タイトル:まさかチェーンソーマスター:KINUTA

シナリオ形態: ショート
難易度: やや難
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2011/08/04 04:46

●オープニング本文



 ここはとあるキメラ研究所。
 今しがた出来上がったばかりのキメラを相手に、博士が語りかけている。

「いいか、お前は私の最新作だ。上の奴らは私のことをやれ単なる趣味でやってるだのやれ見かけの割りに効果が薄いだの言うが‥‥そんなことはない!」

 そのキメラは見上げるほど大きい人間の形をしていた。
 首にネクタイ、腰にエプロン。右手にどでかいチェーンソー。左手にこれまた大きいハンマー。

「恐怖を与えるという私の目論見ははずれておらぬ! 実際以前作ったホッケー仮面と白ワンピースの暴れたところでは数々怪奇現象の噂が立ち、旅館は閉鎖となった‥‥ばかりか今や一帯が心霊スポットとして名を馳せ地価は下落しておる。これを経済的打撃と言わずして何という。私のキメラの恐ろしさはここだ。倒された後も心理的効果を、ボディブローのように及ぼせるのだよ。分かるな?」

 顔には大きさの合わない人面(本革)のマスクを被っている。
 あまり頭はよろしくないらしく、博士の言葉に対し、ふごふご不明瞭な音声を発するだけだ。

「お前はその先達よりも更に、更にパワーアップしておる。生命力はもとより、ことに運動能力にすぐれておる。力もある。能力者の武器に対抗可能な強化武器も携帯しておる。つまり‥‥お前は強い、強いのだ人面仮面よ!」

 喜んだのかキメラは奇声を発し、チェーンソーを振り回し、小躍りした。
 おかげでそのへんの配線が切れ火花が散る。

「やめんか馬鹿め! 外でやれ外で!」

 怒られたので、窓際に座りたそがれる。

「ええい、でかい体で凹むな! まあ、出来ればオプションとして家族も製作したかったのだが、予算がつかなかったのだ。その代わり廃墟は手に入った。お前はそこに住み、存分のびのびやるがいい。そして周囲を恐怖に陥れるのだ!」



 
 真昼。
 人が住まなくなって久しい感じの、荒れて寂れた一帯。
 次の目的地へ向けて、車が通り過ぎるだけのところ。
 路肩にはごみが散らばっている。ハイカーが投げ捨てていったのだろう。
 そこからちょっとだけ入ったわき道。
 廃墟が近くにある。伸び放題の草に囲まれた。
 乗用車が一台路肩に止まった。
 男が立小便しに出てくる。
 
「はー、やれやれ‥‥全く暑いもんだ」

 用を済ませた彼は、運転席に戻ろうと向きを変えた。
 途端に。

 がん!

 いきなり出てきた正体不明の何かに頭を叩き割られた。
 何かは倒れた男の体を脇に抱え、素早く廃墟に戻っていく。
 後で戻ってきて、一人で楽々車を押し、これまたどこかに運んでいく。
 
 同じように次々何人も消えていったのだが、しばらくたつまでこの失踪は明るみに出なかった。 
 いなくなったのが地元の人ではなく、通りすがりのよそ者ばかりだったので。



「もういや‥‥」

 レオポール、仲間と共に現場に来るなりしくしく泣き出した。
 どうして最近オレに来る依頼はホラーばかりなんだと嘆いて。


 

●参加者一覧

カララク(gb1394
26歳・♂・JG
エイミー・H・メイヤー(gb5994
18歳・♀・AA
湊 雪乃(gc0029
15歳・♀・FC
クロノ・ストール(gc3274
25歳・♂・CA
沙玖(gc4538
18歳・♂・AA
秋姫・フローズン(gc5849
16歳・♀・JG
楊 雪花(gc7252
17歳・♀・HD
エレナ・ミッシェル(gc7490
12歳・♀・JG

