タイトル:【海】守ろうとした海マスター:楠原 日野

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 6 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2012/06/17 20:30

●オープニング本文


●九州・屋久島周辺海中
「いい加減、これで落ちろ!」
 長い髪の男が叫ぶと、ノーヴィ・ロジーナの砲門が一斉に開き、50mm4連装長距離魚雷を同時に2発――計8発のミサイルがゴーレムに襲いかかる。
 ドドドドドドオン!
 爆発と気泡で、周囲の視界が完全にシャットダウンされる――そこに。
「しまった‥‥!」
 気が付いた時にはもう遅い。ゴーレムの放ったミサイルが、もろに直撃したのであった――。

●一湊海岸
 長い髪の男は火のついた煙草を指に挟めて立て、砂浜で黙とうをささげていた。
「琉さん、またここにいましたね。御飯ですよ?」
 声をかけられ、琉――蒼 琉(gz0496)が振り返ると、全身小麦色の水色ワンピースに麦わら帽子の少女が笑っていた。
 その少女を見るなり、煙草を口にくわえ、すまなそうな顔をする琉。
「‥‥海、すまないな。君のお母さんから譲り受けたロジーを沈めてしまった」
 頭を下げる琉。実のところ先ほどやっとの思いで陸地についたばかりだったのである。やられたのが水面近くであった事が、幸いであった。
 少女は目を丸くし、琉の体を両手でがっしりとつかんで揺さぶる。
「怪我は! 怪我はないんですか!」
「あ、ああ。大丈夫だ」
 長い黒髪を揺らしながらも答えると、海はほっと胸をなでおろし、ギュッと琉を抱きしめる。
「琉さんまでいなくなったら、あたし、一人になっちゃいます‥‥」
 無表情な琉は、頭2つ違う少女の頭を左手で撫でる。その腕には、細くて黒いベルトのトノー型腕時計が時を刻む。ありがたい事に、腕時計も壊れずに済んだ。
(なくさずに済んでよかった。これは、唯一記憶の手がかりだからな)
 そして撫でている少女に視線を落とす。
(記憶を無くしていた俺を、助けてくれた先生の娘だ‥‥俺が面倒を見なければ、な。そして――)
 ふいと美しい海に目を向け、しばし見惚れる。
「‥‥先生が守ろうとした海は、俺が守る」
(そしていつの日か、先生を殺したあいつを‥‥!)
「イタイイタイイタイイタイ」
「む、すまない海」
 撫でていた手から力を抜き、海から手を放す。
「‥‥今日は帰ろう、海。家でゆっくりと話すさ」
 肩を掴んで離すと、琉は砂浜を歩き始めた。
「琉さん、だからうちはこっちー! また迷子になる気ですか!」

●どこかの島・バグア基地
「カカ、つまりやっとあの離島が落ちたか」
 深い椅子に腰を掛ける女性の姿。
 ショートレイヤーの茶色い髪に茶色い瞳、白いバグア戦闘服に身を包んでいる。
「ハッ、抵抗を続けていた最後の1機が落ちたとのことです」
「ふむ‥‥少々期待外れではあった、か」
「は?」
「なんでもない」
 パタパタと手を振る少女。
「だがま、あの美しき土地をようやく破壊できるというもの。とりあえずそうだな‥‥あの角の生えた魚か? あれを大量に放っておけ」
 ギシリと背もたれに大きくよしかかり、腕を組んで目を閉じ、ひとつ、深呼吸。
「また強者でも、探すか‥‥つまらん」

●屋久島・海宅
「蒼君、いるかい!」
「どうかしたか?」
 息を切らせてやってきた漁師は、起き抜けの蒼の質問にも答えず、腕を引っ張って海岸へと連れて行く。
 海岸で見た風景――遠方ではあるが、それは昨日の穏やかな海と違って、ひどく荒れていた。波がある、とかではない。
「カジキ‥‥いや、あんなグロテスクではない――そうなると、キメラなのか?」
「大量に現れて、島中を囲んじまってる。銛もなんも通じねぇんだ、蒼君、いつものでなんとかしてくれよ」
 銛が通じない――十中八九、キメラで間違いない。だがしかし――。
「すまない、俺の愛機は昨日、撃墜されてしまったのだ」
 自分が撃墜された事と、今日の騒動、とてもじゃないが無関係とは思えない琉。唇をかみしめる。
「なんだって‥‥じゃあどうすれば‥‥」
「――傭兵に依頼を出す。それしか方法はない」
 自分が守ると言った海を人に任せる事に抵抗を感じなくもなかったが、それ以上に、この海が荒らされる事が許せなかった。
「俺が、依頼を出す。だから安心してくれ」
 漁師の肩を叩き、ULT出張所へと向かう。
(傭兵の乗ってきた艇でLHに――そして新しい機体を早く‥‥!)
「蒼君、出張所はあっちだろ!」

