●リプレイ本文
夏休みが始まり、静けさに包まれたカンパネラ学園。
しかし運動部棟、体育館前は様子が若干異なっていた。
そこにはバーベキューグリルが2対、さらにキャンプ用テーブルと椅子。
傍の木にはマジックで書き殴った進行表が掲示されている。
「打倒バグア! 学内宿泊演習実施中!」
−−−
1日目
糧食演習
●げっ歯類キメラ捕獲/葵・純(
ga5462)&プリセラ・ヴァステル(
gb3835)※広葉樹エリア
●ヒルキメラ捕獲/西村・千佳(
ga4714)&ビッグ・ロシウェル(
ga9207)※湿地帯
●淡水魚キメラ捕獲/東雲 凪(
gb5917)&マリエ・クラヴサン(
gb2694)※人工小川
●植物採取/小野塚・美鈴(
ga9125)&L45・ヴィネ(
ga7285)※入り口付近
●調理/戻り次第上手な人が担当
水域演習「互いの武器の確認」※男女混戦
ブリーフィング「理想の戦友」
−−−
時は昼下がり。
「ベースキャンプ」が無人ということは、皆「糧食演習」に出かけているようだ。
<げっ歯類キメラ班>
緑の葉が覆い茂り、隙間から陽光がこぼれる広葉樹エリア。
匍匐前進するのは、筐体に泥を塗りたくったAU−KV「リンドヴルム」。
中身はスクール水着にけしからん胸を包み込んだプリセラだ。
装甲の胸元がはちきれそうなのは、目の錯覚ではない。
「うにゅ〜、暑いですぅ〜」
「暑いからこそ、キメラの串焼きで力をつけるでござるっ」
竹串に調味用の塩、乾燥ハーブを携えた葵が後に這い続く。
さらに後ろにはヒルキメラ捕獲班のビッグと千佳。
「千佳さん、僕らはヒルキメラを取りに行くのでは?」
「ここのキメラの血を貰っておくのにゃ」
ただのギャラリーでは、ないらしい。
しばしの行軍の後、一行は地面を横切るキメラの足跡を見つけた。
「うにゅ〜♪ ここに罠を仕掛けるですぅ」
素早く身を起こし、手近な蔓植物を引きちぎって、即席の罠を仕込むプリセラ。
葵がひまわりの種を撒きつつ呟いた。
「蔓植物‥‥捕獲‥‥乙女‥‥たまらんッ、たまらんでござるッ」
「捕まるのはキメラなのよ〜? さ、隠れるの♪」
妄想を炸裂させる相棒(?)の襟首を掴み、木陰に身を翻す。ビッグと千佳もそれに倣った。
間もなく、げっ歯類キメラの群れが罠の周囲に姿を見せた。
仕掛けられていた蔦がキメラの重みで網のように狭まり、餌を貪る「食材」を包む。
悪運の強い個体が数匹、網の隙間から逃れるが、プリセラは見逃さない。
地面にお尻をつけ、腿と膝を大きく開いた姿勢で、アーチェリーボウをぶっ放した。
「うにゅぅ♪ 捕れたよ〜 ‥‥は、恥ずかしかったぁ」
<ヒルキメラ班>
プリセラ・葵班と分かれたビッグと千佳は、湿地帯エリアに赴いた。
草が生い茂り、その先に広がる茶色の沼は泡立っていて、不気味さが漂っている。
そんな雰囲気をものともせず‥‥。
「ビッグくんがんばるにゃ〜♪」
千佳はにっこり笑い、水着姿のビッグを見上げた。ポケットから荒縄を取り出し、少年の細腰に巻きつける。
「ほ、ほんとにやるんですか?」
「もちろんにゃ♪」
さらには、先程のげっ歯類キメラの血を、肩あたりに振り掛けるおまけつきで。
「僕を満足させてほしいにゃ」
「ま、満足って?」
赤毛の少年は戸惑いながら笑い返す。己に期待されていることは理解しつつも、だが
「それはもちろん」
どん、と背中を押され、沼の中に突き落とされるまで。何かしら別の展開をも期待していたようだ。
「さあ、いっぱいヒルキメラ捕ってきてにゃ♪」
水着1枚で泥沼の中に座り込むビッグ。腰には縄、岸辺には縄端を持った千佳。それは鵜匠と鵜のようでもあり
