タイトル:DIABLOマスター:玄梠

シナリオ形態: ショート
難易度: 易しい
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2009/04/28 13:47

●オープニング本文


「ウチが何故こうも新機種をリリースするか、知ってるかい?」
 地方キャンプから帰る途中、車中で唐突なことを言いだした同僚。
 他の誰も真面目に取り合う様子はない。同じように無視を決め込んだ。
 特に応えもしないのを知らぬと取った彼は、エンジン音が被さって殆ど聞こえもしない講釈を垂れ始める。
「MSIってのは、ようするにダルダ財閥を筆頭とする系列付いた産業体だ。扱っている商品が軍事だろうと、食品業界だろうと、根っこは同じ所にある」
 企業図を見れば小学生でも分かる。眠いから一々突っ込んではやらないが。
 第一に、雇われのテストパイロットが親元の自慢をして何になるのだろう。
「財閥を茎に、諸々の産業が連なっている訳だ。AASやらAFTやらの下位企業もな。軍需だけやってる所はこうはいかない。超音波震動技術だって、一寸前まで採掘重機の研究してた奴等の担当だ。他の部門にも、CEOから有用の判を押されて取り立てられた所は多い」
 知っている。
 知ってるし、長い。
 運転手の男がミラー越しに少し此方を伺っていたが、目線で放っておくように伝えておいた。
 ラジオは常に雑音で役にも立たない。
 経費削減とは言え、空港までの長い陸路、テストパイロットを装甲車両で送迎するのはどうなのだろうか。
 CEOばりの待遇とは言わないが。
「機種を増やせば、関連技術を駆使する機会が増える。技術が伸びれば企業が伸びる。‥‥おい、聞いてるか?」
「聞いてるさ。勝手に続けてろよ」
「ったく。だから今回のフォース試験も元はペインの素体研究‥‥」
「‥‥待て、ステレオ弄ったか?」
 突如、ラジオのノイズが膨れ上がる。
 憶えのある厭な雑音。
 案の定、手元の無線も通じない。
「メット野郎か! 護衛機はどうしてる!」
「近いはずです、が‥‥!!」
 目の前に巻き上がった衝撃波を避け、ハンドルを切る運転手。
 しかし砲火を放った蜂柄の機体は既に、眼前に回り込んでいる。
「伏せろ!!」
 フェザー砲がフロントを薙ぐ。
 炎の尾を曳いて軽々と持ち上がった車体は空中で一回転し、側面から着地。
 衝撃で開いたドアから、既に力を失った運転手の体が放り出されるのが見えた。
「ぃっ‥‥くしょう、商売道具だってのに‥‥!」
 車体に体を押し付けられて見えないが、フレームに挟まれた右手足の感触が、途中から途切れている。
 金属の溶け切れる匂いを感じ、同時に聞き慣れたディアブロの足音を聞きながら、彼の意識も途切れていった。







「‥‥MSIから、臨時のテストパイロットの依頼だ」
 という経緯で、本部。
 不意の襲撃を受けたテストパイロット達は一人を残して再起不能。運転手は死亡。
 残った一人も、重体から回復しても尚暫くはリハビリの必要な具合だった。
「仕事の内容は、改良型ディアブロの挙動テスト。テストと言っても、既に配備内容は決まっている。後は傭兵の『動き』の中で正常に動作するか、セーフティチェックという所だろうな」
 テストパイロットとは言え、経歴の指定は、特に無い。ただMSI商品を愛用している者の方が、好まれるには好まれるか。
 改良自体は技術フィードバックによる細かなチューンナップと、主要機関部の調律が主な変更点となる。
 以前の交流会で得られた意見を元にした形だ。
「新型アグレッシブ・フォースも使える。まぁ、愛用者は先行して試してみても良いだろう。それからもう一つ」
 資料が挿し代わり、幾らかの武装‥‥と言うより、KVの一部位を映したような画が映る。
 腕部、上胴部、背部、胸部。そして燃料タンクのようなボックス。
「ペインブラッドに搭載する特殊武装についての意見交換、会議も行われる。後に資料として回すから、確認しておいてくれ」

