タイトル:ゴキメラバスターズ死マスター:橘真斗

シナリオ形態: シリーズ
難易度: 難しい
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2008/03/27 00:46

●オープニング本文


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 2008年3月。
 増え続けていたゴキメラにかげりが見える。
 それは生態異常なのかわからない。
 だが、これは人類にとってのチャンスだった。
 最後の決戦、ゴキメラを倒すために我々は立ち上がる。
 能力者と共に我々軍人の底力をここで見せたのだ。
 
 
 
                          UPC軍特殊チーム、ゴキメラバスターズ所属 坂本正臣特務中尉


●最終決戦
「ゴキメラの目撃件数が減っている?」
 坂本は斥候の兵士に疑問を投げかけた。
「ええ、以前に比べて数は減っています。死体の処理などが項をそうしているのでしょうか?」
「いろいろ対策は練ってきた結果だといいんだが‥‥今ひとつ喜べないな」
 今までの驚異的な出来事と比べ、今回の好転は喜べない。
「待ったくだね。もう少しサンプルをとって研究をしたかったのだけどね」
 そう思っているのはこの少年、ガブリエルも同じようだ。
 彼はキメラを研究しているらしく、UPCの上層部とのつながりもある謎の人物である。
「対ゴキメラ武装ができたのか」
「多めに用意はしたが、あとは能力者に『出資』してもらうのもありだね」
 白衣のポケットに手を入れながらガブリエルはニヤリと笑った
「こちらも決戦のつもりで自己申告で隊員は集めた。あとは小隊長として能力者といったところだろうな」
 坂本が集めた隊員達は若いながらも一通りの訓練を乗り越えた兵士達である。
 ランチャーなどの重火器を扱える四国UPC軍内でもキメラ退治に向いているメンバーだ。
「戦力はそこそこか‥‥まぁ、安心したまえ。いざというときは空爆によってここらを潰す手はずはしてあるからね。僕以外がゴキメラを触れる事は許さないよ」
「また勝手に!」
「どちらにせよ、君も考えていたことだろう?」
 ガブリエルの行動にいらだつも、結局同じ事を自分でやるつもりだったのも事実である。
「わかった‥‥それでも作戦はこちらで立てさせてもらうからな」
「僕は専門家じゃないからね、任せるよ」
 そういうと、興味を失ったのかパソコンを広げて試作武器の調整を始めた。
(「今回限りで、終わりにしたいよ‥‥貴方とも‥‥」)
 坂本はため息をつきつつ内心思っていた。
 
 
<特殊アイテム一覧>
改良トリモチシート‥‥持ち運びしやすい携帯品。1行動消費で使用し、1スクエアを埋めるトリモチエリアを形成できます。
           中に入ったゴキメラの移動を阻害します。5ラウンドの間移動できなくなります。
           複数のゴキメラを捕らえることもできますが、5体ずつで1ラウンドの減少。
           除去材付で、丸型になっている。 10個、(追加出資額:1000C/個)
           
スタンネット‥‥ランチャータイプの武器で、ネットを射出後、電流を流してゴキメラを感電させようとするもの。
        ダメージはないが、感電にさせることにより2ターンの間行動不能にさせることができる。
        また、トリモチシートも撃てるが、その場合は命中率が下がる。 5個(追加出資額:300C/個)

焼夷弾、煙幕弾‥‥手榴弾タイプで射程2。 半径10mを覆う事ができ、3ラウンドの間効果がある。
         煙幕の場合、命中、回避に−20。焼夷弾の場合は1ラウンドごとに5の非物理ダメージが当たります。3個ずつ。(追加出資額:5000C/個ずつ)

液体窒素弾‥‥SES用銃器にこめて使える弾丸。水属性がつく。消耗品:10発。(追加出資額:5発ずつ10000C)(注:一般兵では扱えません)

※これらはゴキメラ関連の依頼でのみ使用できるアイテムです。
※また、追加出資を行うとそれだけアイテムが補充できるものとします。ただし、アイテムそのものの金額ではなく、補充に必要な最低限の額です。

●参加者一覧

九条・命(ga0148
22歳・♂・PN
時任 絃也(ga0983
27歳・♂・FC
如月・由梨(ga1805
21歳・♀・AA
ヴァルター・ネヴァン(ga2634
20歳・♂・FT
クリストフ・ミュンツァ(ga2636
13歳・♂・SN
醐醍 与一(ga2916
45歳・♂・SN
UNKNOWN(ga4276
35歳・♂・ER
九条・運(ga4694
18歳・♂・BM

