タイトル:海からぬりかべマスター:KINUTA

シナリオ形態: ショート
難易度: やや易
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2011/08/10 22:32

●オープニング本文


 夏。
 夏といえば海に川に山にプールに花火大会に遊園地に、盛りだくさんのイベントが控えている。子供たちはそれを楽しみにしている。
 親としてはどこかへ連れて行けという叫びを無視し続けるわけにもいかない。
 そんな彼らに手頃なイベントが、この海浜にて行われていた。
 名づけて全国海の家祭り。
 B級グルメ選手権の一種であろうが、とにかく全国の我こそはと思う海の家が、店特性の焼きそばだのお好み焼きだのたこ焼きだの焼きもろこしだのホットドッグだのカキ氷だの引っさげて来店しているのだ。
 カキ氷早食い大会なるものも開かれている。
 優勝者には粗品が贈られ、ヒーロインタビューが行われるとのこと。



 レオポールは海辺に家族を連れ、遊びに来ていた。

「今日は何でも食わせてやるぞ」

 なんでもって、ここ安いものしかないよね。
 思ったけど長男レオンは口にせずにいた。一応父の立場というものも考えて。
 下の双子ポールとポーレットは、早速イチゴ味のアイスバーを所望し、食べている。

「海っていいわね」

 妻メリーはパラソルの日陰で休んでいる。
 赤ちゃんのジャンだが、これはスイカの一切れを持ってしゃぶっていた。
 家族団欒のひと時。そこに部外者。

「や、奥さん。子供が4人もおられながら、いつもおきれいですね」

 軽装のペーチャだ。
 奥さんに馴れ馴れしくされたので、レオポールは落ち着かない。犬化し、ワン、と吠える。

「なんだ。お前も来てたのか」

「ええ、ぼくもたまには息抜きします。仕事と絡めてね。このイベントの広告請負です、うち」

「用事がないなら離れてくれねえか」

「まあまあ、そんなに警戒しなくても。用事はあるんですよ。あなた一応傭兵ですから、知らせておいたほうがいいかと思って」

 いやな予感に、レオポールの尻尾は下がっていく。

「さっき無線連絡があったんですけど、不審な漂流物が出たみたいで」

 周囲がざわざわしだした。
 海を眺めてみれば、変なものが波に乗って近づいてくる。
 とても大きな四角く平べったいもの。全部で3つ。
 浜辺にざざーんと到達したそれを、観光客は遠巻きに眺める。

「なにあれ」

「白こんにゃく?」

「寒天じゃないか?」

「いや、どっちにしてもでかすぎだろ」

 皆が批評していると、不審物がガバッと起き上がった。
 縦4メートル、横2メートル、厚み50センチの寒天質な体で、周囲の人々と屋台を襲い始めた。
 直立して跳ねながら動き、倒れ掛かるという戦法で。
 レオポールは即刻家族を連れて現場を離れようと決める。
 だがそこに。

「メリー、お前も来ていたのか」

「あらお父さん。どうしてここに」

 いきなりお舅エドワード登場。
 パンダ獣化をし、ふんどし一丁、銛を携えている。

「うむ、沖合いで鮫漁をしとったのだ‥‥おいそこのコリー。貴様どこに行こうとしとるのだ。まさかあの板こんにゃくに恐れをなしているんじゃないだろうな」

 牙を剥くこの猛獣より、あのキメラのほうがまだマシっぽい。
 犬婿はそう判断せざるを得ない。


●参加者一覧

終夜・無月(ga3084
20歳・♂・AA
門鞍将司(ga4266
29歳・♂・ER
最上 憐 (gb0002
10歳・♀・PN
龍乃 沙夜(gc4699
25歳・♀・FC
立花 零次(gc6227
20歳・♂・AA
月見里 由香里(gc6651
22歳・♀・ER
鈴木庚一(gc7077
28歳・♂・SN
楊 雪花(gc7252
17歳・♀・HD

●リプレイ本文

 騒ぎに来てみれば、デカイ蒟蒻が3体。

(バグアも意味不明だな‥‥)