●リプレイ本文

 真昼。
 夏草の生い茂る野。
 住む者がいなくなって久しい田舎の廃屋。
 人影ゼロ。
 車以外に交通手段が全くなさげ。

 エレナ・ミッシェル(gc7490)ときたら、はしゃいでいる。

「どっかのホラー映画に出てきそうなキメラだよねー。妖怪の類? とりあえず写メっとかなきゃ!」

 楊 雪花(gc7252)はしたり顔。

「ワタシこういう映画観たことあるヨ。○キサ○・チェーンソーて名前ノ。明らかにパクってるネ」

 秋姫・フローズン(gc5849)は映画を知らなかったが、雰囲気として以下に上げた作品と同系統だろうと推察する。

「まるで13日の‥‥金曜日‥‥ですね‥‥」

 クロノ・ストール(gc3274)はぼやいた。

「やれやれ、バグアにとっては神話伝承もスプラッタームービーも同じか」

 カララク(gb1394)も――表情こそあまり変えかったが――額を押さえた。

「‥‥仮面に鋸は連中のお気に入りなんだろうか」

 以前似たタイプのキメラと戦ったことがあるだけに、複雑な気分である。
 まさか同じ人間が造った訳でもあるまいが。
 エイミー・H・メイヤー(gb5994)が、レオポールを見る。

「ふむ‥‥悪魔のいけにえになるのは誰かな?」

 犬男はビクッと尻尾を丸め、震え声で提案。

「警察呼ぼう」

「ねむたいことを言うな。警察で手に負えないから俺たちに依頼が来たんだ。しかし人食いのチェンソー使いか。実に面白い。俺の体術が何処まで通じるかな」

 湊 雪乃(gc0029)は両拳を打ち合わせ、早くもやる気満々だ。

「連れて行かれた人間はいったいどうなってるんだろうか。生きてはいないと思うんだがな」

「うーん、十中八九美味しくいただかれてしまっていると思うのコトヨ」

 沙玖(gc4538)の問いかけに応じた雪花の言葉に、輪をかけてビビるレオポール。
 その背を彼女が叩いた。

「そんなわけで、怖いだろうけド、キメラ探すのに協力してよレオポール。得意の嗅覚で見付けてくれたら、レオポールがキメラ倒したヨ! お手柄ネ! てパンダのお義父さんに話してあげるからサ」

 食われてからでは意味がない。
 訴えるレオポールへ、カララクは親切にもこう言ってくれた。

「ビーストマンにしか出来ない事だ。なんなら奴を見つけたらすぐ退いてくれていい」

 しかし退くといって退けるだろうか。
 ホラー的なものに対しては一度見つかったら最後でなかろうか。
 懸念が拭えない彼に、クロノは呆れ顔だ。

「少なくとも得体の知れない何かじゃなくて、バグアの放ったキメラだ。シチュエーションなんて瑣末なこと、恐れる必要は無いでしょ」

「そうヨ、それもこれもチープな演出、気にしたら負けネ。どうしてもヤダというならそれはまあ仕方ないケド‥‥」

 雪花が晴れ渡る空に遠い目を向けた。

「‥‥そうくるとワタシは悲しみのあまり何を口走るか分からないナ。例えばそウ‥‥犬男に「悪魔のいけにえ」にされたとカ‥‥」

 レオポールが数秒固まり、ヒステリックに吠え出す。
 人の言葉を一時忘れてしまっただろうか。

「おお、そんなにワンワン吠えてやる気になてくれるなんて嬉しいネ」

 やはりこの男にはこの手を使うのが一番か。
 脇で眺めているエイミーは強くそう思った。



 音を立てないよう家に入ったレオポールは、壁に張り付きそろそろ匂いを嗅ぐ。耳をピンと立てて。
 ややして彼はカララクに言った。

「いる。帰ろう」

「帰ってどうする。どのへんにいるんだ」

「この先の突き当たり、左の部屋‥‥」

 途端、ウォン!とチェーンソーの駆動音が響いた。
 レオポールは真っ白、あたふた腰が抜けそう。
 カララクも後ろからついてきているエレナも、一瞬身を引き締めるが、駆動音はすぐ止んだ。
 どうやらこちらの気配に勘づいたのではなかったらしい。
 カララクは先頭切ってなお部屋に近づいてみる。
 扉の透き間から覗いてみると、大きな人型キメラが椅子に腰掛けていた。
 チェーンソーを布で拭き、油を差している。傍らには重そうなハンマー。
 声を殺し外にいる囮班と罠班へ、連絡をつけた。