●参加者一覧

ドクター・ウェスト(ga0241
40歳・♂・ER
榊 兵衛(ga0388
31歳・♂・PN
クラーク・エアハルト(ga4961
31歳・♂・JG
オルカ・スパイホップ(gc1882
11歳・♂・AA
BEATRICE(gc6758
28歳・♀・ER
雁久良 霧依(gc7839
21歳・♀・ST

●リプレイ本文

●一湊漁港
「けっひゃっひゃっ、我輩はドクター・ウェストだ〜」
 高速飛行艇からリヴァイアサンで一歩踏み出したドクター・ウェスト(ga0241)の第一声は、いつものそれだった。
「そうか。俺は蒼 琉だ。詳細はすでに伝えてあると思うので省かせてもらおう」
 あまりにもそっけない琉の反応に、肩をすかされたウェストの口から何かが抜け出る。
「挨拶もそこそこで悪いが、帰ってくるまでよろしく頼む。ではな」
 皆が地上に降り立つと、さっさと高速飛行艇に乗り込んで行ってしまう。
「依頼主といえど、あの態度は如何なものかと思うのだがな」
 自己紹介もそこそこな冷たい態度に、不満を持つ榊 兵衛(ga0388)。
「余裕がないのよ、大目に見てあげなきゃね♪」
 自然や伝統を守ろうとしている立場から共感したのか、雁久良 霧依(gc7839)がフォローをいれる。
「終わったら、海でもゆっくり眺めるのも‥‥良いかな? だが海、か‥‥何処までいけるか」
 戦える場所なら何処でも良かったというのが本音の、クラーク・エアハルト(ga4961)が呟く。
「‥‥戦い以外の事に気を回すのは苦手なのですが‥‥」
 今回の海への被害は最小限に、という部分で気の重い、ミサイル愛のBEATRICE(gc6758)である。
「下手に海を傷付ける訳にもいかぬからな。此処は堅実に片付けていくことにしよう。北部、南部、遊撃と3班構成でキメラの掃討作戦を実施するとしようか」
「はいな〜い、僕北!」
 オルカ・スパイホップ(gc1882)が、コックピットの中で元気よく手をあげる。
「私も北部担当ね、オルカ君、よろしく♪ 協力して頑張るわ」
「では俺は南部担当としようか」
 霧依と兵衛が各々の希望を明白にする。
「ふん、では吾輩は遊撃をしようかね」
「自分も遊撃で」
 1人残ったBEATRICEは少し考えてから口を開く。
「‥‥私は南部で、いいです。遊撃できるほど動けませんし‥‥なにより岩場地帯ならミサイルも‥‥撃ちやすいですし‥‥」
 彼女の判断基準はミサイルである。
「‥‥そういえばドクターさん最近一緒になりますね〜♪」
 オルカの呼びかけに、ウェストは反応しない。
「ん〜? 何で冷たいんですか〜? きょーりょくした方が早く倒せますですよ〜♪」
「能力者と協力など、し難い相談だがね〜。まあ今回は君らの指示に従うよ〜。西での追い込みはまかせてくれたまえ〜」
 暗に1人で西を担当すると、言葉に含まれていた。
「何が原因だったのか判りませんけど、全員が悪い人じゃないともおもうんですけど〜‥‥」
 オルカの言葉にも耳を傾けず、1人、ウェストは海へと先に潜っていく。
「ふむ‥‥まあ仕事はきっちりこなしてくれるであろう。クラークも1機で東側担当になるだろうが、大丈夫か?」
 ついこの間の依頼でクラークと一緒になり、クラークの心情を多少なりとも知っている兵衛が心配する。
「大丈夫、やれますよ」
「‥‥そうか。信頼している」
 クラークと兵衛が話している間に、霧依とオルカが海へと突撃開始していた。
「さー行くわよ、イカちゃん! そしてオルカ君!」
「ヤー!」

