タイトル:【JTFM】GarnetElegy1マスター:錦西

シナリオ形態: ショート
難易度: 難しい
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2010/04/30 08:08

●オープニング本文


 その薄暗い部屋はメデジン基地の水槽の部屋とほぼ同じ作りになっていた。
 机も本棚も照明の位置も、そして淡い暗褐色の照明に照らされた水槽も‥。
 ごぼり、と音をたてて新たな水槽に主が招かれる。
 古代の生き物に似た生物達が泳ぐなか、巨大な黒いオウムガイが悠然と姿を現した。
 どこかを見ているようでどこも見ていないようにも見える巨大な眼が、
 狭く暗い部屋を睥睨する。
 部屋の中央にはいつの間にか蝿の外見と6本腕のベスバズルが静かに立っていた。
「やれやれ。水の外は大儀だな」
 黒いオウムガイの姿をしたそれは頭に響くような声で喋る。
 その声はコロンビア副指令のティルダナのものだった。
「水の外を歩きまわれるヨリシロを探さないのですか?」
「私はね、水が好きなんだよ。泳ぎの得意なヨリシロでも良いが‥
 あの鯨という生き物を乗っ取っても面白いかもしれんな」
 横滑りするように水槽の中を泳ぎながら、楽しそうに笑う。
 ひとしきり愉快そうに水槽の中を泳ぎまわると、
 室内の前面まで遊泳し、ピタリと動きを止めた。
「それで‥首尾はどうかな?」
「順調です」
「そうか。引き続き、工作は続けろ」
 それだけ聞けば十分とばかりに、ティルダナは部屋の別の側面に移動する。
 いつの間にかベスバズルは姿を消していた。
「私は、この玩具で遊ぶとしよう」
 ティルダナは水槽から吹き抜けになった格納庫を見下ろす。
 そこには生物的な外装を持つ、黒い悪魔を思わせるKVが一体。
 強い照明に照らされて妖しく輝いていた。




 コロンビア、メデジン基地跡はUPCの仮設基地として再利用されていた。
 何も無い土地だが立地条件が良く、集合した部隊の設備も使えるため、
 コロンビアの治安維持に無くてはならない。
 しばらく晴天が続き、日差しも暖かい。
 ソフィア・バンデラス少尉は窓の外を見る。
 激戦の記憶も新しいメデジン基地では、未だに地下の調査も行われている。
 戦争の匂いがしながらも平和な風景だった。
「‥もう、問題ないようですね」
 医者がソフィアの腕から包帯を取る。
 わずかに傷跡が残ったが、ほとんど元通りになっている。
「‥‥すまないね。私が至らないばかりに‥」
 休憩がてらと医務室まで来ていた大佐が申し訳なさそうに嘆息する。
「そんなことはありません。‥前に出たいと無茶を言った私の責任です」
 ソフィアは、これまで多くの人を魅了してきた柔らかい笑顔で大佐を励ました。

 メデジン攻略戦の後半、数日に及んだ敵エース追撃戦の様相は、
 まさに地獄と言って差し支えなかった。
 一度は逃げた敵エース達は追撃を振り切るために分散し、
 神出鬼没にUPC軍を逆襲した。
 集団でなら対処のしようもある相手に一撃離脱を繰り返され、
 一番酷いときはコルテス大佐の居る本部近くの輸送部隊まで襲われた。
 中には負傷兵を抱えた医療専門の部隊もあり、被害は甚大だった。
 ソフィアはその時、捜索の為に鉄木中尉と分かれて一部隊を引率していたが、
 六本腕のゴーレムに奇襲されて引率していた部隊は全滅。
 ソフィアも一時は行方不明となっており、生還さえも絶望視されていた。
 ソフィアの生存が確認されたのは1週間後、
 周辺の戦闘が一段落して、ばらばらになった部隊が再集結した頃だった。
「サビーノ先生、申し訳ないが‥」
「わかっています。部屋はどうぞ自由に使ってください」
 ソフィアの主治医は頷くと、二人を残したまま診察室を後にした。
 入れ替わりに本城、一之瀬、フェリックスが部屋に入ってくる。
「‥ソフィア准尉、例の件の調査はどうなっているかな?」
「‥芳しい結果ではありません」
 ソフィアは悲しい表情で俯いた。
 
