●リプレイ本文
○序章
むかしむかしのみらいのみらい。
とあるせかいでは、けーぶいたちがへいわにくらしていました。
しかし、あるひのことです。
「? ‥‥何か降ってくるさー」
そらにあかいつきがあらわれ、ふきつなとうが、そしてくろいきたいが、とつじょとしてあらわれたのです。
あかいつきにのってきたかれらこそ、うちゅうからのしんりゃくしゃ、ばぐあぞくでした。
それからというもの、せかいにはまものたちがあふれ
へいわにくらしていたけーぶいたちは、あかいつきをたおすべく、たちあがるのでした‥‥。
○第一章 旅の戦士達
せんしたちは、ひろいせかい、ひろいくににちらばっていました。
そう、そのときはまだ、だれもがそのうんめいをしらなかったのです。
あるものはきしとして、あるものはさむらいとして、あるものはたびびととして
けーぶいたちは、このせかいのききをしるのでした‥‥。
ここは、ド・ロームの国。
名門、ぜろわん家が政治を納めるこの国は、大きな領土にばいぱー族やふぇにっくす族、あんじぇりか族など多くの種族が居ながらも、争う事もなく平和な月日が流れていた。
しかし、赤い月の現れてから暫くの後、この国にも、不穏な影は迫っていた。
「騎士団長! 騎士団長はおるか!」
「はっ! ここに!」
「ディース様がお呼びである。参られよ」
ある日、ド・ロームの騎士グスタフは、あーる家の武官ディースに呼び出され、普段は立ち入る事の無い城の奥へと入っていた。
そこは国の秘宝や、古文書の眠る倉庫室。メ・ガコーポ・レー・ションの遺跡から出土した品なども、ここに納められている。
「来ましたね、騎士グスタフ。早速ですがこれを見てください」
「はっ。‥‥これは?」
「伝説の『ゆにばーすないと』の存在を示す石版です。‥‥カプ・ロイア領に出現した塔と、ばぐあ族の話は聞いていますね?」
「はい、このド・ロームにもすぐ近くにまで迫っていると‥‥」
「彼等に対抗するには、この遺跡の力が必要となるでしょう。そして『ゆにばーすないと』を目覚めさせるには、けーぶいの戦士達の目覚めも必要なのです。騎士グスタフ、世界を旅し、仲間を集めなさい」
「はっ!」
騎士グスタフはばいぱー族の部下、ムーンダストと共に装備を纏め、一路西へ。
その途中、放浪の旅をしていたというギンガの国の武芸者忠勝や、隣国メルス・メス公国の守護師へラルディアを仲間に引き入れていく。
クルメ・タルでは『銀の暴風』しゅてるん族のソードフィッシュを激戦の後に仲間にし。彼等の旅が魔物の山を越え、奉天帝国へ差し掛かろうという頃、本国では別の部隊が旅を始めようとしていた。
「姫様っ‥‥」
ないちんげーる族の少女、白鴎が、彼女の主である夜叉姫の後をぱたぱたと追い掛ける。
「本当に‥‥」
「これはド・ロームだけの問題ではないのです。わたくしが行かなければ」
廊下の先、大扉の先の広間に集った騎士達を前に、ロンゴミニアトを翳す夜叉姫。
「ド・ロームの騎士達よ! わたくしの後に続き、ばぐあの塔を、あかいつきを討つのです!」
呼応し、ディフェンダーを振り上げる騎士達。
ひとしきり彼等を鼓舞した夜叉姫は真紅の衣を翻し、彼女自身も旅路へと向かうべく、遺跡の品を納めた倉庫へと歩を進めていった。
と、その影でこっそり蠢く、小さい影。
夜叉姫が倉庫に入るのに続いて、あんじぇりか族の少女、ベルフェゴールが忍び込む。
(あたしだって皇帝家なんだから。これぐらい持っていっても良いわよね。うん、良いわ)
その場にあった遺跡の練槍を持ち出し、ベルフェゴールはその日の内に出発した。
勿論、世界を救ったけーぶいとして、ド・ロームの正当な女帝となる為、である。
でぃあぶろ族、びーすとそうる族、あぬびす族、ぜかりあ族それぞれの国が合わさって出来た国、MSI連合。
この国も例外ではなく、ばぐあ族の脅威に曝されていた。
