●リプレイ本文
<乙女と少年と漢(おとこ)>
夏空が西から橙色に染まる頃合。
能力者たちは、キメラ被害を被った銭湯の前に集合していた。
「女の子の下着を狙うとは、けしからんキメラやね! Fカップの良さ、もとい、恐ろしさをたっぷり教えたるわ!」
威勢よく戦闘ポーズを取るのは 相沢 仁奈(
ga0099)。小柄な身体に不釣合いな豊満なバストが、薄いランニングの下でゆさゆさと弾んでいる。
「僕、銭湯に一度、入ってみたかったのにゃ。あなたも楽しみにゃ?」
その横で魔法少女アイドル西村・千佳(
ga4714)が、目を期待の色で輝かせ、横に佇む少女と微笑みを交わす。
「もちろんです千佳さん♪ んふふふっ♪ 楽しい依頼になりそうです♪」
伊万里 冬無(
ga8209)が、歌うように相槌を打った。漆黒の髪と白い肌は、どこか狂気を孕んで見えるほどに美しい。
「銭湯でせんt・・・・なんでもないです・・・・。ぼ、ぼく、お姉さんたちがいっぱいで、少しドキドキなのです・・」
美少女達の中でどぎまぎしているのは10歳の少年、ルシャ・スフェーン(
gb0406)だ。しかし彼自身も、負けず劣らず愛らしい顔立ちをしている。
「皆さんと一緒なら、この依頼、成功しそうですね。銭湯後の入浴が楽しみですわ、ね、ルシャさん?」
ニーハイブーツを履きこなしたホゥラリア(
gb6032)が、少年の純情を大人の余裕でからかって見せた。
「ところで今回は5人での任務だったかしら?」
「あら、もうひとりいたはず・・」
「待たせたでござる女性陣&少年ッ! 葵・純(
ga5462)! 華麗に見参ッ!!」
砂埃を巻き上げ走ってきた「漢」は、白い木綿のふんどしの裾を翻し、急制動で5人の前に停まった。
どこからともなく取り出したチクワをがぶりとヒト齧りし、笑みを浮かべる。
「BOKUのチクワもHIMEちゃんたちに食べてもらいたいでござる(笑)」
「せっかくだけど遠慮します」
かくして6人は、湯けむり漂う? 闘いの場へと身を躍らせたのだった!
<戦場へ!>
「キメラ退治の方々ですね。お疲れさまでございます」
番台に座っていた銭湯の主は、能力者達をスチール机しかない、事務室へと案内した
「幸い、一般のお客様は少なめです・・天井裏にはこちらの梯子からあがれます故」
なるほど、指さした先には梯子が既に設置されていた。普段は天井に収納しておくタイプのものだ。
「んふふっ♪ いきなり敵地に乗り込むは愚作です。天井裏やダクトの見取り図はないんですか?」
首から提げた兎人形を爪先で弄りながら、冬無が口を開いた。
「そうですね、情報は多いに越したことはありません。戦場となる場所は確かめておきたいものです」
黒髪を揺らし、ホゥラリアも頷く。
「あいにくどこへしまったやら・・・・しかしダクト部分は格子なので、浴室の明かりが差し込みます。すぐわかるかと」
「ほな、天井裏にあがっても大丈夫やね」
すかさず仁奈が言葉を継ぎ
「せやけどその前に、これを一般のお客さんに渡してこんと」
ポケットから、手際よくビニール袋を取り出した。
「!」
ぷるりんと弾むバストを目の当たりにしたルシャが赤面する。
「お客さんの下着に、キメラが食いついたら大変にゃ。念のため、浴室内に持ち込んでもらうようにお願いし・・」
「ナイスアイデアでござる! ご婦人方に袋を届けに行く役目は勿論拙者が! ルシャ君も遠慮せず一緒に!」
「ええっぼくはっ」
「葵さんは、おもろいこというなぁ♪ さ、千佳ちゃんとうちで渡しにいこ。皆は先に天井裏で待っててや〜」
葵の渾身の申し出をにこやかにかわし、仁奈と千佳はじゃれあいながら事務所を後にした。
「では私たちは、天井裏で待機しましょう」
仁奈と千佳を見送った4人は、冬無を先頭に、ルシェ、ホゥラリア、葵の順でアルミの梯子を登りはじめた。
行軍先は、キメラの潜む天井裏。
目指せ撃滅! 必ず殲滅! 清く・正しく・美しく!
