タイトル:スイカとスカートマスター:牧いをり

シナリオ形態: ショート
難易度: 易しい
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2008/09/29 01:09

●オープニング本文


 暑さも盛りを過ぎ、秋の足音が聞こえる。
 夏を好むものでなくとも言いようのないあえかな寂しさを覚える季節の変わり目――。
 心理学者・辺見紫乃は、とりたてて夏が好きだというわけではなかったが、やり残したままになっていることがひとつあり、何かにつけてそれを後悔していた。

 彼女の後悔の種。
 それは、スイカである。
 彼女は今夏、スイカを食べそびれたのだ。

 先日の実験分析が一通り終わったところで紫乃は椅子から立ち上がり、何気なく窓の外を見た。
 眼下には夏の間の暑気に負けたのかいささか元気のない芝生が広がっている。
 その緑を見るにつけ、真夏の勢いを失った陽光を受けるにつけ、とにかく思い浮かべるのはスイカである。
 なぜ園田に買いに行かせなかったのか。
 紫乃は自分のお人よしを嘆いていた。

 そんな風にぼんやりしていると、横手の道を研究生らしい女性が3人、おしゃべりに興じながら並んで歩いてきた。
 だが。
「ん‥‥?」
 楽しそうに歩いていく女性たちの背後に迫る怪しい影。
「あ、あれは」
 はっとして目を凝らすと、影は凄まじいスピードで3人に近づき、それっとスカートをまくりあげた。
 驚いてスカートを押さえる女子研究生。
 それで気が済んだのか、後ろに控えていた仲間の所へ「いやっほう!」とばかり駆け戻り、ハイタッチして喜んでいるその姿は‥‥。

「スイカだ! スイカがスカートめくりをしている。‥‥園田君!」

 大声で呼ばわると、奥から暑さのせいでかまた痩せてしまった園田守が現れた。
「どうしたんですか、先生」
「君、あれをどう思う。あれが、スカートめくりをしていたのだ」
「‥‥どれですか?」
 園田が窓に近づいて下を見ると、視界の隅を3人の女性が必死で駆け去っていった。
 だがそれよりも彼を驚かせたのは、今は3人(?)で輪になって踊っている、頭がスイカ、衣装は水着の――。
「キメラです! 先生、キメラですよ、あれ」
「いや、あれはスイカだ。私に食われに来たのだ」
「違いますって! 早く能力者の方々に来てもらわないと‥‥」
 園田が慌てて電話に向かうと、その脇を紫乃はかつかつとヒールを鳴らして通り過ぎていった。
「せ、先生! おとなしくしていてください!」
「問題ない。見られて困るものははいていない」
「何を言ってるんですか、せんせーい!」


〜園田守からULTに入った電話〜

「あ、いつもお世話になっております(これは反射的な挨拶である)、園田と申します。
 研究所敷地内にスイカのキメラが現れまして。あ、すいかん、というのですか。はあ。
 ええと、3人‥‥人、でいいのかな‥‥です。
 被害はまだ特にないようです。研究生を驚かせたぐらいで。あ、でも、先生がスカートめくりがどうとかって言ってました‥‥今は輪になって踊っています。
 すぐ来ていただけますか? はい、誰も近づかないようにすることは可能だと思います。
 ‥‥それからですね、なんだかうちの先生が‥‥ええと、食べる気満々みたいなんですけど、その、すいかんというのは食べられるのでしょうか? あ、はい。食べられるんですね。頭部は普通のスイカ‥‥あ、そうなんですね。わかりました。どうもありがとうございます。
 では、お待ちしておりますので。よろしくお願いいたします」

●参加者一覧

神崎・子虎(ga0513
15歳・♂・DF
常夜ケイ(ga4803
20歳・♀・BM
神森 静(ga5165
25歳・♀・EL
玖堂 鷹秀(ga5346
27歳・♂・ER
鷺宮・涼香(ga8192
20歳・♀・DF
桜塚杜 菊花(ga8970
26歳・♀・EL
紅月・焔(gb1386
27歳・♂・ER
小麟(gb1863
16歳・♀・DG

