タイトル:【MN】剣と魔法!?マスター:クダモノネコ

シナリオ形態: ショート
難易度: やや易
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2009/09/13 18:11

●オープニング本文


※このオープニングは架空の物になります。このシナリオはCtSの世界観に影響を与えません。
申し訳ございませんが、相談期間中の拘束は通常通りに発生します。事前にご了承のうえご参加ください。


 ーーーーーー
 それは星がこぼれ落ちそうにまたたく、夏の夜、昼なお暗い森のほとりの小さな村「ラストホープ」。
 村はずれの小さな酒場「カンパネラ」は、今日も全ての客席が埋まっていた。
 名物のキメラ料理に舌鼓を打ち、景気よく金を落とすのは、宝探しやキメラ退治を生業とする冒険者達だ。
 彼らはここで仕事を受け、仲間と打ち合わせをし、さらには帰還後の打ち上げまで済ませてしまうわけでして‥‥。
 
「おまたせ、致しましたぁ」
「お、待ってましたぁ♪」
 
 カウンター脇のテーブルで、空腹を持て余していた冒険者は給仕の声にぱっと目を輝かせた。
 フリルのついたエプロンにカチューシャ姿の少年が、運んできた皿をテーブルの上に乗せる。
 カトラリー入れからフォークとナイフがむくりと起き上がり、皿の傍までてくてく歩くと、再びぱたりと、横になった。

「あれ、ふりかけごはんなんて頼んでないんだけど。オーダーはキメラの丸焼きとスペシャルキメラパフェだよ」
「‥‥す、すみません‥‥あいにく両方とも切らしておりまして‥‥僕それしか、つくれなくて‥‥」
 給仕の少年は、ほぼ直角になるまで頭を下げた。
 黒い髪の横に垂れていた犬耳まで、ぺろんと裏返すおまけつきで。
「いや、ないって言われても‥‥ってか謝られても‥‥」
 呆れたように肩をすくめる冒険者と、頭を下げたままの犬耳少年。
 気まずい沈黙が、ふりかけごはんを挟んで、両者の間に漂う。

「あ、あの、こんなことお願いするのはホントずうずうしいと思うんですけどっ!」
 破ったのは、給仕だった。
「っていうか、いつもの生徒会雑用係サンじゃん?」
「今回はショタ&ケモで、魔法の酒場のお運びサンって設定なんです! ‥‥じゃない、あなた方を腕利きと見込んで、お願いがあるのですっ」
 役割はいつもと変わらない犬耳少年は、勝手に向かいの席に腰を下ろす。
 そしてテーブルの上の飲み物の瓶の中身を、冒険者のグラスに注いだ。

「実はうちの店の店長とパティシエが、魔神キメラにさらわれてしまったのです」
「魔神はいやがる2人を高い塔に閉じ込めけしからんこと‥‥ではなく! 無理やりに料理やお菓子を作らせているのです」
「また、ベタなシチュエーションだねぇ」
 冒険者は思わず、声を上げて笑う。だが犬耳少年は、意外にも真剣らしい。

「2人はスキを見て『おしゃべり草』を、塔の窓に遊びに来た鳩に携えて、ここまで送ってくれました。再生してみますね」
 テーブルにのせられたのは、緑色の茎に大きな唇のついた、これまた古典的な「喋りそうな草」だ。
 犬耳少年が唇の端を指でつつくと、奇妙なプラントイドは甲高い声で、吹き込まれた伝言を喋り始めた。

『タスケテー デモ、タスケニクルナラ 8ニンデキテー』
『タスケテクレタラ、アツイきっすヤ ぱふぱふヲシチャウワー』

 そしてご褒美まで、お約束ときた。
 そう言いたげな冒険者の視線に気がついたのか、ウエイターはあわてて「おしゃべり草」を、テーブルから片付けた。
 代わりに右手の掌を前に出し、左手で手首を握る。ふわんと髪が浮き上がり、わずかに舞い散る魔法の残滓。
「あ、店長とパティシエはこんな感じの人たちです。僕、魔力が低いって設定なので上手く像がつくれないけど‥‥」