「んっ、ルシャさんの息で、ゾクゾクしてしまいます‥‥」
「ああっ冬無さんごめんなさいっ! わざとじゃないんですにゃ!」
「あらあらおませさん、覚醒してしまったんですね。尻尾があたってくすぐったいです」
「にゃああっホゥラリアさんもごめんにゃさあい!」
「むおぉぉ! 汚れなき新雪の如き太腿! 襞スカートの中に潜む甘い誘惑、大人の芳香! 拙者のチクワがみ・な・ぎ・って・きた・でござる!」
「まぁ、葵さんたら。滾りはキメラにぶつけてくださる?」
清く・正しく・美しく・・?
<贅沢な餌>
銭湯の天井裏には照明はなかったが、店主の説明通り、足元のダクトから差し込む明かりで十分に目が効いた。
強制排気のファンが常時稼働しているらしく、風が屋根に向けてゆるやかに吹いている。天井裏にいったん湿気を吸い上げて、屋根から排気するシステムらしい。
「おまたせぇ」
仁奈と千佳が合流するのを待ち、ダクトに注意を払いながら、能力者たちはおもむろに壁際に移動する。
濃密な湿気の中、ランニングを美乳に張り付かせた仁奈が乙女達に呼びかけた。
「キメラをおびき寄せるには、上等のエサがないとな! 下着好きのキメラには・・・みんな、ええね?」
千佳、冬無、ホゥラリアは顔を赤らめつつも頷き、それぞれが穿いている「エサ」に手をかける。
「こ・・これ・・・・恥ずかしいんですね・・」
メンバー最年長、ホゥラリアがスカートの下から小さな布切れを滑らせた。音もなく床に落ちたそれは、光沢のある布にレースがあしらわれた大人の色香漂う逸品だ。
「んふ・・♪ 何や葵さんとルシャちゃんの視線がやらしぃなぁ♪」
二番手は言いだしっぺの仁奈。
「み、見てないにゃ・・見ちゃいけない、見ちゃいけないにゃ・・!」
「拙者も見てないでござるよ! 撮影しているだけでござる!」
早々に覚醒している猫耳少年と、デジタルカメラを手にした葵に見せ付けるように身体をくねらせ
「見るだけならかまへんよ♪ でも撮影はあかんなぁ♪」
コットンのショーツを身から剥がし、ついでにカメラも没収した。
「うー、囮のためとはいえちょっと恥ずかしいにゃっ・・あ、男性は向こうむいてるにゃ!」
脱ぎながら「覚醒」したのは、花柄のインナーを捧げる千佳だ。漆黒の尻尾で体温の残るそれをひっかけ、床に置いた。
「うふふぅ〜 誰の下着が一番狙われるか楽しみです♪」
最後に冬無が目に恍惚の色が宿らせつつ、黒勝負下着一式からパンティだけを抜き取る。
これから始まる死闘(?)に華を添えるように、豪華な「囮」が甘い香りを放った。
「さ、この下着を・・フロアの真ん中に置くとしましょう。ダクトから遠い方が、危険は少ないは・・」
ホゥラリアが言い終わらぬうちに、葵が4枚の下着を拾い上げた。その手さばき、スキルを発動したかの如く素早さである。
「その役目は今度こそ拙者とルシャ君が! さぁ、ルシャ君も役得を一緒に! 深呼吸でござる! 」
「ぼ、ぼくはそんなっ・・」
恥ずかしがるルシャを引き連れ、魅惑的な「餌」を仕掛けに、歩を進める葵。
ファンの起こす風が、「漢」のふんどしの裾をひらりとはためかせた。
<遭遇>
乙女たちが捧げた生下着を、フロア中央に設置して間もなく。
じゅく、ずずず・・べちょ、ずちょ・・
待機する6人と反対の方角から、水を含んだ雑巾が這いずるような音が聞こえてきた。
「来たにゃ?」
いち早く気がついた千佳が猫耳をぴくんと震わせ、小さく呟く。
「ちょ、なんやあの、ばかでっかいナメクジ!」
薄暗い中で蠢く様を、能力者たちの目はしっかりと捕らえた。
「おぞましいですわ、しかも3匹も・・・・!」