 メデジン攻略戦以降、コロンビア各地の部隊から
 情報漏洩の可能性があるとの報告が相次いだ。
 当初こそ局地的なものだろうと考えていた諜報部だったが、
 その報告例があまりにも多く、遂にはコルテス大佐から直接調査命令が出ることになった。
 裏切り者を探す、というデリケートな問題のため、
 調査メンバーには勲功多く大佐からも信任厚い人物のみが集められた。
 外交分野での活躍目覚ましいソフィア准尉、
 ボリビアでの要人護衛にユダ発見と功績あるフェリックス大尉、
 メデジン基地で傭兵を率いて敵エースを撃破した一之瀬大尉、
 そしてオブザーバーとして諜報員の本城恭香女史が集められた。
「バグアには洗脳の技術があります。
 追撃戦の混乱の中で何人もの人間が、バグアの手先になったのでしょう」
 ソフィアは無事に返って来た。
 それは主治医が保証している。
 だが、ほかの人間はそうは行かなかった。
 ほんの少し前にも、強硬に診察を拒む人間を連れて行ったところ、
 バグアの強化を受けていたことが判明し、大きな騒動ともなった。
 その人物は最後自爆し、何も情報は得られなかった。
「これが私の調べた候補者リストです」
 ソフィアは仲間を疑った結論となる資料を他のメンバーに配布した。
「1人あたりの割り当てもバカにならんな」
「私達だけでは手が足りないと思い、一部の傭兵にも依頼する予定です」
「へえ‥」
 きびきび動くソフィアを、本城は興味深く見ていた。
「‥何か?」
「貴方はもっと見た目だけの人かと思ったわ。意外に有能なのね」
「‥ありがとうございます」
 覗き込むその眼に、ソフィアは一抹の恐怖を覚えた。
 理由はわからない。
「人間、何が得意かわからんということだな」
 嬉しそうに言って煙草をつけた大佐は、すぐにその火を携帯灰皿に入れてもみ消した。
「どうかしましたか?」
「いや、我が軍のヒロインである君に煙草の匂いは良くないかと思ってね」
「‥お気遣いありがとうございます。でも、大丈夫です。
 今は便利な消臭剤もありますから、自由にしてください」
「それ以前に、ここは医務室だ。サビーノ先生に怒鳴られるぞ」
 あきれたようにフェリックスが言うと、場に小さな笑いが満ちた。




「以上が今回の依頼の経緯になります。‥これは部外秘ですので注意してください。
 今回、あなた方に調査していただきたいのはこの人物です」
 別の名目で集められた傭兵達を前にソフィアは淀みなく、言葉を繋げた。
「アルバール・スピノラ大尉。歩兵中隊の隊長を務めています。
 部下思いで家族思いの実直な方です」
 薄暗い部屋の中央、プロジェクターには中年の男性の写真が映し出される。
「彼は最近、不審な行動が目立ちます。
 夜、自身の割り当ての宿舎に居なかったり、
 関係ない部署で姿が見られたりしています
 ‥部下の方との会話も減り、奥さんへの手紙も書かないようになりました。
 彼の身辺を徹底的に調査してください。
 方法は任せますが、くれぐれも対象を刺激しないようにお願いします」
 ソフィアは最後まで喋ると、深々と頭を下げた。 

●参加者一覧

須佐 武流(ga1461
20歳・♂・PN
終夜・無月(ga3084
20歳・♂・AA
アキ・ミスティリア(gb1811
27歳・♂・SN
シン・ブラウ・シュッツ(gb2155
23歳・♂・ER
キリル・シューキン(gb2765
20歳・♂・JG
橘川 海(gb4179
18歳・♀・HD
フィルト=リンク(gb5706
23歳・♀・HD
ジャック・ジェリア(gc0672
25歳・♂・GD