 目を焼く光線を頭上に感じ、鈴木庚一(gc7077)は紫煙を吐き出した。

「‥‥暑いからな」

 独り言に、楊 雪花(gc7252)が応じる。浜辺の岩陰をあさりながら。

「確かに暑いネ。脳が溶けそうヨ。それにしても花火の燃えカスはともかく、何でカンチ●ウが砂浜に落ちているのかナー? 注射器も落ちてるシ、日本の海の七不思議ヨ」

「‥‥あー‥‥それ以上のものは探さないほうがいいぞ‥‥」

「そうネ。コレ埋めておくヨ。にしても、今日はいつになくやる気だネ、レオポール!」

 そう、レオポールはいつになくやる気を出し、蒟蒻キメラに吠えていた。
 いささか離れてはいるが、とにかく逃げずに周囲をぐるぐるしている。
 そこに、音も気配もなく。

「御久し振りですよ‥‥」

 終夜・無月(ga3084)が出現。
 微笑み声掛ける姿にレオポールは、以前の依頼を思い起こす。
 彼から虎キメラを殴り殺した拳で、吹っ飛ばされた記憶を。
 パンダと加えて猛獣が2匹になった気分。
 ふさふさ茶色い尻尾が下を向いて曲がりそうだ。
 それに構わず無月は、彼の家族にご挨拶。

「皆さんも御機嫌よう‥‥皆元気にしていましたか?‥‥」

「あら、お久しぶりです。その節は有り難うございました」

「こんにちは。あの時はどうも」

 奥さんと子供から友好的な返事を受けたのみならず、舅からもなかなかよい反応。

「ふむ。おぬしなかなかやる男の様じゃのう。わしの娘もおぬしのような男を選んでおけばよかったんじゃが」

 こうまで言われて立場のないレオポール、ちょっといじける。
 そんな彼に声をかけるのは、門鞍将司(ga4266)。
 焼きモロコシを食べながら。

「おやぁ、レオポールさんじゃありませんかぁ。父の日以来ですねぇ」

「‥‥おお、呉服屋か。何か大勢で楽しそうだな」

「ええ、休日を利用し従業員の皆様に息抜きをとぉ。とんでもないことになりましたねぇ。海なのにぬりかべが出てくるのはどうしてでしょうねぇ?」

「知らねーよ‥‥」

「おや、ご気分でもお悪いのでぇ? とにかく家族サービスも大事ですがぁ、キメラ退治も大事ですよぉ。ぬりかべをやっつけちゃってぇ、お子さん達にカッコイイところを見せてあげましょうねぇ」