●北
「さっそく‥‥おでましね」
 話しながらもしっかりとレーダーとカメラで索敵をしていた霧依が、敵影を発見する。
「あ、本当だ。数が多いみたいだから上手く纏めないとね〜」
「そうねぇ。オルカ君は戦いやすい地域でちょっと待っててね♪」
「りょうかーい」
 オルカは外海へ向い、霧依はより深くへと潜行を開始する。
「絶対に被害を出さないようにしなっくちゃね」
 うねうねとブラストテンタクルスを伸ばし、全ての砲門を上向きに構え、ゆっくりとカジキの群れの下に潜っていく。
「こうすれば、外れても珊瑚礁に当たる事はないわ」
 まずは2発威嚇射撃。1匹の角を折り、もう1発は海の外へ。
 やっと気づいたのか、20匹ちょっとのカジキは一斉に霧依めがけて突撃してくる。
 単純な突撃はゆっくりと蛇行してかわし、効果はあるか不明だが、多関節アームによる疑似餌の動きでキメラを誘う。
「戦場にご招待よ。たくさん釣れるかしら♪」
 誘うように触手を動かし、蛇行しながらもオルカの待つ外海に向かう――と、疑似餌効果があったのかはわからないが、しっかりと全てのカジキが霧依を追いかける。
「大量よ〜オルカ君」
「まっかせて〜♪」
 上からオルカの奇襲。出会い頭の一匹をレーザークローで三枚に卸す。
 もちろんそれだけでは止まらない。霧依を追いかけて闇雲に突進しているカジキの群れの真ん中で、次々とさばいていく。
 タイミングの合わないカジキの突撃は盾で受け、流す。
 たった一度の交戦で、軽く3分の1近くのカジキが卸しになる。
 オルカから危険な気配を感じとったのか、カジキは離脱するかのごとく直進していくが、その周囲を周るように様に動いている霧依がブラストテンタクルで先に行かせないように威嚇し、オルカの元へと誘導する。
「おっかえり〜」
 再び群れの中でクローを繰り出し、次々と卸していく――と、最後尾の1匹がやたらとゆっくり動いていたかと思うと――いきなり最大速で突撃をしてきた。
「おっとっと」
 カジキの知恵を使った攻撃を悠々と盾で受け、動きが止まったところを切り刻む。
「へ〜。ブーストなしでも、極端な緩急は十分な奇襲になるんだね〜」
 そう言い、残11匹になってこちらに転身しているカジキに向かって、ゆっくりと前進する――と思いきやいきなり全速で動き、カジキが隊列を整えきる前に距離を詰めてみせた。
 完全にカジキ達のタイミングを崩したのだ。
「いっただき〜」
 速度の乗っていないカジキ。そんな止まった『的』はオルカの恰好の餌食である。
 まさしく一瞬で、7匹が卸される――残された1匹が離脱しようと全速で動き出した。
 が、2本の触手が行き手を阻み、2本の光線で焼かれた、両断されたカジキは海底へと沈んでいった。
「ちょっとは私も見せ場がないとね♪」

●南
「まずは遭遇域から外海へと誘うとしようか」
「‥‥ではすみません、私の方は足が遅いので‥‥外海でお待ちしています‥‥」
 水中キットをつけたロングボウでは、リヴァイアサンの足には勝てないと、BEATRICEは自覚していた。
「ああ、わかった」
 兵衛もそれは了解していたらしく、先に先にと先行し、集団で他の魚を追い立てているカジキの群れに突撃する。
 群れの真ん中にベヒモスを振るい、分断、そして注目を集めると後続のカジキをガトリングの弾幕で速力を落とし、通り抜けざまにベヒモスで一刀両断。
「さて、ついてくるのだな」
 隊列を乱し、仲間を殺した邪魔者にカジキ達は標的を合わせ、誘われているとも知らずに兵衛の後をついていく。
 そこに下からガトリングの嵐。直撃を受けた数匹が海底へと沈んでいく。
「‥‥爆発するから影響がある‥‥鉛玉だから影響がない‥‥というシンプルな事でもないのでしょうが‥‥」
 ガトリングを構えて待ち構えていたBEATRICEがポツリと呟く。
「退治しない事の方が、問題だ!」
 奇襲により散り散りになったカジキをガウスガンで的確に撃ち落しながら、近づき、ベヒモスを振るって両断と、勇猛果敢に群れの中に斬りこむ兵衛。
「‥‥それもそうですね‥‥ミサイル、撃ちます。視界に注意です‥‥」
 水面に上昇した複数のカジキの後を狙って、ホールディングミサイルを放つ。
 ゴゴォォン!
 音と気泡の競演。思った通りに兵衛の姿もかき消してしまう。
「視界が悪くとも‥‥そこか!」
 ぬっと現れた角を盾で弾き、流すと、カジキの正面からベヒモスで二枚に卸す。
 気泡の中から逃れ離脱しようとする1匹に、ミサイルを解禁したBEATRICEの三十六式大型魚雷が追撃する。
 隠密性に優れたそのミサイル気が付かなかったカジキは直撃――撃墜こそはできなかったが、足止めにはなった。
 気泡の中から潜行形態となった兵衛機が姿を現し、ガウスガンの一撃により、南部最後の1匹は沈んでいくのであった。

