タイトル:マグロの黙示録マスター:近藤豊

シナリオ形態: ショート
難易度: やや易
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2011/04/03 05:19

●オープニング本文


「ぬわっはっはっ!」
 香港沖数キロの地点で、タッチーナ・バルデス三世は高笑いしていた。
 ボートの上で仁王立ちしているのだが、明らかにバランスを崩しかけている。
 それでもタッチーナは上体を反らしながら、込み上げる笑いを留められない。
「養殖マグロで人類を経済支配という甘っちょろい考えは、古いにゃ!」
 以前、タッチーナは美味しい養殖マグロを使って経済的に地球を侵略するという珍妙な作戦を打ち立てていた。だが、事前に計画を察知した傭兵達に邪魔されて潰えていたのだ。
「ここはバグアらしく、マグロによる武力制圧だにゃー。
 朕が生み出した脅威のマグロ軍団。こいつらの手にかかれば、地球征服など時間の問題。本当は巨大化させてナイトフォーゲルって名前のロボットと戦わせるつもりじゃったが‥‥予算の都合で大きさは変えられんかったにゃー。
 だが、今回のマグロはひと味違う!
 見ておれ、UPC軍と傭兵達! 一人でも多く地獄へ引きずり込んでやるわっ!」
 地獄へ引きずり込んでいる時点で、タッチーナも地獄行きは確定なのだが‥‥。
 頭のネジ数本を紛失して遺失届が出されているタッチーナにとって、そんな事は問題じゃない。マグロを武装化して最後の大勝負に出たタッチーナは、傭兵たちへリベンジを挑もうとしているのだ。
「行けっ! 恐怖のマグロ軍団!
 奴らを恐怖のずんどこに‥‥って、あれ?」
 気付けば、タッチーナが乗っているボートの周囲をマグロが回り始める。
 明らかに何かが起こりそうな予感がする。
「も、もしかしてオラオラですかぁ!?」
 悲鳴のようなタッチーナの叫び声。
 
 ――数分後。
 タッチーナのボートは水柱と共に木っ端微塵。
 悲痛な叫びは海中へと沈んでいった。


「少尉、香港沖数キロの地点より敵影確認!」
 UPC軍基地のレーダーが捉えた影が複数。UPC軍の信号がキャッチできない時点で敵である事は間違いない。
 レーダーを見ていた兵士の元へ、少尉が駆け寄ってくる。
「到着は?」
「あと30分で到着するものと思われます!」
 30分で軍艦を出航させる事は不可能。
 で、あるならば巡視船に出港準備させて白兵を挑む他ない。
 少々危険ではあるが、能力者ならば‥‥。
 少尉の脳裏に一つの解決策が浮かんだ。
「巡視艇を出港準備させろ! それからmULTへ緊急依頼。敵の迎撃を行う。
 軍艦が出航準備できるまで時間を稼げればそれでいい」

●参加者一覧

緑川 めぐみ(ga8223
15歳・♀・ER
夜十字・信人(ga8235
25歳・♂・GD
芹架・セロリ(ga8801
15歳・♀・AA
紅月・焔(gb1386
27歳・♂・ER
マグローン(gb3046
32歳・♂・BM
サーシャ・クライン(gc6636
20歳・♀・HA
セラ・ヘイムダル(gc6766
17歳・♀・HA
住吉(gc6879
15歳・♀・ER

●リプレイ本文

 この奇妙な戦いを誰が予想し得たのだろうか。
 マグロ型キメラという巨大魚を巡る傭兵達の死闘。
 海を高速移動するマグロ。対して傭兵達は海中戦闘、釣り上げ等の方法によって対抗。この悉くが傭兵たちの勝利で終わっていた。
 つい先日、養殖場を破壊。
 その脅威も取り除かれたかに見えていたが、マグロたちは再び戦いを挑んできたのだ。

