タイトル:【北伐】蚯蚓マスター:クダモノネコ

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2009/12/04 23:48

●オープニング本文


 ミミズ。
 目がなく、手足もない紐状の体を持つ動物の総称である。
 多くは土壌に棲み、土の中の微生物を食べて生きる。排泄物が土壌を改良することもよく知られている。
 つまり彼らは、人類にとって、基本無害な生き物であった。そう、生理的嫌悪を誘発する姿形以外は。


「大連市郊外で、ミミズが出ただと?」
 中国は遼東半島。UPC戦略軍のリチャード・ジョーダン中佐は、部下の報告に不機嫌を露にした。
「‥‥正確には、蚯蚓をベースにしたキメラの小群です。町長から再三の、出動要請が出ています」
 現地採用の少尉は切れ長の目で中佐を見つめ、キーボードを慣れた手つきで操作した。モニタ・パネルが切り替わり「ミミズ」が大写しになる。周囲の自然物との対比で、体がありえないほど大きいのはわかるが、容姿はミミズそのまんまだ。

「気色悪いものを大写しにするな! ‥‥戦局が落ち着き次第掃討部隊を出すと伝えておけ」
 ジョーダン中佐は苛々と怒鳴った。ごく近い将来、瀋陽市での市街地戦が避けられない状況下にあるというのに、田舎町のミミズになど、構ってなどいられるものか。図体がでかくて気持ち悪い以外に、何か被害が出ているというのなら、ともかく。

「お言葉ですが中佐、軍属である中佐や私でも嫌悪を催すキメラに怯えながら、いつ来るかわからない掃討部隊を待てというのは酷です」
「むぅ‥‥しかし今は臨戦時だ。キメラ退治に割ける人員など‥‥」
 そもそもフォース・フィールドを持つキメラの掃討に、SES兵装を使いこなせない一般兵は向いているとは言い難かった。
 大火力兵器はあるにはあるが、キメラ被害はあちこちで出ている。今回の町だけ優先的に配置するというわけには、いかない。

「件の蚯蚓どもは、地中に潜行して移動する習性を持っていると報告が来ております。手をこまねいていて、大連まで潜行してこられては拙い。周辺住民のためだけではなく、軍事的な意味からも、早急な対応が必要です」
「‥‥わかった」

 リチャード・ジョーダンは観念した。
「ULTに傭兵を寄越させよう。細かいキメラの相手は、我々より機動力のある傭兵の方が適任だ」


 そんなやり取りの末。
 ジョーダン中佐の上申により、ULTに傭兵向けの依頼が出されたのであった。


「場所は大連市郊外。敵は体長およそ7mの蚯蚓型キメラ4〜8匹。数が多いのでKVでの出動を要請します」

●参加者一覧

幡多野 克(ga0444
24歳・♂・AA
西村・千佳(ga4714
22歳・♀・HA
L45・ヴィネ(ga7285
17歳・♀・ER
イーリス(ga8252
17歳・♀・DF
プリセラ・ヴァステル(gb3835
12歳・♀・HD
佐賀重吾郎(gb7331
38歳・♂・FT
ダグ・ノルシュトレーム(gb9397
15歳・♂・SF
イシュケ=ナイトメア(gb9499
21歳・♀・SF

●リプレイ本文

 中国は遼寧省の南部に位置する大連市。
 UPC軍の基地から50キロ程離れた未開拓の地に、巨大な蚯蚓が現れたのは11月の下旬のことだった。
 これが大連から数百キロ離れた土地での出来事ならば、すなわち蚯蚓が大連を脅かさない距離に湧いたならば、UPCは傭兵を差し向けたりはしなかっただろう。
 表向きは、周辺住民のため。実のところは、戦略的危機の除去。
 戦争は合理的かつ非情でなければ、勝つことは叶わない。
 
