タイトル:【LP】砂海漂流マスター:近藤豊

シナリオ形態: ショート
難易度: やや易
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2010/12/18 10:31

●オープニング本文


 寒い。
 夏場に照りつける太陽は、長い冬休みに入ってしまったのだろうか。
 ゴビ砂漠、という名前は付いているが、実際にはまばらな草が生えていれば森林や泉が湧く場所だってある。標高も1000メートルに達し、12月になれば寒風吹き荒ぶ場所へと変貌する。
 このような場所でたった一人、歩き続ける男が居た。
「‥‥くそっ、ツイてねぇ」
 ラリー・デントン(gz0383)は、体を縮めて体温の低下を必死で防いでいた。
 本来であれば、物資補給のトラックに着いて北京解放作戦へ傭兵として参加する予定だった。だが、物資補給のトラックが休憩で小さな村へ停車。トイレへ行くために一度トラックを下車したのが不幸の始まり。
 乗車する際、乗るトラックを間違えた事に気づいたのは、トラックがゴビ砂漠航空基地を通過して数時間経過した頃だ。トラックの運転手に戻るよう説得を試みたが、逆にタダ乗りしたと思われたラリーはそのまま砂漠のまっただ中へ放り出されてしまった。
 放り出されて数時間。
 必死に歩いてみたものの、人影一つ見えてこない。
 夜になれば、方角を示すのは闇夜に浮かぶ星々。
 星を見る度にある悪夢が蘇る。
 今の立場を築き上げた悪夢の夜も、星が自分をあざ笑っていた。
 思い出したくもない、クソったれな悪夢。できることならば、記憶を消してしまいたい。
「‥‥頑張れ、俺。こんな事は今までに何度もあっただろう?
 いつもの不運に比べれば、砂漠に放り出されたぐらい、どうって事ないだろう」
 ラリーは自分に言い聞かせるように呟いた。
 そうだ、いつも自分に不幸を呼ぶ死神が仕掛ける嫌がらせはこんなものじゃない。
 飛行機が墜落して密林を数時間彷徨い、キメラと地雷原で遭遇した時に比べれば絶望的な状況ではない。
 そう、キメラが居ない分だけまし‥‥。

 ――ドンッ!

 突然、ラリーの背後に砂の柱ができあがる。
 舞い上がる砂の中から現れたのは数匹の白い犬。毛の代わりに鋭い針を纏っており、深紅に染まった赤い瞳が砂の中でも怪しく光っている。
「ガルルルルっ‥‥」
 唸り声と共に見え隠れする牙は、明らかにラリーに向けられている。
 砂漠のまっただ中で、瀕死に見舞われた獲物。 
 それが犬たちに取って幾日ぶりかの獲物なのかは分からない。
 ただ、犬たちはラリーを見逃すつもりはないようだ。
「やっぱりこうなるか。
 これ、夢って事にならねぇかなぁ。実は暖かい毛布に包まれて眠っているのなら最高なんだが‥‥」
 ため息混じりのラリーは、 メイスを握りしめて犬たちと対峙する。
 犬たちの晩飯とならないために。

●参加者一覧

終夜・無月(ga3084
20歳・♂・AA
鐘依 透(ga6282
22歳・♂・PN
六堂源治(ga8154
30歳・♂・AA
夜十字・信人(ga8235
25歳・♂・GD
芹架・セロリ(ga8801
15歳・♀・AA
紅月・焔(gb1386
27歳・♂・ER
矢神小雪(gb3650
10歳・♀・HD
望月 美汐(gb6693
23歳・♀・HD

●リプレイ本文

●援軍登場

 冬のゴビ砂漠は気温がマイナス以下になる事は珍しくない。
 ヒマラヤ山脈から吹く乾いた風が、ゴビ砂漠の中を駆け抜ける。
 冬の、しかも夜中に砂漠を出歩く者は皆無といって過言ではない。