「もう、せっかくの楽な仕事が特殊部隊の真似事ですか。こんなことなら兄様から潜水技能を教えてもらっておけばよかったです」
 港を出港した巡視艇の上では、初めての潜水戦闘へ向かう緑川 めぐみ(ga8223)が後悔を口にした。
 エアタンクの準備と試作型水中剣「アロンダイト」を装備しての参戦となるが、マグロ型キメラを水中で相手するとは思っても見なかったようだ。
「‥‥できれば、暖かい時期に潜りたかったですが」
 芹架・セロリ(ga8801)も緑川同様、潜水戦闘は初めてのようだ。
 慣れない戦闘に不安を覚えつつも、背負う予定のエアタンクを調整する。
 そこへ夜十字・信人(ga8235)が近寄ってきた。
「俺も海へ潜るつもりだ。
 ロリ、もしも危機に陥った時は是を抜け」
「え?」
 セロリの前に差し出されたのは袋。夜十字がロリの為に準備したもののようだ。
「へぇ、夜十字が愛する者のために海へ飛び込むとは大したもんだ」
 横からラリー・デントン(gz0383) が茶化した。
 夜十字とセロリは恋人同士ではないが、夜十字がセロリを案じるという珍しい光景を前にして言わずに居られなかったようだ。
「ハードラック、これはお前の分だ」
 夜十字はラリーの足下を指さす。
 視線を下ろした先には、エアタンクと試作型水中剣「アロンダイト」が置かれている。
「なんだこれ?」
「お前の分だと言っただろう」
「‥‥おい、まさか‥‥」
「別に嫌なら良いぞ。だが、装備に掛かった費用はいただくぞ」
 装備に掛かった費用。
 夜十字はラリーがそれを支払う能力がない事を知っていた。相手は依頼報酬をそのまま酒代等に全額換えてしまうような男だ。おそらく今も財布の中身は皆無に等しい。
 つまり、ラリーには拒否する能力すら持ち合わせていないのだ。
 観念したのか、ラリーはスキューバダイビングを行う覚悟を決めたようだ。
「夜十字‥‥」
「俺に自腹を切らせたんだ。当たり前だ」
 しゅんとするラリーの傍らではマグローン(gb3046)が静かに闘志を燃やしているようだ。
「‥‥武装したマグロ‥‥どうやら、敵もマグロの真価に気付いたようですね」
 マグローンは、大物を前に武者震いしていた。
 武装したマグロの強さとは如何ばかりか。
 だが、所詮は養殖。それもおそらく強制的に成長を促され、育て上げられた稚魚。
 青森は大間のベテラン漁師相手に幾度となく死闘を繰り広げた成魚に叶う訳はない。
 
 間もなく、マグロ型キメラを迎撃するポイントへと到着する。
 武装した6匹のマグロのうち、強敵と思われるマグロキャノンとフルアーマーマグロを水中で迎撃しなければならない。
 マグローンは、これまでの戦いを反芻するかのように試作型水中剣「アロンダイト」を握りしめた。
 

