タイトル:魂霊に宿る二つ目の力マスター:草之 佑人

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2011/06/16 18:27

●オープニング本文


●ドローム社ラスト・ホープ支社
 清潔感の溢れるドローム社支社ビルの一つ。その中は、合理的で、かつ、多種多様な人種を抱合するアメリカという風土に合って、そのエントランスは、豪華さや煌びやかさの中にも、どことなく無機質な――言い換えれば、異国の情緒といったものを感じさせない――デザインであった。
 そのエントランス脇のロビーに、白衣を着た女性が一人。椅子に座って、口に持っていった煙草の一本に火をつけようとした時、待ちかねた来客が姿を見せた。
「ああ、よく来たね。ま、ちょっと座っていきなよ」
 ロビーに姿を見せたのはジェーン・ヤマダ(gz0405)――もといオペ子だ。
「いえ、すいませんね。お待たせしましたか?」
 訊きながら、女性の掛けるテーブルの向かいに腰掛ける。
「今来たところさ――と。これじゃ、男女の会話だな」
 白衣の女性は、煙草の煙を吐きながら笑う。オペ子はじっとその様子を見て、ふいっと首を傾げた。
「どうしたい?」
 手垢で汚れた眼鏡に白衣姿。顔つきから、目の下の隈のでき方といい、染みついた煙草の匂いも、同じ銘柄のものを嗅いだ覚えがある。唯一の違いと言えば、目の前の人物は女性で、髭の剃り残しが無い事くらいか。
「あの、お名前は?」
「イーコ」
 ファミリーネームは、と聞きかけて、ふと、見覚えがあると思った人物の名前をしっかり確認していなかった事に気づいた。
 それでも、喉に骨が引っ掛かった様な違和感がどうしても気になり、つい、オペ子は聞いてしまった。
「お兄さんか、弟か居られます?」
「両方居るよ」
「そのご兄弟のお勤め先は?」
「どっちもこの島のメガコーポレーションの支社のどっか。――急になんだい。それがどうしたのさ?」
「いえ、なんでも。こちらの話です」
 心の中で、あーやっぱり、と納得しつつ、オペ子は話を続ける。以前、同じ様なVUの依頼で出会った男性を思い出した。
 それはともかく、
「――それで、今回は臨時のテストパイロットの募集ですか?」
「そうさ。急な事だったから、専属テストパイロットのスケジュールが押さえられなくてね。それだったら、傭兵に集まってもらった方が手っ取り早いだろ?」
 煙草臭い研究者は、吸い殻を灰皿に。懐から新たな煙草を取り出しつつ「それに今実際にドンパチやってる奴の方がいいさ」とニヤリ笑う。
「ふむ‥‥。それで、これがテストするブツの概要ですか」
 オペ子は資料を手に取り、一応確認の為、目を通す。そこには、ざっと以下の様な事が書いてあった。

『200mm4連キャノン砲の使用に関するファルコン・スナイプシステムとの連動。それに伴う追加プログラムと装填機構の改良について』
・1A:二連装連動砲に別個の異なる二対象をロックオンさせるプログラム。
・1B:1Aに装填機構の改良を加える。
・2 :追加プログラムなしで、装填機構の改良のみを行う。

「ま、これはまだ試作段階のシステムだから、いろいろ問題は残ってるんだがな。追加プログラムを使うと、連動砲で同じ対象をロックオンできなくなったりとか」
 ぼそりと、不吉な事を言う。
「え――?」
「ん? ああ、大丈夫だ。プログラムのオンオフは出来る様にしてあるから、普段は問題ない。問題は、改良した装填機構の制御プログラムも兼ねているから、下手に連続して使うと装填機構がぶっ壊れちまう様になった事で――」
「あの――?」
「いや、むしろ、追加プログラムのエラーを解決する目処が全然立ってない事の方が問題かもな。スピリットゴーストの改修機には、この試作品を積む事になりそうだが、まあ、いずれ――」
「そ、その、ちょっと待って下さい」
 オペ子がさすがに語気を強めて、イーコの言葉を止める。
「ん? どうした?」
「‥‥いえ、その‥‥それはさすがに不良品では?」
「――試作品だからいいんだよ。細かい事を気にすんな」
 本当に大丈夫なのだろうかと、心配げに眉根を寄せるオペ子。
「ま、これのテスト内容はなんでもいいさ。要は使った後の感想が重要なんだ。どれにするか、もしくはこれは載せない方がいいのかのアンケートと一緒にな。テスト内容なんざ決まらなければ、適当にその辺のキメラでも駆除してくればいい。そこらへんのいい感じにキメラがいる戦場とか、必要なセッティングはあんたに任せるよ」
 快活に笑い大きな胸を張る女性。
 オペ子はその胸にやや理不尽な怒りの視線を向けながら、
「はあ、わかりました」
 生返事を返した。