「うわーっヒルきたよーーッ! ぬめぬめが吸い付いてくるよーっ気持ち悪いーっ、助けてーッ!」
「大丈夫にゃ! ちょっとがんばれば気持ちよくなるにゃ!」
罰ゲームのようでもあった。
<植物採取班>
植物園入り口近くのエリアで、美鈴は樹上の果実に手を伸ばしつつ問うた。
「ヴィネちゃん、これ食べられる?」
身に纏ったカンパネラ学園の制服はサイズが小さいのか、胸のボタンが弾け飛びそうである。
ついでに言えば丈の短いスカートの下から楽園が見えそうで‥‥見えない。
「問題ない、食用だ」
植物百科事典のページを繰りながら、ヴィネが答えた。分厚い辞書を繰るのに豊かな胸が邪魔らしく、時折眉を寄せながら。
「ほら、あれも食べられる」
ついでに、といった風情で少し離れたところの草の実を細い爪で指す。
「ほんと? ヴィネちゃん賢い〜」
手にしていたかごに実を摘み入れ、美鈴はご機嫌。空いた手には乾いた木の枝を何本かまとめて持っている。
「それは、何に使うのだ?」
「お料理の時の薪にするの」
「なるほど。では私も、採取を手伝うとしよう」
乳の大きさは勝るとも劣らない美少女2人の採取風景。
それは、すこぶるつきで絵になった。
<淡水魚キメラ班>
清らかな人工小川の岸に、2体のAU−KVが佇んでいた。
「どれぐらい捕ればいいかな」
漆黒に塗ったAU−KVを装着した凪が、矢に釣り糸を結びながら口を開く。
「人数分‥‥8匹は要りますわね」
「バハムート」を装着したマリエは、手にはフェルスピアを携えている。答えはしたものの意識は水面に集中させており
「そこッ!」
瞬く間にスピアの先端に、キメラを捕らえた。
「訂正、7匹ですわ」
「了解」
ショートボウに釣り糸付の矢を装填した凪は肩をすくめ、狙いを定めた。
時折鋭く光るキメラのうろこが、見え隠れする水面に。
ひゅっと音がして、矢が放たれた。残念、逃した。
「ちぇ」
AU−KVの中で凪は唇を尖らせ、鏃に火薬を詰めた矢‥‥弾頭矢を取り出した。
破壊力を秘めたそれを、ショートボウにじゃきんと装填する。
「クラヴサンさん、離れて」
マリエが岸から離れたのを確かめた凪は、水面に狙いをつけ、引き絞った矢を射った!
どぉぉん! 盛大な水しぶきと爆音が人工小川から上がる。
静寂が戻った水面には、衝撃で目を回した魚キメラが累々と浮かんでいた。
「これは、想定外の大漁ですわね」
「大人しく捕られない君たちが悪い。ってことで、えいっ」
<クッキング!?>
陽が傾き始めた頃、「ベースキャンプ」に、参加者が続々と帰還してきた。
一番手は、意気揚々とヒルキメラの入ったバケツを差し出す千佳と、水着1枚で泥まみれ、腰に縄を巻かれて息絶え絶えのビッグ。
二番手は泥だらけのAU−KVを装着したプリセラと、げっ歯類キメラの串刺しを両手に携えた葵。
三番手は魚キメラと2人のドラグーン、凪とマリエ。
「すっごぉい!」
果実を水洗いしていた美鈴は、沢山の食材に目を輝かせた。
グリルの上にはアルティメットフライパンが鎮座している。
「魚は、この鬼包丁で、私とプリセラさんが捌くよ」と、凪。
「何か手伝えることがあれば言ってくれ」果物を水洗いしていたヴィネも口を添えた。
「よし、美味しく料理しちゃお!」
***
「食えればOK」な糧食演習といえど、おのずと取り組み方は異なっていた。
「お肉の臭みは牛乳で消しましょ。4人分で1コぐらいかな?」
美鈴のように本格的な調理に取り組む者の傍らで
「私が作るのは‥‥ただの塩焼きです、悪かったですわねっ!」
内臓を取り出した魚キメラに塩こしょう、スパイスを振りかけて焼くシンプル派のマリエ。