●リプレイ本文

 秘密裏の召集から2日後。
 傭兵達は各部署に臨時の役割が与えられ、それぞれ情報収集に散って行った。
 ある者は直接的な尾行、ある者は聞き込みと、
 各自の得意分野や適正に合わせて各自で軍と言う集団に紛れ込む。
 そのうち1人は食堂に現れた。
 橘川 海(gb4179)が新顔であることは国籍の違いで目立ったため、
 兵士達にはすぐにわかった。
「お嬢ちゃん、見ない顔だね?」
 気さくそうな、ついでにプレイボーイだな、と一目でわかる男が橘川に声を掛ける。
 軍人らしく規律正しい格好ときびきびした動作の人物だったが、
 個人の性格は兵士でなかった頃と変わっていないようだ。
「はい。初めまして。ここでしばらく働くことになりました。
 よろしくお願いしますね」
 橘川は満面の笑顔でトレーにテキパキと食事を盛る。
 並んでいる以上、食事を盛られたら前に進まないといけない。
 優男は橘川の手際を無言のスルーかただの天然かしばし悩んで、
「おう、よろしくな」とだけ行って前に進んだ。
 橘川はその僅かな間があったことに首を傾げる。
 男の察したとおりだった。

 そんなやり取りのあった場所から10m離れた位置。
 特殊作戦軍少尉の階級証をつけたジャック・ジェリア(gc0672)の姿があった。
「最近、上から優秀な人間の取り上げとかで、評価についての報告がうるさくて。
 この辺が話に聞くと名前が挙がりそうなメンバーらしいんだが、
 本人たちに聞く前に周囲の正確な評判を知りたくてね」
 尤もらしい嘘と高級煙草を餌に兵隊達に溶け込んでいた。
 評価といいながらも雑談交じりの会話で噂を集めるに留まり、
 概ね兵士達にも好意的に受け入れられていた。
「そういえばさ」
 ジャックはアルバール大尉の噂を一通り聞くと顔を輪の中央に寄せた。
「ソフィア准尉って良い女だよな? どんな人なんだ?」
「え、何? あんたも狙ってるの?」
 警戒されてしまった。違う意味で。
「まあそんなところ」
「へえ‥。ま、諦めるんだな。コルテス大佐の愛人って話が大本命だ。
 対抗はボリビアから亡命してきたっていう中尉殿。
 大穴でメルス・メスのリカルド・マトゥラーナって噂もあるが、これはほとんどガセだな」
 他の兵士達に気持ちよく喋ってもらいながら、情報を整理する。
 それらしいアルバール大尉が裏切ったという明確な情報はなく、
 素振りらしいものや不審な雰囲気もない。
 ソフィアが疑うに至った情報まで辿り着けないでいた。
 ジャックはふと視線を横に移す。
 後は彼の直接の部下達には話を聞かねばならないだろう。
「それにしても、あの若さでコルテス大佐の補佐官か。才色兼備ってやつだな」
「ああ。ミスボリビアってだけのお飾りかと思ったら、全然違ったな。
 ボリビアから来る時に、苦労したんだろうなぁ‥」
 ジャックは話の輪に戻る。
 そして、今回の依頼主がソフィアとは言わなかった。