夜明けの薄明かりが昇り始める時刻。いつも朝を告げているモーニング・スパローも、まだその羽根を休めている頃。
南の遠い海から、ばぐあ族の船、びっぐふぃっしゅが迫っていたのだ。
「な、何だっ!?」
偶然MSI連合に訪れていたバイパー族の青年、クローズは突然の爆音に安ハンガーのベッドから転げ落ちた。
次々に降り注ぐ砲撃に、耳を畳んで逃げ惑うあぬびす族の住人達。
港町は、瞬く間に火と煙に包まれた。
「やあやあ、我こそはゼカリア族の戦士が一人、ライジン・トールなり! 腕に自信あるものは我と立ち会え!!」
「キェェェェ!!」
「グァァァッ!!」
海辺に現れたばぐあ族の魔物を前に、年老いた姿からは想像も出来ないような力で杖を振るうトール。
しかし次々に上陸する圧倒的な物量に、少しずつ傷付いていく。
「とぉーっ!」
「むっ、びーすとそうる族か!」
「たいがーばりあんと、参上!」
そのピンチに、MSI連合の海辺で生活する、びーすとそうる族。その若い戦士タイガーバリアントが駆け付けた。
遺跡に残された技を駆使し、びっぐふぃっしゅを翻弄する。
瓦礫を越え、坂を越え、高台からその様子を見下ろすクローズ。二人は健闘しているが多勢に無勢、町の破壊を避けるために大技の使えない、不利な戦いを強いられている。
ぐっと握り締めた拳を隠す、クローズの黒いマントを、白い風が吹き抜けていった。
「ぁぁぁぁぁ朝だオラァァァァァァァァッッ!!」
毎日の朝を告げる空砲に実弾を込め、寝起きのしょぼ目に睨みを利かせたスパローが。真っ直ぐ高台を掛け降り駆け抜け通り抜け、戦場に突撃していく。
「援軍であるかぁっ!?」
「寝起きだコラァァァァァァッッ!!」
「キェェェェェッ!」
「ギェァァァッ!」
トールに押し止められていた魔物達が、ボーリング玉に弾かれたピンのように散り散りに吹き飛んでいく。
吹き飛ばした本人は本人で、真っ直ぐ海に落ちていった。
「何だ、ありゃ‥‥おっと、こうしちゃいられねぇ」
高台から飛翔し、ぽかんとするトールの前に降り立つクローズ。
「俺の名はクローズ。この戦い、助太刀させて貰うぜ」
マントの下できらりと光る右腕のパイルバンカー。そして体に備えられた鋭い刃が、次々に魔物を切り裂いていく。
海に浸かって目の覚めたスパローも、タイガーバリアントに担ぎ上げられて戦線に復帰する。が、海水で炉が冷えた所為かまたすぐにうとうとしはじめた。
「おのれ! けーぶい族め!」
町に入ろうとした魔物達をあらかた一掃した所で、びっぐふぃっしゅに乗っていたばぐあ族、タロスが姿を現す。
姿を現した所で、丁度びっぐふぃっしゅの大口が開いた辺りに、トールの420mm砲が向いていた。
轟音一発。スパローの眠気も、船の装甲もばっちり全壊。
「ちくしょう! おぼえてやがれ!」
トールの大砲に大穴を開けられたびっぐふぃっしゅが海に沈んでいき、タロスは慌てて飛び去っていく。
「やれやれ、騒がしい朝だったぜ‥‥」
戦闘の止んだ港町で、スパローが朝の空砲を打ち上げる。
とっくに朝日など昇りきっていたが、別に気にしない。起きた時が朝。
「ちょっと、あんた達!」
気分良く空に撃ち上げていた所で、ぱんぱんと鳴り響く時刻の砲より遙かに高い声が、割って入った。
「何じゃ? あんじぇりか族がこんな所で‥‥仲間とはぐれたかのう?」
「迷子‥‥って! 私を一体誰だと思ってるの!? そこのばいぱー族、言ってあげなさいよ!」
突然現れたあんじぇりか族に、またしてもぽかんとさせられるトール。
話を振られたクローズも、分からないと言った風に首を振る。
「このあたしを知らない?! あんたサイアクのけーぶいね! ド・ロームの皇女よ皇女!」
「‥‥‥‥」
困った顔のトール、呆れ顔のクローズ、聞いてないスパロー、イノセントな目でその様子を見つめるタイガーバリアント。