●リプレイ本文

●はじめ
 能力者たちはどこにどう気合いを入れていいものやらわからずに、とりあえず研究所までやってきた。
 移動の間に「スカートめくりをするキメラ」についてのんびりした話し合いがもたれた。

 曰く‥‥
「もう秋ですが‥‥夏の名残りという事かしら?」――神森 静(ga5165
「んふふ〜♪ スカートも下着もばっちり♪ さーて、張り切って囮行ってみよう〜☆」――神崎・子虎(ga0513
「しかしまあ、すいかんって何考えて生きてるんだろうね? だってアノ頭の中って果肉だよ?」――桜塚杜 菊花(ga8970
「スイカ、食べに来ました♪」――鷺宮・涼香(ga8192
「スカートめくりは犯罪アルネ。サクッと退治して過ぎ行く夏にさよならするアル」――小麟(gb1863
 その通りです。よい子は真似しないでね。
「スカート廃止は困りますね。体型が不安な人にズボンは酷でしょう」
 ところで、傭兵アイドルの常夜某さんに似ていますね?
「‥‥え? 似てるとよく言われますぅ」――常夜ケイ(ga4803
「なるほど‥‥退治依頼だったか‥‥それは知らなかった‥‥」――スカートめくり関連事項しか読んでいなかった、炎の煩悩力者こと紅月・焔(gb1386
「スカートめくりをするすいかん‥‥いやぁ、そろそろ秋ですねぇ‥‥」――玖堂 鷹秀(ga5346
 鷹秀にいたってはすでに理解を放棄して、高い空の遠くのほうを見つめていた。

 園田守は能力者たちを見つけると、急いで駆け寄ってきた。
「皆さん、お勤めご苦労様です。すいかんはあちらのほうに」
 園田が指をさす先で、すいかんたちは芝生の上に寝転んだり四つ葉のクローバーを探したり、思い思いにくつろいでいる。
「退屈しちゃってるみたいで‥‥どうもすみません」
 別に園田が謝ることではないのだが、かなり腰の低い人間である。
 後からやってきた辺見紫乃は、挨拶もなく唐突に言った。
「私はスイカを食べたい。もし可能であれば、頭を破壊しないでいただきたいのだが、できるだろうか?」
「やってみましょう」
「かたじけない」
 ついで、紫乃と園田は涼香に目を留めた。
「ああ、キミは」
「先生、園田さん。金魚すくいではお世話になりました」
「その節はどうも‥‥。スイミーは元気です」
 そうですか、と涼香はにっこり笑ったが、ふと首をかしげた。
「‥‥園田さん、ちょっとお痩せになりました?」
「えっ? ええ、まあ‥‥ぼく、夏は痩せるんです」
 紫乃本人の前で「先生にこき使われています」と言うわけにもいかず、園田は苦笑いした。

 すいかんたちののんびりした様子を見て、能力者たちも慌てず騒がずしっかり準備を整えた。
 特に囮役の4人‥‥子虎、ケイ、菊花、小麟はひらひらの準備に余念がない。

「あれ?」
 女装がすっかり板につきセーラー服姿も全く違和感のない子虎少年は、背後から視線を感じて振り返った。
「じーっ。監視中」
 女性に見えれば性別は関係ないらしく、焔は子虎が動けば膝上でふわりと揺れるスカートの裾に熱い視線を送った。
「‥‥焔さん、スカートの中見たいの?」
 子虎は可愛らしく小首をかしげ、微笑を浮かべた。
「見たいなら‥‥すいかん倒し終わったらじっくり見せてあげようか?」
 コ・ア・ク・マ。

 菊花は今回は走ることになるだろうということで、ロングブーツにニーソックス姿。そして生足派。
「しかし、コレで釣れるかなぁ‥‥釣れないと困るけど」
 チラッと端をめくった白いフトモモに、別のもの(おもに男性の視線)が釣れたというのは言わずもがな。

