●リプレイ本文
●日本ふしぎ発見!
「コレがニホン文化の真髄と言われるヲタク文化の結晶ですのね。文化を維持するのはとても重要な事ですわね」
「いや、その認識は‥‥日本人として訂正したい」
同人グッズの確認をして納得をするエリザ(
gb3560)に比企岩十郎(
ga4886)は苦笑しながらの突っ込みをいれた。
「なんと言うか、バグアは本当に何を考えているんでしょうね‥‥キメラによる同人狩りだなんて」
加賀 弓(
ga8749)も不思議そうな顔で届け物を座席に固定していく。
「タワーオブマーセナリーもフォーゲルマイスターもシーヴが関わってきたものです。どちらも多くの人に触れさせたいでやがるです」
依頼主でもある代表者の角に任せろとばかりにシーヴ・フェルセン(
ga5638)は胸をドンと叩いた。
「そそ、大和に乗ったつもりでいてよねー。ニシシ、無事に届けたら完全版をもらっちゃうよ?」
「冗談でも沈む船の名前は言わないでくださいよぉ‥‥無事に届けましたら報酬とは別に一つ差し上げるということで他のサークルさんたちとも話しつけましたから大丈夫です」
顔色が大分良くなった角が不穏な事を言い出す葵 コハル(
ga3897)を不安げに見つめる。
「にゃはは♪ 大丈夫だから、それじゃあ『宝モノ』をもって出発だよー」
「「頼んだよー、湖春たーん、フェルたーん」」
ジーザリオに乗り込んだコハル達に送り出すヲタク達から力強くも野太い声援が送られた。
「フェルたんいうな‥‥です」
「ほ、ほら、行きましょう。シーヴさんは運転手ですよね?」
ピシっと固まり、黒いオーラをふっと沸き立たせるシーヴを弓が制して一行はアスタリスク大阪を目指す。
4台のジーザリオに収めきれない夢を積んで‥‥。
●ヤマンババンババン
「さて、少々道は険しいが一気に行こう。皆準備はいいか?」
角達から聞いていたヤマンバキメラの出るといわれる山道へさしかかると白鐘剣一郎(
ga0184)が無線機を使い後続車両へ連絡を行う。
『こちらは問題なし、いつでも進んでくれ』
最後尾を走るホアキン・デ・ラ・ロサ(
ga2416)からの返事を受け取ると剣一郎の車は進みだした。
「渋谷産と聞いていたが、こんな山にでるようでは本当に山姥だな」
うっそうとした木々の中にある山道を進みながら剣一郎は周囲に気を配る。
ガサッと緑がゆれた。
『お客さんのようだね。ちょっと戦闘するには地形が複雑だけれど、何とかなるかな?』
気楽な様子さえ見せる周防 誠(
ga7131)の通信が流れ終わると茂みから人影が飛び出してきた。
金色や、茶色、ピンクなどのカラーをした髪に黒く焼けた肌。
まつげが妙に長く、足は絶滅したといわれる女子高生の装備品ルーズソックスを履いていた。
『BLチョーヤバーイ』
『マジムカツクー』
『チョベリバー』
敵は3体いて、意味不明な言葉を話し出す。
「本当に渋谷系ヤマンバか‥‥迎撃は任せたぞ。エリザ」
『了解です。現代女学生のほどを見せて差し上げますわ』
何か方向の違った対抗心を燃やすエリザがジーザリオの後部座席から飛び出してヤマンバキメラへアーチェリーボウを放つ。
ヒュンと飛んだ矢はヤマンバキメラの顔に刺さる。
『エムケェーファイブ!』
「Mk?? まったく理解できませんわ」
「本当に理解に苦しみますよ。轢いてしまいましょう」
意味不明な言葉に首をかしげるエリザにブゥゥンと音を鳴らして同意した周防がジーザリオにて飛び掛ろうとしてきたヤマンバキメラをはじき飛ばした。
フォースフィールドとぶつかりあったためガシャァンと大きな音と共にジーザリオのフレームがひしゃげる。
勢いよくぶつけてヤマンバキメラもはじいたが、何度もやれば車の方が先に壊れてしまいそうだった。
「あらま、まいったね。荷物の安全のためにコレっきりにしますか」
『周防。後ろがつっかえるから先にいってくれ』
停車して後ろに積んだ荷物を周防が確認しているとホアキンからの無線が届く。
「了解、了解」
「我々を待つ奴らがいるのだ、正確には荷物を待っている奴等がな。急ごう」
弾き飛ばしたキメラに真デヴァステイターを岩十郎は撃ち込み出した。
少ない数のキメラから逃げるように4台のジーザリオは山道を走りぬける。
『ビィィエェェェルッ!』
