タイトル:ピンク城攻略戦!マスター:KINUTA

シナリオ形態: ショート
難易度: 易しい
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2010/10/27 14:03

●オープニング本文


 場所は日本。
 バグア軍に一部地域を占拠されているとはいえ、まだまだ世界においては人口も多いし、経済的余裕もある国。従って、娯楽産業も成り立つ。
 それを当て込んである外資の実業家が、中規模のレジャーランドを作った。
 国道も駅も近く、交通の便がいい。海にもほど近く、見晴らしもそこそこ。
 一歩中に入れば、どこかで見たような臭が漂うキャラクターや遊具ばかりだが、全ての料金が安く設定されている。
 似たようなものが手軽に楽しめるのであれば、特にクオリティを求めないという人は、世の中に少なくないのだ。
 そんなわけでここは、B級観光地としての地位を確立し、わりと繁華にやっている。


 広い廊下をドタドタと、背の低い太った青年が歩いてくる。大きなどら声を張り上げて。
「おいこらペーチャ!」
 なだめる社員たちの存在をものともせず、彼は突き当たりにあった社長室の扉を蹴り開けた。
 中に座っていたのは、相手と正反対に背が高くひょろりとした青年だ。
 顔もまた好対照。向こうが黒髪黒目の平べったいモンゴロイドなのに対し、こっちは金髪青眼で彫りの深いコーカソイド。
 しかし二人はこれで兄弟である。
「ミーチャか。どうしたの、急に来て、かっかしちゃって」
「したくもなる。お前のせいだぞ。先日俺が住んでるど田舎地区の高校生が団体でな、この妙なレジャーランドに遊びに来て、そんで無数の接触事故起こして‥‥」
「車の?」
「違うわ。異性間の接触事故だ。掠っただけならともかく、正面衝突レベルのが何件もあってな。で今、そのバカタレ本人どもはともかく、家同士がもめたおして、ちょっとした紛争状態だ。男親同士取っ組み合いだの殴り合いだの。俺はその処理に駆け回らんといかんのだ。後始末やる医者が、他にいねえから」
「またご苦労なことで。ほっときゃいいのにね。でも、それ本人同士の問題じゃないかな。ぼくに責任て、あるの?」
 とぼけた口ぶりのペーチャに、ミーチャは白い目を向ける。
「ある。お前の施設の作りが事故を誘発しとる。あの城と見せかけて裏手にあるのは何だ」
「ああ、まあそりゃあ‥‥ラブを冠するホテルだよ。でもあれ、うちが来る前からあったみたいだしさ、ぼくが経営してるんじゃないしさ。それを問題にされても。向こうに言うべきじゃないかなあ」
「ほう。そんならどうしてそことの境がないのか知りたいな俺は」
 ペーチャは首を横に向け口笛を吹いた。しかしごまかし切れないと悟り口を割った。
「いやね、提携してくれたら売上をいくらかキックバックしてくれるっていうからさ」
「金のためなら結構なんでもするなお前は、昔から」
「ミーチャは金にならないことばかりしてるよね、昔から。でもやっぱり、ぼくに文句を言うのは違うと思うんだよね。だって、行くも行かないも当人の意思でしょう」
「そうとばかりも言えなさそうなんだがなペーチャ。見てたらな、あそこ通りがかった奴ら、何か急に気分がおかしくなるみたいだぜ。特に男が」
「気のせいじゃないの」
「違うね。俺もおかしくなりかけたからな。なんというか、近くに女がいたら誰でもいいから口説きそうだった。自分より背が低くてもいいから口説きそうだった」
 ペーチャは目をぱちくりさせて、少し考えそれから言った。
「なるほど、ミーチャがそんなになるっていうなら、これはおかしいね」
「だろう、お前ならともかくも」


