●リプレイ本文
●掲示板前
「チョコレートのキメラとは‥‥また面妖な。くどい様だが、戦闘力は皆無なのだな?」
夜十字・信人(
ga8235)は念を押すようにオペレーターに確認する。
「あ、はい。そのようです。なにせ依頼人自体がキメラと積極的に接触を持っているみたいなんで‥‥」
「そうか。ならば、討伐の他にも使い道もあるだろう」
にやりと笑う信人。その様子を見てガスマスクをした男、紅月・焔(
gb1386)が言う。
『また変なこと考えてるだろ、よっちー?』
「変なこととは失礼だな、焔。俺はこの依頼を実に真面目に考えている。このチョコレートキメラを捕まえてみろ。食料不足も一気に解消じゃないか」
『そう‥‥なのか?』
「そうだ。そのキメラは生きたまま捕獲し、UPCに管理させるべきだ。‥‥それに」
(殲滅派は乙女ばかりだ。妨害工作の際、偶然タッチしても‥‥それは、事故だ)
『よっちー、変な顔になってるぞ』
と言いつつ、焔の顔も女性陣の方へと向けられている。視線の先には6人の女性能力者たちがいた。二人から少し離れたところで女性たちが集まり、何か作戦会議をしている。
「さぁて、それでは行きますわよ」
カルミア(
gc0278)はそう言った。男性陣はなんだか嬉しそうについていく。カルミアの心の奥底からゴゴゴゴという不気味な音が出ているとも知らずに‥‥。
●名もなき村
「よ、よくいらっしゃいました!わ、私が『純粋にチョコを楽しむ会』のか、会長です」
村の入り口で依頼を受けにきたと村人に説明するやいなや、すぐに飛んできた会長である。大きな腹を揺らし、全速力で走ってきた。おそらく、女性が大勢やってきたと先ほどの村人から聞いたのだろう。その証拠に、男性陣の二人には目もくれない。
「いやー今回はステキなご依頼誠にありがとーございます。素晴らしい嗜好だすばらしい」
フードを目深に被った謎の女、ファタ・モルガナ(
gc0598)が挨拶をする。セリフが若干棒読みだが、そんなこと会長は気にしない。
「そ、そうでしょう?いやー、女性の方々にも理解していただけるとは本当に嬉しいなぁ」
会長は握手を求める。モルガナは握手を返した。多少の力が加わっていたが、会長は気付かなかったようだ。
「ここに、至高の甘味があると聞いてきたぞ‥‥!俺様は貴族だからな!食べてくれ、と言われたら、食べないわけにもいくまい‥‥。べ、別に、食べにきたわけじゃないからな?!」
各務 百合(
gc0690)が続いて言う。会長は女性から出た「俺様」という言葉にびくりとした。多重人格の彼女は今回は貴族、ムノー・ド・フォリアという人格になっている。
「はは‥‥個性的なお嬢さんだ」
そこでふと、会長は傭兵たちが持っている武器を目にした。
「あのー、皆さん。その物騒な武器は一体‥‥」
「ああ。これは傭兵の嗜みの一つですから。万が一、チョコキメラを狙う暴徒が現れんとも限らんでしょう?」
モルガナが説明をする。
「そ、そうですか。さすが、歴戦の戦士は違うなぁ。それでは皆さん、早速ご案内しましょう」
会長の案内で傭兵たちは村の奥の小高い丘に向かった。
十五分ほど歩くと、小高い丘に人だかりが見えてきた。どうやらあそこがチョコ型のキメラがいる場所らしい。
近付いてみると、なんだか残念な空気を醸し出している男性たちがチョコを片手に談笑をしていた。その奥には‥‥大きな丸いチョコが鎮座していた。黒々とした球体で、ところどころに穴が開いている。その穴から小さなチョコが排出されていた。人々は思い思いにチョコを拾い、そして食べている。
「‥‥なんとも不思議なキメラも居たものですね」
アリエイル(
ga8923)はその光景を見てため息をもらす。
「さあさあ!傭兵の皆さんもどうぞどうぞ!」
会長の案内で傭兵たちはキメラの前へと案内された。周りにいる男性たちがざわつく。普段は女性と交流が無さそうな人たちばかりであったからであろう。なんとなく避けるように遠くから見つめていた。
「ふむ‥‥。我は職人としてはどんな存在であれ、美味な物を作り上げる者は尊敬に値する」
月城 紗夜(
gb6417)はキメラの姿を見て、若干顔をしかめながら言った。
「でしょう!すごいでしょう!?ほら、ぜひ食べてみてください」
会長は嬉しそうにキメラの排出したチョコを勧めてくる。
「‥‥いや、我はアシストに回ろう」
と言うと、紗夜はキメラが排出するチョコを盛り付けてみた。盛り付けによって料理は数倍、美味しくなる。それはチョコも同じだった。思わず周りの男性たちからおおーっ、という歓声がおこる。
その横ではイーリス・立花(
gb6709)が村人の一人に質問をしていた。