●リプレイ本文

●作戦開始
「これで終わりにしたいものだ、Gとお子様もどきとも」
 時任 絃也(ga0983)は呟いた。
 結局火炎放射器は借りられず、B班である九条・命(ga0148)には焼夷弾をかってもらった。
「まったくだ。防衛地点には私が行く。残りの隊員たちを頼む‥‥」
 坂本少尉はそういってキャンプ用具を担いで敬礼をした。
「被害は少なくする。ここを焼け野原にするわけにはいかないからな」
 絃也は敬礼を返して手袋をはめなおした。
「ゴキメラに引導を渡さなくてはなりませんね」
 如月・由梨(ga1805)も数々の戦いをおもい起こしながら、月詠をぎゅっと握り締めた。
「数が減ってきているのがどういう理由かわからないが、人類にとってのチャンス! 逃すわけにはいかないぜ!」
 人一倍気合の入っている九条・運(ga4694)腕をブンブンと振って戦いに備えていた。
 研究員であるガブリエルの姿は無い。
 本格的な戦闘ということもあり、各班の無線連絡を買って出た。
『君達の健闘を祈るよ』
 無線機から聞こえたガブリエルの声は冷たいものだった。
 
●待ち構えるもの
 中継地点であり、救護資材を集めたDポイントに醐醍 与一(ga2916)とクリストフ・ミュンツァ(ga2636)はテントを建てるポイントにいるゴキメラを排除していた。
 少数ではあるが防衛の邪魔になる。
 死体を集めては焼き、道となるところにトリモチシートをひき出した。
「ある程度のみちにはトリモチシートをひいておきました。動きが止められば倒すのは楽になるでしょう」
 自腹である程度用意を整えたクリストフはつぶやく。
 待機している兵士10人もタバコを吸うものや、銃の手入れを無造作にしているものだっている。
「手が空いているなら、救護テントを建てろ! これは訓練じゃないんだぞ!」
 坂本に一喝され、はっとなった兵士達は準備をしていった。
「やるだけやるしかないな」
 はびこっていたゴキメラを屠った与一は建てられたテントの中で腰を下ろし、自らの負傷を救急セットで治している。
「約4ヶ月‥‥長い戦いになりましたね。もっともバグア全体の歴史で見ればそうでもないですが」
 クリストフは出会ってから今までのことを振り返る。
 犠牲者の事、初めて見たおぞましさなどもだ。
 しかし、周囲が風のためかざわざわっという音がする。
 風とわかったと安心できるも、いつゴキメラが来るとも限らなかった。
 戦いはまだまだ続きそうである。
 
●黒い者と黒いモノ
「――まあ、別の事に迷っていて、ふらりと立ち寄ればこういう戦い。悪くは無い」
 密林ともいえる風景に似合わない黒いコートにスーツ。
 シャツなども一流にそろえ、咥えタバコでさえ映画スターのように様になっている男。
 UNKNOWN(ga4276)は全神経を周囲に張り巡らせ、襲い掛かってくる黒いモノをエネルギーガンで焼いた。
 煙幕を投げ込み、右往左往する影を含めた3、4匹のゴキメラが無残にも光迅に貫かれ、随伴する兵士の攻撃で砕ける。
 青緑色の体液が飛び散り、エネルギーガンで焼かれたものも蠢いた。
 多くの数のゴキメラを絃也と由梨が斬っては押さえ、叩き砕いては鋭い牙から己の身を守っていた。
「数が半端じゃない‥‥液体窒素のほうが効くな」
 絃也は負傷しつつも、押し寄せるゴキメラを殴りうなった。
 シートで足を止められたゴキメラを液体窒素弾で撃ち殺した。
「UNKNOWN様のエネルギーガンも効果的のようですね‥‥」
 ゴキメラを防ぐ盾となり、由梨も戦い続ける。
 トリモチシートで動けなくなったゴキメラの上を次のゴキメラが乗り越えてきていた。
 やわらかい肉を持つ能力者たちを餌とおもっているのかもしれない。
「う、うおぉぉぉぉっ!」
 1mを越えるサイズの化け物に対して動揺をしつつも攻撃をする一般兵。
 だが、UNKNOWNがクラシックをハミングでさえずりつつ一人の肩を叩いた。
「恐れることは無い。君らは倒す事よりも押さえればいい。目の前にでてくる何かをただ撃つ。ゲームのようにね」
 その言葉は深く深く森の中に響いた。
 