 ケイは激しい動きを予想して、屈伸したりアキレス腱を伸ばしたり、準備運動にいそしんでいた。
 動くたびに、スカートの裾はひらりひらりと舞い遊ぶ。
「それ、おらっ、よし!」
 焔はその動きに合わせて手をはたはたと扇ぎ、煩悩という名のそよ風を送っていた。

 小麟は、AUKVにスカートを巻きつけていた。
「これでよし、と」
「むむ‥‥その手があったか‥‥」
 こうなると、焔は遠慮なくぴらぴらとスカートをめくる。
「いやーん、めくっちゃ駄目アル!」
 小麟がAUKVを着たまま身をくねらせると、それはそれでなんとなく色っぽくなくもないような気がしないでもないようだった。

 今回の作戦は、その4人が自慢(?)のひらひらですいかんを引きつけ、ワンピースの上にレインコート(スイカ汁対策)を羽織った涼香、艶っぽいチャイナドレス姿の静、白衣の前をしっかり閉めている鷹秀、袴の裾を踏んづけそうな焔の4人ですいかんを血祭りに上げる、というものである。

 作戦開始直前、涼香は園田のほうへ戻ってきて、彼に赤い小さな巾着袋を手渡した。
「‥‥ごめんなさい。これ、預かって頂けます? とても大事なものが入っているので」
 真剣な顔で告げる涼香。
「そんな大切なものをぼくなんかが預かってもいいのでしょうか‥‥?」
「お願いしますね!」
「は、はい!」

●ひらひら
「では囮の皆さん、よろしくお願いしまーす」
 鷹秀が呼びかけると、4人は「はーい」と返事してすいかんにひらひら近づいていった。
 すいかんはふと顔を上げてそちらを見、1体また1体と立ち上がる。

 全部で3体。
 囮は4人。
 なんとなく微妙な空気。

 何はともあれ、すいかんの興味を引くことに成功した囮部隊は、さらにスカートの裾をなびかせた。
 阿吽の呼吸で4人がそれぞれ四方向へ散ると、すいかんもそれに続く。
 すいかんAが菊花、Bが小麟を追い、そしてもう一体は‥‥動かない。

 離れた所で様子を見ていた園田は首をひねった。
「先生、どうしたんでしょうか、あのスイカ‥‥」
「金縛りだろう。優柔不断なスイカのようだな」

 すいかんCは二つの魅力的なひらひらの間でうろうろと視線をさまよわせている。

「はーい、キメラさんここまでおいで♪ 手のなる方へ〜☆」
 子虎がパンパン、と手を叩くとすいかんCはそちらを向くが、ケイが負けじとチア並みのハイキックを披露すれば、そちらのほうに気を取られる。
 だが突如、まごついているすいかんCの視線の先で、フシギなことが起こった。
「きゃん♪ 捲くられちゃった〜☆」
 すいかんがまだ何もしていない先から、子虎のセーラー服のスカートがいや〜んと宙をそよいでいるではないか!
 下着は白と水色のストライプ。血なまぐさいというかスイカくさい戦場にあって、一服の清涼剤のごとき爽やかさ。
「ククク‥‥覚えたぞ‥‥貴様の下着‥‥」
「やだぁ、焔さんったら! もうちょっとで焔さんの首と胴体、切り離すところだったじゃないですかぁ!」
 おっかないことを言いながらも、どことなく嬉しそうな子虎。
 焔が「バンザーイ」とすいかんに向かって合図を送ると、すいかんCも「バンザーイ」ともろ手をあげて、心置きなくケイを追うことに決めた。

 すいかんAは、菊花のスカートの裾を追いかけていたが、裾はすんでのところでそよりと逃げていく。なかなか追いつかないので少しイラついてきたのか足を踏み鳴らした。
「んー? 怒ったか?」
 菊花が振り向くと、すいかんはいきなり水弾を吐き出してきた。
「!」
 間一髪で身をかわしたが、
「あっ」
 しまったと思ったときには、スカートがはらひれはれと舞い上がっていた。
 その下には、黒の総レースのごーじゃすせくすぃー下着。おおお、とどこからともなく賛嘆のどよめきが。
 何を隠そう、こういうこともあろうかと見せパン着用。その上ブラもお揃いだ。
「冥土の土産だ、くれてやる! よーく拝みやがったか? それじゃあそろそろ年貢の納め時だ、大人しく美味しく頂かれやがれ!」
 にっこり笑うや『菖蒲』で切りつける。さらにすいかんの背後へ忍び寄っていた涼香が、頭を破損しないように慎重に切り込んでいく。
 すいかんは、涼香のレインコートをめくっちゃえと手を伸ばすが、菊花が横手から攻撃をくわえた。
 続いて涼香が、すいかんAの首を一文字に斬りつけると、スイカがごろんと草間に転がった。