 冒険者の視線は、小さな掌でゆらめく、魔法じかけの立体映像に釘付けになった。
 エプロン姿のパティシエと、調理人兼店長らしい人物が並んで佇んでいる。
 ただ残念なことに、首から上はぼやけていて輪郭しかわからない。

 危険な、匂いがする。

「店長もパティシエも、とってもいい人なんです‥‥今頃ひどい目にあってなければいいんですが‥‥」
「ひ、引き受けて下さいますよね?」


 ーーーーーーー
 犬耳少年ウエイターの依頼を受けますか?

 →受ける
  やめとく
 ーーーーーー 
 
 
「ありがとうございます! 酒場を出るとすぐ傍に武器防具屋と魔法屋があるので、そちらで準備をととのえてください。
 あ、このお店ではテイクアウトのお食事も扱っております。‥‥塔は街を出て道なりにすすみ、森を越えたらすぐです。
 森にはキメラがいるかもしれないし、塔の内部にもいるかもしれません」


 冒険者は【夢オチアイテム】「まほうのさいふ」を手に入れた!

 「まほうのさいふ」
 使っても使っても夢オチ通貨が湧いてくる不思議なサイフ。

●参加者一覧

西村・千佳(ga4714
22歳・♀・HA
L45・ヴィネ(ga7285
17歳・♀・ER
櫻杜・眞耶(ga8467
16歳・♀・DF
小野塚・美鈴(ga9125
12歳・♀・DG
赤宮 リア(ga9958
22歳・♀・JG
澄野・絣(gb3855
20歳・♀・JG
橘川 海(gb4179
18歳・♀・HD
シャイア・バレット(gb7664
21歳・♀・SF

●リプレイ本文

★冒険のはじまり
 犬耳少年が立ち去ると、リア(赤宮 リア(ga9958))とミレイ(小野塚・美鈴(ga9125))の姉妹は顔を見合わせた。
「ご‥‥ご褒美とかはどうでも良いけれど、困っている人を見過ごす事は出来ないわね、ミレイ」
 紅いベレーと上着にフリルブラウスを合わせているのは、姉のリア。青い瞳が妹を、優しく見つめている。
「悪い魔神さんから店長さん達を救い出そうね、お姉ちゃん」
 ミレイも力強く頷いた。こちらは腰に拳銃をぶら下げたガンマン風のスタイル。豊かな胸がシャツを持ち上げ、可愛いヘソが丸見えである。
「とはいうものの、店員さんのくれた情報だけでは、心もとないわね」
「心もとないのだ」
 と、まるでタイミングを計ったかのように

「話は聞かせてもらったにゃ!」
 肩当つきの赤い布鎧に身を固め、盾と片手剣を携えた猫耳少女が現れた。短いスカートの裾からは、可愛い尻尾が覗いている。
「ボクはチカ(西村・千佳(ga4714))。世界を旅する冒険者にゃ。今は伝説の武器を探してるにゃ♪」
 チカの言葉に、リアは椅子から立ち上がった。
「伝説の武器!? 亡き両親から、神弓『鳳翼凰霞』のことは聞いていました。でも御伽噺だと‥‥」
「御伽噺ではないにゃ♪ ただ、伝説の武器は、持ち主を選ぶらしいにゃ♪ 魔神を倒せば、伝説の武器もボクを認めるにゃ♪」
「じゃ、チカさんも一緒に来てくれるの?」
「にゃ♪ 僕も手伝わせてもらうにゃ♪」



