タイトル:【Gr】雷光の如くマスター:コトノハ凛

シナリオ形態: ショート
難易度: やや難
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2008/12/11 15:31

●オープニング本文


●召集
「既にお聞きかと思いますが、難しい依頼になります。ですが、それ故に重要な依頼とも言えます」
 いつもはアジア地方を主に担当しているオペレーターは、いつもの様に生真面目に説明を始めた。

「敵の戦力は、マドリード、そしてリスボン方面に多く展開しています。ここが現在の主戦場」
 そう言って、彼女はモニターに映し出された戦略図にマーカーを付けた。
「敵は随分長い間しっかりと下準備をした上で、この戦闘を始めたと予想され、現に多くの戦力が確認されています」
 モニターが、偵察や小規模戦闘で得られた情報に切り替わる。
 今の所、傭兵部隊においては優位に作戦を進められてるといえるだろう。あくまでも、今の所ではあるのだが。
「このまま正面からぶつかり、敵の消耗を待つのも可能では在るのでしょうが、戦力を自力生産出来る相手にそれは適切ではないと判断されました」
 いくらバグアの技術とはいえ、補給路を断てば生産ラインを干上がらせる事も可能では在るだろう。
 だが、それを検証するには予想される犠牲とリスクが多すぎた。
「かといって、敵戦力が補充されるのを放置すれば、脅威になる事は間違いありません」
 そこで彼女は、もう一度画面を戦略図に戻した。

「そこで、皆さんにはマドリードに迫る主力部隊を大きく避け、空から敵勢力圏内に潜入しギガワームプラントを破壊していただきたいのです」
 補給路を断たずとも、生産ラインは止められる。
 そう、物理的に。
「敵も空襲に対して何の準備もして居ない訳ではないでしょうし、何より孤軍で侵入し離脱しなければなりません」
 危険を伴う作戦だ。
 しかし、ここでプラントを叩ければ、大きなアドバンテージを取ることが出来るかもしれない。

「先に地上からの隠密部隊が潜入し、爆破ポイントを絞り込む予定です。皆さんは、その情報を元にプラントを爆撃、速やかに離脱撤退をしてもらうと言う事になります」
 言うほど楽な任務ではない。
 各機が連携し、的確にかつ迅速に事を運ばなければあっという間に、敵に包囲されるだろう。
 更に、当然の事ながらプロトン砲の射程内の行動になる。
「なお、隠密部隊からの情報は現場近くで直接情報連結し受け取る形になります。つまり直前まで現場の状況は不明です。ですから、対策はしっかりお願いします」
 直前とはいえ、情報が手に入るのは有り難いと考えるべきか、対策を立てる段階では不明な事を嘆くべきか。
「帰還時は、この地点――バダホス方面かマドリードへ抜けてください」
 モニターにラインが引かれる、敵の勢力圏の前線まで。

「厳しい作戦ではありますが、どうか宜しくお願いいたします」
 最後に彼女は、武運を祈り頭を下げた。

●参加者一覧

石動 小夜子(ga0121
20歳・♀・PN
榊 兵衛(ga0388
31歳・♂・PN
幡多野 克(ga0444
24歳・♂・AA
新条 拓那(ga1294
27歳・♂・PN
熊谷真帆(ga3826
16歳・♀・FT
ユーリ・ヴェルトライゼン(ga8751
19歳・♂・ER
神無月 るな(ga9580
16歳・♀・SN
リヴァル・クロウ(gb2337
26歳・♂・GD

●リプレイ本文

●残滓の山
 グラナダ要塞北東100キロ、上空。
 眼下に広がる荒野には、あちらこちらに先の戦闘の残滓がまだ残っている。
 ――無理も無い、大規模作戦『グラナダ要塞攻略』はつい先ほど終結を見たばかりなのだから。
 グラナダ市を見下ろす山に構えていたグラナダ要塞。
 脅威を誇っていた要塞も、今や頂上に据え置かれていた巨大な長距離砲は原型を想像出来ない程破壊され、山の至る所に作られた施設も大規模な空襲作戦により無残な姿を晒していた。