「標的を発見――」

 報告をしていた間にキメラが立ち上がり、向きを変え出てかけきたので、急ぎ物陰に隠れる。
 気づかずキメラは通り過ぎて‥‥と思いきやまた戻ってきた。
 不審そうにきょろきょろ。
 その顔、人間の顔の皮で作った異様なマスクで覆われている。

(カララクさん、あいつ気づいたの?)

(いや、分からない)

 とはいうものの、キメラが部屋からハンマーを持ち出してきたからには、そうであると仮定した方が身のため。
 偵察班はひとまず見つからぬよう、廃墟内を移動していく。物音を立てないように。



 罠設置は遮蔽物の少ない場所に。
 初見の土地で勝手が分からないのだから、視界が広い方がいい。
 沙玖はシャベルで小ぶりな穴を開けながら、次々草をかぶせて行く。
 同じく設置係となっている雪花はその穴の幾つかに、クギを打った板を入れ込む。

「こうすると大変効果的ネ。後はこれらを足元に配置しておくと大変動きにくいヨ」

 釣り糸もばらまく。針つきで。
 それらについて、クロノが少し懸念を示した。

「バイクにからまったりしないか?」

 というわけでエイミーに無線連絡してみる。

『ああ、位置が分かれば避けますよ』

 とのこと。
 後は、離れて生えている木の間へワイヤーを設置。
 偵察班からの連絡によると、所在は掴めたそうだ。
 両側に潜み、囮役が通り過ぎた直後持ち上げ、足を取る手筈。
 突貫工事だがこれで下準備は整った。
 その旨囮班に伝える。



「了解。ではこちらも偵察班からの連絡が入れば、すぐ行動に移ります」

 エイミーは同乗者である秋姫の手を取り、バイクの後部座席へ恭しくエスコートした。

「では、参りましょうか姫君」

 対する形で秋姫も、恭しく応じる。微笑んで。

「バイクの運転‥‥お願い‥‥します‥‥姫騎士様」

 お芝居めかした会話を楽しむ2人は、命綱であるロープをお互いの体に結び付け、準備を整える。
 キメラを引きつけ、設置された罠まで誘導する所存だ。
 バイクに乗らないもう1人の囮役である雪乃は、出端でいくらかでも敵を挫き、戦闘力を殺ごうという所存。
 内部からの情報によると、この廃墟は単なる廃墟であり、特別な強化素材などは一切使われていないということ。
 なら、壊すのもたやすそうだ。
 思っていると、中から地響きとまごうばかりの物音が聞こえてきた。



 何かいる気配はすれど、姿が見つからない。
 2階にいたキメラは苛立ち、ハンマーで床を殴る。穴が開く。
 真下にいたレオポールが肝を潰し、叫ばなくてもいいのに叫ぶ。

「ひゃああ!」

 キメラがこれを聞き逃すわけがない。
 すわ声がした1階に向かう。階段を使うのももどかしく飛び降りる。
 装着したチェーンソーを稼働させ、閉められていた部屋の扉をふっとばす。
 エレナの声がそれに重なる。

「ビンゴ!」

 大男がハンマーを振りかざす前へ、部屋にあった椅子が投げられた。
 空気と変わらない抵抗力しか持たないが、一瞬隙は作れる。
 偵察組は窓から外へ飛び出す。
 相手は尋常でない素早さで追いかけてくる。
 体勢を整える真上から脳天目がけ、ハンマーを振り下ろす。
 カララクはすんでのところで避けたが、紙一重で掠めた衝撃の強さに眉ひそめる。
 風圧で皮膚が切れたようでさえあった。