★あぜ道
 同じ頃、ラスト・ホープ村へ通じるあぜ道を、2頭だての荷馬車が走っていた。
 手綱を握るのは、海(橘川 海(gb4179))。荷台には絣(澄野・絣(gb3855))が座っている。
「ごめんなさい、便乗してしまって」
「いいの♪ 私は仕入れ、絣さんは野草の納品。行き先はどっちも『カンパネラ』なんだからっ」
 蹄の音に、重なる軽やかな笑い声。しかし、この道のりが娘達にとって平坦なものでないことは、もはやお約束だ。
「海ちゃん、お母さんは元気?」
「うん、こないだも運送の途中にねぇ‥‥」
 ほら言っている端から、醜悪な虫型のキメラが行く手を阻もうとしているではな‥‥

「あははっ、それでね」

 プチッ。
 哀れなキメラは、娘達に気づかれることすらなく、農耕馬に轢殺された。
 天然娘最強、これも世のお約束である。



★村の広場
「カンパネラ」前の広場は、不穏な雰囲気に包まれ、人だかりが出来ていた。
 手近な木に馬を繋いだ2人は、野次馬の隙間に身体を捻じ込み前へ進む。

「ヒャッハー! お嬢ちゃんたち、ここは通さねえぜ!」
 広場の真ん中にいたのは、モヒカン頭の雑魚キメラ数人(匹?)と、3人の娘‥‥リア、ミレイ、チカだった。

「めんどうにゃ。パパッと片付けちゃうにゃ?」
「でも、人質が‥‥」
 片手剣を抜こうとするチカを、リアがためらいがちに制す。
 なるほど、雑魚の一人が、犬耳少年を羽交い絞めにしているではないか。
「口の軽い小僧にも、魔神様を倒そうなんて小娘にも、お仕置きが必要だぜえ!」

「う〜、卑怯なのだ!」
 ミレイが地団太を踏むたびに、バストがたゆんたゆん揺れる。
 しかし、なす術はない。

「あら、カワイイ坊やね」
 こう着状態を破ったのは、海と絣が馬を繋いだ木の上から響く声だった。
「だ、誰だ!」

 雑魚どもが見上げるより早くこん棒を握りしめた影がひらりと舞う。
 小麦色の肌にTバックビキニの鎧をむっちり食い込ませた、金髪の女戦士だ。
「とう!」
 雑魚の頭に、容赦なくヒットする、棍棒。
「わぁっ」
「今にゃ!」
 犬耳少年が逃れたのを確かめたチカ、リア、ミレイも攻撃に転じた。

 たちまち、形勢逆転。
 広場の石畳にうずくまる雑魚どもを、女戦士が思い切り踏みつける。
「シャイア(シャイア・バレット(gb7664))様に刃向かおうなんて、10年早いのよ♪」
「ヒィッ」
 雑魚は呻きながらも、上目遣いできわどい股間を堪能していたが
「お、覚えてろっ!」
 またしてもお約束のセリフを残し、一目散で逃げ去ったのであった。

「お姉さん、強いにゃ! ボクたちはかくかくしかじかで‥‥」
「面白そうね。私も混ぜて」
「あ、私と絣さんもご一緒したいなっ」
 意気投合する3人娘とシャイア、そして海。
 絣だけは空のある1点を、じっと見つめていた。

「何かしら‥‥あのコウモリ」



★魔神の城
 絣が見咎めたコウモリは村から広大な森を越え、その先にそびえる塔へと翼を羽ばたかせていた。
 石造りの壁にうがたれた窓へ、吸い寄せられるように入ってゆく。

「あら、お帰り」
 窓の内側、骸龍をモチーフにした玉座に座っているのは、絶世の美女だった。
 尖った耳に、悪魔のような翼、無駄に露出の多い衣装。あからさまに、人間ではない。
 すなわち今回のラスボス、魔神キメラである。
「さあ、何を見てきたのかしら? 村の様子を教えて頂戴」
 魔神キメラはコウモリ、否、使い魔を手に乗せ、大きな耳を傾けた。