●参加者一覧

漸 王零(ga2930
20歳・♂・AA
終夜・無月(ga3084
20歳・♂・AA
ティリア=シルフィード(gb4903
17歳・♀・PN
ハンニバル・フィーベル(gb7683
59歳・♂・ER
美紅・ラング(gb9880
13歳・♀・JG
ジャック・ジェリア(gc0672
25歳・♂・GD
宇加美 煉(gc6845
28歳・♀・HD
ドルチェローザ(gc7180
20歳・♀・SF

●リプレイ本文

●届いた投書
 暗がりの中、イーコは支社に送られてきた幾つかの手紙を読んでいた。

『しょぼい、しょぼすぎるのである。これがSGのVUかと思うと美紅は情けなくって涙がでらあなのである。大艦巨砲主義の美紅が選択したSG以降、砲撃KVはあまた登場しているのである。狙撃機リンクス、知覚掃射機マリアンデール、拠点防衛機ヨロウェル等。後発機が優秀なのは世の習いとはいえ、新型機が出る都度に引き離される性能に涙してきたのであるが、ついに発表されたSGの新スキルがこれとは裏切られたと感じたのは何も美紅だけではあるまい』
 手紙の最後の署名は、美紅・ラング(gb9880)。

『200mmが特にそうだが、支援機として前衛より後方で展開するのに距離修正低減が無いため遠距離攻撃を有効に使えない。S−01HSCのブレス・ノウ Ver.3(type.B)をそのままでも良いんだが、ここはファルコン・スナイプに距離修正低減機能を載せてもらいたい。200mmオンリーの距離修正低減スキルでは得るもの少ないしね。狙撃機ではなく砲撃機だし10分の1とかまでは要らないね、2分の1か4分の1で十分。引き換えにスキルの消費が10上がる程度なら許容範囲かな?』
 最後の署名は、ジャック・ジェリア(gc0672)。

『命中率を考えてみたときにぃ。距離300での制止目標に対して撃ったとしてもぉ。当たるか当たらないかという感じになっていた気がするのです。改造すれば別ですけどねぇ。と言うことで【ファルコン・スナイプ】の強化としてぇ。S−01HSCのブレス・ノウ Ver.3(type.B)これを流用して距離修正2分の1を付けられないかと思うのです。さらに同時に命中率の強化を行うことによってぇ。距離600の制止目標になら100%当たる程度の能力を持たせる。これによって中・遠距離砲撃での火力支援機と言う位置づけがぁ。揺るぎない物になるのではないかと思う訳なのですよぉ?』
 最後の署名は、宇加美 煉(gc6845)。

『ボクは射程距離による減衰を緩和する機能をスキルに盛り込めないか提案します。200mmキャノンの最大の利点は、高い威力と長射程による遠距離砲撃にあると思います。だから、距離によるマイナス修正を緩和できればより砲戦機として活躍できるんじゃないかなって。それに最近は、一定範囲内の攻撃性能の低下能力を備えたヒュドラが戦場に出てくるようにもなりました。もしスキルに射程距離修正緩和を盛り込めればヒュドラキラーとしての役割も担えると思います』
 最後の署名は、ティリア=シルフィード(gb4903)。

『既存の新スキル案はどれも中途半端だな。ファルコン・スナイプに距離修正の軽減をつける事ができれば、陸戦でも200mmカノン砲の射程が生きてくる! 距離修正の大きな陸戦での有効性をUPさせる! この提案をさせて貰うぜ!』
 最後の署名は、ハンニバル・フィーベル(gb7683)。