●東
 潜水形態で移動しているクラーク機。1人でいると、余計な事を考えてしまう。
「戦っている間は、他の事を気にしなくて済む‥‥戦っている間は‥‥」
 考えないようにすればするほど鮮明に思い出し、そのたびに頭を振り、呪文のように繰り返す。
 幸いにして獲物がすぐに見え始めると、それこそ傭兵としてのスイッチが入り、余計な事を考えずに思考がクリアになる。
「数だけ多いな‥‥厄介な。12匹か」
 人型に移行し、ガウスガンとクローを構える。
 北側から移動してきたので、南に追い込む方がやりやすいと判断し、ガウスガンで距離を置いて威嚇しながら追い立てる。
 転身してこちらに向かってきそうなカジキを狙って撃ち、距離を詰める事もなく適度な距離を保ったままカジキ達を南の方へと誘導していた。
「そろそろ通信できますね――こちらクラーク、12匹ほど、そちらに追い込みます‥‥こちらを撃たないで下さいよ?」
「了解した、クラーク」
 兵衛の返信を受け、加速して追い込みをかけるクラーク。海の経験は少なくとも、さすがに今更キメラ相手に危険な橋になる事もない。
「ドクターの方も、無事ならよいですが‥‥」

●西
「ふ〜む、実に不可思議な生き物だね」
 魚を追ったり、珊瑚に角を突き立てたりと、人を襲う事よりも環境を破壊する事を優先しているカジキを観察している。
「もう少し観察もしたいところだがね、自然を守るのも仕事なのだよ〜」
 珊瑚を破壊しているカジキに近づき、氷雨で両断する。
 1匹を退治したことにより、ようやく敵と認識されたのか他のカジキ達が集まってくる。その数8匹ほど。
「こちらに来るのだね〜」
 アサルトライフルで注意を引き、北側に向けて移動を開始する。
 突撃してくるカジキを受け流し、通り過ぎていくやつらを片っ端からアサルトライフルで威嚇し、こちらに引き返せないようにして追い込む。
 もともと北部寄りだったウェストはすぐに北側に追い込んでみせた――が、まだオルカ達との距離は2キロ近くある。
 通信すればよいのだが、能力者不信となっているウェストは通信せずにいた。
「指示通りに追い込んだが、本当に討ち取ってくれるかね〜‥‥」
 ただでさえ1機でいる現状に疑心暗鬼になっているウェスト。追い込んだ先に誰もいない事が、さらに拍車をかける。
「もしもの時のために『少し』倒しておこう〜」
 そう呟き、威嚇をやめてレーザークローと氷雨を構える。
 後ろからの射撃が止んだことでカジキ達は転身し、さんざん追い掛け回したウェストめがけて突撃してきた。
 氷雨で角を受け流し、クローで刻む。連携も何もないキメラ程度は、もはや足元にも及ばない。
 受け流しが間に合わないと判断すると、横に急加速し、エンヴィークロックで瞬間的に静止し、カジキの横腹にクローを突き立てる。
 しかし、エンヴィークロックを使った事で圧殺してしまった非能力者の少女を思い出してしまい、思考と動きが止まる。
「壊れるな、マダ壊れるな、バグアはマダ滅んでいないぞ‥‥」
 自分の不安定な心に、目を血走らせ頭を抱えながら言い聞かせる。
 動かないウェスト機に突撃をしてくるカジキ。
 直撃――する間際で半身をほんの少し後ろにそらして角を脇にかかえ、叩き潰すようにクローで止めを刺す。
「まだ吾輩は、壊れる訳にはいかないのだよ〜!」
 海底にいるカジキに向けて対潜ミサイルの砲門を開く――が、珊瑚を見た瞬間に思いとどまる。
「『地球が戦うための武器』が地球の生命を傷つけてドウする〜」
 それは自分への戒めの言葉でもあった――。