「うにゅ〜♪ みんなでワイワイお料理、楽しいな〜♪」
汚れ対策としてスクール水着姿で包丁を振るうプリセラ、それに
「ヒル‥‥気持ち悪い‥‥食べないっ、イヤだからね! 絶対!」
演習といえど、一線は越えられない凪。
さらにその横で
「貴様らは調理に参加せんのか?」
ヴィネは、地べたに座り込み、お菓子を食べている3人に問うた。
「料理は上手な人にお任せのが美味しいにゃ♪」
千佳が笑い、お菓子の袋をヴィネに勧める。
「ビッグ、貴様はどうした?」
「ヒルに『だいじなもの』を奪われたらしいにゃ」
「ちっ、違‥‥た、ただちょっと疲れて‥‥」
「そうか、では葵、貴様は‥‥」
「ふむ、キメラ捕りに使ったひまわりの種、炒るとなかなか乙でござる。如何か?」
「‥‥いや、いい」
八者八様に演習は進み、辺りにいい匂いが漂い始める。
陽が落ち、ランプに日が入れられた頃
「いただきまーす!」
元気な声が響いた。
<水域演習>
食事を終えた8人は、カンパネラ学園地下演習場3F「カンパネラの湯」に移動した。
今日は演習実施のため貸切。他に人の気配はない。
「さあ、水域演習にゃ!」
黄色のフリル付ツーピース水着を着た千佳が湯船に飛び込んだ。普通の風呂より深く、胸辺りまでお湯が来る。
「負けない!」
スク水に身を包んだ美鈴も参戦する。借り物のスク水はサイズが小さく、胸が「寄せてあげる」状態だ。
「うにゅ〜♪」
三番手は同じくスク水のプリセラ。胸は小ぶりのビーチボールを2つ並べた如く、計り知れないボリューム。
「むぅ‥‥。うん、気にしちゃダメだよね‥‥私はこれで満足なんだから‥‥」
恥ずかしげに頬を染める凪は、ライトグリーンのビキニ姿。華奢な体躯と合い間って、儚げな可愛らしさが醸し出されている。
「どうしたビッグ? 貴様、そんなところで何をしている?」
Iカップをチューブトップに捻じ込んだヴィネが、壁際でもじもじしているビッグを見咎めた。
つかつかと近寄り、腰のタオルにぐいと手をかける。
「ちょ、待って!」
大慌てで、かつ必死で制止するビッグ。
「!?」
端から見ると、胸の大きなお姉さんがいたいけな少年を困らせているように見える。
「−−−−−−!!」
「ふっ、風紀の乱れは心の乱れですっ」
三つ編みを解き、スク水に身を包んだマリエが模擬刀剣を突きつけて注意した。イエローカード!
「すっ、すみませんっ穿いてくるの忘れてっ」
「ビッグくん、どうして水着着ずに来たにゃ?」
千佳に問われ
「いや‥‥互いの武器の確認って‥‥」
「それは、主兵装のことですわっ!」
マリエに間髪入れず突っ込まれ
「お風呂場が悪いんだ‥‥」
少年はすごすごと、更衣室に向かうのだった。
***
ハプニング? から開始した水域演習も、その後は円滑だった。
「うにゅ〜♪ このお胸、大きくて邪魔ぁ」
大浴場の真ん中で、バストの大き‥‥互いの武器の確認に余念のないプリセラ、美鈴、ヴィネ。
「にゅ、何か面白そうなことしてるにゃ、僕も混ぜるにゃ♪」
うっかり首を突っ込んだばかりにヴィネによる武器の確認を受けるハメになり
「うみ?‥‥みゃー!?」
あろうことかヴィネの指が黄色のツーピーストップにひっかかり、武器をあわやポロリしかけた千佳。
「同性同士といえども、過度のスキンシップは風紀を乱しますわ!」
その様子を、模倣刀剣を振り回して嗜めるマリエ。離れて談笑する凪とビッグ。
そしてもう一人。
葵は竹筒を用いた「水遁の術」で、大浴場の底に潜伏していた。
(下から舐めるように眺める‥‥これはいいものでござる‥‥)
小さめのスク水で「半ケツ」気味の美鈴のヒップをしばし観察し、横泳ぎでヴィネの太腿ラインを鑑賞する。