 変な電波的装置を前に、変な科学者はご満悦だった。
「ふふふ‥‥ここはまさに格好の実験場だよキミ。おかげで毎日多くのデータが取れる。外部から人間の脳をどのように操るか−−私の長年の研究課題だ。それが今、今ようやく実を結ぼうとしている」
 さえない助手が感嘆しながらその隣で手もみをする。
「全くです先生。これを量産化すれば世間は混乱のちまた、バグア軍からおほめの言葉とお金とをいただけるでしょう。素晴らしいものです」
「そうだろうそうだろう。もっと言ってくれたまえ。まあしかし、まだ改良の余地がある。この電波は男にばかり効くようなのでな。女の場合も同じくらい興奮のるつぼに落とさなければ片手落ちというものだ‥‥考えてみたまえ、そうなれば誰しも戦うどころではなくなってしまうのだよ」
「おお、それが出来たらこの世はまるで夢のようですね先生。バグアの勝利間違いなしです。しかし、どうしましょう。敵がここを嗅ぎ付けたら」
「何、心配いらん。この装置は遠隔操作出来るのでな。むしろ来るなら来てほしいところだ。また新しいデータがとれるだろうしな‥‥むふふふふふ、むはははははは」
「全くです先生。うははははははは」
 妙な高揚感を漂わせた笑い声が、ピンク色したお城の天辺から青空へ向けて、長々と響き渡る。

●参加者一覧

砕牙 九郎(ga7366
21歳・♂・AA
椎野 ひかり(gb2026
17歳・♀・HD
諌山美雲(gb5758
21歳・♀・ER
クレミア・ストレイカー(gb7450
27歳・♀・JG
リュティア・アマリリス(gc0778
22歳・♀・FC
南 星華(gc4044
29歳・♀・FC
滝沢タキトゥス(gc4659
23歳・♂・GD
ザイン・ハイルング(gc4957
23歳・♂・ST

●リプレイ本文

 晴天の下、任務遂行の目標である建築物が皆の目の前にそびえ立っていた。そこは諌山美雲(gb5758)による、以下の呟き通りの場所である。

「このホテルって、もしかしてラブ‥‥」

 彼女の隣では、椎野 ひかり(gb2026)が、のどかにそんな感想を漏らす。

「まあ〜それにしてもかわいいお城ですこと〜」

「確かに‥‥外観はね‥‥」

 クレミア・ストレイカー(gb7450)も異論はない。この上から下までパステルな桃色に包まれ、お花畑で周囲を縁取られている存在を、かわいいと言わずしてなんとしよう。
 彼女らの近くでは、砕牙 九郎(ga7366)、ザイン・ハイルング(gc4957)そして滝沢タキトゥス(gc4659)といった男共が固まって、自分たちの明日のために、けして本能にだけは流されまいと誓い合っている。
 そんな彼らを横目に、リュティア・アマリリス(gc0778)はもじもじと建物の作りを確かめていた。三階建であり、屋上には塔がある。
 とりあえずグループで別れて捜索するのが効率良さそうだ。
 そんなことを思っていると、隣にいた南 星華(gc4044)が、あら、と声を上げた。
 太って背の低い青年がやってきたのだ。これは彼女が以前、任務の際関わったことがある人物なのである。

「あら、ミーチャ。ちょっとだけ久しぶりね」

「よう。星華も元気そうでなによりだ。今回は俺が依頼したんじゃないが、よろしく頼む」
 


 砕牙、クレミア、星華が先陣を切る。
 お花畑のエリアに入った段階から砕牙は、自分がクレミアや星華のお尻や胸ばかりに視線を行かせているのに気づいた。
 いかん。これはいかん。
 彼は深呼吸をし瞳を閉じ、平静になる呪文を唱えた。

「コレは装置のせいコレハ装置ノセイコレハ装置ノセイ」

 だもので、星華の呼びかけに気づくのが遅れた。

「あっ、砕牙くん後ろ」

 はっとした瞬間、かなりの痛さが頭に食い込んでくる。
 一秒後に理解したのは、背中に花を咲かせた大型犬のキメラが、がっちり自分の後頭部に食いついていること。
 その他同種類のキメラが、潜んでいた花畑から飛び出してくる。

「変わった趣向ね、このキメラ」

 言いながら星華は、飛びかかってきた一匹をさっと二枚におろしてしまった。

「そうですね。まあしかし、所詮人造モンスターですから。邪魔よ!」

 クレミアはハンドガンで、飛びかかってこない先から次々撃ち倒して行く。

「よし、目が覚めたぞ俺、負けるな俺!」

 砕牙は頭に食いつかれたまま、身一つでキメラを蹴り倒した際、カチッと何かを踏んだ。

 ボガン。

 軽規模の爆発に巻き込まれキメラとともに吹っ飛ぶ彼を見て、クレミアが一言。

「あら、地雷も埋めてあったんですか。足元気をつけないといけませんね」

その隙に他グループが、内部に突入していく。




 ひかり、美雲、タキトゥスは一階から二階担当である。
 屋内のトラップは難易度が高いものではなかったので、さくさく解除出来た。
 もともと宿泊所として設定しているだけに、内部にはそう無茶な仕掛けも出来なかったと見える。