 イーコはそれら5つの手紙を読み終えると、
 ――ぐすっ。
 涙ぐみながら、手元のブレス・ノウVer.3(type.B)とファルコン・スナイプの二つを弄り、何やら作り始めた‥‥。

●尊い犠牲の上に‥‥
「はいはい。皆さんよくぞお集まりくださいました」
 テスト前に集合場所に姿を見せたのは、イーコではなくジェーン・ヤマダ(gz0405)だった。
「成る程‥貴女が御噂の‥‥」
 顔を見て、妙な得心を得ているのは、終夜・無月(ga3084)。
「俺は終夜・無月‥宜しくお願いします‥‥」
「おやおや、どうも。噂ですか?」
 無月に握手を求められて、それに握手を返しながら、小首を傾げる。
「はい‥色々と伝説を耳に‥‥」
「はあ‥‥?」
 微笑む無月に、ジェーンは訝しげに眉根を寄せるしかない。後で噂を流した人物を突きとめるべく無月を尾行しようと思いつつ、
「あ、とりあえず、ご説明をしますね。まず、研究者のイーコさんがぶっ倒れてしまったのでテストの方は、私が記録して後でお届けする事になりました。この後の意見聴取の方では、なんとか顔を出すそうなのでご心配なく」
 突然の説明に、それはどういう事なのかと、ジェーンに視線が集まる。
「まあ、あれです。依頼を出した後に支社の方に傭兵達の方から大量のご要望が届きまして、泣きながらもう一個作っていたそうです。システム」
 もう一個、という言葉に、心当たりのある傭兵は数名。
「で、イーコさんのご用意したシステムは4つ。1A、1B、2に加えてのS。システム案S――ファルコン・スナイプ/Bがあります。こちらのシステムは、イーコさんからのご指名で、ジャックさんとティリアさんにお願いしたいそうです」
 二人の選ばれた理由は、改造されている現行機でのシステム動作に不具合がでないかどうか、改造されたものでのテストはなかなかできないということでの選抜だった。
 ジェーンの後ろには、彼らの物を含め、システムの換装を終えたスピリットゴースト八機が並ぶ。
「えー、それと、S案の試射も必要ですので、戦場はこちらでそれに合ったキメラ退治という事に決めさせていただきました」

●試験中
 そこは、高速でキメラの走り回る戦場だった。
 KVの方に襲い掛かる訳でもなく、遠巻きにしながら幾つかの集団に分かれて周回している。
「さて、どんなものかな?」
 ジャックがファルコン・スナイプ/Bを起動させる
 狙う鷹の目はより鋭く。距離600――四連キャノン砲の最大射程距離――の敵への射撃。
 ジャック機の放った200mmの砲弾は、空を切り裂く砲音と共に的となったキメラを落とす。
 距離が半分に縮まった様な感覚。照準の命中精度が確かに高まっている。
「けど‥‥若干弱い、かな」
 吹き飛ばしたキメラを観察に見れば、VU前のファルコン・スナイプに比べて威力が弱く見える。
「では、こうすればどうですか?」
 続いて、ティリアは周囲を旋回する敵へ接近を試みながら、ファルコン・スナイプ/Aを起動。
 ロックオン時の照準にBの時よりも若干のブレがある。――だが、
「この距離なら、この程度の誤差は問題ないはずです」
 撃ち鳴らされる四連の破裂音。放たれた四つの砲弾がキメラを撃ち砕く。
 その威力は、VU前のファルコン・スナイプを使用した場合と変わりないようだった。
 急遽追加されたS案以外の試験も順調に行われた。
 ドルチェローザ(gc7180)が1A案のシステムを積まれた機体で正面の敵を撃ち落とす。続けて砲塔を旋回、左右の敵それぞれを二連装砲でロック――ファイア。
 撃たれた左右のキメラ二匹。直撃するも、まだ生きていた。
「威力は‥‥大体30%減というところですか?」
 正面のキメラとの結果の違いから、ドルチェはスキルの性能を予測する。
 ハンニバルは1B案のシステムを使い、左右のキメラに連続して撃ち続ける。
 一度の射撃で二発。四つの砲門から吐き出される砲弾の数は八つ。200mm4連キャノン砲に装弾されている24の砲弾は、三度の射撃で撃ち尽くした。
「‥‥あっという間に弾切れだな」
 これでは頻繁に戦線を離れて補給せざるを得ない。高額で数の揃えられる機体ではない事も考えれば、
(そんな状況を作るスキルは避けるべきだな)
 と、ハンニバルは撃ち尽くした感想を胸中に居抱く。
 漸 王零(ga2930)の乗る機体は案2の搭載機体だ。
「実は一回乗ってみたかったんだよね」
 そういう王零は、機体の動作感触に僅かに胸を躍らせている。
 早速にキメラの集団に向けて狙いを定め、4連キャノンの二連続射撃を行う。
 集団は、二列に並んでいる為に、連続射撃で一匹目が貫かれると、後に続く二発目の射撃はその後ろの列を飛ぶキメラの足にヒットする。
 周囲を旋回する様に敵は飛んでいるが、一匹分後ろにずれる程の誤差はなかった。
「なるほどね。では、二射目いってみようか」
 しばらく待って、二射目の発射可能シグナルが点灯する。
 再度二連射。今度は、一発目を囮に二発目を本命とした撃ち方ができるかどうかを確かめてみる。
 しかし、一発目の直後に二発目が自動で連射される為に、狙ってそれを行う事は難しい。
 同様に案2の機体に乗る無月は、逆にそれを利用して、目標の同箇所に寸分違わない射撃を試みる。
 それによって、二発目で敵FFの影響を回避しようとしたが、一発目のFF通過後にその穴はすぐに復元。
 FFで減退する事無く二発目を当てると言う事は無理だった。

