タイトル:【NT】憧れ!?学寮マスター:クダモノネコ

シナリオ形態: ショート
難易度: やや易
参加人数: 10 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2009/09/20 22:55

●オープニング本文


 西暦2009年9月。
 能力者のための学び舎「カンパネラ学園」は、今年も大勢の新入生を迎え入れようとしていた。
 初秋の涼やかさを孕んだ潮風に乗って響くは、学園のシンボルであるカリヨンの音色。
 希望に満ち溢れた鐘は、風向きによっては、ラスト・ホープ本島まで聞こえることもあるらしい‥‥。

***
「あ、新入生の方ですね! ‥‥え、聴講生?
 まぁどっちでも大歓迎です、ようこそカンパネラ学園へ!」

 大きな荷物を抱えたまま勝手が分からず、きょろきょろとするあなたに、
 在校生らしき少年が人懐っこく声をかけてきた。
 カンパネラ学園の制服を着込み、左腕に「事務部」の腕章をつけている。
 こう言ってはなんだが、背も低く顔つきも幼く、とても「能力者」には見えない。

「えっと、今日ここにいらっしゃっったってことは、『ドキドキ学生寮体験』に参加ご希望の方ですよね!」
「ええそうです、能力者の皆さんに広く学園を知っていただくための企画で、入学式に先立って開催するイベントです」
「新入学予定の皆さんは、一度泊まってから入寮するかどうか決めていただけるし、
 聴講生の皆さんには、つかの間学生に戻ることで、初心に帰ってモチベーションアップ! ってやつです」

 そこまで一気にまくし立てた少年は、眼鏡を片手でずりあげ、小脇に挟んでいたノートを取り出した。

「えっと、それじゃこちらの名簿にお名前書いてもらえますか?‥‥そうそう、横の番号が使ってもらう寮の部屋になります」
「んで‥‥とりあえず部屋に荷物、置いてきてください。あ、基本は制服着用なのでよろしくです!」
「ロッカーの中に制服があるはずですが、男女両方用意してあるので、くれぐれも、ええくれぐれも間違えないで下さいね」
「しかもサイズは結構適当なので、スカートが短かったり胸がきつかったりズボンがちんちくりんだったりしちゃうかもしれませんが、細かいことはキニシナイ方向で!」

 いや、そこは気にするところだろう。
 しかし頼りなさげな「先輩」は、あなたの内心などおかまいなしで

「あとは‥‥このしおりに詳しくかいてあります! ではまたあとで、お会いしましょう!」

 ノートに挟んであった手作りの冊子をあなたに押し付け、ばたばたと去っていった‥‥。

***
『ドキドキ学生寮体験』

★着替え後、学生食堂に集合(学食体験)
★学内施設見学ミニツアー
(AU−KV演習場、植物園、カンパネラの湯など。重点的に見学したい箇所があれば要申請)
★学内自由行動(19時以降は寮内のみ。談話室、各自割り当てられた部屋などで過ごすこと)

※寮内では制服着用。飲酒、喫煙は厳禁です(20歳以上の聴講生も含む)
※19時以降の寮内行動においては、私服も可能。パジャマなどは各自持参。
※不明点は 生徒会事務部雑用係 笠原 陸人(gz0290)まで

●参加者一覧

西村・千佳(ga4714
22歳・♀・HA
L45・ヴィネ(ga7285
17歳・♀・ER
小野塚・美鈴(ga9125
12歳・♀・DG
ヨグ=ニグラス(gb1949
15歳・♂・HD
シルバーラッシュ(gb1998
20歳・♂・HD
鯨井レム(gb2666
19歳・♀・HD
斑鳩・南雲(gb2816
17歳・♀・HD
プリセラ・ヴァステル(gb3835
12歳・♀・HD
鬼灯 沙綾(gb6794
13歳・♀・DG
ファウリス(gb8525
19歳・♂・DG