「でもまぁ‥‥あんた達、そこそこ強そうね。私に協力しなさい! ううん、協力するの。分かった!?」
「‥‥何で?」
「だってあたし、皇女だもん」
「あぬびすの町が大変な事になったらしい、くれぶら。くれぶら。くれぶら。クレブラ、聞いてるか」
「聞いてるよっ。それよりスピリッツ。今こっちの方が大変な事になってるんだぜ?」
雪の降る国、プ・チロフ連邦。
その日は吹雪の吹き荒ぶ音と同じ位に、機関銃の音が鳴り響いていた。
のんびり新聞を読む相棒を倉庫影に押し込み、ばぐあ族の攻撃から身を隠すクレブラ。
ばぐあ族の鉄巨人、らいんほーるどが現れてからというもの、プ・チロフ連邦の大地は半分ほどがばぐあ族に支配されていた。
そんな危機を、今新聞の向こう側に迎えつつ。気がつけば、読んでいる途中の新聞もぽっかり撃ち抜かれていた。
「‥‥大変だ、クレブラ」
「あぁ、大変だっ!」
雪積もる倉庫を縦に横に、迫るばぐあ族から逃げ続ける二人。
その背後に、黒い影が迫る。
「飛べ! スピリッツ!」
間一髪。
もう少しで氷の弾に蜂の巣にされる所だった。
「フーッフッフッフ、此処までだ、けーぶい族!」
迫るばぐあ族、吹雪のすのーすとーむ。
「見つけたぞ!」
四輪をドリフトさせ、ランプをふぁんふぁん鳴らし、現場に駆け付けてきたパトカラーのすかいすくれいぱー族。
その上には、必死にしがみついて付いてきたあぬびす族の見習い、ぶりっとも。
「連続滑走路凍結スリップ事件の犯人はお前だな!」
「警部、あれは普通に事故です!」
「雑魚が何匹集まろうと、纏めて凍り付くがいい!」
すのーすとーむが雪と風を召喚し、辺りを凍り付かせていく。
吹雪に包まれ、身動きの取れないけーぶい達。
「待ていッ!」
ばばんっ! っと。何故か屋根の上に現れたあぬびす族の狼嵐。
雪の積もった襤褸を脱ぎ捨て、金色の装甲を露わにする。
「一人ひとりは小さな光であろうと、皆で集まれば、大きな光となる‥‥人それを、『希望』という!」
「貴様、何物だ!」
「ばぐあ族に名乗る名前は無い! とうっ!」
すのーすとーむを蹴り飛ばし、降り立った狼嵐。
衝突の勢いで吹雪の召喚は止み、凍り付いていたパトランプが再び点灯する。
「やっぱり凍結尻餅事件の犯人だったか!」
「警部! 事件が変わっています!」
「‥‥ネタは上がってんだよぉーっ!」
「キーレーたー!?」
「おのれ、ふざけ‥‥うおっ!?」
「プ・チロフの銃器は世界一‥‥蜂の巣だ、蜂の巣ゥ」
クレブラの重機関砲と対空機関砲が吹雪のようにすのーすとーむに突き刺さる。
「逮捕、っだぁー!」
ジャイアントワッパー、旋回。
○○時××分、逮捕。
「よくやった、けーぶいの戦士達よ!」
やっぱり何故か高いところから、狼嵐が語りかける。
「けーぶいの戦士達よ、ばぐあの塔を目指すのだ。答えはそこにある」
狼嵐はそうとだけ言い残し、去っていった。
追い掛ければ間に合いそうな速さだったけど、誰もが空気を読んでその場は見送った。
「犯人が其所に居るんだな!」
「‥‥まぁ、色々な意味で、犯人でしょうけどね」
「どうする、くれぶら」
「‥‥行くさ。あんなデカブツ置いてあっちゃ、狩りにも出られないしな」
三者三様、色んな理由があったり無かったり。
戦士達は決戦の地、ばぐあの塔へ向かうのだった。
○第二章 運命の戦士達
こうして、けーぶいのせんしたちはつどいました。
あかきつきがまうえにうかぶ、ばぐあのとうのめのまえに。
ゆうかんなせんしたちは、たかくそびえるそのすがたをみつめ
へいわなせかいをとりもどすたたかいへ、いどんでゆくのでした‥‥。
集結する、けーぶいの戦士達。
各地で仲間を集めたグスタフも、夜叉姫の率いるあかいつき討伐隊へと合流していた。
暗い空、月を隠すように直上に浮かぶあかいつき。
火を焚き、陣を組んだけーぶい達は多種多様、正に世界中から集まった戦士達。
