タイトル:【初夢】アナスカマスター:楠原 日野

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 4 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2013/01/15 07:28

●オープニング本文


※このシナリオは初夢シナリオです。オープニングは架空のものであり、ゲームの世界観に一切影響を与えません。

 ここはもう1つの現代。バグアと呼ばれる『人類の脳を食らう異星人』との戦いに明け暮れる、人類の物語である。
 人型の兵器などなく、多くの資源も奪われたままの人類は限られた物資の中で、犠牲者を出しながらも撤退戦を繰り広げるのが精いっぱいであった。
 敵・バグアは、斬った端から再生するという驚異的な再生力と不死性を持ち合わせている。また、身体能力も人間のそれを遥かに凌駕していて、その身に触れる事すらなかなか叶わなかった。
 そこで人類も彼らに対抗しうるだけの力を作り出した――それが能力者と呼ばれる人間だ。彼らのその身体能力はバグアにひけを取らず、また彼らのために作り出された武器は、再生を『遅らせる』事が出来るのである。
 しかしもちろんそれでも、人類は劣勢である――だが、いつの世にも希望を失わない者はいるものだ。


「できた‥‥かね」
 能力者や彼らの武器を作り上げた人類の希望と呼ばれる研究所の所長は、2発の銃弾を前に、その身を震わせて呟いていた。
 彼はその弾を1発手に取ると、立てかけていたライフルに込め、隣の部屋へ続く扉を開けた。
 ――ワイヤーのようなものでがんじがらめにされ、天井から吊るされている血走った眼の男。入室してきた所長を睨み付け、ワイヤーを軋ませる。
 所長は無言で男の額にライフルの銃口を押し当てた。
 銃声――男の額に空いた穴からは、血が出てこない。それどころか、男は嘲るような目を向けている。
 しかし。
 突如、男はカッと目を見開いてがくがくと頭を揺さぶり、みるみるうちに干乾び、やがて骨となり、骨すらも砕け散って塵と化す。
 部屋には所長と、ぶら下がっているだけのワイヤー、そしてその下に積もった塵。それだけとなった。
「やっと、出来上がった‥‥バグアを殺す弾が」
 ズズンと建物が揺らぎ、天井からぱらぱらと落ちる。
 何が起きているのか、もはやわかりきっていた事であった。これまでにも幾度となく繰り返されてきた事なのだから。
 所長は部屋に戻ると、残りの1発を大事そうに握りしめる。
 複数の足音。扉を蹴破るかのごとく誰かが勢いよく飛びこんできた。
「所長! 逃げる準備をお願いします! ここも奴らに――」
「いや、逃げん――もう逃げるのは終わりだ」
 所長はスイッチを入れ、マイクに語りかける。
「残りわずかとなった全人類の諸君に告げる――もはや逃げるのは終わりだ。私はつい先ほど、たった1発しかないが奴らを殺せる弾丸を開発した」
 近くで聞いていた者達が、おおと口々に感嘆の声を上げていた。
「残された物資では、もうこれ以上は作れないだろう。また、時間も恐らくそこまでは残されていない――そこでお互い生き残りをかけた大攻勢に転じる。
 攻められていると言う事は、敵本拠地にはほとんどいないだろう。もともと奴らは少数である事はすでに分かっているのだからな。
 ここで時間を稼ぎ、我らの希望の能力者諸君に、この『人類最期の1発』を託し奴らの根源である『D・B』を討ってもらう」
 所長はその弾丸を、部屋に入ってきた彼らに差し出す。
「根源が死ねば、意識下でつながっていると推測されている全てのバグアが滅びるはず――あくまでも推測でしかないがやってくれるね。諸君」
 こうして能力者は人類の存続をかけ、バグアとの最終作戦を開始した――。