「マヤ(櫻杜・眞耶(ga8467))、小娘どもが来たら、存分に遊んであげなさい」
 報告を聞き終えた美女は使い魔を離すと、玉座の足下に跪く娘を一瞥した。
 襟元まで留めた衣装に身を包んだ、美しい黒髪の娘だ。長い睫に縁取られた赤い眼には、意思の色はまるでない。
「はい、魔神キメラ様」
「ふふ、可愛い娘」
 魔神キメラは娘の黒髪を撫で、玉座の脇の水晶玉を手に取った。
 磨き上げられた表面が揺らめき、森の中の沼地が現れる。
「食肉植物の住処に、獲物が迷い込んだようね」



★ローパーの沼
 魔神キメラが水晶玉ごしに覗いていた沼地を、緑色のチュニックに身を包んだ召還士が歩いていた。
 襟元から大きく露出する豊満な胸が悩ましい。谷間には玉のような汗が浮かんでいる。

 「キシャア!」
 食肉植物でなくても食らいつきたい美少女を、飢えた魔草どもが、見逃すはずはない。

「‥‥ん」
 しかし娘は、顔色ひとつ変えなかった。
 きわめて冷静に、異界の魔獣「KV」を呼び出す呪文を唱え
「貴様らに相応しいKVは決まった!」
 細い爪先で、襲い来る食肉植物を指す。
「ゆけ、ロングボウ!」

 主人の命令に忠実に、魔力のミサイルを乱射するゴーレム。
 契約の履行を終え、その姿が消えた時、食肉植物も残らず灰と化していた。

「雑草が。このヴィネ(L45・ヴィネ(ga7285))に触れられるものか」
 だが彼女は知らなかった。湿地帯に棲むのは雑草のような食肉植物だけではないことを。
 そう、人間の体液を好物とする触手キメラ、ローパーがすぐ背後まで迫っていることを!

「な! しまっ‥‥んぁぁっ!」
 不意をつかれた娘の悲鳴が、森の中の沼地に響いた。



★戦闘開始!
 村の広場で意気投合した6人を乗せた幌馬車は、昼なお暗い沼地を横断していた。
「ジメジメして気持ち悪いっ」
 ぬかるみを嫌がる馬をなだめながら、手綱を握る海が天を仰ぐ。
「ここは触手キメラの巣です。早く抜けてしまいましょう」
 隣に座る絣も、地図を広げながら不安げに眉を寄せる。
「にゅ、何か敵の気配がするにゃ!」
 出し抜けにチカが、幌から顔を出して叫んだ。ややあって
「あそこにゃ!」
 まっすぐ一点を、指した。

「誰か襲われてる!」

 6人の目に映ったのは、忌まわしき触手キメラ。そして
 「んく‥‥っ、止め、そこは、くふぁぁ!?」
 両腿を絡めとられ、白っぽい粘液に塗れた触手で弄ばれる召喚士の姿。
 
「助けなきゃ! みんなしっかりつかまって!」
 言うが早いか、海が愛馬に鞭を入れた。
 エンカウント! 戦闘開始!

***
 馬車の幌を開き、美しき姉妹が身を乗り出した。
「フレイムアロー!」
 姉は矢に炎の魔法を乗せて弓を引き、
「エレメンタルブレッド!」
 妹は漆黒の拳銃「黒猫」を構え、魔法弾で触手を撃つ。
「んあっ‥‥っ!?」
 奇襲が功を奏し、召喚士ヴィネは触手から解放された。
 
 「変態キメラめ、私が相手よ!」
 「チカ、レッドバージョン参上♪」
 不埒なローパーを倒すべく、チカとシャイアが馬車から飛び降り、駆け寄る。
 お楽しみを邪魔された怪物の怒りの矛先は、当然の如く2人に向いた。

「な、絡み付いてくるんじゃないにゃ! どこ触ってるにゃ!?」
 スカートの間に潜り込む触手に頬を赤らめるチカ、
「こ、この外道草ッ」
 Tバックの隙間を狙う蔓にうろたえるシャイア。
 しかし2人の窮地を、仲間達が見過ごす筈もない。