●意見承ります。
「さて、遅くなったが、私が今回のVUを担当させていただくイーコだ」
 テスト後、会議室に集められた傭兵達のところへ、目を赤く腫らして、ぼろぼろの白衣を纏った女性が現れた。
「とりあえず、まずは謝らせてほしい。少しばかりスピリットゴーストの方向性について可能性を一つ見逃していた。すまない」
 イーコは頭を下げる。
「‥‥それで、体験はして貰ったと思うけど、システム案Sについて少し説明しておこうか。基本はブレス・ノウVer.3をS−01HSCの開発室の方から回してもらって、突貫で私がファルコン・スナイプに組み込んだものになる」
 一息。息継ぎをして、
「とまあ、今回は私も運が良かったよ。本来であれば、改修時に設計の余裕なんて物は無いし、要望の追加システムを組み込めたのは、比較的高額機にも関わらず設計余裕が他の機体よりも多かったおかげだからね。――まあ、そこを利用して、私は新システムを組み込もうとしたんだけれど‥‥2つ以上スキルのある機体では難しいだろうね」
 更に、
「それから、頂いた手紙について一点。これはジェーンの方にも確認を取ってもらったが、ヒュドラに関して陸戦では、能力低下範囲が空で敵対する時より10分の1程に狭まっている。空戦においての距離による命中精度の低下――まあ、傭兵の言葉で言えば、距離修正、か――は、陸戦の10分の1程でもあることだから、そこまで有効と言うわけでもないと思うよ」
 と、そんな所だ、と締めくくり、イーコは周囲の傭兵を見渡す。
「それならば、美紅の提案する新スキルも一考して欲しいのである」
 作ってきたスキルのプレゼン資料をどさっと、イーコの前に置く。
「これぞ、美紅の考えた最強SGの新スキルなのである」
 自信満々で美紅が提案したのは、案2の改良案だ。
 二連続攻撃ではなく1スクエア攻撃。それを弾帯の変更により実現しようというものだった。
「案2を改良しての面制圧型範囲攻撃、か。初めから特殊砲弾の使用を前提として設計されていれば、特殊砲弾の製造工場に別ラインを作る等で対応できるのだろうけれど。機体の改修に当たって新たに特殊砲弾用のラインを、となるとやはり難しいかな」
「ならば、装弾している全弾を消費しても構わんから、制圧砲撃を望むのである。それならどうであるか?」
 美紅がそう言えば、
「全弾消費‥と言うのであれば‥‥四つの砲門全てで‥10m四方ではなく‥四つの砲門でそれぞれに10m四方‥狙うと言うのは‥どうですか‥」
 無月がもう一つ上乗せする形で横から提案する。
 イーコはそれに対して、渋い顔をして、
「まず、全弾を消費するという事は、つまりは6回分の射撃行動――案2のシステムを用いれば、3回分の射撃行動で済むかもしれないが――が必要になってしまう。この問題を改善するには、機体と兵装の設計を一からやり直す必要があるから、改修では難しいという判断になるかな。それに、4門あるから4つ同時ロックを、と言うのであれば無理だね。二対象同時ロックは、二連装連動砲の連動を切り離し、二連装砲として別々に稼働させる事で実現させているものであって、砲門を別々に稼働させている訳ではないしね」
 結論として、改修によって1スクエア攻撃の実現は不可能、もしくは、それならば普通に攻撃した方が効率は良いということだった。