「そこは入口じゃないわ。多分、緊急の脱出路かなにかの出口じゃないかしらね。縦につながっているだけの穴だから」
 一番長く戦いに携わった初期世代能力者最後の一人、冴木 玲(gz0010)が、地面の不自然な穴を発見して覗き込んでいた能力者に自分の知りえし情報を伝えた。
 初期世代は何度かこの地をおとずれ、調査をしたことはある。故にやれ入口がどこだとかそれなりの知識はある――が肝心要の敵の本拠地の構造そのものは予測の範疇でしかない。さすがに中の調査は、ほとんどできていないのだ。
 いくら対抗しうる戦力と言えどバグアの優位性は覆す事が出来ず、内部への潜入は危険極まりない。
 まして、相手は不死なのだ。退路が断たれる事もしばしば、ある。
 そんなこんなで、多数いた初期世代能力者も、そのほとんどが命を落としたのであった。
 そして初期世代のエミタは不完全なもので、1日を通して合計10分しか覚醒できないという欠陥を抱えていた。もちろん、玲とて例外ではない。
 だから今回彼女は、自分の持てる知識を現場で伝え、成功率を高めるだけの役割でしかないと自覚していた。
(私ももっと戦えるとよかったのだけれど‥‥)
 初期世代にして最強の能力者と謳われているだけに、今回の最終作戦でそれほど役に立てない事に歯がゆい思いを抱いている。
「ここが入口よ。この他にあと4つあるわ。中央部にまっすぐに向かってるだけのシンプルな作りだから、迷う事はないけど、出会ってしまえば敵との戦闘は免れないわ。敵の多くは出払っているかもしれないけど、いないとも限らないから気を付けて」
 薄暗く狭い通路。その先に待ち受ける、人類の天敵。
 全人類は今、その存亡を数名の能力者に託したのであった――。

●参加者一覧

セレスタ・レネンティア(gb1731
23歳・♀・AA
リティシア(gb8630
16歳・♀・HD
エドワード・マイヤーズ(gc5162
28歳・♂・GD
ミティシア(gc7179
11歳・♀・HD

●リプレイ本文

 冴木 玲(gz0010)に案内された穴を覗き込む、3人の能力者。
 そのぽっかりと口を開けている、不気味な穴から漂う気配に身震いしてしまう。
「この奥に、バグアの根源が‥‥」
 エドワード・マイヤーズ(gc5162)が眼鏡のブリッジを押さえ、ずれを直しながら呟いた。
 気持ちを切り替えるためにも大きく息を吸い、吐き出したセレスタ・レネンティア(gb1731)は、精神統一の意味も込めて入念に武器のチェックを開始する。
(奴に到達するまで――誰も欠けさせたりはしない)
 エドワードの後ろから覗き込んでみたり、セレスタの脇から覗いたりと、せわしくちょこまかちょこまか動き回り、落ち着きのないミティシア(gc7179)。
「姉ちゃんに呼ばれただけなんですけど、なんか大変そうな話ですし。肝心のお姉ちゃん見当たんないし」
 巻き込まれ気味というか、流れでやってきてしまったミティシアは、道中一緒だったはずの姉・リティシア(gb8630)の姿を探していた――と。
「ひょこ」
 盛り上がっている穴の上からひょっこり顔を現し跳躍、ミティシアの前に着地。
「しゅた」
「しゅた、じゃないよ姉ちゃん。なんか大事そうな雰囲気なんだけど、どうなの」
「うん、大事も大事。人類はわたくし達の手にかかるも同じだね」
「それじゃ、あたしたちが人類滅ぼすって事になっちゃうよ〜」
 姉妹の微笑ましいやり取りに、少しだけ頬を緩める玲。そんな彼女にエドワードが声をかけた。
「冴木嬢も、来てくれるのだよね」
「私じゃ足手まといになりかねないわ――今日はまだ覚醒していないとはいえ、10分しかもたないし」
「それでも貴重な戦力に変わりありません」
 照準の狂いも確認し、ひとつひとつ丁寧に収めなおしていくセレスタの言葉に、エドワードも頷く。
「そういう事さ。D・Bに会うまでは温存して、いざという時に動いてもらえばいいだけだからね」
 気遣われている事に素直に感謝し、彼女はありがとうと言うと、1発の銃弾を取り出し、それをエドワードの手にしっかりと握らせる。
「――この人類最期の一発は、あなたに託すわ」
「僕にかい?」
 ゆっくりと頷く。
「私の獲物は刀だし、なによりも最後まで生きている可能性は貴方が最も高いからね」
 人類の命運をかけたその1発を、自分が扱ってもいいものか――それの同意を得ようと皆を見回す。
 セレスタは無言でうなずき、姉妹は関せずとでも言わんばかりにボケと突っ込みを繰り返している。
 掌の小さな1発の銃弾に視線を注ぐ。小さいが、とても大きな意味を持った1発に。
(運命を大きく左右する一発でもある‥‥か?)
 人類のすべてを託された彼は、S‐02を取り出して弾倉を空にし、大事そうにその1発をこめるとホルスターに戻すのであった。
「準備はできた?」
 玲の確認。皆が頷く。
「おっけ、やる気十分。ズタボロになってもみんなで行くよん」
「ここまで来たら、もう諦めるしかないですね‥‥脱落者なしの皆さん全員でたどり着いてみせましょう」
 ハイドラグーン姉妹は口をそろえて同じ事を呟き、バイザーをおろす。
「言わずもがな、僕もばっちりさ」
 肘まで覆う篭手をつけた腕で、ぐっと親指を突き立て、歯をのぞかせ笑って見せた。眼鏡がきらりと光る。
 武装を全て収めなおしたセレスタは、サブマシンガンを構え皆に聞こえるようにはっきりと告げた。
「これを最後の戦いにしましょう‥‥状況開始」