***
 蚯蚓退治の任を受けて大陸を訪れた傭兵たちは、大連市のUPC基地を経由して、出没ポイントへと到着していた。
「拙者 大陸は初めて。いやー 広いものでんな」
 ノーヴィ・ロジーナのシステムチェックを行っていた佐賀重吾郎(gb7331)が、調整したばかりのカメラで視る風景に感嘆の声を上げた。なるほど彼の言うとおり、黒土を敷き詰めた大地が、見渡す限り広がっている。
 土地の形状は裾広がりの巨大な三角形で、一番長い辺が海に面し、残り2辺は山に抱かれる格好になっていた。一辺はおよそ1000メートル。人工島ラスト・ホープではありえないスケールの大きさだ。
「S−O1Hの初陣には、申し分ない舞台です」
 人類初のナイトフォーゲル、S−01を再設計した機体を操るのは、ダグ・ノルシュトレーム(gb9397)。コンソール・パネルに並ぶ機械類とその反応を確かめつつ、わずかに頬をゆるませていた。
「ふふ、型は少々古いけど良い機体ですね。反応も悪くない」
 金では買えない機体の搭乗権を得た若きストライクフェアリーは、どのような闘いをするのだろうか。
「蚯蚓か。アースクェイクに比すれば弱かろうが、それでも数を活かした連携は脅威だろう…確実に、行かなければな。‥‥皆、宜しく頼む」
 一方、電子戦機ウーフーのコクピットで、L45・ヴィネ(ga7285)は、地殻変化計測器の設定を再確認していた。一辺が1000メートルもある三角形の中、あてずっぽうで地面に潜った敵を探していては、時間がいくらあっても足りない。
「はい〜、では〜、皆様〜頑張りましょ〜ね〜」
 ヴィネ同様、地殻変化計測器を持ったイシュケ=ナイトメア(gb9499)が、ぽややんとした口調で返事をした。しかし行動はあくまで早く、愛機ヘルヘブン250で、反対側の辺へと向かう。カプロイア社の浪漫が詰まった「バイク」は、柔らかな土など、ものともしない。
「‥‥なるべく、たくさん探知できると‥‥いい」
 雷電に搭乗した幡多野 克(ga0444)はヴィネと同じ辺の、だがやや海側に機械を設置し、「うにゅ〜頑張って行くのー。えいえいお〜なの♪」
 プリセラ・ヴァステル(gb3835)は、三角形の中ほどに2つの端末を、イシュケが埋めた辺のやはり海側に、残り1つを設置した。彼女の愛機は真っ白ペイントで「兎仕様」にカスタマイズしたゼカリアだ。
 地殻計測器の効果範囲は、およそ半径数百メートル。広大な索敵範囲ゆえ全域を計測するには、残念ながら至らない。
「解析、開始なの〜」
 意図的に散らして設置した6器は、それぞれの計測範囲のデータを「主」である各ナイトフォーゲルへと送信した。
「データリンク終了。計測範囲、全エリアの85%。現時点で確認できる地殻変化は‥‥ヴィネ機、1箇所」
「わたくしとスレイプニルは、1箇所確認しました〜」
「うにゅ〜、あたしは2箇所かな〜」
「‥‥ん、俺も1箇所。‥‥現時点で確認できるのは‥‥5箇所‥‥か」
 現時点で予測される蚯蚓の数は5匹。
 検索範囲外に潜んでいる可能性もあるが、おおよその目処はついた。
「‥‥では、パーティと‥‥いこう」
 地殻計測を終えた4機は、それぞれ予め定めた位置まで後退する。
 克言うところの「パーティ」、すなわち、次なる作戦へと移るために。