●参加者一覧

伊佐美 希明(ga0214
21歳・♀・JG
金城 エンタ(ga4154
14歳・♂・FC
八神零(ga7992
22歳・♂・FT
ヤヨイ・T・カーディル(ga8532
25歳・♀・AA
斑鳩・八雲(ga8672
19歳・♂・AA
レティ・クリムゾン(ga8679
21歳・♀・GD
烏谷・小町(gb0765
18歳・♀・AA
千早・K・ラムゼイ(gb5872
18歳・♀・FC

●リプレイ本文

○Demon Bringer

 試験の開始前に、MSI本社では一寸した動きがあった。
 KV周りの環境が整い、また流通が一通り確立した事によるULT側での一斉値下げが入ったのである。
 これにより、傭兵への貸与権価格がディアブロが20万、ビーストソウルが35万C程の値下げとなった。
 また、公式発表は未だだがG3Pの概容が開示。
 幾らか日の経った試験の実施日でも、本社にちらほらとマスコミの姿があった。

 もっとも、そんな事は特に関係無く。
「バグアにとっての悪魔、か。‥‥それに相応しい乗り手ですかね? 僕は」
 改良適応型に乗る斑鳩・八雲(ga8672)と、通常機体の神代千早(gb5872)。
 傭兵達の用意した組み合わせ手順票が丁度良いだろうと試験場が開放され、全試験数のディアブロと装備類は隔壁挟んで隣接のハンガーで準備されていく。
 地上に空薬莢等を撒き散らさないよう、荒野部に離れて空戦を行う二機の姿は、観測機を用いてモニターされていた。
 貸与のMSIバルカンRでのドッグファイトを演じる二機。尤も、レンタルの通常機体のまま追い回される神代は堪った物じゃない。
 幸い、第一段階では攻撃性能に関する部分は強化されていなかった。代わりに、アグレッシブ・フォースの詳細画面がパニッシュメント・フォースに変更されている。
 気にはなるが、素体性能のチェックが優先された。
「うぅぅっ!!」
 弾丸が翼基部を掠め、旋回しかける機体を踏み留まらせる神代。
 操縦力が均一でない物同士、複数回の切り返しで徐々に差が開いていく。
「機動力や装甲が‥‥どちらかが大幅に、という事でも無さそうですね」
 事前に受けた説明では、装甲材と運動制御系の現時点での見直しだった。大まかな実感ではあるが、バルカン同士ではそれぐらいか。
 双方適度に弾痕を付けた所で、機体を戻す。
 ドッグファイトの中で、ある程度同じ様な挙動をした筈だが、着陸させ二つの機体を並べて比較すると若干量斑鳩機の練力に余裕があるか。

 一度、神代の休憩を挟み、次は同様の組み合わせで改良型の椅子にヤヨイ・T・カーディル(ga8532)が入る。
 空いた時間で一通りスナイパーライフルの試し打ちもしてみたが、あまり変わったような手応えは感じられなかった。
「さてと、いきましょうか」
「はいっ」
 両機、ナックルコート。
 自身の攻撃力に耐えきる事など滅多に無いディアブロなだけに、改良型と通常型とはいえ装甲を削り合う連打となる。
 改良された装甲材はビーストソウルの外装から生み出された物だが、その動きに負担は感じられない。
 重さの無い訳ではないが、デッドウエイトの排除と、装甲重量を計算に入れた挙動の成果か運動に影響は出ていないようだ。
 回避の足捌きで言えば、操作反応はむしろ良くなっている。
「ふぅっ‥‥!」
 膝元に受けた蹴りを強固に受け止め、改良型が正拳を交わす。
 5合程殴りあった時点で、神代側が限界となった。
 回避した手数は計算に入れていないが、0距離、ガリッガリの殴り合いになっただけにその数も少ない。
 改良側は装甲と腕の差も相俟ってか、まだ3割強の耐久力が残っている。

