃れるため犯人たちは警察に泣きつき、実によく喋ってくれた。

 なお巻き上げられた金は、無事全額被害者たちの元に返還されたとのことである。