 一方、港でマグロ型キメラの迎撃態勢を準備する傭兵達は――。
「またマグロかー。何でもかんでも強化すればいいってもんじゃなよね、これ」
 度重なるマグロ型キメラとの戦闘を受け、サーシャ・クライン(gc6636)は呟いた。
 既に二度戦闘を行っているが、ネギを好物とする養殖されたマグロというあまりにもシュール過ぎる相手に緊張感が途絶えてしまうのだ。
 それは住吉(gc6879)も同じのようだ。
「今夜はマグロ三昧で決定ですね。大トロ、中トロ、赤身と‥‥醤油とワサビの準備は万端です」
 住吉は既に戦闘後の事を考えているようだ。
 なにせ、6匹のマグロである。常人では食べきれない程の量が目の前に現れるのである。マグロ好きには堪らない瞬間なのかもしれない。
「二人とも、油断していたら危ないですよ。こんな風に‥‥」
 サーシャと住吉の背後から登場したのはセラ・ヘイムダル(gc6766)。
 油断していた二人の背後からそっと尻を撫で上げる。
「ひゃ!」
「セ、セラ様!?」
 突然の感覚に思わず振り返るサーシャと住吉。
 それに対してセラはニコリと微笑んだ。
「油断大敵です。マグロといっても相手はキメラ。この港に被害を及ぼさないようにしないといけません」
 敵の中には陸上戦闘を想定したものも存在するらしい。彼らが港湾施設を破壊するような事があれば、港の利用にも差し障る。任務としてもそれだけは避けなければならない。 心を引き締めるサーシャと住吉。
 気合いを入れ直す‥‥のだが、ここに二人以上に気合いが入っている者が居る。
「‥‥久しぶりの依頼だが‥‥これなら俺頑張れそう! 唸れ猛れ幸せすぎる俺!
 俺! 香港に来て良かった! I LOVE 香港!」
 異様なテンションを醸し出しているのは、紅月・焔(gb1386)。
 その気合いがマグロへ向かっていれば安心なのだが、何故か視線はサーシャ、住吉、セラの三人に釘付けだ。
「な、なんか危ない視線を感じませんか?」
「そ、そうね」
 思わず後退りするサーシャと住吉。
 なにせ相手はガスマスクを着用。表情が見えないだけに異様な風体は恐怖以外の何者でもない。だが、焔によっては怯える少女たちを前にテンションアップ
 服に手を掛けようとする焔。
 ――だが。
「はい、そこまでです」
「へぶっ!」
 焦る焔に対してセラは頭を小突いた。
 焔は一気に現実へ戻される。
「はっ!? ここは!」
「寝ぼけている暇はありません。
 ‥‥今頃、海中の皆さんは敵と遭遇しているはずです」
 作戦予定では、既に戦闘は開始しているはずだ。
 ならば、敵は間もなくここへ現れる。
 セラはゆっくりと海に向かって歩き出す。
「さぁ、始めましょう。鮪との戦いを‥‥」



(本当にしつこいっ!)
 緑川は海中で試作型水中剣「アロンダイト」を振い、マグロキャノンの銛を弾く。
 海中での戦闘は陸上とは勝手が違う。纏わり付く水は抵抗を生み、剣を振るうにはより大きな力が必要となる。更にマグロキャノンとフルアーマーマグロ等が放つ銛とウニ型キメラは厄介だ。高速で移動する上に海中で飛び道具を放つのだから、面倒な相手なのだ。
(それでも武装した分、動きは鈍い‥‥)
 戦闘の最中、マグローンは状況を的確に分析していた。
 長く海中で戦闘を繰り返してきた結果生まれた経験が、それを可能にしている。やはり、武装した分機動力が損なわれている。中には無理な強化からか小回りが効かないマグロも居るようだ。おそらく、敵の装甲も弱い奴がいるはずだ。
(お前は何処にも行かせん、此処で沈め)
 ウニ型キメラをギリギリで避けた夜十字は、一気にフルアーマーマグロへ間合いを詰める。
 眼前に迫るマグロに向けて試作型水陸両用アサルトライフルを構える。
(危ねぇ!)
 突然、夜十字とフルアーマーマグロの間にラリーが割って入った。
(ハードラック!)
(避けろっ!)
 ラリーは夜十字を突き押す形で待避させる。
 次の瞬間、フルアーマーマグロは脇に装備していた魚雷を発射。魚雷は夜十字の居た場所を魚雷は通過。虚空の彼方へと消えていく。
(マグロが魚雷ですって? マグロそのものが魚雷でしょうに)
 フルアーマーマグロが夜十字に注意を向けている隙に、緑川は後方から斬りつけた。魚類の目は側面には強いが、背後は死角となる。本来であれば気配を察知して逃げるのだろうが、気を取られているマグロに近づくのは簡単だ。
 緑川の手にしていた試作型水中剣「アロンダイト」がフルアーマーマグロの尻尾部分を引き裂いた。流れ出る血液が付近の海中を朱に染める。
 痛みを受けてその場から猛スピードで移動するフルアーマーマグロ。
 だが、尻尾を引き裂かれてスピードは明らかに落ちている。
(このスピードなら‥‥)
 必死に移動し続けるフルアーマーマグロ。
 ラリーは通り過ぎようとするフルアーマーマグロの脇腹に試作型水中剣「アロンダイト」 を突き立てた。マグロの体に慣性の法則が加わり、ラリーは試作型水中剣「アロンダイト」 を握りしめているだけで、マグロの傷口は一方的に開く。
 より多くの体液を放出させるフルアーマーマグロ。
 手負いとなったマグロはパニックを引き起こし、夜十字に向かって突進する。 
(ウニ型マグロを使う余裕もない、か。ならば!)
 限界までマグロの突進を引き付けた夜十字は、下がる形でマグロの突進を回避。同時に試作型水中剣「アロンダイト」 をマグロの頭に向かって突き上げた。
 鈍い感触と共に、フルアーマーマグロから力が抜ける。
 武装を保持していても、それを有用に活用できなければ意味がない。フルアーマーマグロはその能力を十分に発揮できなかったキメラのようだ。
(こっちは片付いた。あとは‥‥あとはプライドを賭けた戦いか)
 夜十字はマグローンの姿を見た。