●リプレイ本文

 能力者の学舎、カンパネラ学園。秋の空に、鐘の音が高らかに響く。
 学庭隅のベンチで、生徒会事務部雑用係の笠原 陸人(gz0290)は、1人思案していた。
 
 
「えーっと、今回の体験入寮者は10人か」
 膝の上にノートを広げ、記載された名前を確かめる。
「聴講生が3人、在校生が1人。新入生は2人で、学生寮管理部からは鯨井レム(gb2666)さん、ヨグ=ニグラス(gb1949)くん、シルバーラッシュ(gb1998)さん、それに斑鳩・南雲(gb2816)さん、と」
 そこで言葉を切り、空を仰ぎ
「管理部が来てくれるのは助かるなぁ。俺も頑張るけどさ!」
 ぱちんと両手で頬を叩いて、立ち上がった。
「さ、集合時間だ!」



<食堂>
 若き能力者たちの胃袋を満たす学生食堂は、本校舎の一角にあった。
 壁際には厨房と繋がったカウンターがあり、奥で稗田・盟子(gz0150)たち「食堂のおばちゃん」が働いている。
 その様子を眺めながら
「体験入寮のメニューはなにかなー? 南雲さんと言ったらキャベツ! これを学園名物にするですっ」
 白衣をだぶっと着たヨグが、横に立つ元気娘、南雲を見上げた。
「あ、相手がキャベツならまおーしょーこーけんを使わざるを得ないッ!」
 無邪気に笑むヨグとは対照的に、南雲の笑いはひきつり気味。漢女(おとめ?)はキャベツに対し、トラウマがあるようだ。

「あ、体験の人たちだ、ほら」


***
 2人が視線を送った先に佇むのは、3人の少女だった。
 
「寮での生活って始めてだからドキドキするにゃ〜♪ ところでもうちょっと小さい制服なかったのかにゃ?」
 金髪に猫耳、制服のスカートの裾から尻尾を覗かせるのは西村・千佳(ga4714)。
「全くだ‥‥もうちょっと他にサイズが無いのか? 胸が入らないから前を全開にする他無いのだが‥‥」
 頬を染めて俯き気味なのはL45・ヴィネ(ga7285)。制服のホックは一番下が留まっているだけで、襟元からは谷間が丸見えだ。
「無いのだが‥‥なのだ〜」
 ヴィネの口調を真似て、小野塚・美鈴(ga9125)も唇を尖らせる。彼女は胸くまのぬいぐるみを抱えることで、防御力アップ、羞恥心ダウンの効果を得ている模様。

「うにゅにゅ〜いらっしゃぁーい♪ カンパネラへようこそなのぉ〜」
 一方、在校生、プリセラ・ヴァステル(gb3835)は親しい友人の来訪に大喜びだ。規格外の胸をたゆんたゆん揺らし、抱きついてのお出迎えである。
「にゅ、プリセラちゃん、みんな見てるにゃ★」


***
 食堂奥に設けられた受付スペース。
「えっと、千佳さんたち3人は受付したし‥‥はい、次の人」
「ファウリス(gb8525)よろしく」
「鬼灯 沙綾(gb6794)です、お願いします」
 そこに陣取った陸人は、何気なくあげた顔を再び突っ伏すハメになった。何故なら
「むねえええ」
 彼の目前30センチに、新入生、沙綾の膨らみゆく胸が、甘い香りともに迫っていたからだ!
(は、鼻血出るっ!)

 「笠原ぁ、胸ばっか見てんじゃねーよ」
「シルバーさん、人聞きの悪いこと言わないでくださいっ!」
 図星をつかれた事務部員は、横に来ていた管理部員を軽く睨みつけた。
 もちろん銀髪の少年は、これっぽっちも怯まない。
「どーだかなァ‥‥と、こっちだ、ついてきな」
 口の端で笑い、2人の新入生を奥のテーブルへと案内してゆく。

「ああ、俺‥‥僕、要領悪くて、厭んなっちゃうな」
 口こそ悪いがてきぱきと動くシルバーラッシュを横目で眺めていた陸人は、やや自己嫌悪気味に呟いた。
 「‥‥」
 受付書類を片付けるのを手伝っていた鯨井レムが、ねぎらうように、短く声をかける。
「陸人、個々の力など微々たるものだ。何かあればいつでも呼んでくれ、力になろう」
「あ、ありがと。鯨井さん」
 凛とした雰囲気を崩さないまま、辣腕の管理部長は涼やかに笑むのだった。


