タイトル:★鍋しましょ★マスター:クダモノネコ

シナリオ形態: ショート
難易度: やや易
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2009/12/20 19:54

●オープニング本文


 冬休み間近のカンパネラ学園。
 生徒会事務部雑用係、笠原陸人は、事務部室で途方にくれていました。
 彼の目の前の事務机には、食材が文字通り山のように積み上げられています。
 具体的に言うと
 白菜、ねぎ、しいたけ、白身魚の切り身、牛肉 などなど。
 どうしてこうなった? どうしてこうなった?
 ああ、興味を持っていただけたなら幸いです。
 現状を、当人から手短に解説させましょう。

***
「えっと、この食材はみんな、学園の近所に住む方々にいただいたんです。
 ほら僕らは、キメラ退治とかするでしょ。そのお礼って感じで。
 ‥‥あ、そのこと自体はとってもありがたいし、嬉しく思ってます!」

 雑用係はそこで一旦言葉を切りました。一息つき、山積みの食べ物たちに視線を移します。

「で、今回の『これ』らですが。
 野菜は農家のおばあちゃんに、お魚は魚屋のお兄さんに、お肉は教会の修道女さんにいただきました。
 野菜は自家製で、お魚は仕入れすぎて悪くなる前にってことで、
 お肉は修道女さんが教徒さんにもらったモノの、おすそわけです。
 あっ、大事なことだから2回いいますけど、ご好意は本当にありがたいんです」

「いただいた食材は、いつもなら学生食堂に持って行って、食堂のおばちゃんに調理してもらっています。
 カンパネラに在学する生徒みんなで、美味しくいただいています。でも、今回は、今回は‥‥」

 今回は?

「おばちゃんたちが2泊3日の慰安旅行で、温泉に行ってしまったんです!
 だからって僕一人では、半分も食べきれないしッ‥‥!」

 そこで少年は頭を抱え、何度目かのため息をつくのでした。

***
 ‥‥どうでしょう学生ないしに、聴講生の皆さん。
 食べ物を粗末にすると、オバケがでるそうじゃないですか。
 ここはひとつ、鍋になど付き合ってやっては、もらえませんか?

●参加者一覧

石動 小夜子(ga0121
20歳・♀・PN
西村・千佳(ga4714
22歳・♀・HA
L45・ヴィネ(ga7285
17歳・♀・ER
小野塚・美鈴(ga9125
12歳・♀・DG
シルバーラッシュ(gb1998
20歳・♂・HD
プリセラ・ヴァステル(gb3835
12歳・♀・HD
東雲 凪(gb5917
19歳・♀・DG
九龍 リョウマ(gb7106
20歳・♂・ST

●リプレイ本文


「貰った食材で、鍋しましょ」
 要約すると一言に尽きる依頼の会場となる、生徒会事務部室。
 言い出しっぺの笠原 陸人(gz0290)は机で「部室時間外使用申請書」と「火器使用申請書」の空欄をせっせと埋めていた。
「やっばい、開催日までに出さなきゃいけなかったのに」
 どうやら、鍋を円滑に行うための手続き事のようだ。
「よし、書けた! 出しにいかなくちゃ!」
 くしゃくしゃと紙をポケットに捩じ込み、席を立つ。
 と、そこにノックの音が響いた。

「こんにちは〜なのだ〜」
「うにゅ〜鍋、鍋、お鍋〜♪ 楽しみなのね〜♪」
 訪れたのは小野塚・美鈴(ga9125)とプリセラ・ヴァステル(gb3835)。
 規格外のバストを弾ませる美少女2人の訪問に、少年の頭から何かがすこんと抜ける。
「いらっしゃい! すっごい荷物だね、手伝うよ」
 陸人は美鈴の押す台車を引き取り、部室の中へと押して入った。ジュースにカセットコンロ、それに土鍋が括りつけられており、なかなか重たい。台所まで運び入れた後、プリセラの抱える段ボール箱を引き取る。
イカやエビの他、見たことのない調味料や缶詰が満載だ。
「ね、これは何の材料?」
「ブイヤベースを作るの♪ あたし大好きなの〜♪」
 兎のように飛び跳ねながら張り切るプリセラに、期待のまなざしを向ける雑用係。
「それは楽しみだねっ」
 こんなかわいい子が作るモノが、不味いわけがない。「ぶいやべーす」が何かは知らないけれど。