ヤマンバキメラが突如叫びだし、匂いを感じたのかホアキンの車にスカートを翻し、毛糸のパンツを見せて走りよってきた。
「キメラの趣味っていったい‥‥殺すよりも逃げるのが先だ」
ため息をつき、ホアキンは助手席のコハルと共に拳銃で射撃をしながら逃げ出すのだった。
●ひそかな疑問
♪〜〜
僕らは君の事守るべく楯になり 護り続けるよ
大切な絆を 万難排す守護の楯に
僕は愛しい君の楯になるよ
〜〜♪
「今のは新曲でやがるですか?」
無事に第一便を届け終え、まだある荷物を受け取りに行く帰り道。
弓の口ずさむ歌にシーヴが興味をしめした。
「はい、『イージス』という名前にしようかと思っているところです」
「ギリシャ神話にでてきたアイギスの英語よみでやがるですね」
「ええ、ですが表記は『Easy’s』とするつもりです」
窓に息を吹きかけて曇らせたあと弓は指でスペルを描く。
「ちょっとしたことが守る力になるとか、そんな意味でやがるですか‥‥」
「まだ、途中までしかできてないですから、どうなるかはわかりませんよ」
感心するシーヴに弓ははにかんだ笑顔を見せた。
「話はかわるですが‥‥18禁同人誌ってなんでやがるですか?」
「ええっと、同人誌自体も私は良くわからないので‥‥」
小首をかしげながら聞いてくるシーヴにどういえばいいかと迷いつつ弓は答えた。
「だけど、あの『王まねじゃ 危機一髪』はモデル‥‥でやがるですよね?」
「表紙をみたかぎりは‥‥でしたね」
しばし、訪れる沈黙。
中身をはっきりさせるためにもシーヴは急いで仕事を終わらせることを強く誓った。
●ヤマンバ狩り
「そろそろ一回目で敵と遭遇したエリアに入る。各自気をつけるように」
『もちろん、そのつもりだ。あとどれだけいるかわからないが、安全第一で挑もうか』
最後尾にいるホアキンが、最前列を走る剣一郎に向けて通信を行った。
一回目で多くの荷物を輸送できたため、二回目は中央の2台に荷物を積み、最前列と最後尾は護衛という流れである。
「周防は気をつけてくれ。ヤマンバキメラはBLを所望らしい」
『まいったね。後部座席に二つそろって縛り付けてはいるけれど、敵の注意がそれで引けるなら利用するしかないね』
『次は轢かないように頼むぞ。荷物もそうだが、ジーザリオ自身も心配だ』
助手席に座っているであろう比企の声も無線機を通じてホアキンの耳に聞こえてきた。
『前方から3体来たぞ。カラーは赤、青、黄色だ』
「信号機のつもりなのかな?」
剣一郎からの通信にコハルは首をかしげてホアキンに同意を求める。
「さぁ、どうだろう‥‥と、こちらの裏にも来ているようだ。髪が同じカラーリングだな」
バックミラーに移る三体の姿を確認したホアキンがリアブレーキをかけた。
狭い道なため、車が立ち往生すれば障害物になる。
それを見越しての作戦だ。
「それじゃあ、いっちょブレザー女子高生とSMGってとこでいきますか。寄らば撃つ、寄らば撃つぞよ!」
ジーザリオの屋根の上へあがったコハルがヤマンバキメラに対して弾幕を張ってジーザリオへの接近を塞ぐ。
ダダダダと飛ぶ弾丸をヤマンバキメラたちはひょいひょいと避けてジーザリオを飛び越えようと跳躍した。
「はじめに遭遇したのよりちょっとはやる相手のようだね。そうこなくっちゃね!」
コハルがにやりと笑いSMGをさげ、リセルシールドと蛍火へ武器を持ち替える。
背中に背負った蛍火を引き抜くとヤマンバの攻撃を受け止めつつ『急所突き』を繰り出す。
『ギャヒィィィィ!』
色黒の肌に赤みを生やしながら、黄髪のヤマンバキメラは地面に転がりだす。
「キメラでも血は赤いか‥‥いや、そんなことを気にしている場合でもないな」
運転席にいたホアキンが窓から身を乗り出してヤマンバキメラに対して狙い済ました射撃を行った。
「敵を3体食い止めている。終わり次第追うので、すまないがそちらはそちらで対処をしてくれ」
『ああ、キメラなんぞに渡すわけにはいかん』
無線機に向かって話すホアキンへ比企の力強い返事が返ってくる。
「自分の作品が世に出せない悔しさを味あわせたくないもんね。がんばろう」
比企の言葉にコハルも元気付けられ、ヤマンバキメラを食い止めようとリセルシールドを構えた。
●ヤマンバと獅子
「やはり、何か匂いがでていたりするのだろうか」
