タイトル:【決戦】乙女とブリーフマスター:近藤豊

シナリオ形態: ショート
難易度: 易しい
参加人数: 4 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2012/10/02 00:00

●オープニング本文


 ――インド、デリー。
 バグアから包囲された挙げ句、移動攻撃要塞『ドゥルガー』に崩壊寸前までさせられた都市。
 しかし。
 UPC軍と傭兵達の奮戦により、ドゥルガーは停止。
 デリーの崩壊を防ぐ事ができた。
 現在は復興も進み、破壊された建物が始まっている。人々の心に宿っていた闇は祓われ、まるでバグアとの戦争が終わったかのような錯覚に陥る。
 そんな一時的な平和が訪れたデリーの片隅に‥‥妙に甲高い声が木霊する。
「曽徳鎮戦闘大隊が到着したからには、泥舟に乗ったつもりで安心するがよい!
 ぶわっはっは!」
 中国は広州からやってきたのは、曽徳鎮中尉。
 UPC軍で一番短足で煽てに弱い馬鹿軍人として知られる人物として知られている。ちなみに、閣下と呼ばなければ、いじけて動かなくなるという部下にとっても上司にとってもお荷物にしかならない奴である。
「この私が、わざわざデリーにまで赴いて物資の護衛を行ってやるというのだ。
 バグアの暴挙なぞ、我が威光の前に無力であろう事を教えてやろう」
 愛用の踏み台である『ガイヤ』に乗りながら、調子に乗る曽。
 そもそも、周囲に居たMahaKaraの者は誰も曽の話を聞いていない。
 何故なら、戦闘大隊を名乗る割に、隊員は誰も居ないからだ。
 実は宇宙での決戦に対して自分も何かしたいと広州の司令部で喚き散らした結果、適当な依頼を割り振られて厄介払いされたのだ。
 真実を知らないのは本人だけ。デリーの市民も良い迷惑である。
「月に送る物資は、この曽徳鎮の庇護下にある。
 バグアよ、何処からでもやってくるが良い! 私の剣技を見せてくれようぞ」


 その夜。
 デリーの闇夜に、人影が舞う。
 月明かりに照らされるのは、褐色の肌。塗られたワセリンが月光を反射して怪しい光を放っている。着衣はブリーフオンリー。時折、動かされる胸筋が別の生き物のようで気色悪い。
 もし、この光景をテレビ放映すれば、チャンネルは三秒で変えられるだろう。
「もう、失礼しちゃうわね。
 乙女の心はデリケートなの。あたしの美貌でUPCなんて、エレクトイチコロよ〜ん」
 自称乙女と称する気色の悪い変態――バラゾックは、かつて『漢を極めた者』としてバグアと戦っていた傭兵であった。しかし、バグアに囚われて強化人間とされてしまってからは、乙女としてイケメン狩りに勤しんでいる。
「‥‥くんくん。こっちからイケメンと食べ物の香りがするわね」
 四つん這いになり、嗅覚を使って目的地を探るバラゾック。
 目的地とは、イケメンがスタンバイしていそうな場所である。もっとも、その香りとやらはバラゾックにしか分からないのだが。
「ふふふ、月明かりの下でイケメンを侍らせて豪勢なハーレムナイトなんて最高じゃない。
 今宵もまたイケメン達とのイケナイ恋を巡らせて、襲い受けな展開が‥‥あらやだ、エレクト興奮してきちゃった。
 あたし、もう‥‥我慢できない!」
 内股で頬を赤らめるバラゾック。
 見る者の背筋に悪寒を走らせながら、曽が一人で待つ倉庫へ近づいていた。

●参加者一覧

ドクター・ウェスト(ga0241
40歳・♂・ER
滝沢タキトゥス(gc4659
23歳・♂・GD
エルレーン(gc8086
17歳・♀・EL
アリシア・ルーデル(gc8592
20歳・♀・SF