 美鈴とプリセラが仕込みを始めてすぐ。
「こんにちは。賑やかで楽しくなれば良い、ですね」
 黒髪を高い位置で結い上げた石動 小夜子(ga0121)が、部室を訪れた。
 身に纏うは男子の萌えツボを刺激する、凜とした巫女装束である。
「お鍋は寄せ鍋とチゲとブイヤベースだったでしょうか? 仕込みのお手伝いをさせていただきますね」
 にこりと微笑み、台所に混ざる小夜子。
「うにゅ♪ ブイヤベースはお魚で取った出汁が大事なのっ♪ 今日はママの味を再現できるようにがんばるのっ♪」
「ねえプリセラちゃん小夜子さんっ、一段落したら激辛ハバネロ団子を作るのだ〜」
「ふふ、気をつけないとうっかりお鍋に、入れてしまいそうですね」
 プリセラや美鈴と微笑みあいながら、仲良く鍋の支度に勤しむ。
(いい絵だなぁ‥‥)
 3人の背中を眺める陸人の頬は、傍目にもわかるほど緩んでいた。

(あれ、俺なにかしようと、してたっけ。まぁいいか!)


**
 それから約30分後。
「デザートを持ってきたぞ。暖房の効いた部屋で食べる冷菓も、乙なものだ」
「にゅふ、やっぱり寒い日はお鍋にゃね♪ 楽しみにゃ〜♪」
 9個のバニラアイスがひしめく紙袋を携えたL45・ヴィネ(ga7285)と西村・千佳(ga4714)が、部室の扉を叩いた。
「僕も食べ物持ってきたにゃ♪」
 千佳も得意げにささやかな胸を反らし、鞄から何かを取り出す。
 ‥‥出てきたのは、レトルト白飯と3個入りうどん玉。
「鍋には白いご飯が必須にゃ! ご飯と一緒に食べると美味しいにゃ♪ はい♪」
「あ、ありがとです」

「こんにちはー笠原さん、招待ありがとう!」
 6人目の女子、東雲 凪(gb5917)も加わったことで、部室は一気に賑やかに華やかになった。
 もっとも3人は台所を手伝うことはせず
「陸人、アイスが溶けてしまうぞ。早く片付けておけ」
「笠原くん、ついでにジュース持ってきてにゃ」
「ねぇねぇ懐かしいゲームあるよ? 鍋できるまで対戦しよっか!」
 畳敷きのスペースでTVゲームに興じはじめたのだが。
(んー‥‥趣味が合う女の子もいいよね‥‥)
 その背中を眺める陸人の頬は、またしてもぱやんと緩むのであった。


 さて、その陸人が3人分のジュースを持って台所から戻ると
「うっし、鍋タイムと洒落込むか」
 学生寮管理部に籍を置く、シルバーラッシュ(gb1998)が和室に座っていた。
「ひとつはスーパーレッドな辛旨チゲにさせて貰うぜ」
 ぬっと差し出される、禍々しいほどに赤いキムチの袋。
(前回はアザラシで、今回はこれか‥‥)
 困惑しつつ受け取る雑用係と裏腹に、
「ん、美味そうだ」
「笠原さーん、味見してみたーい」
 格ゲー対戦中のヴィネと凪が 試食を要求する。
「了解です、小皿持ってきますね」
 あたふたと台所に戻る後輩の背中と、ゲーム女子達を交互に眺めたシルバーはついと肩を竦め
「気が利かねえオンナはマジでもてねーぞ。なーンて」
 ひっそりこっそり、呟いた。


