タイトル:学食を取り戻せ!マスター:間宮邦彦

シナリオ形態: ショート
難易度: 易しい
参加人数: 4 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2009/08/25 00:22

●オープニング本文


 やきそばパン──
 人は、その甘美なる響きに魅了されてやまない。

 やきそばパン──
 人は、一度その類稀なる美味の虜になれば、永遠に抜け出せはしない。

 やきそばパン──
 それは、人類の叡智の結晶とも言える、至上至宝至高の絶品料理。

 やきそばパン‥‥やきそばパン‥‥やきそばパン‥‥

 このように、ただでさえ比類なき逸品であるやきそばパンだが、その日、学食にて特別なやきそばパンが限定発売される告知がなされていた。
 購買では用意できない、焼きたてのパンとヤキソバで作るという代物だ。
 想像してみて欲しい。
 匂い立つホクホクのコッペパン。ふわふわの表面にすっ‥‥と切れ目を入れ、バターを薄く塗り込む。じわり‥‥と溶け込むバター。
 そこへ真打ち、やきそばの登場だ。
 鉄板で焼き上げられたばかりのアイツからは、芳しい湯気が立ち上っている。カップやきそばとは違う、本来の姿。それをそっと抱き上げて、パンの切れ目へと優しく導く。
 ふかふかのパンのベッドに、お姫様よろしく横たえられるやきそば。
 美しい白と茶色のコントラスト。
 これは正に垂涎ものである。
 ではこれで完成か?
 ──否。
 ここからはお客の出番である。
 用意されたトッピングは、紅しょうが、マヨネーズ、青のり、パセリ。定番だが、欠かすことのできない脇役たち。
 これらをお客が自由に乗せることができるのだ。
 マヨラーは掛け布団だとばかりに、やきそばをマヨネーズで埋め尽くすもよし。食後のウケを取りたければ、青のりを目いっぱいに散らすもよし。
 もはや文句のつけようなどないだろう。
 完璧×完璧=無敵の公式が、今ここに成り立った。

 しかし、しかししかししかし、世の中とは何が起こるかわからないもの。
 お昼時からの販売開始ということで、少し早めに集まった人達で学食は大いに賑わっていた──かのように見えて、そうではなかった。
 あろうことか学食の扉が閉じられ、研究員と思しき白衣の男達が立ち塞がっているではないか。客は皆、学食から締め出されていたのだ。
 話を聞いてみると、実験用キメラが逃げ込んだとかで、学食を封鎖中とのことらしい。
 当然、非難の声は凄まじかった。その剣幕たるや親の敵でも討とうかという勢いだったが、白衣の男達は怯んではいるものの引く様子は全くない。
 このままでは昼食が食べられない。
 というか限定やきそばパンが食べられない‥‥!

 誰かがなんとかしなければ!
 早くなんとかしなければ!

 その『誰か』になるべく、行動を起こした者達がいる。
 目的は同じではないかもしれない。
 でも思いはひとつだろう。
 ──平和な学食を取り戻さなければ!
 決意を胸に、彼らは話を聞くべく、人を掻き分けて白衣の男達の元へと向かった。

●参加者一覧

弓亜 石榴(ga0468
19歳・♀・GP
新条 拓那(ga1294
27歳・♂・PN
石田 陽兵(gb5628
20歳・♂・PN
シャイア・バレット(gb7664
21歳・♀・SF

●リプレイ本文

「お待たせっ」
 何処かへ行っていた弓亜 石榴(ga0468)が、戻ってきた時には制服姿になっていた。
 石榴が不在の間に情報を集めて回っていた新条 拓那(ga1294)は、不思議そうに「どうしたの?」と問う。
「ちょっと借りてきたの」
 照れくさそうに可愛らしく微笑む石榴。
 制服の上からでも分かる豊満なバストと、短いスカートから伸びる白い脚の健康的な魅力に、石田 陽兵(gb5628)と拓那は目のやり場に困った。

