タイトル:【共鳴】人とは?マスター:九頭葉 巧

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 10 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2010/12/20 22:34

●オープニング本文


 クォレルが目覚めて始めての『授業』は、まだわからないことだらけだった。それは「何をすればいいのか?」ということではない。自分がやるべきことはなんとなくわかる。
『人間』を殺すこと。
 キメラを使い、相手の『人間』の数を減らすこと。それが自分の役割なのだとなんとなく知った。
 クォレルがわからなかったのは、その相手たる『人間』のことだった。
 先日の初めての授業で出会った『人間』たちは、彼にとって非常に奇妙なものだった。
 自分達を敵と知りつつ、話をかけてくる者。
 確固たる敵意を向けて自分達を睨む者。
 友好しようとする者。
 挑発しようとする者。
 同じ人間なのにこうも明確な差があると、集合体の本質が見えなくなってきてしまう。
「‥‥めんどくせぇな」
 一言、吐く。この言葉は魔法の言葉だ。考え事を簡単に破棄できるし、ここから何も考えずに済む。
「何がそんなにめんどくさいんだい、少年?」
 クォレルははっとなった。誰かに声をかけられるとは思いもしなかった。雪原のど真ん中で佇むのは1人だけかと思っていたのだが。
 振り返ると、1人の男が立っていた。妙に薄汚れた格好で、見るからに薄いコートを寒そうに羽織っている。顔には無精ひげ。頭のカウボーイハットが吹雪に飛ばされないように、しっかりと抑えていた。
「まぁ、めんどくさいことも多いよなぁ。この世の中には。少年が言うのも無理はない」
 うんうん、とカウボーイハットの男は1人で頷いた。クォレルは男のことをじっくりと観察する。
「そう睨むなって。通りすがりのおにいさんの戯言だ。適当に聞き流しておけばいいさ」
 睨んだつもりはないのだが、クォレルの目はどうしてもそのように見えてしまうらしい。この前も仲間に「どうしてそんなに不機嫌なの?」と心配されたほどだ。
「おっさん‥‥人間か?」
 クォレルは言う。男は苦笑を浮かべると、こう続けた。
「おっさんじゃねぇよ。そうだなぁ。人間かって、少年は変なことを聞くなぁ。人間か、と聞かれれば間違いなくそうなんだが‥‥俺は冒険者だ」
「冒険者?」
「そうだ。世界を旅する冒険者。それが俺だ。今回もまた、冒険の途中ってわけ。そんで、これから俺はあの村で宿を取ろうと思ってたとこだ」
 冒険者と名乗る男は、視線の先にある小さな村を指差した。
「少年も一緒に来るか?」
「‥‥いい」
 クォレルが明確に断ると、冒険者は無理強いせずに、
「そっか。じゃあ俺は行くよ。また、どっかで会ったらよろしくな」
 と言い、あっさりと村に向かっていってしまった。
 また奇妙なやつが現れた。人間じゃないのか?冒険ってなんだ?世界を旅するってなんだ?
 わからない。やっぱりよくわからない。
「めんどくせぇ」
 二度目の言葉を吐き、今度は意識して村を睨む。
「めんどくせぇから、さっさとやっちまうか」

●参加者一覧

白鐘剣一郎(ga0184
24歳・♂・AA
如月・由梨(ga1805
21歳・♀・AA
水無月 神楽(gb4304
22歳・♀・FC
石田 陽兵(gb5628
20歳・♂・PN
イーリス・立花(gb6709
23歳・♀・GD
相澤 真夜(gb8203
24歳・♀・JG
ガル・ゼーガイア(gc1478
18歳・♂・HD
有村隼人(gc1736
18歳・♂・DF
ヨダカ(gc2990
12歳・♀・ER
キロ(gc5348
10歳・♀・GD