***
 そんなわけで。
 どうにかこうにか受付を終え、テーブルに着いた参加者達は、それぞれ自己紹介をした。
 会食のメニューはキャベツ定食ではなかったから、南雲がホッとしていたことを付け加えておく。

「では、食べながら聞いて下さ〜い。このあと新入生、聴講生の皆さん、そしてガイドのプリセラさんはAU−KV格納庫の見学を中心に、学内をめぐります。管理部の皆さんは‥‥どうします?」
「我々管理部は、一旦寮に戻り、参加者の便宜を整えようと思う。見学を楽しんできて欲しい」
 レムが答えるとともに、3人も頷いた。
 
「はい、じゃあ、行ってきます!」



<格納庫見学>
 カンパネラ学園地下1Fは、在校生のKV、AU−KVの格納庫となっている。
 コンクリートの壁、ひんやりした空気、漂うは、機械油の臭いだ。
 
「ふーん、僕たちがラスト・ホープで使ってるハンガーとあまり変わらないにゃね」
 千佳が高い天井を見上げて呟いた。
「KVの型こそ最新とは言い難いが、施設はそう悪くない」
 整備ユニットのコントロール・パネルを眺めていたヴィネも関心したように頷く。
「卒業生は、UPCの整備士として働く事も多いので、自機で整備練習を行います。ね、プリセラさん」
「うにゅ〜 その通りなの〜 あたしの愛機をババーンと紹介しちゃうの〜」

 言うが早いか、少し離れたハンガーに駆け寄るプリセラ。そこには磨きあげられたリンドヴルムが佇んでいた。
 規格外の胸ごと上半身を預け、無機的なボディに愛おしげに頬ずりする。
「初期型でも、あたしと一緒に戦ってくれるいい子なの♪」

「プリセラちゃんっ、そのコを整備するときに気をつけてること、あったら教えてほしいのだ」
 美鈴も胸を揺らせながら、リンドヴルムの傍に屈む。
「うにゅ〜、色々あるけど、やっぱ愛なの〜♪」


***
 一行はさらに奥、ひときわ新しいAU−KVが並んだハンガーへと歩を進めた。
「ここは新入生用のハンガーです。沙綾さんとファウリスさんの機体も、この一角にありますよ」
 陸人の言葉を受けて、それぞれの機体の元へ走る2人。
「あった! ボクの機体! ‥‥キミがボクのリンドヴルム!」
「あっ、俺のも。‥‥これから俺は、こいつとともに戦うんだ」

 一方、ヴィネも好奇心を露わにする。
「陸人、ここには実習用の機体はないのか? 良かったら少々弄らせて欲しい。一応、機械の扱いには少々の心得はある」
「あ、2区画先のハンガーのやつなら、いいですよ。俺‥‥僕のですから」
 才媛の表情が、眼鏡の奥でぱっと輝いた。



<躍! 管理部>
 同じ頃、寮に戻った管理部の4人は、男女共用エリアにある談話室に集まっていた。
「皆、この時間を利用して今後の段取りをしようと思う。まずは体験入寮者たちの部屋割りだが」
 ぱらぱらと書類をめくり、部員の顔を見渡すのは、レム部長。

「女子の聴講生3人は全員相部屋を希望している。新入生も相部屋希望なので、4人部屋で良いだろう」
「男子はファウリスだけだな。俺の部屋泊めてやってもいいぜ。ヨグも来いよ。笠原も呼べばいい」
「んと、シルバーさん、掃除とかは大丈夫なんですか?」
「抜かりねぇよ」
 少し胸を反らすシルバーに、レムがやんわりと異を唱えた。
 
「シルバー、それは寮規違反だ。新入生をゲストルームに宿泊させ、消灯まできみの部屋で談話するなら構わないが」
「了解、規則は破らないほうがいいだろ。とりあえず男子寮廊下の片付けでもすっかな、行くぞ、ヨグ」


「さて」
 男子2人がいなくなったテーブルに、レムはプリントを広げ始めた。南雲がちょこんと首を傾げる。
「レムちゃん、なにこれ?」
「ああ、避難経路図や諸注意を記した冊子を作ろうと思うのだ」
「さすがレムちゃん! 手伝うねっ!」
「いや、私1人で大丈夫。きみはヨグの誕生日会のケーキを作るんじゃなかったのかい?」
 部長の意図を汲み取り、大きく頷く元気娘。
「任せといてっ」