 だが、ここに一人――不幸がメガ盛りとなった男がゴビ砂漠の中を走り回っていた。
「‥‥くそっ、ツイてねぇ!」
 ラリー・デントン(gz0383) は、足を引き摺りながら砂丘を一人移動していた。
 その背後から追いかけてくるのは、体毛が棘となった犬型キメラ「ピースアウト」。
 寒風吹き荒ぶゴビ砂漠の中を数時間掛けて移動した後でキメラに遭遇する辺り、『死神の玩具』という通称がぴったりと言うべきだろうか。
「まだ、追って来やがるか」
 遠くでピースアウトの鳴き声が聞こえてくる。
 ピースアウトの攻撃を回避しながら逃走を試みているが、一向に振り切れる気配がない。
「このままじゃ‥‥やばいか」
 己に憑く死神の試練に憎しみを向けるラリー。
 しかし、この試練を打ち破る救世主は間近に迫っていた。
「あ、あれは‥‥」
 ラリーに向かって一台のジーザリオが猛スピードで接近してくる。
 そう、キメラではない人間が運転している。
 ラリーをゴビ砂漠へ置き去りにしたクソったれ運転手以来、数時間ぶりに人間と遭遇する事ができる。

 ――ザァ!
 ラリーに気づいたであろうジーザリオは、ドリフトターン。トランクをラリーへ向ける形で停車した。
「有り難ぇ。早く俺を乗せて‥‥」
「とぅ!」
 ラリーが言い終わる前に、トランクが開いて中から一人の男が飛び出した。
 黒鎧「ベリアル」の上から軍用歩兵外套を羽織り、ガスマスクを付けた紅月・焔(gb1386)の登場だ。
「新世界の神となった俺に死角は無い。エロの堕天使‥‥俺、参上!」
「あ、お前!」
 ラリーは以前、焔と出会った事がある。
 その際、焔に足を引っ張られたおかげで危機的状況になった事がある。
 救助に現れたのが、別名疫病神なのだからラリーのショックは隠しきれない。
「なんで‥‥このタイミングでお前が登場なんだ」
「ひっどぉ〜い。ラリーたんを発見したのは、この俺。
 だから‥‥ラリーたんを助けてもいいよね? 答えは聞いてない」
 一方的に捲し立てる焔。
 こうしている間にもピースアウトは迫っているのだが、一瞬でも緊張感がほぐれたのは良いのかもしれない。
「ふぅーん‥‥おじさんが死神の玩具?」
 ジーザリオから降りた芹架・セロリ(ga8801)は、ラリーの顔を見つめている。
「お嬢ちゃん、おじさんじゃない。『お兄さん』だ。間違っちゃ‥‥」
「助けてやるからやるから、俺の腹を満たすのだ」
「あん?」
 見掛けはまだあどけない少女。
 能力者で自信もあるから助けてくれるのだろう。少女の腹を満たすならば、行きつけの食堂で定食でも食わせれば満足するだろう。
「ああ、いいぜ」
 ラリーは威勢よく答えた。
「本当だな? 約束だぞ」
「‥‥くっくっく」
 ラリーとセロリのやり取りを見ていた焔が怪しく笑っている。
「なんだよ?」
「べっっっつにー」
 焔はわざとらしく口笛を吹いている。
「あ、ラリーさん。怪我をされているのですか?」