そんな中、ひときわ異彩を放つ‥‥頭が。
「あ、あれは!」
「知っているのか、飛熊」
訪ねるグスタフに、夜叉姫に付き従うらいでん族の飛熊がうなずく。
「うむ。あれはロイヤ・ル・アーセ・ナル連合王国の雄、伊達の中の伊達と呼ばれたアニキ・ザ・リヴァイアサン!」
高々と聳えるリーゼント。その姿が大きく、一寸後ろの方の、何か、煙草だけちらっと見える機体にピントが合わない。
時折、風に靡くマフラーなどは見えるのだが。
「我等ロイヤ・ル・アーセ・ナル連合国軍! ド・ローム国に協力いたします!」
ろびん族の戦士、天鳥。同じ土地の産まれであるないちんげーる族の白鴎の呼びかけを受けて参上。
ぞろぞろと塔の前に集まってくるけーぶい達。
しかし門は閉じたまま。呪いのふぉーすふぃーるどで封印されており、けーぶい達の力では開く事ができない。
「きーっ! 何よこの塔、門が閉まってるじゃない!」
「‥‥そりゃ、これだけ集まればな」
「閉めるよなぁ」
ベルフェゴールに半ば強引に同行させられていた仲間達もまた、塔に辿り着いていた。
此処に至るまでに幾度となくばぐあ族と戦い、連帯感は生まれつつあったが、皇女は相も変わらず。
そのテンションの高さについていけないトールは、近くの農機とのんびり話などしていた。
「僕はなまら平和に暮らせるのがいいさ〜。皆がおなか一杯でお天気なら幸せさ〜」
「お前さんも大変だのう、近くにこんな塔が立っていては」
「や〜、何度も差し入れ持っていこうと思ったけさ、表門は閉まってて、裏口から入ったんだども誰も居なくてさ〜」
「‥‥裏口! 裏口を探せ!」
穏やかな会話を他所に、慌ただしくなる塔の周辺。
ド・ロームの兵士達が裏の入り口を見つけ出し、突入の目処が立った所で、夜叉姫が壇上に立った。
「いよいよ決戦の時、皆の者、力を合わせ――」
声を張るその姿が、ふっと黒い影に隠される。
「きゃー!」
「ハーッハッハッハ! 未熟なけーぶい族ども。返して欲しければ最上階まで来る事だ!」
突如飛来したしぇいどに抱えられ、塔の高くへ連れ去られていく夜叉姫。
「あぁっ! また姫がさらわれた!」
「やっぱりか!」
「行くぞ! 姫をお救いするのだ!」
慌てふためく騎士達をグスタフが束ね、飛熊、白鴎らと共に先陣を切って塔の中へ雪崩れ込んでいく。
ふっと何かが横切ったような気もするが、大多数に紛れてすぐに目立たなくなった。
「オラオラオラァ! 巻き込まれたくなかったら下がってろ!」
その後に続いて、各地から集ったけーぶい達が。
「あ、あたし達も行くのよ!」
「俺、明日の朝の空砲あるからもう寝ないと‥‥」
「布団を敷くなっ!」
更にその後から、眠りかけのスパローを引き摺って皇女様御一行が塔へと入っていく。
「ほら、ぐずぐずしてるから敵なんて全然居ないじゃない!」
アニキの必殺パチギで頭頂部を凹ませた魔物や、ガンランスで纏めてこんがり焼かれた魔物達が辺りに転がる低層。
グスタフ達は既に塔の難敵、ふぁーむらいど族の管理する高さまで到達していた。
「ここは任せてもらう!」
蟹座の階。討伐隊の中から一歩踏み出すアンラ・マンユ。
矢鱈と高そうな武器ばかりを大量に背負ったらいでん族の彼が、蟹座のふぁーむらいど族に叫ぶ。
「蟹座‥‥汝を取り戻す為に‥‥我は戻ってきた!!」
「よし、ここは任せた!」
後は若い者で。と誰かが言って通過していく。
何となく空気を読んだ皇女一行も、そのまま通過していく。
一番空気を読んでいるのは蟹座だと言うのは置いておく。
それぞれの星座達が守る階層で戦いが続き、騎士団の兵士達も多くが階下に倒れ、少しずつ疲弊していくけーぶい達。
うーふー族のココペリに支えられ、塔の外に逃れた者も少なくない。
先に進む戦士達も、1人、また1人と膝を折り