「次の機体出しますんでー! 終わった機体からあちらの班待機してる所まで搬入願いまーす!」
 スタッフの誘導で、ヤヨイの乗る改良型が通常型に肩を貸しながら移動していく。
 その間、残りの傭兵達は次の空戦に誰が乗るかで会議中。相談で埋まらなかった部分だ。
 と言うか一人立候補していなかったようで。
 伊佐美 希明(ga0214)が慌てて搭乗する。
 二段階目の改良型は、一段目強化によって補填された機体強度を支えに、更に攻撃力を上乗せする形になる。
 人間で言うなら、基本的な生活管理で体作りをした後、ハードな加圧トレーニングに移るような。
 多分。
 先に準備を済ませていたレティ・クリムゾン(ga8679)を待たせつつ、伊佐美が事前資料と画面を見比べる。
「新型は持続型と、単発強化のどっちか‥‥どっち?」
 伊佐美の見ている画面には、斑鳩、ヤヨイ同様パニッシュメント・フォースの項目がある。
 同様に、下矢印の方向にはディアボライズ・フォースの文字が。
 消費量は純粋に既存型の倍。また機体制動注意の文字も表示されている。
「両方かよ‥‥」
 離陸してしまうとディアボライズ・フォースの表示は消えたが、パニッシュメント・フォースの表示は残っている。
 戦闘開始直後から、双方互いの尾を噛み合う追走合戦。
 腕前は同等、機体性能も、極端な速力の差は無い。
 更に言えば射撃肌同士の戦い。間合い勘のある者同士、ドッグファイトが持続する。
 陸上からその様子を記録、観察していた金城 エンタ(ga4154)が、幾重にも輪を描いた機動の向こう側に飛ぶ二機を採点していく。
 今の所、広報表記のスペックと変わらない印象か。
「!! 入れられたか‥‥っ」
 旋回直後に潜られた右脇から、試作型スラスターライフルの弾雨が袈裟懸けに翼を穿つ。
 極度の破損では無いが、空戦で陸上ほど殴り合う訳にはいかない。
 レティはアクセサリスロットに固定カメラを仕込んでもあり、カメラクルーとしては充分過ぎる飛行時間だ。

 彼女らの戻るまでに、次の八神零(ga7992)と烏谷・小町(gb0765)の分の機体がセッティングされ、運ばれていく。
 場が整った所で、速やかに開始。
 装備に鳥谷と同じ物をと指定していた八神。
 鳥谷の一撃目は、ブーストで急旋回し、懐に突き込むルプス・ジガンティクス。
 回避を頭に入れていた八神だったが、既にその間合いではない。
 5本の爪同士ががっちりと組み合い、軋む。
「くっ‥‥!」
 同じくルプスで受け止めはしたものの、掴み合った右腕部の反応が鈍る。
 噛み合った爪を振り解くと同時に、改良型の強化された装甲に掻き傷を抉る。だが深い部分には至らない。
 更に追い込もうとする八神。だが、鳥谷は再度ブーストを掛けて後方に跳躍。
 脚部が地を踏み締めるのと同時、行動をスタックするように試作型スラスターライフルのモーターが轟いた。
 華奢な機体が、両方の衝撃を抑え込む。
 やや狙いは甘くも、補正は正確。咄嗟に身を転がした八神のディアブロが膝を撃たれ、横転の儘地を滑る。
 地面を爪で掴み、上体を起こした機体に更に攻撃警報。
 コクピット周りを避け、上体部に集中する弾丸。
 悪くしていた右肩関節に被弾、状態が一気に悪化し、出力低下のアラートが鳴る。
『これ以上の続行は正確な情報を期待できない。其所までにしておこう』
 空から降りて状況を見ていたレティが、損傷度合いを伺って制止を呼びかける。
 動けない訳ではないが、一部弾丸を噛んだ関節が別の故障を呼ぶ可能性もあり、通常型は搬送用の車両を待つ事になった。