 鐘依 透(ga6282)は、ラリーが足を負傷している事に気づいた。
「あ、ああ。さっき不覚にもな」
「今、治療します。こちらへいらしていただけますか?」
 透はラリーをジーザリオの傍まで導いた。
 ジーザリオに寄りかかる形で座るラリー。透はラリーのズボンを鋏で切りながら、救急セットで治療を開始する。
「悪いな」
「いえ、気になさらないで下さい」
 そう言いながら、透は手早く脱脂綿に浸した消毒液を押しつけた。
「‥‥うっ」
「すいません、少し我慢して下さい」
 慣れた手つきで治療を行う透。
 黙々と治療が進む中、徐々にラリーを探していたと思われる者達がこの場へと集い始める。
「あなたがラリーさん?」
 別のジーザリオで現場に到着したのは終夜・無月(ga3084)。
 探し人が発見出来たという事もあって、一安心というべきだろうか。
「ああ。あんたも俺を捜しに来たのかい?」
「正確には困難がつきまとう‥‥英雄体質に興味があった」
 クールながらも冗談めいた事を口にした無月。
「英雄、か。俺は間違ってもそんな人間じゃない。俺は英雄どころか、軍人として‥‥」
 無月の英雄という言葉を聞いた途端、ラリーは表情を変える。
 その事に気づいた無月は声を掛ける。
「ラリーさん、気に障ったのなら‥‥謝る」
「悪ぃ。別にあんたを責めるつもりはなかったんだ。忘れてくれ」
 そう言ったラリーの表情は、いつもの気怠そうな表情に戻っていた。
 過去に何かあった。
 無月は直感的にそう感じ取っていた。
「寒かったろ? 急場凌ぎで悪いッスけど、無いよりはマシなはずッス」
 六堂源治(ga8154)はラリーにコートを手渡した。
「あ。こいつは有り難ぇ。寒くて凍えていたんだ」
 源治の手渡したコートを上半身へ羽織るラリー。
「喜んでもらえて何よりだ。これだけボロボロなら迎えに来た甲斐があったってもんだ」
 豪快に言い放つ源治。
 しかし、豪快ばかりではない。
 夜も深まってきた事から辺りも暗くなり始めたとあって、ラリーをジーザリオのライトで照らすように停車させていた。これで治療もしやすくなる上に、ピースアウトがやってきた際には照明代わりになるだろう。
「あとは熱燗の一杯もあれば最高なんだけどなぁ」
「駄目ですよ。少なくとも、街へ戻るまで待って下さい」
 透はラリーと会話しながらも包帯を手早く巻く。
 手先が器用という事だけあって、関心する程の手際だ。
「で、不幸とのダンスは十分楽しめたか?」
 最初に停車したジーザリオの運転手、夜十字・信人(ga8235)は、ようやくジーザリオの運転席から顔を出した。
「どうせ迎えに来るなら、美人のお姉さんも一緒に乗せてくるという気遣いはないのか?」
 憎まれ口を叩くラリー。
 何度も戦場で会ううちに、奇妙な関係を夜十字と構築し始めているようだ。
「今日は疫病神、死神以外も健在か。疲れる依頼になりそうだな」
「あん? それはどういう‥‥」
 