 エドワードを先頭に、玲、セレスタ、そしてハイドラ姉妹が後ろからライトで照らしながら通路を駆けていた。
 玲の言葉では道は真っ直ぐと言う事だったが、途中枝分かれしていて、そのたびにエドワードが方位磁石で中心に向かっている通路を確認。
「左にずれているのを、途中途中で掘り直している――そんなところかな」
 彼がぴたりと足を止めると皆が止まり、低い所から順に高さを変えて石ころを放り投げると――胸の高さあたりの空中で弾ける。
 突如、天井から吊るされた大きな鎌のようなものが壁の中から現れ、それが石ころを砕いたのだ。
 振り子のように揺れるその罠にぞっとしながらも、冷静に発動条件を考える。
「高さで自動的にというわけだが――あそこのあからさまに怪しい突起を押しても発動しそうだな」
 あからさまに怪しい――壁の小さなでっぱりの事なのだろうが、彼が言うほど不自然でもない。
 最高のエージェントたる彼の中では、と言う事なのだろう。
「ついでに言えば、左に仕掛ける癖があるようだね。右に寄りながら走れば――」
 振り返った彼は言葉が止まってしまう。天井に張り付く、気味の悪いほど輝く、4つの目に気がついたからだ。
「後ろだ!」
 即座に反応したセレスタが振り返り、天井へ向けてサブマシンガンを掃射――いち早く床に落ちたそれは振りかぶった手でハイドラ姉妹をなぎ倒そうとするが、すんでのところでかわしてみせる。
 だがほんの少しかすったらしく、一瞬だけ体が浮き流される。恐るべき膂力だ。
「邪魔はさせません!」
 マチェットとコンバットナイフを引き抜き、肉薄するセレスタ。
 腕をマチェットで叩き落しかいくぐると、胸を一突き――だがバグアは刺されながらも彼女の肩に噛みつき、肉を引きちぎる。
「くぅっ‥‥!」
 痛みに怯むことなく、味を確かめる様に上を向きながら口を動かしているバグアの喉に、マチェットを叩き斬り、寸断とまではいかないまでも、深々とめりこんでいた。
 横にいるバグアがこちらに向かって手を突きだす――身体を回転させマチェットを引き抜くと同時に、刃で腕を受け流し、ひじ打ちでバグアの肘を砕き、腕に絡みつくように接近。
 噛みつき防止のためかコンバットナイフで顎下から貫くと、その胸部にサブマシンガンの銃口を押し当て、発砲。肉片がセレスタの顔を汚す。
「まだ前からくるわ!」
 玲の言葉通りに、前からも数体のバグアがこちらに向かってきていた。
「私が落とします! 皆は温存してください!」
 サブマシンガンを撃ちながら突き進む、セレスタ。
 恐ろしい速度で投げてくる石つぶてを撃ち落し、漏らしたものは己の身体で受け止め、皆を守るように前へ前へと止まらずに進む。
「まだここで倒れる訳にはいきません! 死にたくなければそこを退けぇッ!!」
 弾が切れるとすぐにコンバットナイフを引き抜き、バグアの手を屈んでかわすと足を引っ掛け、体を崩したところにナイフの一閃。
 首を半分切り裂き、流れる様に体を捻ってあびせ蹴り。ぶら下がっているだけの頭を蹴落とし、残った身体を腕で払う様に他のバグアに投げつける。
 追い打ちをかけようと一歩踏み出すと――気配を察して後ろに飛び退いた。
「うはははぁ、雑魚に用はないわッ」
「すみません、通していただきますッ」
 まばゆい光をまとった2台のバイクが、左右へ衝撃波を放ちながらバグアの群れへ突っ込んでいく。
 多少の石つぶてもなんのその、狭い通路に群がるバグアを軒並み吹き飛ばし、その隙をついて3人は駆けぬけるのだった。
「追ってくるよ、姉ちゃん。どうする?」
 停車し、仲間に向けてライトを照らしながらミティシアが姉に尋ねるが、当のリティシアは笑みを浮かべたまま、さてどうしようかなと呟いていた。
「そのまま奥に行きたまえ! 僕に考えがある!」
 後ろ向きに電磁波を放ちながら、最後尾を走るエドワードが叫ぶ。
 彼の言葉を信じ、全員が後ろを牽制しながらも全力で前へと進み続ける。
「できればD・Bの所まで、連れて行きたくないよね」
「大丈夫、その前に一掃できるはずさ――あった! 走れ走れ!」
 何かを見つけた彼は皆を急かし、追いたてた。迫り来るバグア達――。
「合図とともに、伏せてくれたまえよ――今だ!」
 エドワードの指示通りに伏せる一同。
 彼もぽんと岩の突起に触れると、滑り込むように身を低くする。
 ヒュン――。
 彼の前髪に何かが触れた――その直後、追かけてきていたバグア達の胴体が2つに分かれていた。
「やはり突起の高さと形で、トラップも違ったね」
 後ろでは肩より上しかないバグア達がもがいているが、動く事はさすがにままならないようだ。
「さあ急ごうか。時間は稼げたはずだよ」