「てかさ、キメラを素手で捕まえるのって難しいよね」
 眉をひそめて石榴が呟く。
「ちょっと罠を仕掛けてみたいな」
 気を取り直した声で拓那が告げると、
「OK。じゃあ俺たちで注意を引き付きますね」
 陽兵は親指を立ててにこやかに答えた。
「ふふ、それなら任せて。お猿さんたちの視線、釘付けにしちゃう♪」
 言うや否や、シャイア・バレット(gb7664)はおもむろに制服を脱ぎだした。
 慌てる一同。周囲からは歓声と驚きの声が上がる。
 制服の下は水着姿だったが、白いビキニでおまけにTバックという格好は、抜群に魅惑的なスタイルと相まって、キメラよりも先に人間の視線を釘付けにしていた。
「制服が汚されちゃったら困るものね」
 そう言いながら微笑むシャイア。
 そういう問題でもない気がするが‥‥
 それから彼女はふとももに電磁棒を装着したのだが、それを見た研究員が「武器は‥‥」と咎めた。
「これで攻撃したりはしないから安心して♪」
 じゃあ何に使うんだ、と思った研究員だったが、彼女の蠱惑的な肢体を前に何も言えずに引っ込んだ。

「準備OKですね。キメラ捕獲作戦、開始といきましょうか」
「キメラ如きが学生の美食の頂点たるヤキソバパンを独占するとは言語道断だからな。何としても我らが手の内に取り戻そう!」
 陽兵の言葉を受けて、力強く宣言する拓那。すると突然、陽兵が遠い目をした。
 思わずその視線の先を見る一同だが、特になにもない。なんだ?と思ったところ、
「俺、この依頼が成功したら‥‥ヤキソバパン食うんだ‥‥」
「いやいやいやいや、それ失敗フラグだから!」
 拓那は柄にもなくツッコミを入れていた。
「あはは、すいません。改めて行くとしますか‥‥あれ? 弓亜さん?」
 学食の扉に手を掛けたところで、石榴が依頼人と話していることに気付く。
「あ、大丈夫。行けるよ」
「なんかありました?」
「んーん、個人的なお話」
 そう言って、やたらと明るい笑みを浮かべる石榴。
 含みを感じないでもなかったが、まぁいいか、と陽兵は気にしないことにした。
 再び気持ちを改め直して、四人は学食内部へと踏み込んだ。

 中は当然の如く荒らされていた。
 引っ繰り返ったテーブルや椅子、観葉植物。食い散らかさせれた食材や容器の類があちこちに転がっている。
 目標であるキメラ達は、楽しげに鳴きながら飛び回り、手近な物を投げ合って遊んでいた。だが四人の姿を見るや否や、一転して不愉快そうに鳴き、手当たり次第に物を投げ付けてきた。
「きゃっ」
 と可愛く悲鳴を上げ、咄嗟に拓那に抱きつく石榴。
「あ、ごめんなさい‥‥」
「い、いや、気にしないで」
 小動物のように震えながら上目遣いで見つめてくる石榴に、拓那は反応に困って照れてしまった。
 取り合えず四人は物陰に身を隠すと、小声で言葉を交し合った。
「俺は厨房で罠の準備するから、その間、奴らのことは任せるね」
 そう告げて、拓那はキメラに見つからないよう素早く厨房へと移動する。
「私も簡単な罠試してみよっかなー」
 拓那の背を見送った後、お誂え向きに転がっているバナナと鍋と麺棒を使い、罠の設置に取り掛かる石榴。
「お、輪ゴムの箱が落ちてる。割り箸もあるし、輪ゴム鉄砲でも作るか」
 材料を拾い集めた陽兵は、早速制作に取り掛かった。
 となれば後は、シャイアがキメラたちを引き付けるしかない。
「んふふ。低級キメラの蝙蝠ザルさん達‥‥お姉さんがタップリと調教してあげるから、かかってきなさい♪」
 彼女は厨房の反対側まで移動すると、立ち上がるなり、腰に手を当ててキメラ達を艶かしい仕草で手招きした。
 三匹の意識は一斉にシャイアの方へと向けられ、投擲の矛先は彼女へと集中した。ナイフやら食器やら招き猫やらオタマやらが飛んでくるが、
「ふふふ、そんなものは当たらないわよ?」
 余裕たっぷりの笑みを浮かべ、シャイアはそれらの多種多様な飛来物を、踊るように軽やかに避けた。