 肩を叩いて励ます将司に続き、モロコシを頬張りながら現れたのは、さらし姿の龍乃 沙夜(gc4699)。

「祭り事を邪魔するとは感心できんな‥‥キメラとはいえ、人の楽しみ事を邪魔するとは無粋だな‥‥早急に片付けさせてもらおうか‥‥」

 言うなり彼女はレオポールの襟毛を掴み、本日の敵に向かって歩きだした。
 犬的悲鳴が聞こえたが無視をする。

「さて‥‥行きましょうか‥‥」

 無月が手伝い、レオポールの背中を押す。
 雪花もそこに参加する。
 犬男をいじるのがすこぶる楽しいので。

「早速囮を頼むヨ、ぬりかべの前に立つだけの簡単なお仕事ネ。1メートル圏内に接近し今まで通り吠えるだけヨ」

「オレ潰されるよ!」

「犬は死しても毛皮を残すから無問題ネ。とにかく今日の私のバイト先だけは死守するのコトヨ!」



 今買ったカレーを飲み干し空をゴミ箱に捨てた最上 憐 (gb0002)は、暴れまわる蒟蒻に「ハーメルン」を向け、ホームラン宣言をする。

「‥‥ん。屋台を。守る為に。そして。かき氷の。為に。来た」

 かなりの大きさなのに食べられそうもないのが残念、とも思いながら。
 彼女の知り合いである立花 零次(gc6227)は、額の汗を濡れタオルで拭う。

「折角のバカンスを邪魔しようなんて、バグアは相変わらず無粋ですねぇ。今日を楽しみにしていた子供たちのためにも、早々に退場願いましょうか」

「そうですねぇ。とりあえず、近くの人達には避難してもらいましょう‥‥危ないですから逃げてください!」

 将司は覚醒し、周囲への呼びかけを始めた。
 現場の一般人は巨大蒟蒻から逃げるため群れをなし移動していたが、何しろ敵は4メートル。足腰の弱いお年寄りや子供など、追いつかれなくても倒壊攻撃に巻き込まれる可能性大だ。
 実際問題すでに巻き込まれ、怪我してる人もいる。
 そんなわけで彼らは、目下最も人間に接近し跳びはねている1体に狙いを定め、撃破に乗り出した。



 月見里 由香里(gc6651)は、アイスクリーム屋台を現在進行形で潰している1体に挑む。
 協力するのは庚一と、レオポールを送り出し戻ってきた無月。

「‥‥まったく、せっかくの海やいうんに無粋やね。とりあえずは早めに片付けて、遊ぶ事にしましょう」

 水着も持ってきているのだから、と彼女はおかんむりだ。
 この暑いのに女は元気だな。冬もだけど。年中元気だよな。
 春夏秋冬だらけムードを漂わせている庚一は、そう思う。元婚約者のことをちょいと重ねつつ。
 はぐれたのか小さな女の子が泣いてうろうろしていたので、面倒臭いが拾い上げる。
 しかし子供が苦手なため今いちコミュニケーションがとれず、泣き通される。
 近くに適当な預け場所がないかと探し、とりあえず似たようなのを拾って回っているパンダ舅に押し付けた。

「‥‥あー‥‥これもよろしく」



「ほれ、折角なんで働いてもらうぞ‥‥? 行け、レオ号!」

 普段なら逆走やむなしな敵だが、舅がいるのでそうもいかず。
 やけくそ気味なレオポールは、全力で駆け敵の3メートル圏内までは近づき、吠え立てた。
 のっぺらぼうであっても周囲の刺激を抜かりなく感知しているらしいキメラは、一気に彼の方へ迫ってくる。
 たちまち回れ右し海目がけて走るレオポール。
 4メートルの有効範囲に絶対入るまいと走る。
 ほっといたらそのまま海に飛び込み泳いで沖まで行ったことだろう。
 だがその前に、「フォルテピアノ」をかざした沙夜が立ちはだかる。
 彼女はぬりかべに正面から切りかかった。
 面積が幅広いため、狙いは外れなかったが、切り口は内側から出てきた液ですぐ塞がってしまう。

「む‥‥再生するのか‥‥?」

 とすると、どうやらこれ、スライムの一種らしい。

「‥‥ならば」

 ぬりかべは再度跳ね正面に攻撃を仕掛けようとした。
 しかし、その体は倒れなかった。
 背後(裏表つけにくいが)に回り込んでいた雪花が、壁の上部に鉤付きワイヤーを食い込ませ、後ろに引っ張っていたからである。

「AU−KVは漁業にも使えそうネ‥‥む、ぬりかべ中々頑張るのコトヨ」

 四角い体を曲げキメラは、己の意志に反した方向へ倒れるのを拒否する。
 沙夜はレオポールを連れ、協力してワイヤーを引っ張る。
 壁も粘ったが、もともと全体に対して横が薄すぎる作りで安定感を欠くこともあり、引き倒されてしまった。

「たーおれーるネー!」

 無論倒れてくる瞬間には、全員4メートル圏外まで離脱である。
 倒れたぬりかべは大急ぎで体勢を立て直そうとした。体を端からめくり返して。
 だが、残念ながら速度が遅すぎた。

「ジ・エンドだな」

「然りヨ。しかしこれ食べられそうな気するネ」

 沙夜の「フォルテピアノ」、雪花の「ティルフィング」と「ノコギリアックス」、それに多少はレオポールの剣により、分割されてしまう。
 作業の間、遠方から、もう2体が地響きを立て迫ってこようとしていたが、他の2班の手により中途で阻止され、連携攻撃をするまでには至らなかった。