***
「アースクエイクは何度か見かけた事が有りますが、ただの巨大ミミズキメラというのはあまり聞かない話ですね」
 MSIの生み出した苛烈な女神、ディアブロ。操るのは金髪を黒いリボンで纏めたイーリス(ga8252)。
 海岸線で待機していた彼女は、横に控えるネコミミ付のゼカリア‥‥否、コクピットの西村・千佳(ga4714)と言葉を交わしていた。
「蚯蚓‥‥アースクエイクじゃなくてよかったにゃー」
 千佳は頷きつつも、主兵装であるグレネードランチャーの最終チェックに余念がない。
 作戦の第二ラウンドは彼女ら「燻り出し」班が担っているのだから、無理はなかった。
「待たせたな。蚯蚓どもにお出まし頂く時間だ」
 ヴィネのやや緊張した声が、無線越しに飛ぶ。
「さぁ〜出て来るのーっ! どかーん、といくの♪」
 プリセラの兎ゼカリアが、無骨な大型榴弾砲を肩に担いだ。
 外からは窺い知れないが、コクピットの中の少女は、真剣そのものだ。
「‥‥いつでも、構わない」
 グレネードランチャーにミサイルポッド、さらにショルダーキャノンを携えた克も、準備が整っていることを告げる。そう、髪の色を銀に、瞳の色を金に染め、気分の高揚を感じながら。
「マジカル♪ レッド参上♪ ネコミミゼカリア、がんがんいくのにゃー♪」
 ネコミミゼカリアがグレネードを握る手を高々と上げ、勝利を約束するポーズを取った。
 準・備・完・了!
 重吾郎のロジーナ、ダグのS−O1H、イシュケのヘルヘブン、そしてイーリスのディアブロが下がり、得物を構えつつ待機する。
 燻り出し班が入れ替わりに前進し、それぞれの重火器で、前方の地面を狙いを定め
「GO!!」
 合図とともに、耳をつんざく爆音が複数轟いた。


***
 グレネードランチャー3砲にミサイル、キャノン砲、さらに大型砲から吐き出された榴弾たちが、蚯蚓たちの潜む地面にめり込み、炸裂する。
 地震のような衝撃の後に、たちこめたのは火薬の臭いだ。
 吹き飛ばされた黒土は海からの風に煽られて舞い上がる。
 火器のもたらした煙と混ざり合い、作戦区域の視界は一時、ほぼ奪われた。
 やがてそれらが薄く掻き消え始めた頃
「‥巨大なキメラ、いくつも見てきたけど、これは強烈だ‥‥!」
 克が、息を呑んだ。
 靄の向こう、黒ずんだ肉色の蚯蚓どもが姿を現した。
 透明の粘液を帯び、ぬめぬめと濡れ光る環状生物が5匹、首をもたげて蠢いている。
 計測器の導き出したデータとほぼ違わぬ位置‥‥山沿いの2辺に各1匹、三角形の真ん中あたりに3匹。
 間合いは最大では300メートル離れていたが、もっとも近い個体同士では、50メートルも離れてはいない。
「ぬらぬらしてて、あまり生理的に受け付けるものではないですね‥‥。早々に処分してしまいましょう」
 迎撃を担当するダグも、うんざりと言った調子で肩を竦めた。
 傭兵といえど、能力者といえど、理屈抜きに嫌悪を感じる「モノ」というのは存在するようだ。
「蚯蚓は本来、大地の為になる生き物。しかしこやつらはは逆に大地に仇をなす物‥‥故に拙者は滅する!」
 穏やかだが決意を秘めた口調で重吾郎が頷き
「全くだ」
 ジャミング中和装置を起動させながらヴィネも同意した。バグアの妨害電波が周囲から消えうせる。
 それはナイトフォーゲルに、薄く纏わりつく枷が外れたことを、意味していた。