「面白いキメラだー、キメラって色んな種類がいて飽きないよねー♪」

 エレナもさすがに油断ならないと感じ、写メも2枚しかとらなかった。
 待ち受けていた雪乃が、巨体の左側に回り込む。
 内股、胴。立て続けに「スコル」での蹴りを入れる。
 攻撃をしてくる相手に向け、キメラの注意が一気に傾いた。
 彼女の頭上に鉄塊が迫る。
 バックステップでの回避――姿勢を低くしての膝蹴り等反撃は忘れず。
 しかしそれにしても動きが早い。避ける方に精一杯になりそうだ。
 両手とも武器化してるので、どちらにも気を使わなくては。
 回転刃で皮膚のあちこちを切られつ、「ライトニングクロー」で右脇腹に拳を入れる。
 ハンマーが横殴りにきた。
 受けると同時に飛びのき、衝撃を和らげる。
 幸い連続しての打撃は受けなかった。吠えてる犬男にキメラの注意が向いたからだ。
 レオポールは突き出た耳をちょっとそがれ、いやというほど尻尾を打たれ、散々。
 このキメラ、どうも気が散りやすい性分らしい。エイミーと秋姫のバイクが走り込んできたら、たちまち意識をまた新しい方に向け、走りだす。
 やたら早い上柄の長いハンマーを振り回すので、エイミーとしては後部座席が気掛かりだ。

「狙撃‥‥開始します!」

 秋姫は、「梓」で射かける。

「一閃‥‥必中!」

 足を目がけ矢が放たれた。
 太ももに命中する。
 速度が――多少落ちる。
 続いて弾頭矢を使う。

「取って置きの‥‥矢です!」

 しかし、目に当てるのは難しかった。
 両腕を顔の前で振り回しながら追ってくるので、なかなか狙いが定まらないのだ。
 1つは逸れ、1つが当たる。左目に。
 轟くような怒声。
 罠が近づいてきた。

「秋姫、蛇行するから注意してください!」

「はい!」

 秋姫は射撃を中断し、エイミーの体にしがみつく。
 突進してくるキメラを、囮班がてぐすね引いて待ち受ける。

「じゃ、今日も頑張っていくとしますか。幸運の女神は僕に微笑みかけるってね」

 自信ありげに言うクロノ。
 沙玖は鼻を鳴らす。

「ふん、作った奴の趣味を疑う、映画の見すぎじゃないのか?」

 キメラが穴に足を突っ込んだ。
 早さはいくらか損なわれる。
 だが止まらない。靴の裏に板が刺さっているが、そのまま走る。
 足に糸が絡んだ。歩きにくそうになりまた速度が落ちたが、でも止まらない。
 ハンマーとチェーンソーを苦もなく振り回し、追う。
 雪花は頭を振る。

「あいつ、相当タフだネ」

 バイクが通り過ぎた。
 ワイヤーが張られた。
 キメラは足を引っかけ大きく体勢を崩し――重りもついていることとて――さすがに止まる。
 周囲にまた別の獲物が現れたので、気をとられたというのもありそうだが。
 沙玖が先手を取り、「プリトウェン」を構え、「翠閃」で切りかかった。
 ほぼ同時に、攻撃が仕掛けられてくる。
 盾を回転刃が削り、火花が散る。
 振り下ろされるハンマーに向け、下から刃を突き上げる。

「一瞬の隙がお前を地に落とす!」

 ハンマーの柄から上、鉄塊の半分が切り落とされた。
 反撃を避けキメラの死角面に回り込む。
 次の一閃で左手首を切り落とそうとしたが、向こうの反応の早さで狙いがずれ、腕部分を切り裂くとなる。
 ハンマーが肩に当たる。
 一度離脱。
 キメラは吠え、チェーンソーを振り回す。