●リプレイ本文

●救出会議
 救助依頼を受けた傭兵たちは早速現場近くに集まった。
「水無月 神楽(gb4304)です。皆さん、宜しくお願いします」
 神楽は自己紹介の一貫として次の言葉を付け足した。
「よく間違われるので慣れていますが、僕は女性ですよ。念のため言っておきますが、心に決めた殿方がいますので悪しからず」
 ふぅ、と一つため息を付く。
「世界を旅する冒険者、か‥‥もしかしたらアイツの事を知ってないかな‥‥?」
 石田 陽兵(gb5628)は今回の救助を依頼してきたガイツ・ランブルスタインの素性を聞き、自分の探し人を知らないだろうかと思案する。
「能力者だもの、みんなを守ってあげなくちゃね!」
 相澤 真夜(gb8203)は呼応するように言う。その心中には1人の少年の姿があった。もし彼がいるのならば人間への好感を持ってもらおうと、1人決心を固める。
「あのハーモニウム‥‥何か他と違う気がしますね‥‥」
 偶然、有村隼人(gc1736)も同じ少年のことを考えていた。彼の真意を聞いてみたいと純粋に思う。
 だが、別の角度から同じ少年のことを考える人もいた。
(胸糞わりぃなぁ!あそこは戦う所だろ!まったく!)
 ガル・ゼーガイア(gc1478)の挑発に彼は乗らなかった。それが気にいらない。そして、ガルはまた別の決心を固めた。
「特に軍事拠点でもないのに敵の数が多すぎなのですよ!」
 敵の考えが読めず、ヨダカ(gc2990)は思考を巡らせる。それは白鐘剣一郎(ga0184)も同じ考えだった。
「この町を襲うには過剰な戦力‥‥それだけに迅速な対応が必要だな。急ごう」
 だが、敵の数が多かろうと少なかろうと、やるべきことは一つ。
「さーて、村の住人を守りきればこの勝負は我等の勝ちじゃな。何事も楽しんでいくのじゃー」
 キロ(gc5348)の言う通りであった。何があろうとも、村人を助ければよい。
「さて、行きましょうか」
 イーリス立花(gb6709)は戦闘に赴こうとするヨダカをじっと見つめながら、ジーザリオの運転席に乗りこんだ。キロも同じく運転席に乗りこむ。そうして傭兵たちは罪なき人達が待つ戦場へと向かっていった。

●雪原戦闘
「やっと来たか」
 村に向かって走る車を見て、クォレルは少しだけ楽しそうに言った。観察が始まった。

 村の近く、キメラとそうは離れていない場所で車を降りた傭兵たちは、早速作戦を開始する。
「まずは足止めだ。手前は任せる。くれぐれも注意して当たってくれ」
 剣一郎はそう言うと、突入した位置から一番遠い場所にいるアイスドラゴンへと一直線に走っていった。
「いきましょう、イーリスさん!」
「ええ。ヨダカさん、支援をお願いします」
 ヨダカとイーリスも続いてアイスドラゴンのもとへ向かった。
「私たちは村人の避難誘導ですね!」
「おう!」
 真夜は『瞬天速』を使って一気に村へ移動する。ガルもAU−KVを走らせて村へと急いだ。
「さて、我等は‥‥と。来よったな」
 人と肉の気配を感じてやってきたのは、7体のワーウルフ。凶悪な武器を持って、獣の本能をむき出しにして襲い掛かってくる。
「ほれワンワン、こっちじゃこっちー」
 ワーウルフの注意がこちらに向くように速度に気をつけながらジーザリオを走らせるキロ。ワーウルフたちはまんまと車を追いかけてきた。

「こっちに逃げてください!はやくー!」
 真夜とガルは村の中に入り、村人たちの誘導を行なっていた。
「毎度のことながら世話になるねぇ‥‥」
「今はそんなことどうでもいーから!早くに避難するぜ!」
 避難にも慣れた様子のガイツを一蹴し、素早く村人全員を外へ逃がした。これで被害がさらに拡大することは無いだろう。
「それでは私たちはキメラ退治に戻りますのでっ!」
 真夜とガルは村人たちに、安全が確保できるまで動かないように指示したあとすぐにキメラのもとへ向かって行った。
「そういやあの少年‥‥大丈夫なのか?」
 ガイツは、村の外にいた少年の身を案じる。