 マグローンとセロリは以外にも苦戦していた。
 二人だけという事もあるが、武装が銛だけあってフルアーマーマグロよりも素早い。危機を感じれば、すぐにその場から逃げ出してしまうのだ。弱らせてはいるものの、あと一歩で倒すには至らない。
(そうだ。お兄ちゃんからもらった袋)
 セロリは夜十字から預かった袋の存在を思い出した。
 こういう時こそ、夜十字が託した品を使うべきだろう。せっかくもらった品なのだから、大切に使わなければ。
(兄ちゃん‥‥ありがとう。大切に使わせてもらうから‥‥)
 セロリは袋に手を入れる。
 袋の中には何か細長い物が入っているようだ。
 新型の水中用兵器か。
 それとも、救援を呼ぶ何かか。
 意を決してセロリは袋から取り出す。
(へ? なにこれ)
 セロリが手にしていたのは短く切られたネギ。
 夜十字はネギをカットして袋に入れていたようだ。
「ももへほほひーーーーっ!!」
 水中であるにも関わらず、セロリは叫んだ。
 どうやらクソ兄貴と言っているようだが、水中では伝わらない。
 怒り心頭のセロリだったが、このネギがマグロキャノンを動かした。
 ネギの存在を知ったマグロキャノンは本能的にセロリへと直進する。
(これなら!)
 マグローンは突進するマグロキャノンの前に立つ。
(餌に向かって真っ直ぐに泳ぐとは‥‥。養殖の運命。
 銛を使うまでは良いですが、大間の漁師達の腕には遠く及びませんっ!)
 すれ違い様、マグローンはマグロキャノンの側面に試作型水中剣「アロンダイト」を突き刺す。心の臓を捉えた一撃は、マグロキャノンを絶命。その身はゆっくりと海底へと沈んでいく
(眠れ同胞よ。命を弄ぶバグアは、この手で裁いてみせよう)
 消えゆくマグロキャノンを、マグローンは寂しそうな瞳で見つめていた。