「中もかわいいですね〜全部お花模様の壁紙ですよ〜こういった特殊なホテルには泊まった事無いですから〜興味ありますわ〜」

 おっとり爆弾発言をしているひかりは、前を歩いているタキトゥスがふぐっと変な音を発したのを聞きつけた。

「あら〜どうしたんですかタキトゥスさんご〜気分でも〜?」

「い、いえ、なんてことないんですよハハハハハ」

 ウソ臭い作り笑いをする彼の胸中が、言葉通りであるわけがない。
 彼は他の二人と同じく、万一何かあったら遠慮なく押さえ込んでくれと女性らに公言していたのであるが、ここに至って早くも自制心がぐらついてきた。

(「くっ、駄目だ‥‥妙にムラムラする! 落ち着け自分、ここにいるのは別れた彼女では断じて無い!!」)

「どうしたのでしょうね〜止まってしまわれましたわ、タキトゥス様〜」

「電波の影響でしょうか。ところでひかりさんって、いいなぁ。背も高いし、胸も大きいし、ステキだなぁ」

「まあ美雲さんったら、お世辞がうまいですね〜照れちゃいます〜」

「ううん、私割と本気なんですよ」

 美雲がぐいぐい寄ってくるので、ひかりは押される形で廊下の壁に体を寄せることとなった。
 同時にガタンと、壁の中から音がした。

「あの〜あまりくっつかれると動きにくいのですが〜なんだか発動したみたいですよ〜」

 確かになんだかが発動した。彼女らの目の前の床がぱかりと開き、そこからキメラ犬がせりあがってきたのである。外のと違い、花の咲いていないのが五匹。
 皆で展開するには場が狭い。
 と言うわけで、美雲が一計を案じた。精神不安定なタキトゥスに近づき、照れ顔で囁く。

「タキトゥスさんのステキなところを見てみたいな‥‥」

 血迷いかけている彼は一人矢面に立った。
 そしてキメラ犬と共に、後方支援である流れ矢や流れ弾を浴び倒れることになった。



 屋上そして三階エリアは、ザインとリュティアの担当である。

「全部で四匹。多からず少なからずでしょうかね」

 廊下に倒した犬キメラの数を数えて、リュティアは彼とともに、まず屋上に進んだ。そして、ひとまず給水塔にからみついていた装置らしきものを確認してみた。
 しかしこれ、撃ってみると中は空っぽ。ダミーだったのである。
 であればということで、三階の部屋を一つずつ調べ、問題なければすぐ下で合流するという運びになった。
 が、両者ともこんな場所に足を踏み入れるのが初めてなので、内装のどれがあやしいのかよく分からない。

「ザイン様、こういうお部屋にはああいう照明器具があるのが普通なのでしょうか」

 天井のミラーボールを見上げている彼女の目は、潤んでいる。
 うっすら唇を開けて、首を少し傾げて、何やら誘っているようではあるまいか。
 いやいや、誘っているんじゃないのこれ大体こんな立派なダブルベッドを前に女の子と二人なにが悲しくて仕事なぞしてるんだ俺バッカじゃねえの‥‥。