 アイスドラゴンは剣一郎の姿を見ると、唸り声を上げながら大きな尻尾を振りかぶって剣一郎に叩きつけた。手く身体をずらして避けるが、避けてもなお巨大なプレッシャーが空間に刻まれていた。
「足止めとは言ったが、皆が来るまでただ待つのでは被害が広がり過ぎる。ここは討たせて貰おうか!」 
動きを止めたアイスドラゴンに剣一郎は剣を構える。
「如何に堅牢な鱗だろうとも‥‥斬れぬ道理、無し!天都神影流、斬鋼閃・裂破っ」
 息を吸い、言葉と共に放つ攻撃。固いはずの鱗に鮮やかな斬撃が刻まれ、貫かれる。
 ほどなくして動きを失ったアイスドラゴンを確認すると、剣一郎は血しぶきを払い、剣を収める。
「他の援護に回らなくては」
 剣一郎は残るアイスドラゴンのところへと走った。

「無視されない程度に打ち込みですよ!」
「了解」
 ヨダカはアイスドラゴンに『練成弱体』を当てて弱体化をさせると、その隙にイーリスが攻撃を加えていく。が、2人の目的はあくまでも陽動。倒すことではない。イーリスは常に盾を構えてその影から射撃を行なう。それも、固い鱗に覆われていない目などを集中的に攻撃する。
 銃弾を受け、叫び声を上げながらアイスドラゴンの向きが村から2人の方に変わる。2人に近付こうとするドラゴンに対し、イーリスは『四肢砕き』を使って足を狙う。村にも自分達にも近づけない。
 アイスドラゴンは足が動かないのがわかると、その場で大きく息を吸った。巨体が膨らんだところでぴたりと止まり、口から超低温のアイスブレスを吐き出した。
 ただ冷たいのではなく分子の動きごと止めて物資を砕くような、悪魔のブレス。
 イーリスはヨダカの前に立つと盾を構え、さらに『自身障壁』で防御力を強化して受ける。ブレスが止まると、そこにはところどころに霜が降りたように白くなっている、黒色の鎧が残っていた。ブレスが終わったのを確認すると、パキパキと音を立てて鎧が動き出す。
「この鎧は、伊達ではありませんから」
 イーリスに守られたヨダカは、ほっとしたような声を上げる。
 が、ヨダカの背後から大きな咆哮が聞こえてきた。
 もう1匹のアイスドラゴンが迫っている。両方向からの敵。どうやってこの子を守ろうかとイーリスが思案を巡らせようとしたとき。
「天都神影流、虚空閃・裂破!」
 多数のソニックブームが2匹のアイスドラゴンに当たり、吹き飛ばす。
 剣一郎の加勢だ。
 これならまだいけそうだと、イーリスは鎧の中で一息ついた。