「へへ‥‥すまねぇ‥‥やられちまった‥‥だがまだ‥‥俺を‥‥四十五度で叩‥‥ぐふっ」
「く、クレブラー!」
互いに励まし、支え合って
「ダメダメダメダメ諦めたら、ハイ死んだよ今の君の気持ち死んだよ!」
「その戦い待ちなさい、私が助太刀いたします! ‥‥武器忘れたけど!」
悲しみを乗り越えて
「な、なんじゃこりゃーッ!?」
「警部ーっ!?」
強敵、ステアーを突破し
「ここは俺に任せて先に行け! うぉりゃぁぁぁぁぁ!!」
「そ、ソードフィッシュぅぅぅぅぅぅっ!!」
ついに彼等は、最上階へと辿り着いた。
「今、アンラさんの練力が消えた‥‥」
「みんなの命、無駄にはしない!」
最後の扉を開けるグスタフ。
最上階は空に、そしてあかいつきに近く、不吉な夜が辺りを覆っていた。
「危ないっ!」
へラルディアの守護術(フィールド・コーティング)が、暗闇からの一撃を弾き返す。
「こ、これは‥‥!」
最上階を覆う暗闇から、続々と現れる魔物やばぐあ族達。圧倒的な数がけーぶい達をぐるりと取り囲む。
「かかったな! けーぶいの戦士達よ。此処が貴様等の墓場となるのだ!」
嘲笑うしぇいど。その横には、何かの制御装置で捕まった夜叉姫の姿が。
「さぁ、かかれい!」
囲まれたけーぶいの戦士達。しかし。
「ここは拙者らに任せるでござるよ。なに、この程度の敵、拙者に掛かれば苦戦もせぬ相手でござれば、大船に乗った気でいて下され。貴殿らは、姫の救出を」
「行けぃ! 貴様らも武人であるならば我が屍を踏み越えてでも敵を倒してみせよ! もっともワシも死ぬつもりなんぞないがな!」
忠勝、そしてトールが先陣を切り、槍と巨砲で道を切り開く。
「爺さん、無茶すんなよ!」
「すんなよ!」
二人の押し開けた穴に突撃し、しぇいどに立ち向かっていく戦士達。
「さてさて、どうなるかのう。見送ったとはいえ、ワシの力がもつかのう。まあ、戦う時は楽しまねばな」
「他の種族にも勇者はいる物でござるな!」
「みんな! 力を合わせるのよ!」
「チッ、卑怯な手ェ使いやがって‥‥何見てンだコラァァァァッ!」
そして、戦士達の背中を守る戦士達。
「えーいっ! えんはんさー全開! れーざーかのん!」
それまでこっそりひっそり、というより後から付いてきただけの皇女ベルフェゴールが、我先に攻撃を始める。
「フッ、効かんなぁ!」
「きゃぁっ!」
しかし、ベルフェゴールの放ったれーざーはしぇいどのふぉーすふぃーるどに阻まれ、入れ違いに放たれたぷろとん砲が光る。
「やれやれ、世話の焼ける皇女様だぜ」
間一髪、クローズが抱き上げた後で巻き起こる爆発。
次々に放たれ、階下にまで貫通したぷろとん砲が、塔の石壁を崩し、ばぐあ族の味方までも巻き込んでいく。
「うわぁぁぁっ!」
「くぅっ!」
ぷろとん砲をかいくぐり、接近戦を挑んだ戦士達を、しぇいどの腕が一払いに吹き飛ばす。
クローズのパイルバンカーも、狼嵐の双剣も、歯が立たない。
「くっ、これがばぐあ族の力‥‥」
「まだだっ! まだ戦える!」
目の前で傷付き、倒れ、それでも立ち上がる戦士達を前に、姫は暗い空を仰いだ。
「神よ‥‥貴方が本当に居るというのなら、わたくしはどうなっても構いません。だから、せめて今、この時だけ答えて下さい‥‥」
○第三章 伝説の戦士達
もえあがる、えみたのちから。
でんせつの『ゆにばーすないと』がそのちからをしめすとき。
あたらしいちからにめざめたけーぶいたちは、ふたたびたちあがり
いま、さいごのけっせんへ‥‥。
「こ、これは‥‥」
ぜろわん家の家臣達は、その光が興るのを見ていた。
遺跡から浮かび上がる、巨大な船。
姫の祈りが、けーぶい達の魂が、伝説の遺跡を呼び覚ましたのだ。
浮上した『ゆにばーすないと』から放たれた光が、塔の最上階に降り注いだ。
「燃え上がれ!僕のエミター!」
「おお、力が‥‥!」
生命、練力、最大値!