(むむむ‥‥拙者の武器が覚醒状態にッ‥‥)
意識せず荒くなった呼吸は、竹筒ごしに新鮮な空気を求めた。ごぼごぼ。
「あら? この竹筒は何ですの?」
「熱湯、入れて見よっか」
マリエと凪の悪意なき行動に、
「ヒギャアアアーーッ!」
漢の断末魔が、切なく響いた。
<ブリーフィング>
湯上りの8人は体育館に戻り布団を敷き、ある者は座り、ある者は寝そべった。
「ではブリーフィング、始めるにゃ」
黄色のネコ柄パジャマに身を包んだ千佳が口火を切り
「テーマは『理想の戦友』? 好きなタイプってことにゃ。僕はねぇ、カッコイイお兄さんか、綺麗なお姉さんにゃ♪ プリセラちゃんは?」
ウサギ柄パジャマの胸元がキツそうなプリセラに振った。
「あのね〜あたしはね‥‥うにゅふ‥‥ふぁ〜」
が、水域演習で張り切りすぎたのか、既におねむで要領を得ない。
「プリセラちゃんみたいに可愛い子が好きっ」
隣に座っていた美鈴が、代わりに答えた。
「私はやっぱ、優しい人がいいよ。その上でお金持ってたら最高なんだけどね」
「特にありませんが‥‥強いて言うならば誠実で頼り甲斐のある方がいいですわ」
キャンディーを舐めながらの凪とマリエは、内面重視のようだ。
「ふむ‥‥皆色々だな‥‥私はまず『知性』を求める。そして『思考力、判断力』。『人を外見や年齢で判断せず、慮る優しさ』も必要だろう‥‥だが最も大切なのは」
ヴィネはそこで一呼吸置いた。
皆固唾を呑んで、次の言葉を待つ。何だかよくわからないけど、この人は凄いことを言う。そんな空気の中、
「『乳房の大きい者』だな」
大真面目に、おもむろに口を開くヴィネ。
場の空気が、一瞬にしてカオスになった。水を得たが如く葵が、ふんどしの裾を翻し立ち上がる。
「そう、乳房は浪漫! 『パジャマにブラジャーは邪道』『パジャマにブラジャーは邪道』大事なことなので2回言いました! 『浴衣にスポーツブラは通常の3倍萌える』これも大事ッ」
「‥‥わかったにゃ。とりあえず葵さんは、あっちの端で寝てにゃ♪」
千佳があくびをしながら頷き、体育館の端を指す。
ぽつんと布団が一組、離れ小島のように隔離されていた。
「うは(涙)おk(涙)」
<いい夢を‥‥>
照明落とした体育館。皆演習の疲れで熟睡していた。
プリセラの両脇に、寄り添う美鈴とヴィネ。ヴィネの胸元に抱きつき寝息を立てる千佳。
マリエと凪は、ビッグを真ん中に挟み、これまた愛らしい寝顔である。
そんな中‥‥
「お、女の子がいっぱいで落ち着けない‥‥こんなところで寝られるか!」
ぱちりと目をあけ、そっと身を起こしたビッグは、枕と毛布を抱えると乙女達から離れた布団で、ごろりと横になった。
「おやすみなさい‥‥」
一人呟き、目を閉じる少年。何かのフラグが立った等、知る由も無い。
***
「フフフ、獲物が来たでござる」
隅に隔離されていた葵は、女の子の集団からはぐれてきた一人が寝息を立て始めたのを確かめ、ほくそ笑んだ。
「拙者だけをハブった仕返しをするでござる‥‥」
月明かりの届かぬ位置で寝息を立てる「獲物」からは、石鹸の匂いがした。
闇の中誰だか識別できないのが残念だが、この際仕方ない。
「天・謀!」
獲物のパジャマのズボンをずらし、翌朝の様子を想像して悦に入る葵。
達成感(?)に身を委ね、再び床についたのであった。
***
一夜明けて。
「ビッグくんどうしてズボンはいてないのーッ!」
「ふっ、風紀の乱れは許しませんわっ!!」
「ちちち、違うんです! 誤解です!」
パンツ1丁で目覚めた少年が絶叫&赤面したのは、言うまでもない。