<鐘の湯!>
 格納庫見学を終えた一行は、地下3Fの演習場片隅の入浴施設「鐘の湯」に足を伸ばしていた。
 寮生、在校生問わず絶大な人気を誇る、温泉風大浴場である。

「千佳さん達は初めてじゃないから説明いらないですよね。鬼灯さんは皆さんについていって下さい」
「女の子同士楽しく入るにゃ♪」
「入るのだ♪」
「よ、よろしくおねがいします」

 5人が「女湯」ののれんの向こうに消えたあと、陸人は隣に立つファウリスを見上げた。
「で、ファウリスさんは残念ながら僕といっしょに男湯です‥‥」
「ほんと、残念です」


***
 さて、場面は湯煙ただよう女風呂。

「にゅふふふ、選り取りみどりにゃね♪」
 肝心なところを石鹸の泡でガードした千佳が、たわわなバストの学友たちをゆっくりと眺め回す。
「今日の抱きつきは、君に決めたにゃ♪」
 沙綾に抱きつくと見せかけ、プリセラの胸元にダイブ!
 
「洗ってあげる〜♪ うにゅっふぅ〜♪」
 千佳を受け止めたプリセラも、既に全身泡まみれ、白クマさん状態だ。
 胸の柔らかスポンジ(?)で、黒猫の滑らかな背中と控えめな胸元を、丹念に擦りあげる。

「ねね、沙綾ちゃん、美鈴と洗いっこしようよぉ!」
「は、裸の付き合いというのも必要、ですよねっ!」
 洗い場の隅で、意気投合しているのは美鈴と沙綾。こちらは両手に泡を掬い、互いに背中を流すスタイル。
「はぅ〜気持ちいいのだ〜♪」

「折角なので皆の胸部主兵装の確認を行うッ!」
 湯気に当てられたのか、ヴィネが手の指をぐーぱーさせながら叫んだ。何かが壊れかけている。

「ヴィネちゃんが熱暴走してるにゃ! そろそろ出ないと、ファウリス君たちが待ってるにゃ!」


***
 女子達が脱衣室から出ると、男子2人は麦茶を飲みながら待っていた。
「お待たせしました」
「ど、ども」
 湯上がりの学友たちに、やや照れるファウリス。
 甘酸っぱい青春、ここに極まれりである。


「さて、このあと19時までは自由行動です♪ 帰寮時間は厳守でお願いしますねっ」



<自由行動・植物園>
 日の傾きかけた特別校舎エリア・植物園。
「そう言えば、先日の合宿でもここには訪れたのだったな。あの時はここで食材を採取したが、寮の食事にも演習場のキメラが使われていたりするのだろうか?」

 涼やかな秋風を受けながら、思索に耽るヴィネ。
 その背後で、茂みががさりと音を立てる。
 
「誰だ!」
「お、俺です」
 現れたのは、ファウリス。

「新入生か。こんな所に何を見に来た?」
「学園にわざわざ植物園を作るのだから、何かすごいのが居るのだろう、と思って。『鬼が出るか蛇が出るか‥‥』」
 
 飄々とした物言いに、ヴィネは唇を綻ばせた。
「面白いことを言うな、貴様。いずれ戦場で、相まみえたいものだ」



<自由行動・家庭科室>
 窓ガラスから夕日が差し込む本校舎、家庭科室。
 担任を通じ使用許可を得た在校生、南雲と聴講生、美鈴はともに、ヨグの誕生日を祝うケーキを作っていた。

「すごいのだ南雲さん〜 家庭科室借りれるなんて思ってなかったのだ〜」
「あたしの力じゃなくて、学生寮管理部の力かなっ♪」



<ヨグ誕!>
 寮生が朝食、夕食を摂る食堂は、男女共用エリアの奥に位置している。
 時刻は午後8時。一般の寮生は皆食事を終え、自室に引き上げてしまっている頃合いだ。
 だが今日は、スペシャルデー。何故って? ヨグの誕生日!