「腕利きのエージェントが随分やられたな‥‥」
 エドワードが独りごちると、セレスタは冷静に言葉を発した。
「例え命を落とそうと、それを無駄にする事は我々には許されません」
 途中で見つけた仲間であろう死骸。すでに骨と化してはいるが、その装備で仲間だったという事をわからせてくれる。
 皆は手を合わせ、エドワードはしゃがみこんでそれを調べ始めた。死んでいった彼らの遺志を継ぐために。
「何か手掛かりになりそうなモノは無いだろうかね?」
 探ると、不思議な事に銃痕のような傷跡はあるが、その周囲には弾がない――どういう事だろうかと首を捻っていたが時間もないので、それ以上探る事無く、彼らは奥へ奥へと進むのであった――。

 とても広い空間――そこに1人の初老の男がいた。
「久しい――ここに人類が来たのは」
 とんでもないほどの威圧感。その男こそ、まさしく人類の最大の敵、バグアの根源『D・B』であった。
 対峙するのは玲とて、初めてである。
「では直々に――」
 言葉も言い終わらぬうちに、セレスタはサブマシンガンを撃ちながら横へ移動を開始する。
「我々はお喋りしに来たのではありません。滅んでもらいます」
 実に冷静なセレスタの一言で開戦。
 だがそれが愉快だったのかD・Bは高笑いをし、指をパチンと鳴らすと地面が揺れ動く。
「ふふふ、これで貴様らの退路はもうない――さあ一方的なショーの――」
「よーし、ヘタレ京太郎のせいでお蔵入りになった最終必殺連携『疾風怒涛』いくよ〜」
 言葉を遮り、パイドロスを身に纏ったリティシアが、ミティシアと肩を組む。
 エドワードやセレスタは了解とへんじするが、ただミティシアの方は不安げであった。
「あのう‥‥私は他の皆さん違って同じ関連小隊に居たけどKV組みだったんですけどって聞いてないし、姉ちゃんこの戦術最低でも5人はいるんじゃないの」
 痛いところを突かれたリティシアだったが、なんとかなるなると問答無用でD・Bめがけ突撃を開始する。
 そんな彼女らに指で何かを弾くD・B――その途端に、細かいながらもかなりの衝撃が2人を襲う。
「痛‥‥くない!」
「痛いけどね!」
 何も物体は飛んでいないのだが、彼女たちの全身鎧が弾け、穴を穿たれる。
(空気の弾丸か!)
 2人の後を追いかけているエドワードは、先ほどの疑問がやっと解決できた。
 それでも2人を信じ、玲と共に2人の後をついていく。
「っふ!」
 いつの間にか肉薄していたセレスタが腕を斬り落そうとしたものの、ほんの少し肉にめり込むだけで止まってしまう。
 しかも、抜けない。
 だが一瞬でも注意をそらせば十分とナイフとマチェットから手を離しすぐに後退をするが、そんな彼女にも空気弾は襲い掛かる。
 目に見えないそれを直感でかわしてみせるが、致命傷を避ける程度で精いっぱいであった。
 だがしかし、役割は十二分に果たした。
 全身、スパークを身に纏った姉妹がスクラムタックルでD・Bに体当たりをかけると同時に、後方の玲とエドワードが飛びこんだ。
 ふっとばされるD・B――かと思いきや、タックルが当たる直前に自ら後ろへと飛んでいたのだ。
 ふわりと着地すると同時に、4人めがけ乱射――広範囲で理不尽なそれをかわす事も出来ずに、4人は食らい続けてしまう。