●リプレイ本文

「うふっ。今日はお化粧の乗りも最高。良い事が起こりそうな、よ・か・ん♪」
 月光を浴びながらデリーの街を暗躍するのは、強化人間のバラゾック。
 褐色の肌、クマ並みの剛毛、ブリーフ一丁の筋骨隆々の親父。
 だが、心の方は乙女そのもの。
 今日もイケメンを探し求めて高速移動中。きっと、人類に向けて戦闘を映像で放送したら大惨事間違いなしだ。
「失礼しちゃうわね! まったくもう。」
 さーて、今日はあたしをエレクトさせてくれるイケメンはいるかしら?」
 心を躍らせながら、ビルからビルへ飛び移るバラゾック。
 バグアは、どうして変態を産み出すのだろうか。


「立てよ、諸君! すべては我が大隊の為! そして、UPC軍勝利の為である!」
 倉庫で一人高らかに笑うのは、広州軍区司令部よりやってきた曽徳鎮。
 宇宙で人類が決戦に挑む状況に今頃気付いた曽は、自分も何か役立ちたいと大騒ぎ。
 司令部はデリーで宇宙へ送る物資の護衛――という名前の厄介払いを決行。
 意気揚々とデリーの倉庫で天狗になっているという訳だ。
「我輩は能力者、『地球が戦うための武器』であるから遠慮無く命令したまえ〜。君の手にある武器として振るわれようではないか〜」
 ドクター・ウェスト(ga0241)は、曽の『お守り』を買って出た傭兵の一人だ。
「よろしい! この名家の出身である私が、貴様を存分に奮ってくれよう。期待するが良い」
 馬鹿は煽てると何処までも高いところへ行きたがる。
「‥‥‥‥」
 アリシア・ルーデル(gc8592)は、こめかみに手を当てて呆れていた。
 現時点で既に判明しているが、物資を護衛するに辺り、厄介なのは曽の存在だ。
 UPC軍でも屈指の阿呆な軍人。足を引っ張るこそすれ、役立つ事は皆無だろう。
 既にその香りは放ち始めており、アリシアの不安を抱かずには居られない。
 しかし、アリシアは覚悟を決めた。
「仕方あるまいじゃな。曽は我が相手するのじゃ」
 アリシアは、大きなため息を一つ。
 その態度を目にした曽は、ご機嫌だった態度を一変。
 腕を組んで怒り始めた。
「貴様っ! 私の事は『閣下』と呼べっ!」
 きっと漫画風に表現すれば、頭から蒸気が発している事だろう。
 閣下と呼ばなければ返事しない、という時点で子供っぽい上に小物だ。
 アリシアは、さらに大きなため息をつく。
「分かった。閣下で良いのじゃろう? 困ったものじゃの」
「うむ、それで良い。次からは本当に返事してやらぬぞ!」
 正直、面倒臭い。
 それが傭兵達の頭に浮かんだ言葉あった。
「曽かっか‥‥アホタレさんだけど、でも‥‥バグアに殺されるのを黙って見ているのは、できないの!」
 エルレーン(gc8086)は、曽の傍らでぽつりと呟いた。
 次の瞬間、曽は愛用の踏み台『ガイヤ』に飛び乗ってエルレーンを見据える。
「んん? 何だって? アホタレがどうとか‥‥」
「あ、いや‥‥うすぐらいところはへんたいがわくんだよ。
 そう、おっしょうさまが言っていたの!」
 軽く誤魔化すエルレーン。
 事実、護衛している倉庫はやけに薄暗い。
 何故か内部の電源を落としてしまっているのだ。
「なに!? 暗いところは変態が沸くのか。
 それは初耳だ。だが、私の隠しきれない威光があれば、暗い所だって日向のように明るいだろう?」
 薄暗い闇の中で高笑いする曽。
 ちなみに、薄暗い理由は『節電のためだ。高き地位にある者は地球に優しい』というふざけたものだった。
「さて。今日も私の存在に恐れを為したのか、バグアはやって来なかったな。
 では、そろそろ私も就寝の準備を‥‥」
「おいっ、なんだあれ!?」
 滝沢タキトゥス(gc4659)が倉庫の天井付近を指差した。
 そこには、倉庫の天井を漂う怪しいクラゲが三匹。
 明らかにバグアが産み出したキメラだ。
「なぬっ!? 敵襲じゃと!
 ええぃ、さっさと彼奴らを倒さぬか!」
 敵と聞いて叫ぶ曽。
 だが、その声の中に驚嘆と恐怖が混ざっている事に、滝沢は気付いた。
 ‥‥やっぱり、この男は役に立たない。