「派手な音に惑わされる訳にはいかないな」

 今度それを受け止めたのは、クロノ。
 「エンジェルシールド」で防御、「ゼフォン」で相手の足目がけ切り込む。
 動脈が切れたか、泡交じりの血が噴き出す。
 動きが鈍った。
 すかさずチェーンソー目がけバンダナを投げ、歯に噛ませる。
 変な音がし、回転がつかえだす。
 武器を不調にされて腹が立ったか、キメラは俄然クロノばかり攻撃し始めた。
 防御は万全なものの、盾がたちまち傷だらけ。
 彼ら2人が戦う間、場にメンバーが打ち揃う。
 エレナが背後からふくらはぎを切り、反撃を待たずして離れる。
 カララクが彼女の離脱を助け、援護射撃。貫通弾がキメラの側頭部を貫く。
 撃たれた箇所からぶくぶく赤い泡が盛り上がり、数秒動きが止まる。
 刹那、沙玖がチェーンソーの動力部を狙い、完全に破壊した。
 回転が止まる。

「お見事です、沙玖氏」

 エイミーは手を叩く。
 次いでなお怒り、今度は沙玖を狙うキメラを嗤う。

「ご自慢のチェーンソーは使い物になりません、テキサスに帰ってはいかが?」

 キメラは、最初ほどの機敏さが出なくなっていた。
 それを前に秋姫が、「雷上動」を引き絞る。

「これで‥‥最後です‥‥!」」

 矢は首筋に刺さる。
 すさまじい叫び声を上げキメラは、目標も定めないまま手当たり次第暴れだす。
 攻め手にして有利だ。
 雪花は「ティルフィング」と「ノコギリアックス」を同時に振りかざし、切りつけた。

「さあて、ワタシも行くネ! 殺人鬼を斬たとあれば、ワタシの剣にも箔がつくものダ!」

 胴に交差し切れ込みが入る。
 動かないチェーンソーが声の方目がけて振り回される。
 エイミーがすかさず前に出て「蛍火」で右手の骨まで切り込んだ。
 そのままの勢いで腹を刺す。
 が、つかえて抜けなくなった。
 引き抜くより前に手を離す。抱き込まれる方が危険そうなので。
 雪乃がみぞおち目がけ「スコル」で打撃を食らわせる。

「さすがにお疲れか、殺人鬼!」

 攻撃離脱を繰り返しているエレナは、上体をぐらつかせるキメラを、容赦なくおちょくった。

「ねぇ今どんな気持ち? どんな気持ち?」

 そんな中、沙玖は、1人見かけないのに気づく。

「‥‥おい、レオはどこ行ったんだ?」

 エイミーが首を巡らせ、茂みから鼻だけ出ているのを発見。
 足早に近づき鼻を掴み、有無を言わせず引きずり出す。

「オレもうさっき戦ったよ‥‥見ろよこの耳とか尻尾とかよおお」

 弁解に対し冷ややかな視線。

「ええとても立派なかすり傷。今のお姿を見たら、お義父さまは怒り狂い、お子さん達は呆れ果てるでしょうね」

 涙を呑み、レオポールも再度参戦。
 もっともハンマーもろとも左腕をクロノが切り落とし、カララクが今度こそ頭部の真ん中に弾を撃ち込んだこととて、そうやることもなかった。
 皆と協力し何度も切りつけ、完全に首を落とす以外は。



「幽霊の正体見たり枯れ尾花ってね、真に打ち勝つべきは恐怖心って奴さ」

 カララクは言い、ふうと息をついた。

「しかし‥‥これはどうしたものかな」

 廃墟の台所には、嘗められたようにきれいな白骨が山積み。
 残さず食べられた結果らしいが、個人の識別をつけるに時間がかかりそうだ。

「まあ、仕方ないネ。遺留品はたくさんあたから、それで照らし合わせてもらうしかないヨ。ご苦労だたネ、エレナサン」

「いやいや、たいしたことないよ。こういうのを持ち帰ると家族が多少喜ぶって本で読んだから」

 免許証だの本だの服だの眼鏡だの、外の車と廃墟内にあったものを床に広げ、全員で分類を始める。
 壁にぶら下がるソーセージの素性は後回しにして。
 しばらくして、ぼそっと雪花が呟いた。

「奴が最後の殺人鬼と思えないネ、きと第二第三の‥‥次はキョンシーかナ、レオポール?」

「止めろよ。もうオレこの手の仕事絶対受けねえ」

「果たしてそう都合よくいくかな」

「なんだよエイミーまで、本当にもう受けねえったら、受けねえっ!」