「ドリフトアターック!」
 馬車を操り、再びローパーの巨体めがけて突進を試みる海。
 リア&ミレイに加わり、荷台から矢を放つ絣。
 多勢に無勢、タコ殴り? いやいや、連携プレーの勝利。
 ローパーは沼地に泥飛沫と轟音を上げて、ぐたりと沈んだ。



★HP&MP回復
 ヴィネを仲間に加えた一行は、湖のほとりで旅の疲れを癒すことにした。
「さあ、お弁当にするにゃ」
メニューは「ふりかけごはんおにぎり」のみだったが

「パティシエさん達を助けたら、美味しいものが食べられるよっ。お菓子、楽しみだねっ」
 
 友情で結ばれた7人での食事に、笑いが絶えることはなかった。

***
 食後のいっとき、絣の吹く横笛のメロディが、穏やかに木々の間をたゆたう。
「絣さん、すごいのだ!」
 ミレイは目を丸くした。野生の小動物たちが、笛の音に導かれて、絣の周りに集まってきたのだから。

「凄いのは私ではなく、母の形見の笛なのです。私以外の者が吹いても音は出ないのですが‥‥」
「それは、笛が絣ちゃんを選んだにゃ。ボクも伝説の武器に選ばれるかにゃ?」



★魔神の城、序戦!
「マヤ、小娘どもが来たようよ。おまえの力を、存分に見せておやり」
 キャンプの様子を水晶玉で覗いていた魔神キメラは、酷薄な笑みを浮かべた。
 大鎌を華奢な背に背負い、闇魔法のオーラを身に纏ったマヤは、こくりと頷き
「仰せのままに‥‥」
 玉座に背を向けた。

***
 塔の入り口に降り立ったマヤは、7人の娘をほどなく見つけた。
「ここは、魔神キメラ様の城。立ち入ったからには死をもって償いなさい!」

 闇魔法を孕んだ強烈な初撃を受け止めたのは、ヴィネ。
 額を飾る1本角を輝かせ、不敵に笑んで指をさす。

「貴様の目を醒ますKVは決まった!‥‥ゆけ、ミカガミ!」
 呪文とともに降りてきた。白銀の鎧武者が。
 魔獣の手に在る光の剣「雪村」が、マヤを光に包み、なぎ払う。

 吹き飛ばされたマヤの、否、魔神の下僕の意識は、黒く塗りつぶされ、途切れた。

***
「ちょ、ちょっとやりすぎにゃ?」
「む‥‥ミカガミの出力は加減したのだが」
「二人とも心配しないで・・ほら、目を覚ましました」

 絣が、ほっと安堵の息をついた。
 腕に抱いたマヤが、赤い目を瞬かせ、唇を開いたからだ。

「わ、私は今まで何を?」



★宝物庫にて
 マヤの案内で、一行は壁の奥にある宝物庫に足を踏み入れた。壁際に幾種類もの武器が整然と並べられ、床はピカピカに磨きこまれている。
「あれは! 伝説の武器『クイーンズ・ウィップ』」!
 一振りの鞭を指差し、顔を輝かせるシャイア。
「待って、シャイアはん!」
マヤの制止を振り切り、鞭に駆け寄ろうとする。だが、それは叶わなかった。
彼女が2、3歩進んだところで、床がぱかりと口を開けたのだ。
「きゃーッ」
悲鳴を残して深い穴へ落ちてゆく金髪美女。

「私は大丈夫よー! みんな先に行ってー!」

 穴の底から返って来る元気そうな声に、胸をなでおろす一同。
「‥‥まず、先を急ぎましょ。その前に、小さな声をよぅ聴いて。『伝説の武器』が、皆さんを呼んではります」

***
 落とし穴の底で、シャイアは途方にくれていた。落下の途中でこん棒を手放してしまったらしく、文字通りの丸腰である。
 しかし今身に起きている危機に比べれば、それは些細なことでしかなかった。
 何故なら彼女は村の広場で倒した雑魚どもによって、両腕を鎖で吊るし上げられてしまっていたのだから。
「ねーちゃん、また会ったなぁ。魔神キメラ様の忠実な部下になる教育をしてやるぜえ!」