体長50センチは下らない軟体キメラどもは、様子を伺っている6人に気がつく様子もない。
3匹3様にぬめぬめした体をくねらせ、そそり立つ触角を嬉々として下着にこすり付けている。
大人っぽいレースが、黒の勝負下着が粘液にまみれ、愛らしい花柄とキュートなコットンは触覚の餌食だ。
それは、きわめて理不尽な、蹂躙とも言えた。
「にゃあああ・・おねえさんたちの下着がぁ・・・・!」
「キメラのくせに、なんとうらやま・・・・いや、けしからんでござる!!」
うろたえる少年と、義憤(?)にかられた漢が、繰り広げられる狼藉を見かねて立ち上がった。
乙女達も、もちろん黙ってはいない。
マジシャンズロッドを携えた黒猫と、機械剣αを握りしめた白猫が、「瞬速縮地」で先陣を切った。
文字通り瞬きする間に、キメラの傍まで走り寄る。
「キメラ発見にゃ! 先手は取らせてもらうのにゃ!」
「食らえ、レーザーブレードぉ!」
覚醒した仁奈と冬無も、前線に躍り出た。
後方に佇む葵は銀色に輝く小銃を、ホゥラリアはルドルフを構え、照準を獲物にぴたりと合わせる。
もはやなめくじどもに、逃げる隙は一分もない。
「覚悟しいや!」
背中の黒き翼を広げた仁奈が、ベルニクスの爪を鳴らす。
「んふふふ・・アハハハ!」
華奢な体に不似合いな金蛟剪を構えた冬無は、狂気に導かれた笑い声で呼応した。
下等生物なりに、己の危機には気がついたらしい。
3匹のキメラは粘液を飛び散らせながら、能力者たちに襲い掛かった!
<傭兵の歓喜>
1匹目を引き受けたのは、千佳だった。
「悪いキメラには、マジカル♪ チカがお仕置きなのにゃ♪」
スカートを翻し、裾から生脚と尻尾を覗かせながら、マジシャンズロッドから繰り出す電磁波で確実に、軟体生物に「お仕置き」を食らわせてゆく。
「にゃにゃにゃ!?」
傍にいたルシャは、眩しい太腿に動揺しながらも、頭を振って剣を奮った。濃縮レーザーに身を灼かれたなめくじが、びちびちと跳ねる。
「今にゃ! マジカル♪ アタックにゃー!」
高い声とともに、キメラに炸裂するとどめの一撃。
蠢いていた触覚は、ほどなく微動だにしなくなった。
千佳とルシャに背を向ける格好で、冬無は脚を肩幅まで開き、腰を落とした姿勢で2匹目のなめくじと対峙していた。
排気ファンの巻き起こす風が、メイド服の裾を舞い上げるが、金蛟剪を携えた生き人形は身じろぎもしない。
慄いたのか、生きる本能に駆られたキメラが威嚇音をあげる。
「キシャーッ!!」
詰まる、間合いが。濃くなる、殺気が。跳ぶ、キメラが。発動する、両断剣が!
龍を模した一対の剣が閃き、宙を舞うキメラを横一文字に鋏み、断つ。
「あぁぁっ‥‥♪ この感触っ! たまりませんです! アハハハッ!!」
掌に伝わる破壊の感触に、恍惚の声を上げる冬無だった。
仲間である2匹の消滅を、どうやら空気で感知したようだ。仁奈に取り付いていたなめくじが突然床へと下りた。
粘液と触覚でねちっこくマーキングしていた「獲物」に目もくれず、ずりずりと這い、逃げようと試みる。
「あ、んっ?」
ぬめる体をこすり付けられ、いたるところを突付きまわされていたグラップラーは、予期せぬ解放によろめいた。
が、いつまでも受け身ではいない。
「ちょ、待ちいや! 逃がさへんでッ!」
胸の谷間に残る粘液を手で拭い、「瞬天速」を発動。
ベルニクスの爪が、今度こそキメラを捕らえ、宙に舞い上げる。
「終わりよ・・・・!」
ホゥラリアのルドルフから放たれた弾丸が、落下するキメラを打ち抜いた。
「悪は滅したでござる!」
すかさず乙女達のパンツを回収するのは、葵。
絶妙のチームワークで、女湯の平和を乱すキメラは、葬られたのだった…!