 ――ヴァァァァン!

 ラリーの言葉へ割り込むように、バイクらしき影が2つ、こちらへ向かってくる。その背後には白い犬らしき存在が月明かりに照らされて見えている。
 大口径ガトリング砲を手にした夜十字は、敵影を見定めながら呟いた。
「ミスターハードラック。援護するから下がれ」

●牽引
「あれぇ〜? ラリーさんを捜すはずが、ワンちゃん発見なんて聞いてないよ」
 AL−011「ミカエル」に跨がって移動するのは、矢神小雪(gb3650)。
 AUKVを追いかける形でピースアウトが走って追いかけてくる。
「ラリーさんと一緒にワンちゃんを発見する可能性もあるのは考えていましたが‥‥まさか先に発見するとは予想外でした」
 望月 美汐(gb6693)は BM−049「バハムート」を駆りながら、傭兵達の元へ向かっている。
 ピースアウトが居たという事は、付近にラリーも居るに違いない。
 そう考えていた美汐だが、その読みは的中。少し先にジーザリオが三台集まっている場所が見える。
「矢神さん、もう少しです!」
 美汐はアクセルを吹かせた。
 息吹を吐くバハムートは自慢の足を加速させる。
 足下が砂地である事が悔やまれるが、美汐はバランスに気を遣いながら走らせる。
「了解っ!
 でも‥‥君たちは邪魔だよ、ね!」
 小雪はフライパン・アサルトでピースアウトの顔面を思い切り叩いた。
 白熱化して純白に近づくフライパンは、ピースアウトの顔面を焼きながら吹き飛ばした。
 砂丘を転がるピースアウト。
 それでも、後方をまだ二匹のピースアウトが追いかけてくる。
 同時に近づく傭兵たちの姿。
「どうせ何時も引く貧乏籤だ。潔くこっちから引いてやる」
 夜十字はピースアウトを睨み付ける。
 美汐と小雪を追っていた二匹のピースアウトは、目標を変更。夜十字に向かって一直線で走り寄ってくる。
「ロリ、切り捨てい」
 ガトリング砲の弾丸をばら撒きながら夜十字は叫んだ。
「助太刀するぜ、ちょいさーっ!」
 セロリは刀を抜きはなった。
 ほんのり菫色に染まる刀身。
 カウンターでピースアウトの体を引き裂いていく。
 転倒するピースアウト。
 だが、転倒したのは一匹。
 残る一匹は夜十字へと迫る。
「‥‥行かせませんよ」
 行く手を阻む透。
 ラリーを治療していた姿とは打って変わって二刀小太刀「疾風迅雷」を抜き放ち、刃をピースアウトへと振るう。
「ギャゥン!」
 キメラらしからぬ蹴られた子犬のような声を上げるピースアウト。
 透の手にした疾風迅雷はピースアウトの体を確実に捉え、その体を一気に引き裂いていた。
 夜十字に到達する前に地面へ倒れるピースアウト。
 バグアを肉塊へと変える事が定めとなった能力者にとって、トドメを刺す事が通過儀礼と言っても差し支えないだろう。
「‥‥これで仕舞いッスかね?」
 斬られてスピードが落ちるピースアウトを、獅子牡丹で打ち上げる源治。
 強烈な一撃で打ち上げられたピースアウトの体。
 落下する寸前に源治はトドメの一撃を加える。
 その一撃に込められたのは恩人への贖罪か、それとも後悔か。
 負の念に打ち込まれた一撃は、ピースアウトの体を砂の中に埋めながら絶命させるに至った。
「これで‥‥終わりにします」
 残るピースアウトに対して無月は、明鏡止水を振り下ろした。
 瀕死を負ったピースアウトに振るわれる空を裂く一撃。
 明鏡止水の名の通り、一瞬の静寂と共に振るわれるは、生死を分かつ審判。
 下った判決は――死刑。
 明鏡止水の刃を持って裁決を下した無月は、ピースアウトの体を真っ二つへ引き裂いていた。

●終焉

「うっわー、みんな頑張ってるなぁ」
 他の傭兵達が戦う中、焔は暢気に眺めているだけだった。
「おい、お前もちょっとは何か手伝ってこい!」
 足を負傷するラリーは別の立場を意識したのか、焔へ戦闘を命じる。
「え、まぢ?
 事件は会議室で起きなくて、現場で起きているって感じ?」
「いいから、行け!」
 意味不明な事を言い出す焔を、ピースアウトへ向かって突き押そうとするラリー。
 