 その頃、港では。
「‥‥夜空を照らす星々よ、気紛れなる風に幻惑の歌を乗せて彼の者を惑わせ‥‥」
 サーシャは陸戦強襲型マグロにほしくずの唄を使った。
 ほしくずの唄によって混乱された陸戦強襲型マグロは転がりながら、陸戦型マグロを攻撃。地面に皹を入れながらびちびちと跳ねる陸戦型マグロと派手に衝突。陸戦型マグロは数メートル先まで吹き飛ばされた。
「マグロさん、そのままそこでじっとして下さい」
 吹き飛ばされた陸戦型マグロに対して、セラは呪歌を歌った。
 びちびちと跳ねていた陸戦型マグロの動きは、ぴたりと止まる。
「日本刀にはな、居合いってもんがあるんだぜ? ‥‥まあ、俺は使い方を知らんがナ!」
 動けなくなった陸戦型マグロへ黒刀「炎舞」を突き立てる焔。
 既に鞘はその辺に放り投げだしてしまっているため、居合いも減った暮れもない。キメラなんて、倒せればいいんだよ! と言わんばかりの振る舞いだ。
「住吉、目標を捕捉! 排除します!
 ‥‥むふふ、一度は言ってみたかったのですよね」
 死骸となった陸戦型マグロに向かって未だ転がり続ける陸戦強襲型マグロ。
 そのマグロの頭部へ照準を合わせるアンチシペイターライフルで狙う住吉。
 幾ら回転しようが、頭部の位置は変わらない。伏射で狙いを定め‥‥引き金を引く。
 
 ――パンっ!

 乾いた音と同時に、陸戦強襲型マグロの頭部が弾けた。
 弾丸は確実に陸戦強襲型マグロの頭へ食い込み、思考を停止させる。
 転がり続けたマグロはゆっくりとスピードを落としてぴたりと動きを止めた。
「ふむ、案外呆気なかったわね」
 サーシャはふぅと息を漏らす。
 港は最終防衛ライン。ここを破壊されれば被害は拡大する、と思われていた。
 だが、陸に上がったマグロは所詮マグロでしかなかった。以外にもあっさり倒れたマグロの前に拍子抜けだ。
「いや、これで終わりではありません」
 セラが呟いた。
 これで終わりではない。
 だが、情報では陸に適応したマグロは2匹。他にはいないはずだ。
「どういう事でしょうか?」
「予定ではマグローンさんが‥‥来ました!」
 住吉へ答える間もなく、セラは身構える。
 そこには二本の水柱と共に、2匹のマグロが飛び出してくる。
「お! 自ら陸に上がってきたのか?」
「いえ、マグローンさんが残り2匹のマグロを海中から押し出してくれる手筈になっていました」
 実は、マグロとマグロ寒冷地仕様はマグローンの獣突によって陸上へ叩き上げる手筈となっていた。マグローンはその大役を見事に果たしたという訳だ。
 残念ながら、二匹のマグロは陸戦には適応していない。
 おまけに海中でも突進がメインのマグロだ。陸に上がってしまえば、まな板の鯉ならぬまな板のマグロという訳だ。
「ふふ、それではメインディッシュをいただくとしましょうか」
 先程までアンチシペイターライフルが握られていた住吉の手には、醤油とワサビが握られている。最早、住吉にはマグロが単なる食材に見えているようだ。
「いけません、住吉さん」
「セラ様、やはり油断はいけませんか?」
 ぴちぴちと跳ねるしかできないマグロでも、キメラなのだから油断をしてはならない。
 住吉はそのように窘められるものとばかり思っていた。
 だが、セラの言葉は大きく予想を覆すものであった。
「一匹は冷凍されています。解凍しなければ、すぐには食べられませんよ?」

 こうして。
 マグロ型キメラを巡る戦いは、終結した。
 多くのマグロの血が流れ、倒れていった。
 既に香港辺りではタブロイド紙が「第一次マグロ大戦」と称して一連の事件を報道している。幾ら人々が浮かれようとも、失われたマグロの命は帰って来ない。すべてはキメラを生み出したバグアが諸悪の根源。ならば、同様の悲劇は再び起こるかもしれない。
「同志たちよ。悲劇を終えるため、私はバグアと戦い続ける事を誓う」
 海に向かって決意を口にするマグローン。
 母なる海は、静かに波音を立てていた。