 シャイアがキメラを手玉に取っている間に、陽兵は手早く部品を組み上げていた。
「よし、完成! ちょっと脆いかもしれないけど、問題ないだろ」
 一応人数分作っておいたので、取り合えず石榴に呼び掛けて渡しておく。
 早速輪ゴムを装填し、テーブルの陰からキメラを狙う。
「くらえっ」
 掛け声と共に発射された輪ゴムは、見事にキメラに命中した。ムキャーッ、と苛立ちの鳴き声を上げて、キメラはリンゴやら包丁やらトレイやらを投げてくる。
 投げるものがなくなった一瞬の隙を陽兵が狙うと、キメラは逃げるように素早く飛び回るが、
「ふふん、逃がさんよ」
 にやりと微笑んだ陽兵は『鋭覚狙撃』を使用し、キメラの鼻っ柱に輪ゴムを撃ち込む。
 ただでさえ赤い顔をキメラは益々真っ赤にして怒り、今度は直接陽平に掴みかかろうと突撃してきた。
 そこで慌てる彼ではない。冷静に、輪ゴム鉄砲に幾重にもゴムを素早く掛ける。
 ショットガンバージョンというわけだ。
 ゴムを掛け終わるとテーブルの陰から身を乗り出し、突撃してくるキメラに真っ向から輪ゴム鉄砲を突きつけ、
「これならッ、どぉだぁ!」
 気合いと共に引き金を引いた、その時、
「──がはッ!」
 銃身がゴムの反動に耐え切れず暴発、分解し、自分の顔に当たってしまった。
 その一部始終を見たキメラは怒りが何処かへ行ってしまったのか、呆れたような表情で「‥‥ウキッ」と言うと、陽兵に背を向けて飛んでいったのだった。

 時を同じくして石榴の方はと言えば、鍋と麺棒の立たせ方に集中していたところ、
「きゃっ」
 飛んできたお椀が鍋に当たって、折角立てかけていた物が台無しにされてしまった。
「もぉっ、なによっ」
 見れば、キメラがいかにも馬鹿にしたような顔で、肩を竦めるジェスチャーをしていた。そんなネズミ騙しに引っかかると思っているのか、とでも言いたげに見える。
「ふ、ふふふ‥‥」
 引きつり笑いを浮かべながら、懸命に怒りを抑え付ける石榴。
 まだ次の、本命の作戦がある。ここで怒りを露わにしてしまっては台無しだ。
 そこへ再び、キメラが物を投げ付けてきた。今度はどんぶりだったが、やけに緩い勢いだ。要するに馬鹿にしているということなのだろう。
 しかし石榴は、これに対して大袈裟な悲鳴を上げて倒れながら避けて見せた。
「やだっ、怖い‥‥」
 予想外の反応に、怪訝そうな表情をするキメラ。もう一度てきとうな物を放り投げてみても、少女は怯えた様子で身を縮こまらせるだけだ。
 にやり、と口を歪ませ、キメラは「ウキキーッ」と愉快そうに鳴いて石榴のところへ飛んで行った。抵抗しそうにない相手には、直接悪戯してやろうということなのだろう。
 毛むくじゃらの手が、石榴の色鮮やかな髪の毛へ伸びてくる。
「ウキッ?!」
 しかしその手が届くことはなく、逆に少女に腕を鷲掴みにされていた。
「ククククク‥‥かかったな?」
 先程までの気弱な表情から一変して、勝ち誇った声で石榴は言った。
 狼狽の悲鳴を上げて、拘束から逃げ出そうと暴れるキメラを、石榴は巧みな動きで押さえ込む。
「痛い目みたくなかったら静かにしてな!」
 底冷えするドスの利いた口調に、キメラはガタガタと震えながら弱弱しく鳴いたのだった。