「皆さん、熱心に食べてますね。どんな味なんですか?」
村人は急に女性に声をかけられて驚いていた。チョコを食べる手を止め、慌てぎみに言う。
「え、あ、その。それはもう、天にも昇るような味ですよ。もうこの味を知ってしまったら、他のチョコなんて食べれません!」
「そうですか‥‥もしかして、コレも食べれないんですか‥‥?」
そう言うと、立花は懐から自前のチョコを取り出した。
「え、あ、う‥‥」
「食べれないんですか‥‥?」
可愛らしい上目遣いで繰り返す立花。女性にそんなことされたことない村人はただただ戸惑うばかりだった。だが、自分の持つチョコを見ると途端に、
「だ、駄目です!食べられませんね!そんな普通そうなチョコ!」
と言いながら手に持つキメラチョコをばくばくと食べる。
(これは‥‥本当に魅了されているようだわね)
立花は自分のチョコをしまいながらそう思った。と同時に、なんとも言い難い感情がふつふつと湧きあがってくる。なんだろうこの、義理チョコすら断られたような感じは‥‥。
「‥‥う、うまい!ううぅ、うまいぞ!うまいんだ、うまいなぁ!あまい‥‥あま‥‥うま‥‥」
突如奇声が響き渡る。各務 百合‥‥ではなくムノー・ド・フォリアががくがくと体を震わせている。人格は甘いものが食べれるのだが、本来の体は実はチョコが苦手。その相反した反応に、人格崩壊気味のようだ。
まぁ、そんな百合はともかく、他の女性たちも村人と談笑をしている‥‥ように見える。男性陣はチョコに対してあまり興味を持っていないものの、他の目的で楽しんでいる様子だった。
村人からの信頼も得ることができ、下準備は整った。
「‥‥あ、焔クンに信人クン。そこに立っといてくれないカナ?」
モルガナは女性陣に目配せをした後、男性陣にそう指示した。
「どうしてだ?」
「大丈夫大丈夫。後でイイ事してあげるから」
『イイ事‥‥』
焔は何を想像したのかごくりと唾を飲み込んで、指示された通りモルガナとキメラの対角線上に移動した。信人も同様である。
「よしっ‥‥と。あ、会長さん。『LH式』のチョコの堪能方法を教えてあげるよー。だから、ちょっとだけ離れるよ。そうするとハッピーになれるYO!」
と言い、女性陣が男性たちから離れる。
「え、ちょ、どうしたんですか?」
不安そうな会長が前に出る。その瞬間、
「‥‥ヤッチマイナー!!!」
モルガナは突然銃を構え、覚醒。スキル「ブローンポジション」を発動させて男性陣に対して射撃を喰らわせた!
「あわわわ!!??」
「さて‥‥此処からが本当のお仕事です。能力限定‥‥解除!!」
アリエイルが叫ぶと、他の女性たちも即座に覚醒。平和ムードが一転、地獄絵図と化した。
油断させたところでの不意打ち。それが女の敵を抹殺するために彼女らが考えた作戦だった。
●殺戮慣行
「チネ!乙女の怨敵め!骨も遺さん!」
スキルを全力で発動させ、ものすごい勢いで弾を撃つモルガナ。怨みの弾が容赦なく降り注ぐ。最前列に配置された信人と焔、そして飛び出してしまった会長がまず最初に弾丸の餌食になってしまう。
「ひいぃぃ!??」
会長に弾丸が襲い掛かる!
「会長!!?」
会員たちの悲痛な叫びがこだまする。
が、会長は無事であった。信人と焔が瞬時に覚醒し、会長を護っていた。
「どうした。もっと撃ってこい‥‥俺の心臓は此処だぞ」
『おいよっちー。なんで俺のことを指差すんだよ』
弾丸が焔の足元に突き刺さる。
『うぉっ?!』
「ど、どうして?!」
会長の悲痛な叫びが響く。
「珍しいキメラですが‥‥被害を被る女性の方々も居るのです!」
「バイト代の為、菓子職人各人、ついでにULTの意向により駆逐する!」
アリエイルが槍を構える。沙夜も二振りの刀を取り出す。
「いやー、私もチョコを断られるとショックですよ」
立花は項垂れながら言う。
「女の敵‥‥殺」
カルミアの髪がドリルの様に回り、異様な音を立てる。
「‥‥よくも高貴な生まれであるところの俺様に甘い物をたべさせてくれたなぁ!この!魔王ムノー様に‥‥!」
もうなんだか意味わからない人格になっている百合。
「ち、ちくしょう‥‥だから女は信用ならないんだ‥‥。みんな!キメラを‥‥俺たちの最後の希望を守るんだ!!」
「おー!!」
謎に頼もしい掛け声と共に、村人たちは女性陣に‥‥特攻をかましていった。
相手は能力者だ。勝てるわけがない。
だがしかし、男には‥‥自分の命を賭けても護らなければならないものがある。
彼らに、迷いはなかった。
能力者たちにどんどん気絶させられていく仲間の屍(?)を越えていきながら、彼らは護るべきもののために戦う。