「‥‥ん。行かせない」

 迫るぬりかべに言い放ち、憐は早速「ハーメルン」で一閃を加えた。
 牽制であるので、浅く切れただけだが、注意を引くには十分だった。
 壁は彼女目がけて突き進んで来る。
 相手の体の幅を考え、短い横方向に避けながら、海辺近くまで移動する。
 零次は彼女と共同歩調を取りつつ、ぬりかべの前面を走る。

「最上さんと、こんな風に一緒に戦うのは初めて、かな?」

「‥‥ん。そういえば。そうかも」

 駆けながら零次は、憐から離れる。「魔創の弓」での援護射撃をしやすいように。
 行く手に待ち構えていた将司は、「スパークマシンα」をかざす。
 憐に目がけて虹色の光が飛ぶ。
 漲る力を感じ、彼女はわざと速度を落とした。
 壁が勢いをつけて追う。
 背後から矢が放たれた。

「いきますよ!」

 弾頭矢は、壁に突き刺さる。
 もとより前のめりとなっていたこともあって、ぬりかべは急に倒れた。
 憐は横っとびに離脱したが、将司はそのまま下敷きになった。

「ぐえ!」

 滑り込んできたレオポールとともに。
 彼も一応救助に来たのだが、タイミングが合わなかったのである。

「おぬしまで一緒に潰れてどうする!」

「レオポール、そっから穴掘って出てくるネ!」

 飛び交う叱咤を横目に、憐が鎌を振りかざす。

「‥‥ん。準備は。おっけー? そろそろ。一気に。全力で。攻勢に出るよ」

 零次も武器を「国士無双」に持ち替え、起きようとしているぬりかべに、「ハーメルン」と合わせての攻撃を加えた。

「なかなか頑丈ですね。では、これで、いかがです、か!」

 刻んだ手ごたえは、やはり固めの蒟蒻といった感じ。
 無論通常の刃物では、傷もつけられないのだろうが。
 かくして下から2人が救出された。



 仲間の危機に向かおうとしたぬりかべは足止めされていた。無月の「デュランダル」による知覚攻撃により。

「俺の目標の上級クラスではこの手の攻撃が苦手になりますのでね‥‥この能力は今後の大きな力なのですよ‥‥」

 ぶるぶる心地悪そうに揺れるぬりかべは、止まっている。
 後裔から由香里は、「鎮魂」による援護をしつつ接近し、射程内に入るや呪歌を始めた。
 ぬりかべは揺れるのを止め、硬直した。
 倒れまではしてないが、これならまず当たらないということもあるまい。
 「アルファル」により射撃を続けていた庚一は、立て続けに弾頭矢を放つ。
 壁が前に傾く。
 無月は避けようとしない。
 そのまま動かず1秒後には、倒れた壁の真ん中に涼しい顔で立っていた。
 のしかかってくる相手の重みを利用して刃を突き刺し、左右に両断したのである。

「‥‥あー‥‥たいしたもんだな‥‥」

 こうされては復帰出来まい。
 思ったもののまだ若干ぴくぴくしているようなので、庚一は、ついでだからとあまさず手持ちの矢を使っておいた。
 他の2班が駆けつけてくる前にデカ蒟蒻は、角を揃えて細切れにされてしまう。
 ぬりかべは無事滅ぼされた。

「うーん‥‥やはり食べられそうなんだけどナ」

 雪花はその残骸をつつき、思案顔。
 憐は欠片を一つ試してみたが。

「‥‥ん。駄目。味が。全然。ない」

 今いちだったので、屋台に食欲を切り替える。
 お好み焼き店の暖簾を潜り、注文。

「‥‥ん。とりあえず。あるだけ。頂戴。代金は。UPCか。あそこの。犬じゃなくて。レオポールに。ツケておいて」

「おい止めろ! オレはお前の胃袋に対応するような金持ってきてねえんだよ!」



 混乱の収まった会場では、改めてかき氷早食い大会が催された。
 制限時間30分内にどれだけ多く食べられるかを競うのである。
 これには、憐、将司、沙夜、零次、無月、レオポールが参加していた。
 理由はそれぞれ違う。
 憐は食の追求、将司はなんとなく、沙夜は景品を目指して、零次は日本の風物詩だから、無月は己を鍛えるため、レオポールは‥‥無月に「子供達に良い所見せては?」と強制的に誘われたから。
 しかしなんにしても、頭が痛くなるのは皆一緒である。
 能力者といえども、そこはただの人間と変わらない。