<任務アフター♪>
天井裏から帰還した6人を待っていたのは
「お疲れ様でした。『これ』は、ほんのお礼でございます、1時間限定ですが・・・・」
店主の計らいによる、人払いした大浴場だった。清らかな湯と心地よい湯気が、能力者たちのためだけに、そこに用意されている。
「かたじけのうござる! さあルシャ君、女性陣も! 裸のつきあいでござるッ」
「え、ぼくと葵さんは男湯に入るべきでは・・」
いそいそとふんどしの紐を解こうとする葵と対照的に、ルシャは恥ずかしげに俯いた。
しかし乙女達は、少年の純真になど頓着する気配はない。
「ルシャくんはええよ♪ 見た目かわいいから全然OKやろ? なぁ、みんな?」
「ルシャくんもお風呂くるにゃ〜♪ きっとバレないにゃ(ぁ)」
「んふふ〜♪ 嫌とはいわせませんことよ♪」
仁奈がいち早く後ろから抱きつき、千佳と冬無がそれぞれ、腕をからめとる。
「皆さん、無理強いはよくありません..葵さんがひとりぼっちに・・」
ホゥラリアは苦笑しつつも大人の気遣いを見せたが、
「葵さん、ひとりで大丈夫やんな?」
「うは(涙)OK(涙)」
もはや場の流れを変えることは出来なかった。
「ま、まぁ、大丈夫でしょう・・」
かくして浴場を占有した4人の乙女(+連れ込まれた少年)に、癒しの時間が訪れた。
「ほんまいやらしいキメラやったわ♪」
洗い場で手足を伸ばし、ボディソープで念入りに体を洗う仁奈。
「うふふ、キメラの粘液落とし、お手伝いしますわ♪」
その背中に唐突に抱きつき、脇の下から伸ばした泡だらけの手でFカップを揉み洗いする冬無。
「ちょ、冬無ちゃん、あかんて♪」
「恥ずかしがること、ありませんよ♪」
「女同士水入らずにゃ★ さ、ホゥラリアお姉ちゃんの抱かれ心地をチェックにゃ★」
浴槽に飛び込んだ千佳も笑いながら、湯に浸っていたホゥラリアの柔肌に腕を伸ばす。
しかしうっかり、連れ込まれていたルシャに抱きついてしまったものだから
「にゃああああ!?」
純真な少年は強すぎる刺激に再び覚醒し、白いはずの耳まで真っ赤に火照らせたのだった。
同じ頃。
「むぉう・・これは絶景でござる!」
ひとり締め出された不憫な葵は、再びかつての戦場、天井裏に舞い戻っていた。手に生脱ぎを撮影しそこねたカメラを携えて。
「仁奈殿の豊かな膨らみはもちろん、ホウラリア殿と冬無殿の華奢な体躯もなかなか・・」
ダクトに身を乗り出し、隙間から見える風景を、ファインダに収め、シャッターを切る。
「千佳殿・・タオルも巻かずになんと大胆な・・拙者が洗って差し上げたいでござるッ」
戦場カメラマン顔負けの撮影魂に導かれた漢の膝が、ダクトの格子に乗った。踏み抜かないように気をつけなければいけない格子に。
みしり。
「え?」
嫌な軋みに気がついた時には既に遅く!
ざっばぁあん!!
浴槽に落下した漢は、盛大に飛沫をあげた。
「きゃあああっ!!!」
平和が訪れた筈の銭湯に、乙女の悲鳴が響き
「ちょ、葵さん!? 覗きは構へんけどルシャちゃんは渡さへんよ!」
「むむむむねが! Fカップがあたるにゃぁあっ!」
「怪しくないでござる! 拙者決して怪しくないでござる!」
「み!? 女湯は男禁制にゃー! マジカル♪ シュートにゃ!」
「ちょ!? 覚醒らめえ! 話せば分かるでござるッ!」
漢の断末魔が、尾を引いて聞こえた。