先頭を走る剣一郎とエリザのジーザリオがヤマンバキメラを蹴散らし手進む後を周防と比企の車が追いかけていく。
だが、一度はじき出されたキメラたちは比企たちの車を狙っているのか前に飛び出してきた。
「ちょっと無茶しますよ、大丈夫です。車は壊しませんから」
余裕の笑みを浮かべる周防を比企は信じる。。
アクセルを踏み、ヤマンバキメラを轢くようにジーザリオが加速しだした。
「次ぶつかったら危ないといったはずだが」
「大丈夫、大丈夫。こちらは任せて窓から身を出して迎撃たのみますよ」
不安に駆られた比企だったが、ドライバーの周防を信じて指示に従う。
覚醒を行い、イアリスと真デヴァステイターを構えた。
ヤマンバキメラとの距離がつまりまたカーブになっている場所のためヤマンバキメラの右隣は土壁で、下は茂みのある坂である。
「いったいどうするつもりだ? とにかく、こちらは普通にやるまでか」
真デヴァステイターでキメラを牽制しているとグラッと比企の体が揺れた。
「チャンスは一瞬、すれ違いざまに斬ってしまってください」
周防がハンドルを回し、土壁を全速力で駆け抜ける。
「無茶をやってくれるな!」
黄褐色の獅子獣人となった比企は叫びながらも一瞬のチャンスを捉え、茂みへとヤマンバキメラを落とした。
『助太刀にまいりましたわ』
カーブに沿いながら再び山道に戻った周防のジーザリオの前からAU−KVに身を包み走輪走行をして駆けつけるエリザの姿が見える。
「こちらは何とかだが。後続はどうしているんだ?」
『シーヴです。こっちももそっちに追いつこうとした時にヤマンバに出会ったです。車降りて対応中』
ブゥンと空気を斬り裂くような音が聞こえてきた。
「大丈夫なのか?」
『最後尾の方ももう少ししたら来るそうですから、それまでは守りきります。幸い数は少ないですから』
比企の問いかけに弓が安心させるような優しい声で答える。
「荷物をもっているのだから、気をつけてくれ」
比企は弓に注意を促がすとエリザと共にアスタリスク大阪を目指した。
●戦利品
「これはなかなか面白いものがあるな?」
すべての荷物を届け終え、休憩をしながら荷物の確認をしているホアキンが『王まねじゃ 危機一髪』を手に取る。
表紙に映っている男性はホアキンの知り合いのラジオパーソナリティにそっくりだった。
そのままちらりとシーヴの方をみると、シーヴが真剣な面持ちで『王まねじゃ 危機一髪』を読んでいる。
「さすがにコレは遠慮しておこう‥‥」
「タワーオブマーセナリーをください!」
「私もそれをいただきますわ。ニホン文化を理解するにはアニメとゲームとヲタクとお父様から聞いていますの」
元気良く目的のものを手に取ったコハルに続き、エリザもタワーオブマーセナリーを手にした。
「おや、このパッケージデザインにも知り合いに良く似た人物が‥‥コハルとシーヴか」
タワー・オブ・マーセナリーは傭兵をモデルに作り上げられた2D格闘ゲームであり、今回は傭兵からの要望のあった育成要素のあるタワー攻略モードが追加されている。
「キャラを育てていけるのか。この冬をゲームですごすのもいいな」
ホアキンもタワー・オブ・マーセナリーを手に取った。
「俺はこのムービー集をもらおうか」
「ええっと、私はその‥‥『Catch!』を自分が乗っている写真集というのも少し恥ずかしいですけれど」
剣一郎が『Fly High!』をとり、弓が『Catch!』をそれぞれ報酬代わりにもらう。
「物が欲しくてやった訳ではない所があるのだがな‥‥」
少し困った顔をして比企は選び始める。
ふっと視線の先にはヤマンバキメラに大人気の『伯爵とボク』が見えた。
金髪で派手な衣装を着こなす美成年と黒髪のはかなげな美少年が抱き合っている。
「さすがにこれはな‥‥では、これをもらうとしよう」
おそらく伯爵であろう金髪の男性キャラと目があった気もした比企だったが『リネーアさんがみてる』をもらうことにした。
運びきった夢。
値段や質ではない製作者の気持ちが詰まったそれらはとても重く感じた。
『これより安全確認のための試験放送を開始します。不審な荷物をみつけたかたは〜』
アスタリスク大阪全部に広がるアナウンスが流れ出し、よいよコミックレザレクションが開始されようとしている。
傭兵達は早々にヤマンバキメラを駆逐しに会場を後にするのだった。