幾らかの機体は、更に己の内に眠る力を目覚めさせていた。
「我らはけーぶい‥‥。たとえ相手がどれほど強くとも、命の鼓動がある限り、必ず蘇るッ!」
瓦礫の山から立ち上がり、SESを奮わせる狼嵐。いや、真狼嵐。
「人、それを‥‥『復活』というッ!」
「ぬぅぅぅぅ! しかし、未熟なけーぶい族が何度復活しようと‥‥!」
ゆにばーすないとの光に照らされたしぇいどは苦しそうにもがき、ぷろとん砲を乱れ撃つ。
「今よ!」
へラルディアの守護術に守られ、伝説の戦士達が突撃する。
「うぉぉぉぉ!!」
数多の拳が、銃弾がばりばりとふぉーすふぃーるどを撃ち、しぇいどを叩く。
「これは、くれぶらの分だ!」
テラーウイングを羽ばたかせたスピリッツが、シェイドにラージフレアを放つ。
「くっ、この目が眩む‥‥!」
幻の炎に包まれたシェイドの守りが、その瞬間、僅かに緩んだ。
「今だ! 究ッ! 極ッ! キィィィィィィィィィック!」
「吼えろ! 俺の右腕!」
「超パチキィッ!」
「どらごんばすたー!」
次々に炸裂する、戦士達の必殺技。
「おのれぇぇぇぇぇぇぇっ!!」
しぇいどを守るふぉーすふぃーるどが破れ、姫を縛っていた装置も破壊される。
「けーぶい達め‥‥これで、これで勝ったと思うなよぉぉぉっ!」
あかいつきへ逃げ去っていくしぇいど。そしてあかいつきもまた、宇宙の彼方へと逃げ去っていく。
ばぐあ族も、魔物達も、しぇいどの後を追って行ったようだった。
「姫様ー!」
「でぃーす! ゆにばーすないとが目覚めたのですね!」
「はい! ‥‥姫、急いでください! 塔が崩れます!」
あかいつきの力を失い、崩壊するばぐあの塔。
すぐさまゆにばーすないとが橋を架け、けーぶい達を救出していく。
最上階はもう半ばほどが落ち、下の階に続く階段も崩れようとしていた。
「まだ中に仲間達が!」
「駄目です、トール殿、巻き込まれてしまう!」
「えぇい、この老いぼれが生き残って‥‥!」
身を乗り出そうとするトールを、何とか忠勝とディースで押し止める。
と、その時。
「クレブラ!」
「ヒーローは遅れてやってくるって言うだろ! ‥‥壁が落ちてきたお陰でな! ぴったり斜め四十五度だったぜ!」
階下で倒れた仲間達を抱え、クレブラがゆにばーすないとに飛び乗る。その胸には、一寸痛そうな岩の痕が。
瓦礫の山となった塔。その中にちらっと黒いスーツが見え隠れしたような気がしたが、全員の安否は確認出来たので、結局気のせいだった。
けーぶい達を回収したゆにばーすないとは再び飛翔し、これからは戦士達の故郷を順番に回る事になった。
あかいつきの消えた空は、もうすぐ朝を迎えようとしている。
「‥‥お? 朝だー、朝だぞー」
ついいつもの習慣で、空に向けてエニセイを撃ち上げるモーニング・スパロー。
「おお、祝砲じゃな! 460ミリ特殊対空榴弾装填! 撃てええ!!」
それに釣られて、どでかい大砲を撃ち上げるトール。周りにいたちびっこけーぶい達が驚いて泣きそうになるのを慌てて宥めつつ。
「朝から賑やかさー。‥‥二人も、早く起きればいいさー」
地上からその様子を見上げていたりゅーじゅは、明け方の畑仕事を終えて、ヴァイナーシャベルを置いた。
彼の家では、戦いの最中に塔から転げ落ちてきた二人、蟹座とアンラが、共に寝かされていた。
「世界は平和になったかもしれない。だが、この世界に正義がいれば、また悪もある。我らけーぶいは、悪に屈してはならない。それが、正義の戦士、けーぶいなのだから‥‥」
けーぶいのせんしたちは、じぶんたちのくにへとかえっていきました。
ほんのすうじつのできごとでしたが、きょうりょくしあったせんしたちのたましいはいつまでもむすびつき。
それいこう、せかいにききのおとずれるとき、こころをふるわせるためのことばがかたりつがれるようになったのです。
ぼくらは、けーぶい。
‥‥‥‥‥‥おしまい。
※設定協力
緑川 安則(
ga0157)
榊兵衛(
ga0388)
漸 王零(
ga2930)
御影 柳樹(
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ga4276)
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ga4772)