 その一角、比較的被害の被害が少ない区画が存在した。それが――ギガワームプラント。
 侵入経路等の問題から、内部の一般人の避難が困難という理由で、避難が間に合わず攻撃対象には出来なかった。その為、生身で隠密潜入し一般人を避難させ、その後爆撃という2本立ての作戦が用意された。
 もっとも、敵将の侵攻がUPC軍の読みよりも早かった為、救出作戦と要塞攻略戦の順番が逆になってしまったのだが。

 二日前、潜入班が既にプラントへ向かって出発している。 
 そして、今――避難誘導後憂いの無くなったプラントへ爆撃をする任務についた傭兵8人は、プラント上空に残っていた小型のヘルメット・ワームと激しい空戦を繰り広げていた。


●連結
 幸いと言うべきか、先の攻略戦の影響かHWの数は3機と少ない。
 内、2機は光学迷彩を施した機体だったのだが、リヴァル・クロウ(gb2337)のバルカンの銃弾をペイント弾と変更しておくという対策により、レーダーが当てにならない状況下でも、目視での攻撃を可能にしていた。
 しかし、彼らのKVの銃口はHWではなく、その周りを飛ぶ『ナタデココ』に向けられていた。
 HWは3機だったのだが、CWは多かった13‥‥いや、レーダーの効かない状況ではもう1、2機多かったとしても判らないかも知れない。
 それゆえ、半々でCWとHWを抑える予定だった所を、手が空いてる者はCWに当たる事を余儀なくされた。

 爆撃音が響き渡る中、士気を高める通信が飛び交う。
「これ以上敵に戦力を蓄えられては、ますますこちらが不利になる一方だからな。この作戦を必ず成功させて後顧の憂いを断つ事にしよう」
「まったくです、苦節一年‥‥名古屋戦八王子空爆惨敗の恨み、この程度では止められません」
 榊兵衛(ga0388)と熊谷真帆(ga3826)が左右に浮かぶナタデココ――キューブワームへとバルカンを叩き込む。
 引っ切り無しに襲う頭痛を振り払うようにトリガーを引き絞る。
 そこへ、その直ぐ上空で回頭したHWが彼らを狙うが、
「友軍の脅威は早急に絶ちましょう!」
 射線を邪魔するように、神無月 るな(ga9580)の乗る雷電が滑空し遮ると、搭載のヘビーガトリングでその場を後退させた。
 撃墜には届かないものの、今は仲間の邪魔をさせない事の方が重要だった。
 そのフォローに応え、リヴァルの機体がホーミングミサイルで付近のCWへ攻撃を仕掛ける。
 高い命中率を誇るそれはジャミングを受けながらもCWに命中し爆発した。
 これで、残るCWは6機。

 彼らの戦闘を背後に、コックピット内でコンソールに指を走らせるユーリ・ヴェルトライゼン(ga8751)は依然砂嵐の混じるモニターに呟きを洩らす。
「まだ、受信出来ないな」
 彼らがCWを優先して狙うのは、何もレーダーや動きが悪くなる事だけを気にしての事ではない。
 彼らは待っているのだ、爆撃ポイントを指示するビーコンを。
 プラントは、バグアの技術故なのか頑丈な造りをしている。考えなしに爆撃しても、ちゃんと機能を停止出来ない可能性が残る。
 それゆえ、潜入班に内部構造を把握した上でポイントを、ビーコンで指示を出して貰う手筈になっている。
 ――もしも、こちらが手間取った場合、爆撃ギリギリまで照明弾で指示が来る。当然、照明弾を使った人間は危険に晒される。
「あと、2、3機も落とせば状況も変わるって」
 ユーリの通信に答えたのは、恋人と共にこの作戦に参加した新条 拓那(ga1294)で、その恋人である石動 小夜子(ga0121)が新たな敵機の接近を知らせてくる。
「拓那さん、上空3時の方向! 掩護します」
「任せて、小夜ちゃん!」
 言うが早いか、機体を素早く捻り旋回させた拓那。それに合わせて小夜子が敵の動きを射撃で牽制する。
 流石にお互いの呼吸を知るかのように、敵を二人で挟み込むと見事な連携攻撃が決まりCWはゆっくりと機能を停止し爆発した。
 後、――5機。