 一方で拓那は、罠を仕掛けるために厨房に忍び込んでいた。
 シャイアが良い位置でキメラを引き付けているお陰で、作業が楽に行えそうだ。
 拓那は大型の冷蔵庫に目を留めると、近寄って中を確かめる。予想通り、キメラを閉じ込めるには手頃なサイズだ。
 しかし些か内容物が多い。持参の食品を仕掛けてキメラを誘き寄せるつもりだったが、あまり置けそうになかった。
 取り合えず一番分かりやすい位置にイチゴとぶどうジュースを設置する。猿を誘き寄せるには果物の香りが一番だろう。それからついでとばかりに発泡酒も置いておいた。酔えばめっけものというわけだ。
「キメラって言ったって猿知恵だろ? 知恵比べで負けるはずがないんだ。ふふん、人間様舐めんな〜?」
 不敵に呟き、拓那は厨房内で拾ってきたダンボールを半ばまで被る。完全に身を隠す前に足元に転がっていたタワシを拾い、わざと音を立てるように流し台のところへ放り込んでから、素早くダンボールの中へと身を潜めた。
 ダンボールの穴から外の様子を窺うと、丁度、タワシが立てた音に気を取られたキメラが飛んできたところだった。
 拓那には判らないことだが、先程まで陽兵が相手をしていたキメラである。
 キメラはしばし辺りを見回していたが、やがて開け放たれた冷蔵庫に気付くと、嬉しそうに鳴いて翼を羽ばたかせた。
(「来い、来い‥‥」)
 近付いてきたキメラは、まず発泡酒に目をつけた。不思議そうに匂いを嗅いだ後、ちょっとだけ口を付けるが、どうやら舌に合わないようで、顔をしかめて投げ捨ててしまった。
 次に冷蔵庫の中にあるイチゴとぶどうジュースに気付き、今度は警戒心もなく食べ始めた。味も気に入ったようで、喜びの声を上げながら次々と平らげ、飲み干す。
 全て食べ終えても物足りなかったようで、キメラはまだ奥にあるんじゃないかと、冷蔵庫の中に入って行った。
 その瞬間、待ってましたとばかりに拓那が『瞬天速』を使って飛び出した。
 キメラが物音に気付き振り向くも既に遅い。
 勢い良く扉を閉めた拓那の、
「ふっ、所詮猿よのう」
 という言葉通り、キメラは敢え無く御用となった。

 飛来したオリーブオイルの容器を、シャイアは内心で待ってました、と呟き、避けることなく敢えて受けた。
 バシャッ、と中身が飛び散り、彼女の全身が油まみれになってしまう。
「ぁんっ!」
 と妙に色っぽい悲鳴を上げて、ぺたんと転ぶシャイア。
 するとキメラはここぞとばかりに、手当たり次第に物を投げてきた。その種類が妙に液状のものに偏っているのは、ただの偶然でしかないだろう。
 牛乳、生クリーム、ミネラルウォーター、みりん、しょうゆエトセトラエトセトラ‥‥
 それらをダメージを受けないように、シャイアは上手いこと受け続ける。
「あぁんもぅ‥‥こんなにトッピングされちゃったわ‥‥」
 様々な液状の物に汚されながら、何故かちょっと陶酔したような表情のシャイア。
 キメラもなにやら大興奮で、手を叩いて喜んでいる。
 その様子を見て、彼女はきらりと目を光らせた。もがく仕草の中で、ついうっかりという感じを装い、電磁棒をキメラの方に落とす。
「あぁ、しまったわ!」
 何故か昂りまくっているキメラは、そのわざとらしさに気付かない。転がってきた電磁棒を拾うと、倒れているシャイアの元へ飛んできた。下卑た笑みを浮かべ、下品な鳴き声で「ムキキキキキ」と笑うキメラは、手にした電磁棒で床に伏すシャイアのお尻をバッチンバッチンと叩き始める。
「ぁうぅんッ! だめよっ、やめてっ」
 懇願するシャイアの声も、キメラを増長させるだけだ。やがてキメラは電磁棒のスイッチに気付いた。猿とは元来好奇心旺盛な生き物。気になった物事は即試す。
 カチリ、とスイッチを押した瞬間、電磁棒から迸った電流がシャイアを苛む。
「はぅあぁぁぅッ!」
 全身を駆け抜けた電流に、悶絶するシャイア。
 電流に驚いて電磁棒から手を離したキメラだったが、その仕掛けとシャイアの反応が面白かったのか、再び電磁棒を手に取ろうとしたところ、
「そこまでよ!」
 石榴の凛々しい声がキメラの動きを止めた。