「‥‥はっ! い、いや、どうだか俺にはよく分からないぞっと。でもきっと多分こんなものなんじゃないかなと思うぞっと」

 けなげに踏みとどまる彼の理性は、リュティアの次の行動によってたちまち崖っぷちまで追いやられた。彼女は襟元をゆるめつつ、かような発言を発してきたのだ。

「そうですか‥‥それはそれとして、この建物の中、少し暑くありませんか?」

「ふんぬ!」

 ザインが秒速で部屋の隅に走り込み、額を激しく打ち付ける。

「どうされたんですか、ザイン様」

「いや、裏側に空洞がないかどうか調べようと思ったんだぞっ」

 うなり声を上げているのは打った痛みだけでも無いが、とにかく彼は無になろうと努め頭をぶつけ続ける。
 心配になってきたリュティアが側によってきた。

「あの、大丈夫ですか?」

 弾みというには若干不自然な気がしなくもない形で、膨よかな胸がザインの二の腕に当たる。
 彼の理性は、その瞬間崖から落ちた。

「な〜あ、歩きっぱなしで疲れたっしょ? 休んでいかね? 折角二人きりでこんなとこにいるわけだしよ、何もしないってのもったいないっしょ?」

 口調までいきなり変わった。どこぞのチャラ男のように。



 キメラを殲滅し地雷を(砕牙が踏みまくったことで)撤去し、クレミアらはようやく花園の中に隠れていた鉄の扉を見つけ、鍵を破壊して開いた。

「あやしいわ。もしかすると当たりかも」

「そうですね。じゃ砕牙さん、先に入って行ってもらえますか」

 クレミアがこう言った途端、全身煤の塊となっていた砕牙が素っ頓狂な声を上げた。

「ハイッ、行かせていただきますチャイナさん」

「‥‥なんて?」

 怪訝そうに聞き返され、我に返る彼は、すでに視覚そのものも危うくなっていた。今し方はっきりと、クレミアがチャイナ姿に、星華がバニー姿に見えていたのである。


「いえっ、なんでもないですよ」

 ここまで鮮明な妄想があるだろうか。もうそろそろ限界だ。
 しかし本能に流されたら明日の日は拝めないだろうから、男は力一杯抗った。

(「思い出せ俺、某般若顔の妄想シスターを、そして某PAD長の身の毛もよだつおしおきを」)

 
 背筋を寒くさせどうにか呼吸を整え地下室に続く階段を降りて行く。
 しかし入って一分もしないうちいきなり壁に連続で頭突きをし、それでも足りず地面に頭突きした。
 彼の頭から赤い噴水が噴き出す。
 能力者でなければ死んでいるのではなかろうか。

「‥‥どうやら彼の様子からするに、目指す装置は確実にこの先です」

「そうね。皆に連絡しておくわ」

 クレミアの判断を受け、星華がトランシーバーを取ったときである。耐えに耐えていた砕牙の自制心がぷちんと切れた。
 あまりにも電波に近づき過ぎたのだ。
 彼はがばっと起き上がり、後先考えず叫んだ。

「もうどっちでもいいからやらせろおおお!」

 そして手近に居た方のエミリアに掴みかかってきた。相当な力で。
 上着が破れる。ブラの紐が剥き出しになる。
 しかし彼女は反射的に相手の股間に蹴りを入れ、それ以上の狼藉を防いだ。
 直後一時停止した男の後ろに回り込み、四肢でがっちり締め上げる。怒りを含ませた冷静さで。

「コブラツイストには別の呼び方が二つあるのをご存じ?」



「あの〜美雲さん〜少し離れていただけませんでしょうか〜」

 と言っても、美雲にはあんまり聞こえている様子がない。ひかりにぺったりくっついて、そのふくよかな胸を触り倒している。
 妙齢の娘二人がこの有り様。しかも一人は妊婦。
 かなりあやしい絵面だ。素面で見ても殿方には目の毒であるに違いない。
 従って、素面では全くないタキトゥスがキメラとともにくらったダメージを忘れ、勢いつけて跳び起きてくるのも当然のことと言える。
 その息は荒く、据わった目がピンク色になっている。彼はひかりの肩をつかみ、さわやかに持ちかけてきた。

「自分は今猛烈に性欲を持て余している。やらないか?」

「は? い、いえ〜ちょっとそのようなことは〜あたしはご辞退申し上げたいかと〜」

「いやいや遠慮せずに少しくらいどうせ減るものじゃなし」

「だから〜辞めてくださいですわ〜!」

 別の意味で覚醒しているタキトゥスには、以上のように言っても伝わらない。
 彼の手は少女の制服を裂いた。
 ひかりあやうし。
 しかし、ここでついに彼女の眠れるヤンキー魂が爆発する。