「ここまでで、どう見ます?」
 一通り、他のメンバーの観測、感想も集まった所で、金城が声を掛ける。
 ハンガーではすぐ使い直せるような、損傷の軽微な物の応急処置から行われているが、それも中々数が多い。
「第二段階が第一段階とは別種の強化ではなく、更に重ねる物というのは分かったが‥‥」
「大きな変更は特殊能力の方なんかなぁ‥‥」
 カメラの映像を確認していたレティと、実際に乗り回した鳥谷と、大凡意見は一致。
 生存性の強化は浅く、広くと言った所か。
 KVの開発競争に伴い、また敵の強化によって『最低限』運用に耐える生存性というラインは徐々に上がってきている。
 その差を埋める為のベース作りが第一段階。とでも言おうか。
「第一と第二で、特に被っている強化項目も無いようですしね」
 観測に回っていた神代が、提示された項目と実働の項目を比べつつ。
「となると、後の試験はどうしましょうか」
 単純な引き算で、強化幅は算出できる。
 斑鳩は整備に走り回る人数も気に掛けつつ。周りの反応を確認する。
「先にフォースの試験をやってしまいましょうか?」
 拳で語り、足回りや反応性は充分に確かめたヤヨイが手を挙げる。
 機体特殊能力だけなら、テスト用のダメージチェック機体があれば事足りる。
 ひとまず、機体基本性能のチェックは切り上げられる事となった。




○Force

「ダメージ管理開始。機関部撃ち抜いたりはしないでくださいね」
 装甲を貼り付けて最大限強度を補ったビーストソウルが、ディアブロのミット持ちとして打たれるべく構える。
 強装アクチュエータも含めてMSIで最も頑丈な機体として、また金城のテスト手段には仮想対象が必要だった為、ひとまず斑鳩が搭乗している。
 その威力を身を以て、味わうという事で。フットコートを装備して、特殊能力を使ってでも完全に受け切る体勢だ。
 初撃、ナックル・フットコートの攻撃はひとまず重装ビーストソウルの外殻を凹ませる。
「では、行きます‥‥」
 パニッシュメント・フォースを発動しての、一撃目。
 使用感はアグレッシブ・フォースと変わらない。だが、機体を流れるエネルギーはその一瞬で消える事なく続いている。
 更に二発、三発と。一度間を置いて四発目で、その手応えは消えていた。
「これが進化したディアブロ、ですか。興味深いですね」
「どうでした?」
「アグレッシブ・フォースの6、7割‥‥を一回り分、のようです」
 同時に的当てを行っていたヤヨイの方も、結論としては同じく。
 また、連続して使用する分にも、練力消費は既存型とそう変わらないようだった。
 凹まされたビーストソウルの外装を取り替え、ヤヨイの機体と入れ替わりに鳥谷の機体が入場。
 続けて、第二段階のフォース、ディアボライズ・フォースの効果が試される。
「何か厭な名前やんなぁ‥‥」
 その名前に禍々しい物を感じつつ。ナックル・フットコート、また鳥谷は追加でウェイフアクスと、店売りで普及していそうな知覚物から扱っていく。
 ビーストソウルには比較用に従来型のデータがインストール済み。と言うより、修理前に一撃ぶち込んでおいた。
 金城が、表示を確認しながら機体の拳を振り翳す。
「消費量が、倍‥‥!?」
 発動の瞬間、エネルギー供給の急速な上昇に機体が震えを持ったように感じられたが、抉り込むようにして殴り抜いた頃には、その奇妙な震動も止んでいた。
「ど、どうですか?」
 しかし消費したエネルギーの量に比較してみれば、思った程の破壊が起こっているようにも見えない。
 装甲の凹み以上に仰け反ったビーストソウルから見れば、衝撃は深く徹っているようだが。
「一寸、変な事になってるみたいです‥‥」
 斑鳩にしか見えない画面の上でだが、ダメージの表示が、攻撃を受けた胸部装甲表面ではなく内部に集まっている。
 また、別な表示では計器のエラーなのか、強装アクチュエータ分の数値が計算に入っていない。
 自己診断を動かしても、実際の機体ダメージと、想定ダメージに隔たりがある。
「‥‥駄目ですね、まるっきり、防御の上乗せ分を擦り抜けたとしか思えません」
 練力の補充に走った金城に代わり、鳥谷が同じ試行を行うも、やはり結果は同じ。
 更にサーベイジの通用しない知覚攻撃では、ダメージ算出に異常無し。通常通り、フォース出力の乗った数値で計算が出ている。
 そして、金城の試行同様発生する機体の震え。
「何やねんな‥‥」
 仲間の見守る中、ビーストソウルの安全が擦り切れるまで、試行は続いた。
 過剰なエネルギー供給によって、何かが起きているらしいのだが。
 傭兵達が集めた資料の解析が急がれている。