★魔神の城、決戦!
「残念、目を醒ましてしまったのね、マヤ」
 玉座の間に乗り込んできた7人の娘の中にかつての下僕を見つけた魔神キメラは、薄く笑って呟き。
「ま、新しいペットを手に入れたから、別にいいケド」
 足下を、顎で示した。そこには
「みんな‥‥見ないで‥‥」
 首輪を嵌められたシャイアが恥ずかしさに頬を染め、うずくまっていた‥‥!

「シャイアさん!」
「この女と、村から攫ってきた料理人? 私を倒さないと、助からないわよぉ」

 魔神キメラはあくまで余裕。
 強大な闇のオーラを、肢体から立ち上らせ、背中の羽根で宙へと舞い上がる。
 
「みんな、行くわよっ!」
7人の可憐な冒険者は、それぞれの「伝説の武器」を手にし、最後の戦いへと挑んだ!

***
 魔人キメラの司る邪悪な風が、容赦なく7人を襲う。上着を切り裂き、スカートを引きちぎり、下着まで吹き飛ばす勢いで。
「にぃ!? この、変態魔人にゃー!?」
「ミ、ミカガミが効かない!」
片手でミニスカートの裾を押さえ、片手で伝説の武器、フェンスデーゲンを振るうのはチカ。
召喚したKVをふさがれ、逆に着衣を切り裂かれ、赤面するヴィネ。

「光の守護よ、我が仲間達に祝福を!」
光魔法で反撃していたマヤが、回復魔法を発動させる。
しかしさすがに、衣類を繕う効果はない。

「ロングボウ、あなたの本当の力を見せてっ」
海がキッと魔神キメラを睨みつけ、叫んだ。血に秘めた「伝説の竜騎兵」のスキルが、異界の魔獣を場に呼び寄せる。
召喚士であるヴィネとは違う方法で、魔獣を手なづけ乗りこなし
「唸れ伝説の弓兵っ! 『ツインブースト・ミサイルアタック』っ!」
飛躍的に命中率の高まったミサイルを、宙に舞う魔神めがけて打ち込んだ!

「くっ、小娘が!」

邪悪な美女が怯んだ隙を、リアがチャンスに変えた。
「ミレイッ、タイミングを合わせてっ!」
「了解、お姉ちゃん!」
絶大なる信頼をおく妹と共に、一撃必殺のタイミングを狙う。

「鳳凰よ! 今こそ我が魂に応え、仇なす者を討ち砕けっ! ブレイジング・フェニックス!」
リアの弓矢から放たれた巨大な火の鳥を、後押しするのは美鈴の必殺ビーム。
麗しき姉妹愛が放った一撃は、魔神キメラの胴体に大穴を穿った!

「ギャアア!!」

火の鳥の炎が、魔神の身体を包み、焼き尽くしてゆく。

「やったわ、ミレイ!」
「わ〜い、勝った!」

抱き合って喜ぶ姉妹の足下が、ぐらりと揺れた。
「あかん! 崩れるわ!」
「よし、脱出するぞ!」



★無事クリア?
 かくして酒場「カンパネラ」の店主とパティシエは救い出され(もちろんシャイアも)、ラスト・ホープ村に平和が戻った。
「えっ、お礼がまだだって? チカさん、そんな、僕はお礼なんかにはっ、ちょ、待っ!」
とはいえ、もちろん全ては
 
***
「リク、いつまで寝てんだ、遅刻するぞー」
「わーっもうこんな時間! やばいやばいーっ!」

 もちろん全ては、青少年の夢だったり、するわけですが。