 傭兵達がそれぞれ思い思いに散らばった後。
 終夜・無月(ga3084)は1人、ソフィア准尉の私室を訪れていた。
「本城女史のことについて、聞きたいことがあります」
「本城さん、ですか?」
「はい。いえ‥少々気になりましてね‥」
 仕事の説明をした際、ソフィアが本城の名前を出した時の僅かな違和感。
 親しみよりも恐怖に近い何かを終夜は嗅ぎ取っていた。
「先ずは部外から潰すのは‥この手の調査の基礎ですから‥
 何も無ければ其れで良いんです‥」
 終夜は机越しでソフィアに顔を近づけ囁く。
「女史の雇われた経緯、人柄、雇われる以前の事情。
 あとは貴方の感じたどんな些細なことでも良いので、教えてもらえませんか?」
「‥わかりました」
 ソフィアは少しずつ、言葉を選びながら話し始めた。
 本城恭香の過去は良くわかっていない。
 以前は東京で探偵業を営んでいたらしいが、
 東京がバグアの攻略されて詳細な資料は失われたとされている。
 以後再び確認されるのは、グリフィス・司馬に関連した事件からだった。
 報告書「【白】エスピオナージ」に詳しいがそれ以上のことは結局、諜報部も掴んでいない。
「‥何もかも見透かされたような、そんな不安を感じました」
「‥本城女史は今どこに?」
「わかりません。彼女の情報収集の遣り方は誰も知らないんです」
 それは彼女が競合地区のみならずバグア支配域にも頻繁に出入りするからでもある。
 能力者でもない彼女が身を守るためには、情報を可能な限り隠蔽するしかない。
「あの人の信頼は、あの人の虚無的な性格でしか保証されていません。
 ですがその危険を含んでも、彼女を雇う価値はあります」
「なぜ?」
「彼女の情報が本物だからです」
 選べる選択肢が常に最良の物ばかりとは限らない。
 それは人であっても同じだった。



「‥とまあ、そういう内容だった」
「へえ」
 終夜の調査報告をシン・ブラウ・シュッツ(gb2155)は気の無い返事で締めた。
 シンの役割は、尾行班全体のバックアップだ。
 高所に陣取ってアルバール大尉の監視を続けている。
 双眼鏡で見つめる先には大尉本人と、尾行中のキリル・シューキン(gb2765)の姿がある。
「‥‥そちらから周囲に人間は確認できるか?」
 キリルから通信が入る。
 シンは全体を見渡して「問題ない」とだけ告げた。
 キリルは慎重に、且つ大胆に歩みを進めていく。
「妙ですね」
 キリルと交代して戻ってきたアキ・ミスティリア(gb1811)が小さく呟いた。
「‥幾らなんでも無用心すぎると思いませんか?」
「罠かもしれませんね」
 シンは同じ疑念を口にする。
 アキは無言で頷いた。
 アルバール大尉は今のところ、不審な行動はしていても、
 決定的に何か証拠となるような行動はしていなかった。
 何かを確かめるように歩いてはいるが「散歩だった」と言われたら言い逃れできる程度だ。
 しかしその不審な行動を晒しているのはおかしい。
「僕たち自身が罠にかかった魚の可能性もあるということです。
 これに力を割きすぎてもいけませんが、
 他のスパイがいるかいないかがわかるだけでも見返りはありますから」
「そうですね」
 どのみちこのまま監視を続ける他に方法は無い。
「それでもこのポジションは悪くない」
「‥どうしてですか?」
 彼からすれば、調査をしている人物ですら怪しい。
 いや、疑って掛かるべき対象だ。
「こういう釣りは僕の得意分野だからさ」
 その疑問を共有はしなかった。



 傭兵達は軍のように統制された組織ではない。
 軍人上がりも少なくは無いが、元々民間人だった者がほとんどだ。
 それゆえにその価値観は様々で、奇行に走る人間も非常に多い。
 軍に潜入したフィルト=リンク(gb5706)はその典型例として認識された。
 全て彼女の狙い通りである
「AUKVって、着るだけでかなり疲れるって聞いたけど‥」
「戦闘終わってもメット外さないのか‥」
 そんな呟きが時折聞こえてくる。
(「作戦成功、ですね」)
 悪目立ちしたフィルトは他のメンバーの存在感を霞ませることに成功した。
 須佐 武流(ga1461)、終夜らは大尉の部隊と共にキメラ討伐などに出る場面もあったが、
 彼女の存在もあって不審にも思われなかった。
 須佐は主に部隊の兵士達と、終夜は大胆にもアルバール大尉本人と楽しく談笑する。
 部隊に接触して得た情報は、最初にソフィア准尉から貰った情報のままだった。
 部下思いで家族思いで厳しく優しく、非の打ち所の無い軍人。
 それでも、違和感を感じないわけではなかった。
 フィルトが家族のことを聞くと、ほんの一瞬返答の言葉に暗い影が差した。
(「やっぱり人質に捕られて‥?」)
 聞き流したふりをしてフィルトは会話に相槌を打つ。
 すると終夜が話題を変えて軍事の方面にもっていく。
 会話から外れたフィルトはそっと会話から離れて移動する。
 もっと確信に近い情報が必要だ。
 フィルトは監視を続けているシン達に連絡を取った。