「てっめー、やめろって言ってるだろうがこのど変態!!!」

 ぽわぽわした表情が一変し、悪鬼羅刹のごとき勢いで美雲をふりほどき、タキトゥスに向けて顎が吹っ飛ぶほどの平手打ちをくらわした。
 それを受けたタキトゥスは。

「アァーッ! 自分はこの痛みを‥‥ずっと待ち望んでいたのだ!!」

 ひるむどころか、何か喜んでいるように聞こえなくもない奇声を発する。

「きゃっ、荒々しくてカッコいいです〜」

 なぜか美雲までこんなことを口走りだすが、ひかりは断然危険度の高い方を処理した。
 男の股間に蹴りを入れ、勢いでトラップの穴に突き落としてから元に戻る。

「‥‥ってあら、ごめんなさいですわ〜! 悪気はございませんのよ〜」

 返事がないが、多分無問題。
 独り決めする彼女の元に、襟を乱したリュティアが合流してきた。

「あら〜どうされたんですリュティアさん〜ザインさんは〜」

「ええ、あの‥‥上でちょっと乱心されましてそれがまたその、しつこくて‥‥私ついはずみであの方の大事なところに刹那を使ってしまったのですが‥‥大丈夫でしょうかねえ? 動かなくなってしまわれたのですけれど」

 ひかりは少し考え、そしてにっこりした。

「心配無用ですわ〜男の子ですもの〜少々のことは耐えられますわよ〜」

「わあ、情け無用ねひかりさん。そんなところも素敵だわ〜」

 美雲が相変わらずやや変だ。電波の影響は衰えていないらしい。
 どうしたものか。
 悩ましいところ、無線が入ってきた。クレミアからである。受けたのはリュティアだ。

「あ。もしもし、美雲さんはいますか? 装置らしきものが見つかったから、電磁ロックを解除してもらいたいのですけど」

「あ、そうなのですか。よかった。はい、美雲様ならここに」

 言いかけたとき、受信機から大きな物音と話し声とが飛び込んできた。

「砕牙くん知っているかしら。さかりのついた犬は去勢するのがいいらしいわよ」

「ひいいい、やめて女王様、踏み付けないで切らないでーっ!」

 間違いなく星華と砕牙の声である。
 少し間を置いて、クレミアが続けた。

「‥‥とにかく早く来ていただけるかしら。星華さんも少しアレになってて、砕牙さんの象徴がなくなってしまわないとも限らない状況なのよ」

 それは結構大変。
 ということで、ひかりはくっついている美雲を引きずり、リュティアはそれに続き、ばたばた屋外へ出て行った。



 呪縛から解き放たれた後は男性陣平謝りである。まあこうなったら、痛む股間を抱えての土下座しかないというものだ。チクチクやられるのも仕方ない。

「いいですわよ〜悪気はなかったんですし〜タキトゥスさんが意外にも〜特殊な趣味をお持ちだったことに〜ちょっとだけびっくりしただけですもの〜」

「ふ〜ん。そっちはそんな事があったの?」

「ありましたです〜クレミアさんのところはどうでした〜?」

 一人深くうなだれて落ち込んでいるのは美雲だ。電波の支配下にあった際の己の所業を顧みて、自己嫌悪のループにはまっているところなのである。

「あれは私じゃない、私じゃない、私じゃない、私じゃない‥‥」

 と鬼気迫るようにブツブツ呟き続けている。
 そのへん、タキトゥスとあんまり変わらない。彼も己の失態から来る失望で、ただ今いわんかたなくブルーになっているのだ。

「こんなの‥‥こんなの嘘だ‥‥」

 残りの星華とリュティアは、自分たちも少しおかしくなっていたとようやく自覚出来たので、気恥ずかしい沈黙の内にある。とりあえず、ザインが前以て皆に配っていた弁当をもくもくと食べるばかり。
 そこへカサトキン兄弟がやってきた。

「おう、ご苦労さん。野郎たちも潰されなくて何よりだったな」

 ミーチャは人数分お茶を持ってきたが、ペーチャは寸志を持ってきた。
 しかし寸志の中身はお金ではなく、レジャーランドの割引券だった。
 彼はそれについて、にこにこと言う。

「よければまた遊びに来てくださいね。あのホテルも折角だから、うちが買い取って引き継ぐことにしますんで、ご縁があるならそっちもどうぞご利用を」

 縁はもうありたくないんだが。
 そんなことを誰もが思った、レジャーランドの正午である。