 だが。
 ヒマラヤ山脈から流れ出る空気の強さが一気に増した。
 強い風の粒子は、二人の体を瞬間的に浮き上がられて後方へと吹き飛ばす。
「え?」
「あ?」
 焔とラリーの体は浮き上がり、砂丘の下へ真っ逆さまへ落ちていく。
 長い砂丘を転がり落ちる二人。
「ぎゃーー!」
 いつしか、転がりながら、二人は抱き合って落ちていく。
 二人が男女のカップルだったら良かったが、残念ながら男同士。
 そのカップリングは腐女子にしか受けない、といっても落ちていく二人にはそれに反論するだけの余力はなかった。
「うほっ‥‥じゃない。二人は俺が助ける! 残り一匹は任せる!」
 二人の落下を察知して、救出へ向かうのは夜十字。
 砂の上を滑空しながら、砂丘を滑り落ちる。
 幸いにも落ちた先にキメラもなければ、蟻地獄もない。
 砂丘のそこに落ちた後、適当に引き上げれば問題はないはずだ。
「狩の連携はそれなりかもしれませんが、残る一匹ではその能力も発揮できません。
 3‥‥2‥‥1‥‥そこ!」
 バハムートを纏った美汐は、竜の咆哮を放つ。
 フライパンの一撃を食らっていたピースアウトは起き上がる前に、吹き飛ばされる。その先に居るのは、白いフライパンを持つ矢神。
「どっかぁぁぁん!」
 野球のボールをホームランするかのように、フライパンをフルスイングする矢神。
 ピースアウトは避ける機会すら与えられず、再びフライパンがヒット。
 矢神渾身の一撃は、砂の山を二つほど越えた先にある頂上までピースアウトの体を運んだ。
 昏倒するピースアウト。
 最早、傭兵達を追いかけるだけの力は残されていなかった。



●貧乏神
 その後、夜十字によってラリーと焔は砂の中から救出。
 ピースアウト三匹も退治する事に成功した。
 ラリーは、ジーザリオに乗せられてゴビ砂漠空軍基地まで揺られる。

 順風満帆に街へと戻ってきたラリー。
 しかし、ラリーの死神は予想外の形でその能力を発揮する事になる。

「おい、夜十字! どうなってやがる!」
「俺のせいじゃない!」
 ラリーと夜十字の財布は既に空となっている。
 それでもセロリの食欲は止まらない。
 ラリーが連れてきた小汚い市場の食堂ではあったが、セロリにとって胃袋に入れば問題なし。サイクロン掃除機顔負けの吸引力で次々に食料がセロリの体内へ取り込まれていく。それも、食事代はラリーと夜十字からというのだから堪らない。
「あはは。キメラも失禁するクラスの食欲により、エンゲル係数をラジングする暴食神ロリにご馳走するとは、さすがご両人。不幸のブーケは要りませんよ?」
 腹を抱えて笑い転げる焔。
 どうやら、こうなる事は予測済みだったらしい。
「貧乏神まで憑いているなんて、聞いてないぞ」
 疫病神と呼ばれた焔に加えて、貧乏神と称されるセロリに囲まれる夜十字。
 何故かその間で翻弄されるラリー。奇妙な包囲網がここで構築されるようとしている。
「夜十字! お前のダチはどうなっているんだ!」
「俺に言うな! 好きでこんな事になっている訳じゃない!」
「すいませ〜ん! 担々麺と水餃子を追加〜。
 あ、面倒だから麺は茹でなくでもいいですよ〜」
 二人の財布を気にすることなく、食べまくるセロリ。
 既に財布の中にある金は心許ない。
 ラリーにいたっては街についてすぐ酒をを飲んでしまったのだから、金などあろうはずもない。夜十字と一緒に金の心配をする他なかった。
「ラリーさん」
 半べそをかくラリーの元を無月が声をかけた
「なんだ? 金でも貸してくれるのか?」
「銃が撃てない、と聞いた。もしや、過去に銃が撃てなくなる何かが‥‥」
 無月はラリーの過去へ踏み込んでみた。
 本来であれば踏み込むべきものではないのかもしれない。
 だが、ラリーの不運が過去を引き摺った結果と思った瞬間、過去を探ってラリーに心を過去から解き放ちたいと考えてしまった。
「俺の過去はそんな価値があるようなものじゃない。夢では常にあのジャングルが‥‥」
「ジャングル?」
 無月の問いかけに、ラリーは一瞬顔を強ばらせる。
 少し間をもったいぶった後、ラリーは冷静を装いながら、再び声をかける。
「いや、そうじゃない‥‥そう、夢の中では常にお嬢ちゃんたちが俺を好いて囲んでくれるんだ。嫌な事など、何もない。そう‥‥何も‥‥」