 
***
「さて、出番ですわ〜」
ヘルヘヴンのコクピットで、イシュケがそっと眼鏡を外した。緑の瞳に騎士の光が宿り、ぽややんとした雰囲気がすっと影を潜める。
「‥‥では、我々の蹂躙を開始しようか」
 外的変化のほとんどない、静かな変化。だが彼女は確実に覚醒していた。
 ヘルヘブンの4つの足に嵌ったタイヤが、柔らかい土をしっかりと踏み、山際に向かって高速で駆ける。
「わたくしも、行きます」
 イーリスのディアブロが、機銃を構え、後に続いた。
 ヘルヘブンの戦闘セオリーは、圧倒的な速力を生かした突撃戦法に在る。
 もちろんイシュケも、そのことは十分承知していた。
 機槍「宇部ノ守」を構え、身の丈より大きな蚯蚓の懐に飛び込んでは攻撃、離脱のヒット&アウェイを狙う。
 しかし
「‥‥く!」
 愚鈍そうな姿と裏腹に、蚯蚓はすばしこかった。表面が粘液で濡れていることも災いして、「宇部ノ守」の一撃はなかなかヒットしない。
 そうこうしているうちに仲間の蚯蚓が、戦闘に勘付いた。地響きにも似た音を立てながら、ヘルヘヴンと先に居た蚯蚓がにらみ合う場へ、身をくねらせ参戦する。
「‥‥汝ら、我に仇なすか‥‥ッ!」
 副兵装のリコポリスで防御を固める間もなく、2匹の蚯蚓がヘルヘヴンに襲い掛かった。
「援護します」
 無線ごしに凛と響くイーリスの声。同時にディアブロが機銃を、蚯蚓の表面を掠めるように削り取るように、掃射。
 粘液の詰まった風船が割れるような、水っぽい厭な音が響く。ヘルヘブンに巻きつこうとしていた蚯蚓が頭を砕かれ、体組織をぐずぐずに崩しながら黒土に沈んだ音だ。
「感謝する!」
 ヘルヘブンは粘液を頭からかぶっていたが、中のイシュケに大事はなかった。すぐさま体勢を立て直し、うねうねと蠢く体皮に、何度目かの突撃を試みる。
 間合いを詰めたディアブロも、武器をバーニングナックルに持ち替えた。
 形勢逆転、勝負は決まったも同然。そこに
「うにゅっ! イーリスちゃん、様子が変なの!」
 割って入ったのは、戦車形態に切り替わったゼカリアに乗るプリセラ。何が? 聞く間もなく。
「!!」
 地殻計測器の範囲外からフレーム・インしてきたと思われる蚯蚓が2匹、土煙ともに地表に顔を出したのだ。
 出没地点は、いずれも千佳とプリセラの待機場所からわずかに20メートル付近。
 行動特性から「仲間」を窮地に追い込むヘルヘブンとディアブロに向き直るかと予測されたが
「み!? こっち向いたにゃ!!」
 ゼカリア2機に向かって、進軍を開始した。
 ナイトフォーゲルの燃料であるオイルと、先ほど派手にぶっ放した火薬の臭いに、惹かれたらしい。
「にゅ、近づくんじゃないにゃ! 今日の僕は近接苦手なのにゃ!」
 蚯蚓に顔を向けたまま、ネコミミゼカリアが後ずさった。肩に積んだ大口径のキャノンが轟音とともに、弾を吐く。
 一方、プリセラのゼカリアは、大口径滑腔砲で挑んだ。
「うにゅ! 大人しく駆除されるの〜〜!!」
 1点に集中するように設計された砲弾は、蚯蚓の腹(?)に命中し、炸裂する。
 断末魔も上げずに、キメラは肉片になり果てた。
 近接戦組も、遅れは取らない。
「駆けろスレイプニル。そして打ち砕く!」 
 イシュケのヘルヘヴンが、イーリスから離れ、携えた機槍を再び振るう。
 ほぼ同じタイミングで、イーリスのバーニングナックルが、居並ぶ獲物を抉り、順に砕いた。
 ぐじゃりと潰れる、手ごたえのない肉。
「‥‥終わりです」
  ディアブロの拳は、絶命したキメラの流した血液でどす黒く染まっていた。