「どうにもクラゲって好きにはなれん‥‥それに、何やら嫌な予感もするしな」
 独り言を呟きながら、浮遊しているクラゲに奉天製SMGで牽制を掛ける滝沢。
 その攻撃を察知したはバラバラに別れて行動。
 倉庫の中に分散したようだ。
「ど、どうした? もう倒したのか?」
「慌ててはいかんのじゃ。敵は分散したのじゃ、無闇に動いては駄目なのじゃ」
 さっきまでの威厳が何処かで吹き飛んだ曽を、アリシアが護衛に入る。
 曽がパニックになれば、確実に事態は混乱する。それだけは何としても防ぎたいところだ。
「クラゲのバグアねぇ〜。なら、さっさと消えてもらうかねぇ〜」
 バグアの襲来と認識したウェストも行動を開始。
 リアトリスを片手にクラゲが飛び去った先に移動する。
 滝沢が見つけた三匹のクラゲのみならば、それ程困る相手でもない。
「えいっ! えいっ!」
 エルレーンは魔剣「デビルズT」でクラゲを追い回していた。
 地上付近へ下りてくれれば剣を当てやすいのだが、相手は薄暗い上に宙を舞うキメラだ。
 その上、どういう訳かエルレーンから離れるように飛行している。
「‥‥なんか、おかしいな。まるで私から逃げているみたい。
 なんで?」
 首を傾げながらも剣を振り続けるエルレーン。
 その理由は、数十秒後に判明する。
 それも馬鹿の行動のおかげで。

「ま、まだ倒せぬのか!? ええぃ、ならば私が前に出る!
 皆の者、私に続け!」
 奇声にも似た甲高い声を上げる曽。
 腰に付けていた玩具のようなサーベルを握り締め、突撃を宣言する。
 おまけに敵の姿を視認していなかったのだろう。敵を探して闇雲に探し始めた。
「ま、待つのじゃ!」
 慌てて曽を止めようとするアリシア。
 その時、一匹のクラゲがアリシアの後方から接近する。
「くっ!」
 駆け出そうとした足を止め、超機械「リオプレウロ」を構えるアリシア。
 しかし、クラゲはアリシアを無視して通過。まっすぐ曽に向かって飛んでいく。
「ん? 我が見えなかったのか?」
「ぎゃー!?」
 倉庫の奥から響き渡る曽の悲鳴。
 走り出すアリシア。
 コンテナの角を曲がったアリシアの目に飛び込んできたのは、クラゲに捉えられた曽の姿だった。
「おいっ、なんだこれは! 私をどうする気だ!
 さては、私を改造して名誉と力を手に入れた完璧な強化人間を誕生させるつもりか? そうはさせんぞ、バグアめ!」
 クラゲは触手を使って曽を檻の中へ閉じ込めるように捕縛していた。
 大騒ぎできているところを見れば、ただ捕らえただけなのだろう。
「おお、来たか! 早く私を解放せぬか!」
 捕らえられていても、大騒ぎする曽。
 アリシアは、再び大きなため息をつく。
「分かったのじゃ。今助けるのじゃ」
 リオプレウロをクラゲに向かって構える。
 その時、クラゲの体が震え始める。
「な、なんじゃこれは?」
 クラゲはサイレンにも似た機械的な音を発し始めた。
 ダメージを与えるだけでもなく、鳴り響くサイレン
 まるで誰かに知らせるような‥‥。

 ――バリンっ!

