●リプレイ本文
※この報告書を読むにあたりの注意事項
この報告書は、零によって実際の出来事から大きく改変されています。事実無根なものもあります。よって、ここに書かれている事と、実際の人物像は大きく違います。ので、読むにあたって全てを鵜呑みにしないよう、あらかじめご了承ください。
紅の獣 零
●Return
一年前、とある国が正体不明の謎の組織に襲撃された。
組織の名は『バグアン』。
無数の極悪怪獣を従え、街や村を襲い破壊の限りを尽くしていた悪の組織。その力は強大で、人類は成す術もなくこのまま死滅するかに思えた。
だが、それを許さない8人戦士達がいた。
各々神より授かった特別な力に導かれた8人の勇者達の出現によって、バグアンの侵攻は止まるどころか大きな後退をしはじめたのだ。バグアンと人類の全面衝突。これが後に言う『地球守るぞGOGOGO!戦役』である。
8人の戦士達は命を懸けて戦い続けた。
その戦いは熾烈で、多くが傷付いていった。
仲間の尊い命を失いもした‥‥。
だが、それでも彼らは歩みを決して止めることはなく、遂には組織を壊滅にまで追い込むことができた。
訪れた一時の平和。
人々はこの平和に心から感謝し、祝福した。どうかこの時間が永遠に続きますように、と。
しかし、まさに今。
平和は崩れ始めようとしていた‥‥。
『燃え尽きろ魂』
●リアクト
崩れ落ちる家屋
炎
荒れの極みにたつ田畑
炎
無残にその亡骸を晒す逃げ遅れた家畜群
異臭
平和だった筈のこの村に満ちていた人々の笑顔と笑い声。だがいまやそこに満ちているのは建物の崩壊音と、『異形のモノ達』の呻き声だけ。狼を模ったその怪獣は死肉を喰らい、妖精を模ったモノはケラケラと甲高い、耳に障る笑い声を撒き散らしながら炎で染まった朱色の空を飛び回っていた。
間違いない、これは壊滅した筈のバグアンの怪獣『ウルフん』と『フェアリん』!
村には至るところにその二文字はあった。
『ネオ・バグアン』
悪の組織『バグアン』の復活を意味していた。これが本当だとすると、世界は再び混乱の時代へ突入することになる。
だが、闇あるところには必ず光がある。
この戦場も例に漏れることなく、八つの光が差し込もうとしていた‥‥。
東西南北に散り散りになったウルフんとフェアリん達は気付いただろうか。自分達が既に囲まれていることを‥‥。
●イーストサイド
目の前には一匹のウルフんの姿。
それを屋根の上から静かに見据える二人の男の姿。
旭(
ga6764)と兼定 一刀(
gb9921)だ。
「フッ‥‥この日が再び来るとはね」
「ほほう‥‥これが『ばぐあん』でござるか、面妖な‥‥」
新旧混合とはまさにこのこと。旭は何を隠そう先の戦役で生き残った8人の戦士のうち一人なのだ。復活など、この僕が赦さない!そう言わんばかりに、太陽神から授かった聖剣を頭上に掲げ、叫ぶ。
「年貢の収め時だよ‥‥輝け、僕の太陽!!」
その言葉と同時に眩く光る剣と旭。太陽神の祝福の逆光に、僅かにウルフんがたじろぐ。単純に眩しかったのか、神々しかったのか。どっち。
一刀には最近までの記憶がない。自分はどこから来て、どこへいくのか。自分は一体何者なのか。ずっと葛藤してきた。だが、彼はこれこそが道なのだと、これこそが使命なのだと強く感じていた。
「記憶がなくとも、拙者にはこの刀がある‥‥!」
チャキ
「来た路が見えずとも、この九字兼定は未来を見据えているでござる‥‥!」
静かに、だが力強く鯉口を切る。
「‥‥いざ!」
開戦の合図だ。
旭と一刀の動きと同時に、ウルフんが跳ぶ!
そして旭も跳ぶ!