「では、4連キャノン砲をリロード可とするのであれば、どうなりますか? 射程が落ちる‥‥というような事でなければ、検討してほしいのですが」
 ドルチェが4連キャノン砲自体のVUについて、意見を出す。
「射程を落とさずリロード可能となると‥‥4連キャノン砲ではなく、イメージとしてはスナイパーライフルの様な低威力のものになるかな。しかし、それは、正直なところリンクスとの違いを得られないんじゃないかと思うよ」
「なら、多少重くなっても4連キャノン砲の弾倉を一つくらい積めないかな? それで、戦場で自分で給弾するというのはどうだ?」
 リロードに関しては、王零も意見を出す。
「それが2行動3行動くらいでできるなら良しと思うのですがぁ」
 と、煉もその意見に注文をつける。
「それは‥‥戦場でリロード機構の無いものに給弾を行うのであれば、専用の給弾機構を新たに用意する必要があるだろうね。そうなると、スペック上3つしかないアクセサリスロットを一つ潰して給弾機構を取り付けることになる」
「‥‥アクセサリのスロットがひとつ潰れるのはいまいちだな」
 ハンニバルが悩ましげな顔を向ける。
「では、装弾数自体の増加はどうでしょうか? 可能ですか?」
 リロードが無理であれば、せめて、とドルチェローザが聞く。
「確かにぃ、弾倉の大型化は希望したいですねぇ」
 先程と同様に煉もまた続く。
「今のままだと砲撃6回ですから下手するとぉ。20秒そこそこで撃ち尽くしてしまう形になるわけですしぃ」
「そうだね‥‥。けれど、現状でも200mm砲弾を弾数24というかなりの大型弾倉を積んでいるから、簡単に装弾数を増加させる改良とはいかないかな。まだ、さっき言った専用の給弾機構を取り付ける改良の方が現実味があるし、分かりやすく効果があると思うね」
「俺の中では、1B案を実現するなら可能にしてもらいたいが、1B案でも200mm限定の制約がなければ、装弾数増加は必要ないかな」
 一つ、ジャックの反対意見が出たところで、イーコはそんなところか、と意見が出尽くすのを見てとった。
「不評の様でもあったし、私からの案は全面的に撤回しよう。その上で、4連キャノン砲の装弾数増加かファルコン・スナイプの命中精度を上げたBモードを搭載するS案か、だけど‥‥あればいいというS案への賛成の多さに対して、装弾数の増加に対しては必要性を感じていない意見もある、か。ならば、S案を搭載する方向で行こうと思う」
 イーコの宣言。これで、スピリットゴーストのVUにおける方向性は決まった。
「それから、名称も募集はしたけど、S案はシステム内での切り替えになるから‥‥名称はおそらくファルコン・スナイプ/AとBになってしまうかな。これについては、今のうちに謝っておくよ」
 と続け、
「ああ、後は注意事項が一つ。距離修正のシステムをファルコン・スナイプに組み込んだせいで、改修時に元のファルコン・スナイプの強化も一度ゼロに戻す事になるかな。今回システムを組み込んだ人達――ジャックとティリアの分は、私が責任を持って元に戻すけど、実際にVUを行う場合は注意するようにね」
 最後に、その注意事項を持って、VU試験での意見聴取は終わった。