○Pain Blood

「ほ、他の方の意見も集めて下さったんですね‥‥」
 傭兵達が外で試験を行っている間、冬子(gz0212)が卓上に置かれた2/5択を束ね、簡単に纏めていく。
 彼等が会議に入る頃には、技術関係者を集めておく為の下準備だった。
 結果、ファントムヘイズ、フォトニック・クラスター、エネルギーパックが大凡横並び。
 中でも売りになる物としてフォトニック・クラスターが、実用性の面でエネルギーパックがトップ2つに入る。
 大穴でオービットミサイル、だが上三つの推薦力からすると現段階では弱いか。装備の重ね方次第で充分に意義のあるファントムヘイズが3位と置いておこう。
 この順位はその技術を担当する部門と同時に、彼等の統括の上司である開発部の頭にも伝えられる。
 そして予算を決める物達へも。‥‥ある意味最大のキーマンでもあるが。
 傭兵達に見えるのは、会議で相対する各研究グループの表情のみ。
 会議の当日、超音波兵装の研究チームは明らかに深酒後の顔で。
 フォトニック・クラスターを担当した、元デッドリィ・ライトニングの研究チーム―――計画担当アステリズム・フォトニック・テクノロジー、AFTはバスターライフルのプラズマ加圧器研究の手も止め、大勢で押しかけて来ていた。
 約半数は「会議室に入らない。帰って働け」と冬子に一括りに押し帰されたが。
 そうやって、嬉々として入ってきた彼等の前に、見覚えのある顔が。
 某事故当時、暴発を起こしたのとは別の部門のペインブラッドをテストしていた、ヤヨイの笑顔。
「さて、この子は何時になったら方向性が定まるのかしらね‥‥」
 本人は何の気無しの発言か、はたまた言外の圧力か。
 それは置いておくとして、会議の内容はと言うと。
「フォトニック・クラスターにしろ、ネイル・オブ・コープスにしろ、敵に接近するスキル付けるなら、回避策は欲しいね」
「ウチも個人的には、フォトニック+ファントムか、オービットを推すかな」
 という、高コスト2個積み主眼の伊佐美、鳥谷達の案に対し
「長時間の戦闘が可能になるのは、やはり有効だろう」
 という、エネルギーパックをメインとしたコスト低・高の組み合わせが対抗。
 後者にはフォトニック+エネルギーパックという組み合わせもあり、奇しくも初期プランの統合となった。
 また、同時にペインブラッドの素体についても現状で完成している部分が報告される。
「現在、パラジウムバッテリーによる高負荷の搭載兵器稼働を主眼とした、特殊任務機として開発を進めております。その特性上、搭載兵器を活かす形で素体に変更が加えられる予定ですので、後は搭載兵器待ち、と言った所でしょう」
 元が二つのプランの融合という事で、マイクが二人目の開発責任者に移る。
「搭載兵器によって逼迫するであろう装備関係に極力余裕を持たせており、またディアブロは別の方向性で攻撃性を高めております。以上です」
「別の方向性っちゅーんは、知覚でええんかな?」
「概ね、その通りに」
 後はそれぞれの担当から提出された現段階での資料を基に散発的に意見が飛び交い、粗くも想定の形が出来ていく。
 誰かが思う。「後は納期と上司との戦いだ‥‥」と。
 それは概ね、その通りに正しく、また傭兵達にとっては、待つ事その物が精神力との戦いであった。