「させるかぁぁ!!」
交差と同時に旭は怪獣の脚を掴む、そしてそのまま自身へ手繰り寄せた。だが凶悪な牙が旭の肩に襲った。
「ぐぁっ! ‥‥うぉぉお!!」
しかし旭は止まることを知らない。瞬間、旭の腕全体が体の数倍の大きさに隆起する。そして襲い掛かってきていた牙の第二撃をその腕に持つ盾で思いっきり叩きつけた。
その衝撃によって生まれたかまいたちの勢いに乗って地面へとまっさかさまのウルフんを待っていたのは一刀。
「隙ありでござるぁぁああああ!!!」
着地と同時に叩き込まれる強烈な回転撃。凄まじい回転で一刀を中心に大きな竜巻が生まれ、その風の刃はウルフんの体を容赦なく切りつける。
「‥‥トドメだ!!!」
太陽神よ、僕に力を‥‥!
祈りを込めて太陽剣を構える、そしてそれは今までにない眩い光を発した!
「いっけぇええサンシャインロード!!!」
頭上に舞うウルフんまでの距離およそ100m。
その距離一杯を、鋭利な光の斬撃が満ちる。
それ即ち、成敗の証。
「‥‥御免」
太陽波斬の波にのって肉薄していた一刀の刃が一閃。
旭と一刀の一撃により、ウルフんは三枚に卸され、絶命した。
●ウェストサイド
「‥‥手強いな」
先の戦役のもう一人の生き残り、番 朝(
ga7743)はフェアリんと応戦していた。見た目は可憐だが、このフェアリん侮るなかれ。
朝はい樹を器用に振るいながら、何度目かの超絶破壊光線をその身で耐えていた。まだだ、機をみるんだ‥‥!そう自分に言い聞かせながらフェアリんの攻撃に絶えていた。伸びきった深緑の髪も己の血でドス黒くなっていた。よくみると、身体の至るところに見るに耐えない傷があるではないか。
「くっ‥‥!」
だが、黄金の瞳は決して諦めの色を浮かべることはない。なぜなら信じているからだ。勝利を、そしてその先の未来を!
その信じる心に応えたのか。
フェアリんの羽が一枚、蒸発する。
遠方から放たれた最新型破壊光線銃による狙撃だ!
そしてそれを成し遂げたのは朝の相棒を務める、飲兵衛(
gb8895)その人である。
飲兵衛は静かに笑みを零しながら歌を口ずさむ。
それは殺戮の歌。
破壊の歌。
何千何万と破壊と殺戮を繰り返してきた、古き王の歌。
『哀無震歌』だ。これがギリギリ、版権、ダメ、絶対。
「ククク‥‥ほれ見ろ、次は脳天ぶち抜くぞ」
そしてテレパシーですぐさま朝に念を送る。
(「思う存分暴れろ‥‥ククク」)
飲兵衛の思念を感じ取った朝の瞳が光る!
この時を待っていた!あの技は身体に負担が掛かり過ぎる、だからこの好機を待っていたのだ。かつてあのバッタイを葬り去ったあの技‥‥!
「‥樹断奥義・木枯らし‥!」
囁きにも聞こえたその言葉。それはまさに酷使天使の囁き。
朝の愛剣が風を切る!
振り下ろされた樹の刃は地面を大きく穿ち、以前とは比べ物にならないほど、周囲50メートルに渡って大地を震撼させた。そして続けざまに回転を加えることで生まれる強風は、木枯らしの名に相応しい。
バランスを崩したフェアリんの辿る末路は唯一つ。
ズキューン‥‥!
「ほぅら‥‥ぶち抜いただろ?」
風穴の向こう側から飲兵衛はククっと笑みを零し、『哀無震歌』を鎮魂歌とした。
●サウスサイド
そしてもう一体のフェアリんを相手取っていたのは桂木穣治(
gb5595)と和泉 沙羅(
gb8652)だ。
だが良く見るとこの二人、既にボロボロだった。
フェアリんの神速のヒットアンドアウェイの攻撃に対応できず、身体は傷だらけ。
「くそ‥‥」
「なんとか‥‥!」
フェアリんは、これで最後と謂わんばかりに距離をとってエネルギーを収束しはじめた。
破壊光線だ‥‥!