 三たび陸人が小皿と箸とシルバーの飲み物を持って台所から戻ると、またしても和室の頭数が増えていた。
 大人の魅力を漂わせるストレートロングの美人だ。
「初めまして、九龍 リョウマ(gb7106)です」
「!」
 しかもその美人がちゃぶ台を拭き、かいがいしく皿やコンロの準備をしているではないか!
(ちょ、すっごい美女じゃないですか! 気も利くし!)
(あァ、男なんだとよ)
「えっ?」
 不躾に声を上げた少年を咎めることなく、リョウマはにっこり微笑む。
「なにかお手伝いすることはありますか?」
 それはどうみても「きれいなおねえさん」の笑顔だった。


**
 学園の水銀灯に、光が入る頃。
 事務部室の台所からは鍋の香りが漂っていた。
「んにゅ〜♪ ニンニク炒めて香りを出して〜、お野菜、トマトペーストにお魚っ♪ 小夜子ちゃん、お味はどうっ?」
 金属鍋で本場仕込みのブイヤベースを作るのはプリセラ。
「ええ、とても、美味しいです」
 そのスープを一口味見した小夜子は、目を輝かせて頷いた。
 傍らで美鈴は、チゲと寄せ鍋の面倒をみるのに余念がない。
 準備の整った皿や鍋を運ぶのはリョウマが受け持った。

 一方、和室のヴィネと凪は、縦スクロールの宇宙要塞攻略ゲームに情熱を傾けていた。
「凪、その板はいくら撃っても破壊出来ない!!」
「え、256発あてれば壊れるってのはデマだったの?」
 ギャラリーの千佳は、ちゃぶ台の様子を確かめてから声をかける。
「2人とも、そろそろご飯の時間にゃよ〜♪」
 彼女のお目当ては、赤い煮汁が沸騰し、具が見え隠れしているキムチたっぷりのチゲだ。
「じ、地獄の鍋みたいですね‥‥寄せ鍋はすごく美味しそうなのに」
「喰って美味けりゃ文句ねーだろーが」
「文句ないにゃ♪」
 見た目については、気にしたら負けらしい。

「うにゅ〜♪ あとは出来上がりを待つだけなの」
「でもその前に、これを忘れちゃいけないのだ」
 美鈴が小皿に乗せた団子を3つ、キムチ鍋の表面にそっと乗せる。そう、激辛ハバネロ団子を。
「煮えるまで、ババ抜きなのだ! ビリの人は罰ゲームで激辛団子の刑なのだ〜」
「‥‥!」
 これは、負けられない。
 緊張の中、9人にカードが配られてゆく。恐怖のババ抜き大会の火蓋が、切って落とされた!
 
 
**
「くだらねえが、付き合ってやるわ」
 興味なさげを装いつつ、まずシルバーが2枚の手札を捨てた。目は全く、笑っていない。
「‥‥悪いが、本気で勝ちに行くぞ」
 眼鏡越しに全員の表情を盗み見るヴィネも、同じく2枚捨てる。
「みんなで遊ぶものですもの、楽しく盛り上がるといいですね」
 手元のカードを綺麗に揃えながら、小夜子はにこりと微笑み
「にゅふふ、楽しむけど勝つつもりでいくにゃ♪」
 千佳は誰にともなく、にやりとしてみせた。

 1巡目こそ全員に余裕があったものの、2巡目になると明暗が分かれてきた。
 例えばヴィネの手元のカードは、既に1枚きり。隣の美鈴は5枚ほどのカードを抱え、途方に暮れている。
「悪いな、一抜けだ」
「はぅ‥‥ビリの予感がしてきたのだ‥‥」
 クセ毛を落ち着きなく動かしているプリセラも、戦況が思わしくない模様。
「うにゅ〜‥‥」
 そのプリセラからカードを抜いた小夜子は、軽やかに2枚排出。しかし続くリョウマの顔色は冴えず
「やっぱり罰ゲームは、イヤですね‥‥」
 呟く彼の隣で凪は、密かにジョーカーを持てあましていた。
(絶対に勝たないと‥‥持っていって!)
 黒い瞳に浮かぶのは、祈りにも似た色。隣の手がカードを抜いた瞬間、それは安堵に変った。
「ふぅ、命拾いしたあ」
「ちッ」
 シルバーは露骨に舌打ちし、千佳にカードを差し出す。
「勝負の世界は非情なのにゃ♪ って、ちょ、ババ以外のカードを抜けないようにするんじゃないにゃ!」
「フフ‥‥魅せてやるぜ、必殺技『シルバーロック』を!」
「にゅ‥‥こうなったら、覚醒してでもうばいとるにゃ!」
 なぜだか一触即発、ガチモード。「能力」の無駄遣いもいいとこである。