「何故キメラを倒さないのです!チョコは‥‥恋しい方に貰ってこそでしょう!」
槍の柄で襲いかかる村人をいなしながらアリエイルは叫ぶ。
「う、うるさい!俺たちにチョコをくれる存在なんて‥‥このキメラくらいしかいないんだよぉぉぉぉーー!」
村人たちの魂の叫びである。
「‥‥‥」
その様子を片目で見ながら、黙々と流れ弾から一般人を守る信人。隣にいたはずの焔はすでに女性陣の手に落ちていた。正確には自分から喜んで女性陣のところに飛んでいったというのが正しいのだが‥‥。
立花が殴って気絶させ、焔の身体を盾にして村人を抑えている。
「頑張ってくださいねー」
乱戦の中で盾にされ、焔のガスマスクが歪む歪む。しかし、ガスマスクの下の顔はどこか嬉しそうだ‥‥。
「あなた達も何をしているのです!」
村人たちを倒しながら、アリエイルが信人へと向かってきた。そのスピードと気迫から本気で向かってきていると分かる。
「ちっ‥‥。武器は向けられんな。だが、俺には鍛え抜かれたドMの根性がある!」
彼の信条は『殴る前に殴られろ』。剣を収めて攻撃に備える。
めきっ。
槍の柄が信人の顔面にぶちこまれた。なんだか嬉しそうである。
百合は、なんだか笑顔を浮かべている信人を盾にしつつ、村人の密集地帯を突破した。信人を適当に捨て、安全を確保しつつ二丁の銃でキメラを狙撃した。
「貴様が全ての原因だ!」
一気に全弾を撃ちつくす。チョコキメラにヒビが入った。
そこへ村人たちの隙を見てカルミアがチョコキメラに迫った。キメラの隣には、この乱戦にも関わらずまだチョコを食べている猛者がいた。
「わぁ〜美味しそうですね」
棒読みのカルミア。その形相は鬼のようである。
「あはは‥‥」
小太りの村人はなんとか笑顔を振り絞るのみ。カルミアも鬼の笑顔を返すと同時に、
「おりゃーー!」
アイスエッジとステュムの爪でざくざくげしげしとキメラを切り刻む。
「ああっ!」
「ぎゃははははです!天誅です〜!何?文句あっかです〜!!」
「やめて!やめてくれ!」
「俺たちの最後の希望が!」
「うわぁー!」
村人たちの悲痛な叫びを完全に無視して破壊活動に勤しむカルミアの姿がそこにあった。
‥‥数分後。残されていたのは無残にもバラバラにされたチョコキメラの残骸だけだった。
「ふぅふぅ‥‥何か、我を忘れてしまいましたわ」
おほほほほと高らかに笑うカルミア。髪のドリルが軽快な音を立てて回っている。
「悪は去った‥‥」
百合も満足気である。
「キメラ‥‥及び暴徒の鎮圧終了」
アリエイルが覚醒を解く。もうキメラにも村人たちに戦意はない。他の女性たちも次々に覚醒を解いた。
「ああ‥‥もうおしまいだ‥‥。俺たちはこれからどうやって生きてきたらいいんだ‥‥」
「神は俺たちを見放したか‥‥」
会長以下、他の村人たちも希望を失って途方に暮れている。そのタイミングを見計らってモルガナが声を張り上げる。
「だって!こんなキメラがいたら、貴方達にチョコをあげられないじゃない!」
村人たちがはっ、と我に返る。
「料理には魂を込める。料理に感動すれど、依存させるのは冒涜。故に我はキメラを排除した。思いを無視した貴様らとて共犯だ」
沙夜が厳しい口調で言う。
「それに、諸君はチョコを愛しているのだろう?高貴な私には、分かる。あの、至高の味。自分たちの手で作り上げたら、それは凄く素敵な事じゃないかね?」
百合も村人たちを諭すように言った。項垂れている村人たちに、アリエイルと立花がチョコを手渡していく。
「これでも食べて元気を出してください」
「おお‥‥ありがとう‥‥」
村人たちに笑顔が戻っていく。皆、大切なものが何か気付いたようだ。
「‥‥結局キメラは破壊されちまったな。こうもバラバラだと、研究所に持っていってもあまり意味がないな」
『そうだね。それに、結局チョコももらえなかったし』
ガスマスク越しにため息をつく焔。そこにカルミアの爪が突き刺さる。
『いって!』
「もう、何うだうだ言ってんのよ。だからチョコもらえないんでしょうが。‥‥あたしのあげるから諦めなさいよ。‥‥義、理、ですけど」
二人に手渡される板チョコ。
「‥‥と、特に‥‥深い意味はありません‥‥」
「ま、あなたたちもいろいろ頑張ったからね」
アリエイルと立花も二人にチョコを手渡した。
二人は顔を見合わせて、にやりと笑う。そして早速、チョコをいただいた。
「まぁキメラはやられちまったが、良い思いが出来たから、良いか」
『うん‥‥素晴らしい。皆‥‥良い味出してる。何と言うか‥‥この依頼に来て良かった。‥‥あ?何?‥‥チョコの話っすよ?』
この二人が思い出してたのは先ほどの戦闘のことだったのだが‥‥まぁいいか。