***
 山際で4機のナイトフォーゲルが、4匹の蚯蚓と死闘を繰り広げているまさにその時。
「敵の動きに注意すれば、造作もない。‥‥いける!」
 海岸線付近でロジーナとS−O1Hも、2匹の蚯蚓と格闘していた。
 重吾郎のロジーナは副兵装の90mm連装機関砲で弾幕を張り、蚯蚓の接近を許さない。間合いを取った上で主兵装のレーザーガトリングを撃ち込み、着実に生体兵器どもの体力を削る作戦だ。
「‥‥無理な接近戦はしないほうが得策です‥‥しかし、意外に固い」
 弾幕の隙間からマシンガン掃射をするダグが、少しばかり焦りを見せた。がしゃん、と音を立てて空になった弾装のカートリッジが棄てられる。
 即リロード、再び掃射。1匹は土に還った。しかしもう1匹は、沈まない。
「ならば、斬るまで」
 弾切れを機に、ロジーナが得物をディフェンダーに持ち替える。なじんだ得物が、傷つきつつも斃れないキメラに向けて振るわれた!
「うーむ しっくりくる。横一線両断してくれる!」
 半ば言葉どおり、蚯蚓を抉る槍の先端。
 苦しげに跳ね回る巨大な体を、後方から飛んできた高分子レーザー砲が射抜いた。
 たちまち黒土にばら撒かれる蚯蚓、否、肉の破片。射手は、ウーフー。操るは、ヴィネだ。
「あと1匹!」
 ロジーナはシャーウッドを構え、少し離れたところにいる蚯蚓に向き直った。そのまま高速装輪走行に切り替え、一気に間合いを詰めようと走る。
 地殻計測器のデータを検証していた克の声が、ノイズを孕んで無線から響く。
「拙い! 足下から来る!!」
 彼の警告通り、地から沸く新たなる蚯蚓。先刻の戦闘で、いくらかの損傷を負ったロジーナ機の腰から下に、うねりながら絡みついた。
「むうっ」
「こちらダグ、佐賀機の援護に入ります」
 仲間の危機に、パイクーン・ホーンを握りしめたS−O1Hがすぐさま駆けた。
 操縦席に座る少年の目と髪は青く染まり、華奢な身体は青白いオーラを帯びている。
「‥‥ちょっと痛いかもしれないけど‥‥。少し我慢してくださいね」
 ロジーナに絡みつく蚯蚓どもを、二叉の槍で突き剥がす。己に絡み付こうとするのを、盾で防御することも忘れない。
「かたじけない」
 ようやくロジーナから離れた2匹を待ち構えるのは、克の機杖「ウアス」と、ヴィネのレーザー。
「悪いな、終わりだ」
「地中が前達の還るべき場所…大人しく散ってもらう!」
 聴覚も視覚も持たぬ蚯蚓たちに、能力者たちの声が届くことはない。命を閉ざすものたちの姿が、見えることもない。
 最期の咆吼を上げる声帯すら持たぬ生物は、ただ静かに、命を閉ざした


***
 柔らかく肥えた黒土に、重吾郎が穴を掘る。
 肉片と化した蚯蚓たちを1匹ずつ運び、優しく埋めるのは兎ゼカリアだ。
「大地の肥やしになれよ」
「うにゅ〜 次も仲良く、今度は普通の生き物に生まれておいでー」 
 並んで手を合わせる、2機のナイトフォーゲル。それはユーモラスな光景でもあり、どこか物悲しくもあった。
「にゅ‥‥『正義の魔法少女は負けないのにゃ〜♪』とは、ちょっといいにくいにゃね」
 仲間の祈る姿に、ネコミミゼカリアの中で千佳も瞑目し、祈る。
 だけどその後こっそり、小さくガッツポーズはしてみたり、した。
 
 ***
 大連基地に出頭した傭兵たちは任務完了の報告を行い、ラスト・ホープへ戻る高速艇を待つ身となった。
「迅速な対応、真に感謝します」
 現地採用されたらしい中国人の少尉が、能力者たちに中国茶を振舞う。
 オリエンタルな茶器にて供されるくつろぎのひと時。皆心の底から、癒されていた。
「む、ゼカリアの2人と、ダグはどうした」
「‥‥ハンガー行くって、いってた」
 
 大陸の夕陽が差し込む駐機場。そこには
「お世話になった機体を綺麗にしてあげるのにゃ♪ あ、プリセラちゃんも一緒にどうにゃー?」
「うにゅ〜 キレイにしてあげるの〜」 
「これからもよろしくお願いしますよ、俺の相棒」
 パイロットの手でメンテナンスを受ける2機のゼカリアと、S−OHの機影が在った。