 夕焼け頃、プレイボーイはまた食堂現れた。
 仲間と煙草をかけてカードに興じている。
「あ! もうっ。また油を売りに来たんですかっ。
 隊長さんに怒られても知りませんよっ?」
 橘川はそれを目ざとく見つけて近寄って行く。
 この光景は既に5日目だった。
「‥‥怒られたりしねーよ」
 プレイボーイな彼を含め、ほとんどのメンバーの手が止まる。
 賭けをして楽しんでいたのが嘘のように静まり返っていた。
 寂しそうに
 彼らは自由を満喫しているわけではなかった。
 ただ時間が過ぎるのをじっと耐えながら、待っていたのだ。
 自分の主人が骨を投げる時を、ずっと。
 だから食堂で務める職員も止めなかった。
「‥どうか‥したんですか?」
「あんた、このお仕事は何時までだ?」
 話したがっている気配を感じた橘川は口を噤み、彼らの言葉を待った。





 憲兵達がアルバール大尉を部屋の外へ連行する。
 両脇を兵士に固められて移動するアルバールは、どこか安堵したような顔をしていた。
 ほとんどの者はそれを陰から見ているに過ぎなかったが、
 橘川と須佐は彼の前に姿を現した。
「そうか。君達が‥」
 大尉は納得したような顔をする。
 数日の調査の中で顔を覚えられた者も居る。
 調査が来ることもわかっていたのだろう。
「大尉‥」
「‥私は部下を息子同然に思っている。
 だが、息子同然と息子は違う」
「それが裏切りの理由か?」
「そうだ」
 須佐の容赦ない言葉を諦めたように肯定する。
 橘川が夕暮れの食堂で聞いたのは、このことに関する懺悔だった。
 アルバール大尉が妻とそのお腹に居る子供を人質に捕られて、
 多くの情報を流しているらしいと、密告したのは彼の部下の1人だった。
 その情報を元にジャックが裏を取り、今頃は諜報部のメンバーが保護に向っているだろう。
 彼を脅していたという人物もアキやキリルが捕縛しに向っている。
 大尉の捕縛が最後の仕事なのだ。
「‥‥そうか。捨てられたか」
 ほんの僅かな囁きのような言葉が漏れる。
 歩きながらアルバールは空を仰いでいた。
 果てのない空の向うには彼の故郷がある。
 


 彼が漏洩していた情報は、役職以上に多かったものの、
 これが全てと考えるには少なすぎた。
「おかしいな」
 ほとんどの者が考えていた疑問を、キリルは口に出す。
「これだけ注目を浴びたのに、我々を監視する者はいなかった」
「タイミングを計ったかのように、証拠も見つかったな」
 追随したのはシンだった。
 アキも黙って成り行きを見守っている。
 多くのメンバーが、アルバール以外からの接触を期待して待っていた。
 それが事件を解く鍵にもなる。
 芋づる式に多くの情報が手に入れることが出来るはずだった。
「つまりは、情報がどこかで取捨選択されているということだ」
 1人の言葉は全員の言葉でもあった。
 疑念は確信に変わる。
 内通者は全体を俯瞰できる位置に居て、こちらを見渡している。
 アルバールは切り捨てられたに過ぎない。
 コルテス大佐でさえ、一度疑う必要があるだろう。
 傭兵達は共通の見解を胸に、何事もなかったかのように散らばっていった。