今あれを喰らったら‥‥!
不吉な未来を想像してしまった穣治は、覚悟決めた。
このまま、負けるわけには、いかないのだ‥‥。
「すまん、沙羅さん‥‥」
「いいのよ‥‥一思いにやって」
短いやり取りだが、それは信頼がこもったやり取り。そして、緊張が伴ったやり取り。
「練成‥‥強化!!!」
穣治は持っていた呪本をパラパラとめくり次々と呪文を口ずさんでいく。そして呪文が進むにつれて、沙羅が纏っていた薄い燐光は光を増す。
「ググ‥‥ヴァァア‥‥!!」
禁断の呪文『練成強化』。
これは使用者に絶大のエネルギー強化を施す禁術。効果も大きいが、負担もかなり大きいので長い年月の間を封印されていた呪文だ。
それが今解き放たれた!
呪文詠唱終了と同時に二人を絶望の破壊光線が包み込む。
が、それは沙羅の手のひらの中で霧散するだけに留まった。
内なる力の解放、それが今沙羅に力を与え、蝕んでいる力だ。
「せめて傷だけでも‥‥!」
次に詠唱されたのは至高の回復呪文『練成治療』。みるみる内に沙羅と、そして穣治自身の傷が塞がっていく。
五体満足を手に入れた沙羅は赤い瞳でギンっとフェアリんを睨みつける。
「コレデ‥‥オワラセルワ‥‥!」
それを呟いたのは沙羅か。そうじゃないのか。フェアリんがそれに気付くのに僅かに時間を要した。
残像。
超絶な強化を受けた沙羅は瞬時に背後に回りこみ、足を振り上げる。だが辛うじてソレを避けることに成功したフェアリんはあからさまな安堵を零した。そしてその安堵は一瞬のもので、目の当たりにした光景に今度は逆に絶望を覚えるのであった。
回避され、空を切った沙羅の踵落としは空を切り、必然、地面に振り下ろされる。
そして生まれるクレーター。
周辺の地表を根こそぎ削ったその脚は止まることなく、回転を加えて横なぎに標的へと流れる。
痛みも感じず。
何も感じず。
自らの身体が何枚にもなり、すり合わせがズレ空を舞った後でも。
自分が死んだことを理解してない瞳は静かに光を失った。
「ググ‥ぐ‥‥あぁっ!!」
呪文が切れ、憔悴しきった沙羅を支え、穣治は静かに頭を撫でてやる。まるで父が娘へするかのように。
「よくやった‥‥今はゆっくりお休み‥」
●ノースサイド
「へっ、見つけたぜ、バグアン!!!」
フーノ・タチバナ(
gb8011)はやっとのこと見つけたウルフんの正面へと躍り出て、威勢よく啖呵を切る!
「この村は、未来への希望っ!」
カッ!
「てめぇらネオ・バグアンは未来への絶望!」
カカッ!
「そんなものは砕いてやる‥‥この俺のデスサイズでなぁ!!!」
カカカッ!!!
10メートルにも及ぶ大きなギザギザの斧、それはまるで死神が所持する死への片道切符。
「チェェェエエエエエンジ・モーケン、バトルモード!」
タチバナの雄たけびに呼応するかのように、バックルが光る!
日曜の朝7時半とかに流れる何かのような装着音の後に姿を見せたタチバナは、全身を真っ赤な鎧に包まれていた。
いや、タチバナと呼ぶのは些か不釣合い‥‥。
「闇に蠢く魔物度もよ、正義の光に散るが良い!! タチバナン惨jぐはぁ!!」
長ったらしい登場台詞に辟易してか音速タックルをかましてきたウルフん。マナーがなってない!変身シーンこそが醍醐味なのに!!