「カキ氷を食べるとぉ、頭がキーンとなるのはどうしてでしょうねぇ?」

 練乳シロップがけを食べながら、額を押さえる将司。
 眉間に皺を寄せながら、零次は返答した。

「ああ、なんでも冷たさを痛さと脳が勘違いするからだそうですよ‥‥いっつ‥‥」

 沙夜は己が狙うものを口にし気を奮い立たせている。

「こ、国産高級バスタオル‥‥国産高級バスタオル‥‥」

 しかしズキズキ感にはかなり苦戦している模様。
 レオポールは鼻を鳴らし、もう早ギブアップしそうだ。
 でも会場で家族(舅含む)が見ているから逃げられない。
 そんな彼らを大きく引き離しているのは、無月と憐である。

「‥‥ん。かき氷。呑み易いね。微妙に。結構。頭が。キンキンするのが。堪らない」

「精神攻撃は気合と根性で跳ね除ける事が可能なのですよ‥‥」

「‥‥ん。おかわり。おかわり。どんどん。持って来て。急いで。全力で。早急にね」

 大会は事実上この2人の頂上決戦。
 双方に会場の人々から、応援の声がかけられている。

「‥‥憐はん、ファイトですえ!」

 黒のモノキニ姿となっている由香里は、憐側の応援だ。
 小さな子がけなげに頑張っていると見えるもので。
 彼女の隣には、ペーチャがいる。
 なぜかって、彼は女性が大好きだから。特に体つきのいい女性が。

「いや大したものですね、あのお嬢ちゃん。さすが大食い界の小さな巨人」

「巨人て‥‥なんどす?」

「ええ、今回に限らず至るところで武勇伝を記録してましてね、あの子。ところでアドレス交換しませんか?」

「あら、いやや、うち携帯忘れてきたんよ。堪忍なお兄さん」

「‥‥その手にあるのは?」

「‥‥あ、これな、おもちゃ携帯やの。頑張りなはれ、憐はん!」

 そんな会場から少し離れた海の家、庚一は普通にかき氷を食べていた。
 白い氷にメロンの蜜。無理をせずちびちびと。

「‥‥あー‥‥若いってのは、元気だねぇ‥‥」

 年寄りみたいな呟きの背後には、呼び込み声。

「おでん、モロコシ、焼きソバあるヨ!」

 鉄板の上で焼きそばを焼いている雪花の姿。

「大盛り焼きソバ1パック500C! お買い得ネ!」

(‥‥さっきは450Cとか言ってなかったか‥‥?)

 聞き違いだろうか。
 思っていたところに、レオポールの子供たちがやってきた。

「おでんあるかな」

「おお、レオン。あるとものコトヨ。暑いときに熱々とは通好みネ」

「‥‥パパお腹が痛くなって退場したんだよね」

「なるほど、お父さんというものは大変なものだネ。ささ、選ぶがいいヨ。どれも冷えたお腹に優しいネ」

「うん‥‥ねえ、これ本当に蒟蒻?」

「何言てるレオン、蒟蒻じゃなきゃ何ネ」

「さっきのキメラどこに行ったの」

「レオンは何シて遊びたいカ? お姉さん何でもOKヨ。日焼けどめの塗りあいことカ」

「‥‥話題を変えたね‥‥」

「双子ちゃんは砂のお城でも作るカ? 人生の虚しさを知ることが出来るヨ?」

「むなしさってなーに」

「なーに」

 今この状態のことだろうか。
 ぼんやり氷を食べながら、庚一は思った。


 ちなみに早食い優勝者は、無月。
 しかし憐は時間を過ぎても食べ続け、最終的に彼の食べた量をしのいだ。
 表彰こそされなかったが、大食いに関してだけは、彼女の勝ちである。