 結局。そこから回り回ったジョーカーと最後まで一緒に居たのはプリセラだった。
「うにゅ〜‥‥」
 罰として用意された3個のハバネロ団子に、赤い瞳は涙目気味だ。
「そもそも遊びだ、ひとつだけでよかろう」
 友人の窮地を見かねたヴィネが、控えめに助け舟を出す。しかしプリセラは果敢にも首を横に振り
「うにゅ! 勝負は勝負なのっ! 全部食べて見せるの〜!!」
 3つの団子を一気に頬張った。
「うにゅぅぅ〜!?」
 断末魔にも似た悲鳴が、部室に響く。
 小夜子が慌てて背中をさすり、冷たい水を口に含ませた。


**
 死闘(?)を終えたちゃぶ台に、湯気を立てる寄せ鍋とチゲ、ブイヤベースが並ぶ。
 飲み物は美鈴が差し入れたジューす類に加え、文化祭の残り物「カンパネラ搾り」も登場だ。
「どんなお味なのか‥‥とても楽しみです」
「なに搾ってるのかちょっと気になるけど‥ま、いっか」
 3分間だけ「ほわほわ」効果が現れる謎飲料が小夜子と凪をはじめ、全員の紙コップに注がれる。
「えへへ、では、乾杯〜」
 照れくさそうな音頭の後、紙コップが触れ合う鈍い音が、いくつか重なった。
 ‥‥ではこれから、参加者の飲みっぷりを、順に見て行くとしよう。

 壁際に並んで座っている、プリセラと美鈴の仲良しコンビ。
 いずれも頬は紅く、瞳も僅かに潤んでいる。いい具合に「ほわほわ」しているようだ。
「プリセラさん、あ〜んして〜♪」
 美鈴が寄せ鍋の小鉢を片手に、プリセラに身体をすり寄せた。
 2人の規格外サイズの胸が触れ合い、わずかにひしゃげ、弾む。
「うにぅ♪ 美味しい〜♪」
 『あ〜ん』してもらったプリセラは、それには全く頓着しない。
「搾り」のせいか若干「絡み兎」気味で、手は美鈴の腰をがっしりホールド。しかしそれでも
「美味しい? それはよかったのだ〜♪ ふにゃ‥‥何か熱いのにゃ‥‥」
「ダメなの、みんな見てるの〜♪」
 「搾り」効果で脱ぎたがる美鈴をを止める節度は、持ち合わせていた。

 ごくり。
 美鈴とプリセラの仲良しっぷりを眺めていた陸人の喉が音を立てた。
「おめー、喰わねーの?」
 横に座るシルバーは我関せずでチゲを咀嚼している。
 持参のハバネロパウダーを振りかけたそれは、スーパーレッド辛旨版だ。
「って、シルバーさん僕のチゲに辛い粉はっ」
「これがまた旨ぇんだ、なに遠慮すんな」
 半泣きで小鉢の中身を食べる陸人の肩越しに、小夜子がすっと水を差し出す。
「ふふふふ‥‥真っ赤で‥‥可笑しい‥‥‥ッ」
 「ほわほわ」効果で、その場に踞って笑い転げながら。