タチバナンは思わぬ不意打ちにその場でひざを突く。
「負けられねぇ、負けられねぇんだッ!」
「私もいますよ!」
ヘッ、やっときたか‥‥、そんな呟きを漏らしながらタチバナンは頭上を見上げる。目の前に建つ教会のシンボルのその上で。少女は可憐なメイド服を風に靡かせながら叫ぶ。その少女こそが、メイプル・プラティナム(
gb1539)だった。
「メイプル・プラティナム‥‥牙無き人の為の牙となり、悪を断っちゃう剣ですっ!」
とうっ!
メイプルが空を翔る!
風でスカートがなびく!
ナニが何色かはみんなの心の中に秘めておくのがベストだと思う!
形成逆転か、ウルフんが先ほどまで見せていた勢いはもはやそこには存在していなかった。
「よし、キメるか、メイプル!」
「はい、タチバナンさん!!」
敵の反撃の空気を読み取ってか、ウルフんは覚悟を決めてタチバナンへ先制攻撃を加える。が、それがタチバナンに届くことはなかった。
「ディフレクトウォォォォルッ!!!」
メイプルのエネルギー絶対障壁に阻まれたからだ。
「ナイスだぜ、メイプル!! 喰らえ、橘狗大切断!!」
波動と追従と追撃の三位一体!その一撃は100m程もウルフんを吹っ飛ばし、その速度から瞬間的に怪獣は発火した!
「必殺! プラティナム・ソォーーードッ!」
可憐な声を裏返しながらも、力の限り、命の限り、そして勇気が続く限り、プラティナムは叫んだ。
自分達の。
仲間達の。
そして、世界のみんな達の。
誰もが持ってる、『勇気』。
それは、朽ちることがない、永久に続く勝利の証。
「私達の勇気は‥‥‥死なないッ!!!! 光になれぇぇええ!!!」
「うおぉぉおおおおおおおおおおお!!!!」
極光が、あたり一体を包んだ。
それは、勝利の煌き。
暖かい、勇気の輝き。
永久に尽きぬ、勝利の雄たけび。
東西南北から攻めて、合計ウルフん二体、フェアリん二体を討伐完了した。まだみぬ敵は残り一匹ずつ。そして東西南北にいないということは、残りは村の中心部ただ一点のみ。
旭と一刀は静かに武器を見据え。
朝と飲兵衛は互いに互いを見守りながら。
穣治は沙羅を担ぎ、瞳に決意を宿しながら。
そしてタチバナンとメイプルは自らの勇気と希望を信じて。
戦局はいよいよ最終局面へと―――――
●という映画を見たんだ☆
「いやぁ、大胆なアクション映画だったねぇ」
「特別券貰えてよかった、かな?」
映画を見終え、穣治と沙羅は売店で買ったジュースを飲みながら談笑していた。
「まさかあんな風に表現されるとは、驚きでござる‥‥」
「俺はまた違う自分の一面が見えて、面白かった! 零すごいな!」
うんうんと一人頷く一刀の傍らで零の手をぶんぶん振り回す朝。零もうれしそうに一緒にぶんぶん飛び跳ねている。
「ありがとー!!」
「熱血ロボットアニメみたいでかっこよかったです♪」
零と同じく、ロボアニメが大好きなメイプル。きっとこの二人は、零が熱中している勇者王ガオガオガーの話で一晩中盛り上がれるだろう。
「あんな風に変身できたらかっこいいだろうなぁ」
「現実はまた違う、と言っても、あれはあれでありですかね」
「CGの演出がすごかったですね」
盛り上がるみんなとは少し離れ、コーヒーを啜りながらタチバナ、飲兵衛、旭は互いに映画の感想を言い合っていた。
彼らが受けた依頼を元に零が書いた報告書。
それが今日、晴れて映画化されたのだ。
毎日の激戦、死と隣り合わせの世界。
そんなつかの間に、こんな息抜きがあっても、いいじゃない?
後日、朝から送られてきたファンレターをにんまりしながら紅の獣のメンバーに自慢しながら、零はそんな風に思っていた。
こんな日が続けばいいのなー
魂が、燃え尽きるまで☆えへー