「全ては‥‥現場の‥状況次第。厳しいけど‥それは‥‥潜入した仲間も‥同じ‥」
 その行動を無駄にはしない、――絶対に。
 後方に回り込んだHWの収束フェザー砲攻撃を掠りながらも、幡多野 克(ga0444)は目もくれずCWへとホーミングミサイルを叩き込む。
 一刻も早く、『仲間』の期待に応える為。
 その意思が通じたのか、白く尾を引く弾頭が命中した時、同時にユーリの待ち望んだ反応がモニターに映し出される。
 地図を示すナビモニターには赤い点が4つ、更にノイズ混じりに音声通信が飛び込んできた。
『‥‥タよ‥爆撃チー‥‥応答‥ザザッ、ビーコン‥設置‥た。‥グナ‥‥ザザッ‥‥ザッ‥繰り返す‥‥』
「潜入班のビーコン受信!」
「来たか、情報連結も頼む。他の機体は次のフェイズに備えてCWの処理を」
 リヴァルの声に頷き、ユーリは急ぎ兄の居る地上への通信回線を開く。
「こちら、爆撃チーム。ビーコンの受信を確認。繰り返す、こちら爆撃チーム、ビーコンの受信を確認!」
 通信を開きながら地上からの情報回線を拾い、現地状況を回収する。
 そして、ユーリは知る事になる。
 とんでもない先客がいるという事に。

●天秤座のカード
 CWが爆散する。
 地上から情報を貰う間に、四角いナタデココのような物体も、あと2機を残すだけだ。
 HWも応戦するが、動きが良くなり始めた傭兵達に大きな打撃は与えられなかった。
 しかし、それ以上の問題が潜入班からもたらされていた。
『デルタより爆撃チーム、ビーコン受信確認。こちらは撤退する』
「了解。間もなく目標に攻撃開始します。巻き込まれ無いように離脱してよね、リュー兄」
 格段にクリアとなった音声は爆撃チーム全員が聞き取れるほどになっていた。
 無線の声は、照明弾を打つ手筈だった兄ではなかったけれど、きっと側に居るのだろうと思い、軽口を付け足して一瞬だけ彼らの無事の脱出をユーリは祈る。
 自分達の方が危ないのだろうとも、思いながら。

「まさか、ギガワーム本体まで居るとはね‥‥」
「丁度良い、プラントごと潰れてくれれば良いというものだ。やる事は変わるまい」
 るなの言葉に、榊が答え同意を求める。
 そう、プラントに潜入していたチームの情報で判明した事は、GWが既に工場内に鎮座しているという事。
 GWが現れた場合は、撤退―もしくは、時間を稼ぐ予定であったのだが。最初から居るなんて、想定していなかった。
 しかし、考えてみればGWを作る工場なのだ。居たとしても、おかしくはなかったのだ。
 幸い新品の物では無いらしく、報告にあった大破した機体が応急処置の為に降りたという事だろう。
「どう、いたしましょう?」
「ボロボロの奴みたいだね。逃げた機体って事かな」
 本来ならGWの牽制を担当するはずだった小夜子と拓那も、判断しかねていた。
 GWは8機で相手をするには、難しい相手なのだ。――撤退を考慮するほどに。
 しかし、彼らは克の言葉に判断を下す。
「全部‥‥燃えてなくなれば‥いい‥‥。二度と‥ワームが飛び立つことの‥‥ないように‥‥」
「ギガワーム工場に鉄槌を、オマケが居たって変わりません」
 真帆もそれに同意する。
「確かに、迷ってる時間は無い、‥‥ですか」
 リヴァルは頷くと、傭兵達は2班に編成を組みなおし爆撃作戦を開始した。