「笠原くん涙目にゃー♪」
 ヴィネと並んで鍋を食べていた千佳が陸人ににじり寄り、これまたけらけらと笑う。
 しかし彼女の「ほわほわ」はそれだけではすまなかった。
「にゅー、気持ちよくなってきたにゃー♪ にゅ、お膝〜♪」
 猫のように喉を鳴らし、陸人の膝で丸まってしまったのだ。
「ちょ、千佳さんッ! 起きて下さいッ!!」
 ほの温かい身体と女の子の匂いにうろたえる16歳。と、とりあえず膝から下ろさなければ。身をかがめた瞬間
「あ、ご飯ついてるにゃー♪ んふー♪」
 ぺろんと伸びた舌が、頬の飯粒を舐めた。
「!」

 真っ赤になって昏倒した陸人の膝から、ヴィネが千佳を引きとってゆく。
「ん、何故寝ているのだ貴様は。千佳は貰うぞ、懐が無性に寂しくてな‥‥」
 まどろむ『猫』をあやしながら、つつくのは寄せ鍋だ。
「ヴィネさん、お野菜ばっかり。お肉とかお魚は? 早いもの勝ちだよっ」
 牛肉に白身魚、海老などを山盛りキープした凪が、不思議そうに問うた。
「‥その、何だ。最近こう‥腹周りが気になってな‥‥」
 傍から見る限り問題なさげなのだが、乙女心は複雑だ。

 千佳に続き、凪にも翻弄される少年を見守りつつ、リョウマはシルバーと搾りを酌み交わしていた。
「ふふ、カンパネラ搾り、結構おいしいですね」
 キムチの残りを指で摘む仕草は、妙に色っぽい。
「ふぅ、開放的な気分になったからでしょうか、覚醒してしまいました。胸がキツくて‥‥少し緩めていいですか?」
 艶然と向かいに座るシルバーに声をかけてから、ボタンを一つ二つ、外す。
「好きにしろよ、オンナじゃねーんだか‥‥」
 チゲから視線を上げたシルバーが、ぎょっとしたように「ら」を飲んだ。
 何故平らであるべきところが、出っ張ってるんだ? 疑問が顔に貼りついている。
 目が合った。リョウマは、艶然と笑んだ。
「どこを見てるんですか? エッチですねえ」
 ちゃぶ台ごしにシルバーの顔をガシッと掴み、胸元に抱き寄せる。
 そう、GとかHとか、とにかくメガボリュームな、たわわな胸に。
 言うならば強制ぱふぱふである。羨ましいような、羨ましくないような。


** 
 「搾り」の在庫があらかたなくなり、鍋も食べ尽くした午後9時前。
 「あ、もうこんな時間にゃね〜 そろそろお片付けかにゃ?」
 平和で、けだるげなひととき。宴はそろそろお開きといった雰囲気。
 しかしそれは、思いもよらぬ乱入者、そう
「こらあ! 部室で無許可で火を使うなんて、何勝手なことしてるの! 首謀者、起立しなさいっ!」
 ミニ消火器を抱えた女教師、宮本遥によって破られることと相成ったのだ。
「え? ぼ、僕申請書類ちゃんと書いて‥‥ああ出すの忘れてたーっ!」
「ってか笠原、またアンタ? 夏の竜狩り(「狩れ!? 密林の翼竜」)の時もさんざん叱られたでしょうが!」


 と、いうわけで職員室。
 学園教師、宮本遥は陸人の提出した「反省文」を読み上げていた。
 
「『‥僕は無断で部室で鍋パーティをしました。
 プリセラちゃんのブイヤベースと、美鈴ちゃんの寄せ鍋は美味しかったです。
 シルバーさんと千佳さんが面倒を見たキムチチゲはカオスでした。
 小夜子さんの巫女姿を見た時と、凪さんに抱きつかれた時ドキドキしました。
 リョウマさんの胸はホンモノみたいでした。でも触ってないです。
 鍋のあとは皆でヴィネさんの持ってきてくれたバニラアイスを食べました。とっても楽しかったです。
 でももうしません。ごめんなさい』‥‥ってこら! 全然反省してないじゃない!」

 反省文を書かせているはずが、楽しい行事の感想になってしまうのは、どうしたもんだろうか。
「だって‥‥」
「だってじゃない! 書き直し!」

 ぱっかーん!
 丸めた書類が雑用係の後頭部で、小気味よい音を立てた。