 石榴はふん捕まえたキメラの耳に、輪ゴム鉄砲を突きつけていた。
「動くんじゃないよ! それ以上動いたら、コイツの耳に延々と輪ゴムを撃ちまくるぜ!」
 愕然とした表情を見せたキメラは、拾いかけた電磁棒から手を離した。ウキだのキキだの言っているが、生憎とこっちにはあっちの言っていることがわからない。
 しかし考えてみれば、猿キメラがこっちの言うことをなんとなく分かるのなら、頭脳的には猿キメラの方が‥‥
 それはさておき。
 猿質を取られてうろたえるキメラの後ろに、こっそりと忍び寄る人影があった。
 陽兵だ。
 彼はキメラがシャイアに夢中になっている隙に背後を取って、飛び掛る機会を窺っていた。
 断じて彼女の痴態に目を奪われていたわけではない。これは彼の名誉の為に、記しておかねばならないだろう。片方の鼻からちょっと血が垂れているのはご愛嬌ということで、陽兵は隙だらけのキメラの背中へ飛び掛った。
 奇襲を受けたキメラは、あっさりと押さえ込まれてしまった。
「ふっ、召し捕ったり」
 暴れてみるものの大した力もないため、キメラはすぐに観念したような声で鳴いて、ぱたりと大人しくなった。

 無事にキメラを捕獲し終え、居合わせた全員で食堂の掃除もし終えた頃、四人は厨房のおばちゃんに呼ばれた。
「あんたらが一番の立役者なんだからさ、まずあんたらの注文を受けるよ」
 子供みたいに歓声を上げる四人をにこにこと眺めながら、おばちゃんは「なにがいいんだい?」と訊く。
「私は勿論焼きソバパン! 出来るだけ沢山欲しいなっ」
「俺も当然ヤキソバパン。学生ん時から大好きだったからね」
「俺もヤキソバパンお願いします。あ、テイクアウト‥‥はダメですか。残念」
「私も同じ物をお願いするわ♪」
 石榴、拓那、陽兵、シャイアが口々にヤキソバパンを挙げたことで、おばちゃんは少々面食らったようだったがすぐに豪快に笑って「あいよ!」と答えて、早速料理を始めた。
 待つこと数分、出来立てのコッペパン(掃除中に焼いていた)に作りたてのヤキソバを挟んだ、究極の逸品が一同の前に並べられた。
 石榴はトッピングなしで、素のままの味わいを存分に楽しむ。ちなみに彼女の前には六個ほど用意されているが、全部食べられるのだろうか?
 拓那はごく一般的な紅生姜のトッピングで、その味を堪能した。
 陽兵は一通りのトッピングを程ほどに添えて、舌鼓を打つ。
 シャイアは──ちなみに食堂の掃除の間にシャワーと着替えを済ませ、今は制服姿──マヨネーズ以外のトッピングを施し、その美味にやはりちょっと色っぽく身悶えしていた。
 働いて疲れた上に空腹というだけでも最高の調味料だと言うのに、そこで食べるのがヤキソバパンとくれば、これに勝る幸せなど世の中にはないだろう。
 皆満面の笑みで絶賛の言葉を連呼しながら、軽々と平らげていく。
 こうして、平和を取り戻した学食の、和やかな昼下がりが過ぎていった──