「ヨグ、お誕生日おめでとう!」
「おめでとーッ!」

 大きなテーブルの上に所狭しと並ぶのは、南雲と美鈴の愛情たっぷりバースデーケーキ、レム提供のチョコレートケーキ、主賓のヨグ本人作のバケツプリン。さらには市販の菓子類やジュースのペットボトル。
「はぁい、おめでとうなのよ〜♪」
 プリセラとファウリスが、クラッカーの紐を引く。
「お祝いありがとございます!」
 嬉しそうに顔をほころばせる主賓の頭上で、可愛らしい祝砲が炸裂した。

「喜ぶのはこれからだぜ、ヨグ!」
「わーっカニとチキン! シルバーさんすごい!」

 シルバーラッシュと陸人が運んで来た大皿を見て、さらに目を丸くするヨグ。

「チキンは食堂の盟子おばちゃんに交渉したぜ! カニは陸人が仕入れてきた」
「えへへ、植物園の川で獲りました! 本物の蟹みたいでしょ♪」
「えッ?」

 それって蟹じゃなくカニキメラでは。
 一瞬微妙な空気が流れかけたが

「ハ、ハッピーバースデーにゃ〜♪」
 千佳がプロ根性とマイクセットで何とか押し切り、
「かんぱいにゃー!」
 皆も祝杯で疑問を、一気に流し込んだ。気にしたら負け! 負け負け!



<更けゆく夜>
ヨグの誕生日パーティも終わり、消灯時間は目前。充実した1日も終わろうとしていた。
しかし、素直にベッドに入るような優等生はおらず‥‥。

***
2段ベッドが2つ設置された、女子向けゲストルーム。そこにはお喋りに興じる5人の姿があった。
「にゃは♪ 夜の語らいにはお菓子が必須♪」
裸にオーバーオール姿の千佳は、膝にクッキーの袋を乗せ
「しまった、パジャマを忘れた‥‥」
ブラウス1枚のヴィネが、横で寝そべって頬杖をついている。
「大丈夫っ、ボクもこの姿ですからっ!」
豊かな胸をボーダー柄インナーのみで包んだ沙綾が団結を示し
「ね〜 誰か、一緒に寝ちゃだめ〜?」
イルカ柄パジャマにクマのぬいぐるみを抱きしめた美鈴は、あふんと欠伸をした。

そんな友人達を眺めるプリセラは思った。
「うにゅ〜♪ 皆寮においでよ〜きっと、楽しいよ〜♪」
毎晩こうだと、いいのにな〜、なの。


***
 時を同じくして男子寮、シルバーラッシュの部屋。
「お疲れーっ!」
 部屋の主とヨグ、ファウリス、陸人はジュースの入った紙コップを一気に呷っていた。
「ほ、ほんと今回は管理部の皆さんにお世話になりました‥‥って俺、ここでのんびりしてていいのかな」
 やや落ち着かない風の陸人に対し
「もうプログラムは終わっただろ、心配しすぎなんだっつの」
 シルバーラッシュはチキンの残りを齧りつつ、
「こういう楽しみがあるのも寮の良さだと思うぜ?」
 新入生に目をむけた。

「んと、寮は楽しいけど、門限厳守! あと廊下でAU−KV着るのはダメ、ゼッタイ!」
 ちょっぴり先輩を気取ったヨグも「プチ寮則講座」を急遽開講する。

「ん、これから過ごす毎日がどのようなものかが分かった気がする」
 ファウリスは、そんな2人を眺めながら、ゆっくりと頷いたのだった。


***
そして最後は、共用エリア談話室。
誕生会の後片付けなどを終えたレムと南雲がソファに座っていた。
「今日は大変だったけど楽しかったね、レムちゃん!」
大きく伸びをしながら、部長に話しかける南雲。しかし返事はない。
「レムちゃん?」
覗き込んだ元気娘は、くすりと笑いを漏らした。
生真面目で堅物な隻眼の少女が、背もたれに身を預け、小さな寝息を立てていたのだから。

「レムちゃん、お疲れ様」

消灯まであと15分。

「もう少しだけ、寝かせてあげても、バチは当たらないよね?」


<おわり>