 突如、倉庫の窓をぶち破って現れた怪しい影が現れる。
「クラゲちゃん、イケメンをゲットしたのね! さあ、早速あたしに見せてちょうだい!!」
 倉庫に響き渡る声。
 姿は闇の中で、はっきりとは分からない。
 しかし、オカマ口調に加えて、筋肉質な体つき。
 時折、月光を浴びてオイル塗れの肌を輝かせている。
 ロクな相手ではない事は、確かだ。
「‥‥うえぇ」
 悲鳴を聞いてやってきたエルレーンの胸に、ヤベぇものが込み上げてきた。
 闇の中でクネクネと体を動かすオッサンが、オカマ口調で存在していたのだ。
 面食いなエルレーンにとってはテレビの衝撃映像100連発を見た以上の衝撃が走っただろう。
「何? あたしは女子には興味ないの。
 あたしが興味あるのはイケメンだけ。残念だけど、お付き合いできないわ」
「誰も交際なんか申し込んでないの! もしかして、あなたはへんたいさん?」
「変態とは失礼ね! あたしはバラゾック。
 イケメンのハーレム建設を目指す強化人間よ。
 さーて、クラゲちゃんが捕らえたイケメンは‥‥なによ。チビでチョビ髭な中年親父が居るだけじゃない」
「貴様! 漢王室から続く名家の私を捕まえて、チビでチョビ髭とは何事だ!
 訂正しろ! 今すぐしろ! さっさとしろ!」
 クラゲの触手を握りながら、更に大声を上げる曽。
 その横でバラゾックは残念そうな顔を浮かべる。
「強化人間かねぇ〜。なら、変態君を倒さなければならないねぇ〜」
 残りのキメラを始末したウェストと滝沢が現れた。
 実はエルレーンの時と違い、クラゲは二人の姿を発見した途端、前からまっすぐ飛来してきたのだ。おかげでクラゲを容易に倒す事ができた。
 どうやら、このクラゲは男性を発見すると捕縛を試みるようだ。バラゾックのイケメン確保用のキメラなのだろう。
「あら! イケメンが二人もいるじゃない。
 早速、あたしが持ち帰ってイケメンコレクションに追加してあ・げ・る」
「ま‥‥待て待て。あんた二人同時にゲットしようってぇのか?
 まずはイケメンの俺をゲットするのが先だろう」
 滝沢は思い切って仁王咆哮を発動。
 滝沢は仲間を守るためにその身を――正確には貞操を使って囮を敢行。
 対バグア戦史上最低の囮で、バラゾックの注意を惹き付ける。 
「それもそうね。まずは、そっちの坊やを確実にゲットしちゃいましょ。
 さぁ、一緒にトロピカルドリンクを回し飲みしましょう」
 言葉とは裏腹に、バラゾックは滝沢を見据えながら腰を落とす。
 両腕を構えてゆっくりと近づいていく。
(武器はなし。メインは格闘か)
 薄闇の中、滝沢はバラゾックを見つめ続ける。
 正直、直視したくもない相手だが、目を背けた瞬間に飛び掛かってくる可能性が高い。
 危険な相手――滝沢の直感がそう告げていた。
「今だっ! いただきっ!」
 滝沢に意識を向けていたバラゾックの背後から、エルレーンが魔剣「デビルズT」で攻撃を仕掛けた。
 ――だが。
「あれ!?」
 デビルズTの刃はバラゾックを斬る事ができず、滑って躱されてしまう。
 首を傾げるエルレーン。
 そこへたたみ掛けるように滝沢が奉天製SMGを放った。
「このテカテカのムキムキホモ親父め、いい加減に‥‥‥‥なに!?」
 奉天製SMGから放たれた弾丸は、バラゾックの体に当たった瞬間、それて付近の物資コンテナに命中した。
「あっはっは! 何してくれちゃってるの?
 あたしの体は特殊ワセリンを分泌して物理攻撃を防御できるの。
 だから、あんた達の攻撃なんか当たらないんだから」
 変態の割に、有用な能力を保持していたバラゾック。
 体から分泌するワセリンのおかげで物理攻撃を滑らせて回避する事ができるようだ。