「ぎゃあ、アルファベットGの次!」
 と込み入った悲鳴を上げてケイはスカートを押さえた。ちなみに該当のアルファベットはアイより先にある。
 ケイは一度距離を取り、再び敵に接近し、すいかんの手が届く寸前にダッシュで逃げた。その先で絶妙の高さに足を上げていたが、だんだんヤケクソになってきて、半ベソでフレンチカンカンを踊り始めた。激しく揺れるスカート(らへん)を目で追うのは、もちろんすいかんだけではない。
「べ‥‥別にサービスしてる訳じゃないからねっ! これ水着ですから、残念! 男性陣涙目ざまぁw」
 彼女が水着なのは、下着のゴムの痕を残さないためである。グラビア撮影にひびかないよう、プロは仕事の前後は常に水着をつけているのだ。これぞアイドル、プロの心がけ。
 でも、ホントはね。
(「見えても別に構いませんが‥‥布より私の心を好きになって欲しいな‥‥」)
 傭兵アイドル、純情可憐な心の声。
 それはともかく、ツンデレしてみるとそれで何かスイッチが入ったのか、とうとう開き直って、瞬速縮地を発動してスカートがバサバサ風に鳴るぐらいまで激しく動いて見せた。
 すいかんはケイのスピードについていけず、うろうろしている。
 視線をさまよわせるうちに、すいかんCは静のチャイナドレスに目をつけ、まさに一陣の風と化してばっさりとドレスをめくりあげた。
 静さんの今日の下着はフロントオープンのTバック。色は黒。ガーターベルトとガーターストッキングはこれまた黒で、白い肌がなおさらくっきりと悩ましいほどにマブシイです。
「え? ちょっと」
 静は真っ赤になって慌てて戻し、あたふたと近くに投げられそうな物を探した。手に触れたものをむんずと掴むと、それは焔の頭髪だった。
「あ、ドウモ〜」
「もうっ、何をやっているんですか!」
 めっと焔のほうをにらんでおいて、すいかんのほうを振り返ると同時に髪が銀色に変化していく。
「フフ‥‥女の敵。相応のきついお仕置きをしてやる。覚悟しろよ」
 凍りつくような微笑を浮かべて蛍火を閃かせると、すいかんの腕の辺りがすっぱり裂けた。
「助太刀っ☆」
 子虎は『急所突き』、『豪破斬撃』、『流し斬り』を発動し、そ〜れっと大剣でなぎ払うと、スイカがころんと転がった。

 焔が囮役の下着を記憶していた頃、もう一人、皆の下着をチェックしていた人物がいる。
(「わーお、みんな可愛いおパンツちゃんアル! でも、ボクだって負けてないアル。ボクのは、電離放射線マーク入りの小さいTバックのおパンツちゃんアル!」)
 スカート姿のAUKVの装甲の内側、こっそりオッサンのように喜んでいた小麟は、一瞬すいかんBから目を離した。
 あっと思ったときには、AUKVのスカートは勢いよくめくりあげられている。
「アイヤー!」
 ところがそこですいかんが目にしたものは、AUKVのおマタに悩ましく挟まれた小銃『バロック』。
 びっくりしてすいかんBはAUKVのボディーに拳の一撃をくわえたが、小麟はひるまず、
「デットエンドちゃんアルネ!」
 素早くバロックを構えて、体を狙い撃つ。至近距離から銃撃を受け、すいかんBは後方に吹き飛ばされた。
 そこへ鷹秀が進み出て、エネルギーガンで狙いをつける。

 ところがすいかんBは、ここで最後の力をあらぬ方向へ振り絞った。


 ぶわっさぁ〜


 音を立てて舞い上がる白衣。
 覚醒を果たし、全身に蒼い雷光のビジョンをまとった鷹秀の白衣の下から現れたのは、青地に黒い虎柄のふんどし一丁姿!