 ワーウルフたちを誘導していたキロは、村人たちの避難誘導をしていた真夜とガルが村から出て戦闘の準備をしているところを視界の端に捕らえた。
「そろそろ迎撃の時間かのぉ」
 一旦ワーウルフたちから距離を取り、傭兵たちはジーザリオから一斉に降りて散開。ワーウルフ撃破に望む。
 狙うは、連携をされる前に各個撃破。
「家族の居場所を奪うような所業、許す訳にはいきません!」
 神楽はまず『迅雷』で一気に距離を詰める。1体のワーウルフの前に立つと、そのままの勢いで一撃。さらに次は別の相手に『円閃』で攻撃する。
「そこか!もう一丁!」
 『援護射撃』で神楽を援護した陽兵は、さらに『鋭角狙撃』でワーウルフの撃破を狙う。
(あなた方に割く時間はありません‥‥)
 隼人は援護のためシャドウオーブで攻撃。さらにガルも同じく機械本での遠距離攻撃。超機械の攻撃にさらされて、ワーウルフたちの連携がさらに崩れた。
 個々に散らばったワーウルフたちに対し、真夜は1匹に狙いを定めて集中攻撃をした。
「はやくあっちにいかせてくださいよね!」
 まずは距離を保ちつつクロッカスで攻撃をしていったが、徐々に距離を詰められると、刀での攻撃に転ずる。『限界突破』と『急所突き』の連続攻撃により、ワーウルフも倒れてしまう。
(距離を計りつつ‥‥)
 ワーウルフの1匹が隼人に狙いを定めて襲い掛かってくるのが見え、武器を紫苑に持ち変える。
 ワーウルフの攻撃を回避すると『両断剣』を発動させて、
(この一撃は大きいですよ‥‥覚悟して下さい)
 鎌を振りかざし、両断。ワーウルフは息の根を止めた。
 2体がやられたのをきっかけに、堪えきれなくなったワーウルフたちが次々と傭兵たちに襲いかかってくる。
 キロは双斧パイシーズを交差させ、さらに『渾身防御』を発動させてガードの姿勢を取る。ワーウルフはここぞとばかりに何度も叩くが、攻撃のあとの隙をキロは見逃さない。
「ほれお返しじゃ。遠慮せずに魚斧を食らうのじゃ」
 と片方の斧でワーウルフの身体を裂く。
「武器なんか使って、狼のくせに生意気だぜ!」
 ガルは連携を失って各個行動をとり始めたワーウルフの1匹に対して機械剣で応戦した。
 バラバラに戦うことを余儀なくされたワーウルフたちは、個々の戦力で傭兵たちに敵うわけもなく、次々と倒されていった。全てのワーウルフを倒し、次にアイスドラゴンと戦っている仲間の元へと向かおうとした。しかし、
「‥‥あ!あの野郎!あんなところに!」
 ガルは突然AU−KVに跨ると、ブーストを使って一気に飛んでいってしまった。
 そちらにドラゴンの影は見えない。むしろ逆方向である。
 よく目を凝らしてみると、小さな人影が見えた。
(あれは‥‥あの少年でしょうか?)
 隼人には見覚えのある姿だった。
「ど、どうしよう?」
 真夜が心配そうに言うが、神楽は冷静に答える。
「あちらの人影には敵意が無さそうです。観察しているようなので、ガルさんに任せても大丈夫でしょう。それよりもドラゴンの方に行きましょう」
 残った傭兵たちは頷き、アイスドラゴンの方へと向かった。

 駆けつけた傭兵たちだったが、すでに3体中2体のアイスドラゴンは命を失っているようだ。
 残る1体のアイスドラゴンが渾身のアイスブレスを放とうとしているところへ、駆けつけた真夜はクロッカスで攻撃する。
「隙だらけですよっ!」
 ブレスと電磁波が重なり、小規模な爆発が起こる。ブレスの勢いは消え、ドラゴンは爆発の勢いを受けてバランスを崩した。
「みなさん!来てくれたんですね」
 ヨダカは嬉しそうに声をあげる。剣一郎とイーリスも薄い笑みを浮かべた。
「水無月流”旋”、変化の1”疾風迅雷”」
 神楽の『迅雷』+『円閃』のコンボを叩き込み、アイスドラゴンの巨体が地面に倒れた。
 そこへ間髪入れず『強弾撃』を使って銃弾を叩き込む陽兵。
「とどめをお願いです!」
 仲間が来たことにより攻勢に移ったと見ると、ヨダカは『練成強化』で味方を援護する。「これで終わりだな」
 最後に剣一郎の斬撃が舞い、最後のアイスドラゴンも倒れた。
「援護に来てくれて助かったよ‥‥おや?1人足りないようだが」
 剣一郎が尋ねると、真夜はパタパタと手を振りながら説明をする。
「実はガルさんが1人で行っちゃったんですよ。あれは確か、ハーモニウムの少年だったと思いますっ!」
「俺たちを観察しているみたいで敵意は無さそうだったら、先にこっちに来たんですけど‥‥ハーモニウムか。ガルさん、大丈夫かな」
 陽兵は心配そうな顔と共に、相手のことを思うと少し憂鬱になった。キメラは平気なのだが、人に銃を向けるには抵抗がある。
「観察とは言え、何かあったら危険だ。俺たちもすぐに向かおう」
 剣一郎は人影が見えたと言う雪原に目を向けた。