●一湊漁港
「あ、皆さんお疲れ様です」
 すべてを駆逐し、漁港に引き上げてきた傭兵達を海が出迎えた。
「ふむ、君がウミ君かね‥‥ウミ君、コレを彼に渡しておいてくれたまえ〜」
 KVのパンフレットを海に渡したウェストは、リヴァイアサンに乗り込み、海へと引き返していく。
「どこ行くの、ドクタ〜」
「吾輩は一足先に、九州からLHに帰らせてもらうのだね〜」
 言い残すと、ウェストのリヴァイアサンは九州に向けて行ってしまった――とすれ違いに、別のリヴァイアサンが漁港へとたどり着いた。
「む、もう終わったというのか‥‥」
 リヴァイアサンから、琉が降り立つ。
「琉さんはこんにちわです〜。同じリヴァですね〜なんかカスタムとかしないのですか〜? やっぱ男の子なら見た目ですよ〜! ボクなんてシャチですよシャチ〜♪ かっこいいでしょ〜! 武器は何つかうんです〜? 僕近接攻撃ですよ〜! やっぱ〜」
 一気にまくしたてるオルカに、口を挟む暇がない琉がたじろぐ。
「それよりも私は、時間があるなら縄文杉を見てみたいわね。見れたらきっと感激ね♪」
「ふむ、それには俺も賛同だな。オルカも来るか?」
 霧依の提案に兵衛が乗り、オルカにも誘いをかける。
「ん〜そだね、たまにはいっかもー」
「む‥‥今からか? まあ能力者だ、海も案内に連れて行けば‥‥」
「ですねー。琉さん、夕飯よろしくです。ところでその機体、リヴァっていうんですか?」
 ぽんぽんと、KVを触る海。
「ああ。リヴァイアサンという名前だ」
「じゃあリヴァさんですね。決定」
「‥‥わかった」
 海の物言わせぬ決定に、琉が応じる。
「じゃあ、案内してきますね」
 3人を引き連れ、行こうとする海。
「ああ、待ってくれ」
 振り向く3人。
「今日は本当に助かった。皆、感謝する」
 深々と頭を下げる琉に、仲間たちは微笑み、縄文杉目指して出発した。
 出発して間もない頃、海からはロングボウが姿を現せ、BEATRICEが地上に降りてきた。
「水中というのは‥‥難しいですね‥‥移動もままなりません‥‥」
「そこはまあ、慣れだな」
 苦笑する琉。
「それに空なら1000や2000撃っても平気なのですが‥‥」
 ロングボウの武装を見て、自分と同じミサイラーを悟る琉。
「‥‥私は普段‥‥ミサイルばらまき過ぎなのでしょうか‥‥?」
「きっとそうだと思う。先生曰く、ミサイル弾幕はロマンだが、全弾生かしてこそ神髄だとな。まあ、俺も修行中なので、偉そうな事も言えんのだがな」
 2人が話していると、クラーク機が海から姿を現し、地上に琉のロジーを引き上げた。
 地上に降り立ち、無表情ながらも目を丸くしている琉に、クラークが声をかける。
「‥‥引き上げてあげないと、可哀そうですから」
「‥‥言葉もない、感謝する」
 深々と頭を下げる琉。
「大がかりな修理と部品の交換は必要かもしれませんが‥‥使えるようになるとよいですね‥‥そのロジーナ。プチロフ製は、頑丈さが取り柄ですよ?」
「ああ、そうだな‥‥」
 煙草を一本取出し、火をつけると上向きに指に挟んでロジーに向ける。
「先生、1人でないというのはいいものだな‥‥」
 琉が黙祷を捧げると、2人も目を閉じ、黙って祈りを捧げるのであった――。

『【海】守ろうとした海 終』