「日本男児の心意気! とくと目に焼き付けろやぁ!!!」

 バリバリッ (みんなが聞いたような気がした雷の音)
 パチパチッ (みんなのまばたきの音)

 その場にいた全員の目が点になった。

 ‥‥
 ‥‥‥

 鷹秀はよいしょと白衣の前を合わせた。

 ‥‥‥‥時は動き出す。

「い、インパクトでも負けたアル‥‥」
 半ば呆然としつつ、小麟はイアリスでスイカを斬り落とした。

●スイカパーティ
「能力者諸君、感謝する。これでスイカを食べそびれずにすむ」
 紫乃は感動した様子で言った。
「3玉もあることだし、キミたちも一緒にどうかな?」
 というわけで、能力者たちは園田がスイカを切り分けるのを、研究室で休憩しながら待つことにした。

「お待たせしました」
 園田がスイカを大皿に盛って現れた。
「今年最後のスイカかな〜? いただきま〜す♪」
 子虎は早速スイカにかぶりつくが、ふとスイカを見つめ、ぼそりと、
「でもこれ‥‥よく考えたらすいかんの生首なんだよね‥‥」
 ケイもスイカを前に、「グロ嫌〜い」と顔をしかめる。
「ま、頭だと思うとキモイけどさ、普通のスイカだと思えば、美味しいほうなんじゃない?」
 菊花が明るく言うと、「そうですねっ」と子虎も応じてまた一口スイカをかじり、ケイも少しなめてみる。
「ん‥‥普通のスイカ、かも」

「皆さん、よく食欲ありますね」
 静は言いながらかいがいしくお茶を出す。
「これはどうも。‥‥美人にいれてもらうと、安物の茶でも味が違うな」
 紫乃はご満悦である。
「キミはスイカは食べないのか?」
「ええ、あまり好きじゃないので‥‥」
「美人なのにもったいない」
 わけのわからないことを言って、紫乃はまたお茶をすすった。
 その隣で、鷹秀はサイエンティストらしくスイカの糖度を測っていた。
 焔は一玉切らずにのけておいたスイカに穴を開け、ストローを突き刺している。

「園田君、塩」
「そんなものありませんよ‥‥」
「こんな事もあろうかと!」
 小麟はちょっと変な所から小瓶を取り出した。ほんのり温まっているが、卓上サイズの食塩である。
「む、用意がいいな」
「スイカには塩と決まっているアル」
「あ、私も」
 涼香は園田に預けていた袋の中身を皆の前に披露した。
「宝物の『my 天然塩』!」
「塩派の仲間アル!」
 二人で「ねーっ」と笑い合うと、涼香は天然塩をぱらりとかけた。
「これがまた、凄く美味しいんだってば〜! よろしかったら、皆さんもいかがですか♪」

「それにしてもさー、夏に『スイカ・ん』が出たから、秋には栗のキメラが出たりして」
 菊花が言うと、
「栗もいいが、イモもいい」
 スイカの種をふっと吹き出して紫乃が応じる。
「イモ型か〜」
「ナスも好きだ」
「ナス型キメラねぇ」
「いっそ麻婆ナス型でもいい」
 だんだん想像が難しくなってきた。
「ナスは天ぷらでしょ、先生」
「む、それも捨てがたいな」
「焼きナス!」
「田楽!」

 いつの間にかナス論議になったが、そのうちにスイカが終了し、スイカパーティーもお開きとなった。

「今日は本当にありがとうございました。皆さん、どうぞお気をつけて」
 さようならと手を振って、能力者たちは研究所を後にした。

 なお、皆が口々にすいかんの味を評価する中、焔は一人お土産というかノルマのスイカを抱き、口にストローをくわえたまま高速艇に乗り込んだのであった。


<了>