●爆撃
 小夜子は嫌な予感を感じつつ、仲間と同じく爆撃体勢を取る。
 と、そこへ個別通信が入る――拓那だ。
『不安? 小夜ちゃん。‥‥実は俺も。けど、二人でならやれるよ絶対。力を貸して? 俺も貸すから』
「拓那さん‥‥」
 苦笑してみせる恋人の、優しさに思わず笑みが零れた。
「ふふ‥こんな時に不謹慎ですけれど、一緒で本当に嬉しいです」
 小夜子は僅かに残る不安を振り払い、ハンドルを強く握りなおす。
 そして、ふと思うのだ。
 自分には拓那が居るように、ユーリやリヴァルにも兄弟や想い人といった人が居るのだと。
 だからこそ、無事に帰らなければ――と。


 そして、爆撃作戦が始まった。
 フレア弾を積んだα班:榊、克、リヴァル、真帆
 ロケットランチャーを積んだβ班―:小夜子、るな、ユーリ、拓那
 フレア弾を落とすには、ある程度飛行速度を落とす必要がある、それ故に爆撃中に狙われる事も多い。
 それ故、α班が先行し、爆撃する間β班でHWやCWを抑えるという作戦だ。
 ――爆撃中を狙うのは賢明だが、背中ががら空き、っと!
 降下するα班にHWが砲火を集中させようと動いた、更に上に回り込んだ拓那がすかさずトリガーを引く。
「頭の上は押さえたよ。気にせず届けにいっちゃって?」
「了解、α班爆撃開始する!」

 迫るプラント、射程内に入ったのかプラントに設置された収束フェザー砲がα班の機体を掠める。
 しかし、それで引く程彼らは弱くもない。
「雷電は強襲機。このような任務にこそ実力を存分に発揮出来るというものだ」
 強い眼光を宿す、深紅の瞳からは同じ紅の涙を流しながら、榊が吼える。
「行こうか、【忠勝】! 敵を粉砕する為に!」
 赤漆色に塗られた愛機の雷電【忠勝】は、榊に応えるかの様に駆動音を唸らせ急降下をする。
 風を切りつつ超伝導アクチュエータを作動させた【忠勝】は、プラントからの対空砲を回避しながらビーコンの示すポイントを目指しフレア弾を投下した。
 続くリヴァルも、ほぼ同時にフレア弾の投下する。
「先行した部隊の友人に示さなければならない。――信頼の先にある結論を」
 彼らは成功して見せた――なればこそ、失敗は出来ない。
 リヴァルは脳裏に過ぎる友人の姿に、口角を上げると機体を反転上昇させた。
 その一瞬のち、榊、リヴァルのフレア弾が続け様に弾頭が炸裂して大きな振動と共に爆炎があがる。
 さらに、克と真帆のフレア弾も無事に着弾すると、プラントは大きく崩壊し始めた。
 屋根が大きく崩れ爆炎に飲まれるのを横目で確認しながら、α班は素早くその場を離れ上空へ舞い戻る。
「護衛‥‥感謝する」
「次、β班。駄目押ししてきます」
 るなの掛け声で、バトンタッチするように交錯した2班が役割を逆転させる。
「今度はこっちからお届けだ。迅速、正確、丁寧に、ってね?」
「えぇ、家主が戻る前に済ませてしまいましょう、ですね」
 両翼から発射されたロケットランチャーが、いまだ散発的に爆発を繰り返すプラントに突き刺さる。
 最初の2発を口切に、次々と弾頭がプラントの黒煙の中に消えた後、新たな爆発を起こした。
 その熱波に、一時的にKVの外気温を示す計器が、生身では耐え切れない数字を表示する。
「これで、GWもまとめて潰れてくれればいいんだけど」
 任務はプラントの破壊。
 ユーリを含め全員ロケットランチャーの残弾数を殆ど吐き出して、その任務を完うさせた。
 プラントは間違いなく機能停止したであろうし、ビーコンの反応も完全にロストしていた。
 ――しかし。