「ん?」
 クォレルは爆発的な推進力でやってきたバイクに目を向けた。一人だけ単独行動でやってきたのは、前に会ったことがある赤髪の男だった。赤髪の男――ガルはクォレルの目の前でAU−KVを止めると、すぐさま鎧として展開する。
「前回はよくも逃げてくれたな!ハーモニウムの連中は腰抜けばっかか!」
『竜の血』で体力を回復させつつ、クォレルへ挑発するガル。
「あぁ?逃げたわけじゃねぇよ。あれで授業は終わりなんだ。余計なことする必要はねぇだろうが」
 クォレルは明らかにいらついた様子だ。
「うるせぇ!今回は逃がさねぇぜ!命の重さを知りやがれ!」
 次の瞬間、ガルは『竜の翼』でクォレルの眼前まで近付き、機械剣で斬りかかる。
 不意を突かれたクォレルは一撃を喰らい、頬を斬られる。さらにガルは接近戦で攻撃をしていく。が‥‥、
「なんだよ。不意を突かれなきゃ、この程度か」
 攻撃は当たらない。機械剣の切っ先を見極め、ギリギリのところで避けていく。
「おらよ」
 ガルの攻撃が少しだけ止まったのを見るとクォレルは軽く蹴りを放つ。その蹴りでガルは吹っ飛び、雪原に転がった。
「ぐっ!」
 ガルはなおも機械剣を振りかざすが、同じことの繰り返しであった。明らかに軽く放つっている攻撃なのにAU−KVを通じて身体にダメージが蓄積される。
「なんだよ。お前もやっぱり人間かよ。キメラを倒せるんだから、お前らは俺らと同じだと思ったのによ。所詮はこんなものか」
 無造作な蹴りがガルの腹に突き刺さる。1メートルほど吹っ飛んで蹲るガル。
「あ、そうか。人間だから殺さなきゃいけないんだっけか」
 クォレルは不機嫌そうに言い、めんどくさそうに距離を詰める。だが、一歩踏み出したところで足を止めた。
 他の9人の傭兵たちがやってきたからだ。彼らは蹲るガルの様子を見て顔を青くさせている。
「キメラは全滅か。じゃあ、これで授業は終わりだな」
 ガルへの興味は失せたのか、振り返って帰ろうとするクォレル。そこに真夜は声をかける。
「この間の男の子だよね?ねぇ、人間、きらいなんですか?あなた自身がさ」
 真夜の問いに、親切にも足を止めて振り返って答える。
「わかんねぇが、いろんなのがいるってのはなんとなくわかったよ」
 対峙する10人の顔をじっくりと見るクォレル。
「そうなんだ。じゃあちょっとだけ、考えてみて欲しいなぁ‥‥」
 真夜の呟きを聞くクォレル。そこにヨダカも付け加える。
「そうそう。人間がどうとかそんなのがすぐに分かるようならプラトンもソクラテスも苦労しないのですよ!」
 ふぅん、とクォレルは小さい少女の弁に耳を傾ける。
「敵とか味方とか気にせず気に入ったのと仲良くして、気に入らないのをぶっ飛ばせばいいんじゃないです?ヨダカのファーターもよく言っていたのです。『一回タイマン張ったらダチ公だ』って」
「ダチ公‥‥ねぇ」
 蹲ったままのガルに視線を移すクォレル。
「めんどくせぇな‥‥」
「そうかのぉ。我はクォレルとの勝負は楽しめたぞ。カカカッ」
 クォレルの呟きに楽しそうに反応するキロを見て、クォレルは困惑する。
「やっぱよくわかんぇな、人間って」
 それ以上は何も言わず、クォレルは立ち去っていった。
「市民の安全もある。これ以上は刺激しないほうがいいだろう」
 剣一郎は立ち上がろうとするガルに向けて言った。
(反抗期の子供と同じですね‥‥これは理解に時間がかかりそう‥‥ですね)
 隼人はクォレルが去って行った方向をじっと見つめた。
 その横では、ガルが悔しそうに地面を叩く音が聞こえてくる。

<了>