 そこに閃光手榴弾が投げ込まれた――が、それすらも撃ち落したD・B。
 彼は目標を変え、距離を置いて銃撃を繰り返していたセレスタへ猛烈な速度で突進する。
 ありったけの銃弾を叩き込む、セレスタ。
 スナイパーライフルの弾が尽きれば、サブマシンガン。サブマシンガンの弾が尽きれば、ホルスターから拳銃を引き抜き応戦――彼女に絶望感を与えさせるためか、D・Bは途中からそれらを全て悠々と受けながら、彼女へ歩み寄っていた。
 そしてすぐ正面まで来た時、カキン、カキンとハンドガンの弾すらも尽きる。
「どうやら私の役目は終りですね‥‥後は頼みました」
 彼女は微笑み、空になったハンドガンを握った腕を下げ――その胸をD・Bの腕が貫くのであった。
「生きてるかな、眼鏡さん」
「眼鏡は死んだが、僕は生きているよ」
 肩を押さえ、血まみれになりながら立ち上がるエドワード。彼のトレードマークたるTマークの眼鏡もすでになく、素顔が露わになっていた――前髪で目は隠れているので、露わになっているとも言い難いが。
「では第2弾、いこうか」
「姉ちゃん、ほんとにやるの? うぁぁぁえげつな〜まるで年末年始のお笑い芸人の様ですねぇ」
 もっともだとエドワードも笑うが、話が見えない玲だけは首をかしげている。
「かなり痛いから防御スキル掛けまくっておいてね」
「わかっているよ」
 満身創痍の彼だが、彼の盾の紋章が一瞬だけ強く輝く。
 姉妹の身体が、再びスパークに包まれ、足を後ろに高々と振りかぶる。
「こんなこともあろうかと、いけぇ〜最終奥義眼鏡アタック!」
「ぶっ飛べ眼鏡アタック!」
 2人はエドワードの尻(と床に落ちている眼鏡も)を蹴りつけ、もの凄い勢いで弾き飛ばし――そして2人は倒れる。
 飛んでくるエドワードに空気弾を撃ち続けるD・B――だが痛む尻もなんのその、D・Bめがけ飛んでいるエドワードは、運よく致命傷だけ避けていた。
 肉薄し、ぶつかる! という直前で赤いオーラに包まれた彼はS‐02を引き抜き、それを額に押し当てる。
「バグアの根源、さよならだ‥‥っ!」
 引き金を引き、発砲――人類最期の1発がD・Bの額に。
 一瞬嘲笑うD・Bだったが、突如目を見開き、エドワードを払いのけ額を押さえもだえ苦しむと、大気を震わせる雄叫びを上げ――爆散した。
 その直後に通路からも雄叫びが上がるのだが、何が起きたか確認する事もなく、D・Bの足元に開いた穴に倒れた皆が吸い込まれていく。
 外に放り出された彼は――玲が必死にこちらへ手を伸ばしている姿と――青く美しい、自分達の星を目にした。
(ああ――さらばだ、我らの美しき星よ‥‥)

「ガブリ」
「うぎゃ〜!」
 足にかぶりつかれ、目を覚ましたミティシア――驚いた反動で跳ね上がった足が、振り下ろされる。
「ぐはっ!」
 鳩尾を押さえ、悶えるリティシア。悲鳴、というよりはその後の鳩尾への踵落しで目が覚めたようだった。
 むくりとミティシアは起き上がって辺りを見回す――久しぶりの姉妹の再会で、急遽隊長としてなんとか隊を立て直す所まで来た話題で深夜まで盛り上がり――いつの間にか寝てしまったようだった。
「あ、甘くて芳醇なケーキさんが‥‥」
 寝ぼけてかぶりついたらしい。
 新年から騒がしい姉妹であったとさ――。

『【初夢】アナスカ 終』