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ga5549)
ゲシュペンスト(
ga5579)
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ga8024)
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ga8154)
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ga8270)
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ga8751)
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ga9011)
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ga9191)
抹竹(
gb1405)
依神 隼瀬(
gb2747)
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gb4188)
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gb4549)
ウラキ(
gb4922)
ジェーン・ドゥ(
gb8754)
飲兵衛(
gb8895)
湊 影明(
gb9566)
綾河 零音(
gb9784)
カンタレラ(
gb9927)
来栖・繭華(
gc0021)
布野 あすみ(
gc0588)
上月由鬼(
gc0849)
※読み上げ役
月神陽子
○メイドとクッキーと胃薬と
半泣きの同僚が会議室から出てきた時、冬子は大凡の見当が付いていたので、逃げた。
若返ったこの体。ヒールでも無ければそのまま逃げ切れたのだが、角を三つ曲がった辺りで追い付かれ、がっちりと肩を掴まれる。
「傭兵って、恐いね!」
改めて見直した彼女の顔から半分ほど営業笑いが抜けきっていないのが、状態をよく表している。
「メイドがね! メイドさんがいてね! あ、でもクッキーくれる優しい人も居てね!」
「分かった、分かったから。普通だし‥‥で、纏まったの?」
「ううん!」
全力で横に振られる、首。
「頑張ってね」
「うん! ‥‥待って!待ぁって!!」
「紹介したでしょ!」
「手伝ってよ!」
「自分の仕事でしょ!」
「うぅ‥‥あ、これ、百地さんって子から」
「何?」
「胃薬」
あ、コイツ自分で飲む気無いんだな。
不意に寒いぐらい冷静になった冬子は、傭兵達の待つ会議室に連行されていった。
「‥‥冬子も大変ね」
会議室に入るなり、出迎えの百地に心配される、この様。
途中まで進んだらしい話はM2の纏めるホワイトボードを見れば確認できるが、何時からか、アニメ的なアイディアが混ざるようになっていた。
カゴに菓子、灰皿に山盛りの煙草。どういう経緯かメイド服姿の依神さんが端々に気を利かせていたり。
服装の効果って、怖ろしい。
「こういうものは童心に返って‥‥ほら、ありましたよね」
「あー、俺も似たようなカードとか集めてたもんッスよ。懐かしいなぁ‥‥」
男子メンバーは男子メンバーで、一寸した思い出話とあるあるに盛り上がってみたり。
それでも、各国の設定や話の流れはきっちり作られてきたようで、後は‥‥個々の設定をどう繋げるかだろうか。
ホワイトボードと書類を交互に眺め、企画の通し構想を浮かべていく。
「これで子供達にKVを売り込み、将来の兵隊さんを確保しようってことかな?」
その横で放たれた言葉に、少し指が止まった。
「え、あの‥‥」
「これでKVを身近に感じて貰えれば、子供達が戦闘機の音で怖がらなくて済みますからね!」
力説する同僚。どうもこの部分だけ練習してきたらしい。
‥‥そういう努力をするなら纏める努力が欲しい。
「そのうちぬいぐるみとか絵本になったりするさ?」
「うーん‥‥え、絵本は‥‥?」
二十七人分の資料を見た感じでは、あまり可愛い感じにはなりそうもないが。
ただ、絵面は見たい事は見たい。‥‥色々と、探したり御願いしたりが大変そうだけれど。
傭兵達が帰った後、会議室では女二人、黙々と『けーぶい』達を書きだしていく。
たっぷり五日分の胃薬は、むしろ一日分足りないようだった。