 バグアの科学が成せる技なのだが、どうしてこんな変態親父にするのだろうか。
「ふむ〜。なるほどねぇ〜」
 今度はウェストがリアトリスでバラゾックに攻撃を仕掛ける。
 先程のエルレーン同様、刃で斬る事はできず、バラゾックに傷つける事はできない。
「だから、言っているでしょう? あたしに物理攻撃は効かないの。
 さぁ、あなたもあたしのハーレムに‥‥」
「確かに物理攻撃は効かないようだねぇ〜。
 まあ、だったら純粋エネルギーでやればいいだけだが〜」
 そう言ったウェストは、電波増強を発動。
 リアトリスからエネルギーガンへ持ち替えて、バラゾックを狙い撃つ。
「だから、あたしには効かないって‥‥ぎゃ!」
 悲鳴を上げるバラゾック。
 ウェストの予想通り、知覚攻撃はしっかりとダメージを与えられるようだ。
「うーん、予想通りだね〜。おそらく、超機械なら攻撃が通用するはずだ〜」
「ほう。なら、やってみるのじゃ」
 アリシアは、超機械「リオプレウロ」でバラゾックに攻撃を敢行。
「あばばばば!」
 ウェストの言う通り、ワセリンで防ぐ事ができず、バラゾックの体にダメージを与える事ができた。これなら、バラゾックを倒す事ができるかもしれない。
「ちょっと! あたしに攻撃とはいい度胸じゃないの!」
 余裕だったバラゾックも、少々頭に血が上ってきたようだ。
 バラゾックは手近にいたエルレーンへ近づいていく。
「あたしのパンチをプレゼントしてあげるわ。あたし、女には容赦しないわよ」
 ヌルヌルで、テカテカの親父がエルレーンに近寄っていく。
 近づいてくるだけで気持ち悪さが数倍。
 エルレーンの背筋に鳥肌が立ち始める。
「キショい! 来るな!
 えいっ! いっとうりょうだんッ!」
 叫びながら、魔剣「デビルズT」を振り下ろすエルレーン。
「だから、そんな攻撃私には‥‥」
 そう言い掛けたバラゾックだったが、デビルズTが捉えたのはバラゾックの体ではなく、彼が着用していたブリーフだった。
「な‥‥あたしの一張羅が!!」
 デビルズTはブリーフを引き裂き、バラゾックを完全な全裸へと変貌させる。
 確かにワセリンは物理攻撃を回避できるだろう。だが、着用していた衣服は別だ。剣で切り裂く事は可能なのだ。
 そして、バラゾックにとってブリーフを失う事は‥‥。
「ちょ! あたしのブリーフを斬って辱めるなんて‥‥ひどいっ!
 あんた達! 今日は撤退するけど、覚えてなさいよ!」
 バラゾックは捨て台詞を吐きながら、股間を押さえて逃げ出した。
「アーユー変態バグアは、さっさと滅んでくれないかな〜」
 逃げ出した背後からウェストがエネルギーガンで攻撃を仕掛ける。
 数発の命中させる事もできたのだが、エネルギーガンの攻撃だけで倒す事はできなかった。
 バラゾックは再びデリーの闇へと消えていった。


「ぶわっはっは! やはり、敵は私の威光の前に平伏したか」
 クラゲから救出された曽は、敵の撤退を知って自慢げに話し出した。
 すべては傭兵のおかげなのだが、手柄を勝手に独り占め。
 本当に小物を絵に描いて美術館へ寄贈したような男だ。
「物資も無事に守りきる事ができたようだな」
 防衛目標の物資も、被害を出さずに守る事ができた。
 これで宇宙へ救援物資を送る事ができる。
「あの変態バグアは、次にあったら葬ってやるね〜」
 ウェストは、次に出会った際の対策を思案し始めていた。
 変態であろうと、バグアはバグア。
 容赦なく倒すべき相手である。対応方法も判明している以上、次は確実に仕留められるだろう。
「次もあのへんたいさんに会うの? うーん、私は遠慮したい‥‥」
 バラゾックの姿を思い出すだけで、酸っぱい物が込み上げてくるエルレーンだった。