●堕つ
「流石に、そう都合良くは行かないものか」
 榊の呟きに、誰もが同意を示しただろう。
 黒炎を吐くプラントは周囲の木々をも巻き込み、他の要塞施設と同様かそれ以上に崩壊していた。
 しかし、その瓦礫が大きな音を立てて持ち上がるのがモニターに映し出される。
 ゆっくりとGWが炎を振り切り上昇してくる。

「どう、します? ビーコンは全て破壊済み。離脱条件は満たしています」
 リヴァルが仲間に問う。
 幸い、HWはβ班が爆撃している間に全て撃墜していた。ひょっとしたら、HWもGW同様に損傷していたのかもしれない。
 ともあれ、離脱するにしても、倒すにしても、決断は早い方がいい。
「倒すのは難しいでしょうか」
 元々大破していた機体だ。幾ら、プラントの下敷きになった程度では壊れない強度を誇るとはいえ動くのがやっとのようにも、見える。
 もし、倒せるのならば。
「復讐劇はまだ終わらない、ということですね」
「放置して、やぶれかぶれに市街を攻撃しても後味が悪いですし」
 小夜子の言葉に、真帆、るなが同意を示す。
「なら、早く‥‥落とすぞ‥今度こそ」
 そう言うが早いか、克の機体がGWの側へ滑空していく。
「攻略戦の報告書によれば、鱗が欠けている場所があるはず‥‥そこを狙ってください」
 リヴァルの指示に各機が散開と接近を繰り返しながら砲撃を叩き込む。
 だが、GWとて黙ってやられる訳ではない。
 収束フェザー砲を動かし応戦する。しかし、動きが鈍さは誤魔化し様も無かった。
「一気に片をつけるよっ」
 それを見取った拓那の黒い機体が、悪魔の名を冠するに至った攻撃プログラムを起動する。
 小夜子の白い機体も、掩護出来るように機体をスライドさせた――その時。
 計器が一斉に警告音を鳴らす。
 そこは、主砲プロトン砲正面。砲台が微かに輝いていた。
「あっ‥‥」
 そこまで認識した時には、小夜子の意識は閃光に包まれる。
 しかし、光が止んだ時彼女が見たものは、目の前に立ち塞がる黒い機体。
「だ‥‥ザザッ‥じょぶ? 小夜ちゃ‥‥ザ」
「拓那さん!」
 咄嗟に主砲へ攻撃をし、直撃は回避出来たが拓那の機体の8割が制御不能に陥っていた。
 庇うように、榊がGWへ弾幕を降らせ、超伝導アクチュエータを機動させる。
「これで少しはマシになろう」
 その掩護を受けて、ユーリのソードウィングが欠けた装甲を更に抉り、克が至近距離からミサイルを撃ち込む。
「あと、一押しね」
 煙を上げるGWにるなが言うと、その言葉を待っていたかのように。
 もしくは、彼女の熱意に天が味方をしたかのように彼女が其処に居た。
「辛酸は散々嘗めましたからね、もう私は苦杯のソムリエですよ」
 真帆の雷電が舞い降りる。
 ――熱い熱い想いを込めた怒涛の弾幕を叩き込む為のトリガーを握って。

「この一撃は苦難と成長への返礼だ!」


●君の護り
 バダホス方面に向けてゆっくりと8機のKVが飛んでゆく。
 各機、損傷が多く見受けられたが特に酷かった拓那機も、辛うじて飛行可能だった。
「無茶をする」
 榊の言葉に、拓那は苦笑いを浮かべる。
「全くです、凄く‥‥心配したのですから」
「大丈夫だよ、御守。効いたみたいだから」
 何よりも、君を護れて良かった――と拓那は思いながら、基地に帰ったら怒られるのかなと思うのだった。