●逆襲を誓うもの
「死体アサリは経験済みだが、嫌な気分しかしないぜ」
 運もまた襲われた記憶を思い出していた。
 ぬちゃぬちゃと腐った死体をあさり、卵を握る。
 卵は手のひらサイズではあるが力を込めれば易々とつぶれた。
「すばやいのが面倒でおざります」
 スタンネットを狙おうとしても幼生体はすばやく移動してよけるため、トリモチシートに誘導させてヴァルター・ネヴァン(ga2634)はバトルアクスで屠った。
「このエリアより外に出すわけにも行かないからな。多少は燃やさせてもらうぞ」
 命は焼夷弾を投げ込み、ゴキメラの退路を塞いだ。
 シギャァァという嫌な声をあげる幼生体に対して、小銃で確実に命を奪っていった。
「あんた達は俺たちより前にでるなよ!」
 変身し、龍人となっていた運が飛び掛る幼生体を体で受け止め、振り払う。
 それを控えていた兵士達が攻撃して潰していくという連携攻撃をしていった。
「あと、動いているのは何匹だ? 兄貴」
 運は命に疲労を隠せない様子で聞く。
「ざっと10匹か‥‥ダメージは受けないが、覚醒し続けての長期戦は練力消費が厳しいな」
 覚醒をしなければキメラのフィールドを破ることはできない。
 だが、覚醒には練力という精神力の消耗が伴うのである。
 雑魚であろうと、数に手間取っていては消耗は免れない。
「一気に潰して、キャンプ地で休憩取ろうぜ!」
 一息いれると、運は蛍火を振りかざしゴキメラを切り刻んでいった。
 潰し終わったあと、焼夷弾で死体をすべて焼いていく。
 焦げ臭い肉の香り。
 それが人であることがたまらなく悲しかった。
 
●ハイヨル悪夢
 沼地にいたゴキメラがカサカサと音を立てつつキャンプ地に迫ってきていた。
 緊張していた兵士の目の前に影がよぎる。
 ランチャーをヒュッと構えたがその反対側から幼生体のゴキメラに一人が噛み付かれた。
「ぐあぁぁぁぁ!?」
 ぐじゅりと肉がえぐりとられ、悲鳴が響く。
「ついに沼地のが来たか!」
 与一がライフルから乱戦に対応できるようアーミーナイフとフォルトゥナに獲物を持ち替えた。
「スナイパーだからって格闘戦ができなきゃ生き残れないんだよっ! お前達は距離を開けろ、テントの周囲ならまだ視界は確保できる!」
 騒ぎ出す兵士達を一喝してさげさせ、食いついた小型のゴキメラをアーミーナイフで刺し貫いた。
 ゴキメラと共に、兵士の血も飛び散る。
「もういっちょッ!」
 与一の左手に持っているフォルトゥナが火を吹き別の幼生体を撃つ。
 強弾撃で強化された弾丸は幼生体を打ち砕いた。
「逃げているのもいるかもしれません。僕は沼地の方へ行きたいところですが‥‥」
『こちらB班のネヴァンでおざります。対処完了しましたので、D地点へ移動中でおざります』
 与一の戦いぶりを見て、不安を抱いたクリストフに丁度死体排除を終えたB班からの通信がやってきた。
「いいタイミングですね。ネヴァン、僕は沼地の方へ行きますので貴方は来てください。他の二人はキャンプ地の防衛をしてもらうように頼んでおいてください」
『かしこまりました』
 丁寧な返事と共に通信が切られる。
「与一さん、すみませんが少しあけますよ」
 クリストフはアサルトライフルをリロードしつつ、与一に言葉を投げかけた。
 与一の方は体勢を直しつつスタンネットを兵士運ばせクリストフの方に向かわせる。
 また、坂本もランチャーで応戦していた。
「ここはわしらが何とかする。次期応援もくるんじゃ、不動不屈の精神を見せてやるぜ!」
「そういうことだ、気にせずいってくれ。逃したら、同じ過ちが繰り返される。それだけはなんとしても防いでくれ!」
 与一と坂本の声を聞き、頷くと共にクリストフは兵士を連れて沼地へと駆けていくのだった。
 
●黒きものの最後
「この匂い‥‥慣れたくありませんね」
 草むらをかき分け、ぬかるみを進みつつ出た場所は沼地であった。
 だが、そこは動物の死骸がところどころ浮かんでいる。
 腐臭が漂い、普通の人間は近寄りたくないところだ。
 だが、この匂いがある場所にゴキメラはいる。
 死体に卵を産みつけ増えていく奴らは‥‥。
 ばっくりと死体が割れて、小型のゴキメラが這い出し、獲物を探しに離れようとしていた。
「スタンネット射出!」
 クリストフの声と共に随伴していた兵隊がスタンネットを射出し、沼に浮かぶ死体ごと範囲に閉じ込めた。
 ビリビリと電流が流れ、沼地の死体がびくびくと跳ねる。
 そして、ぐしゃりとつぶれた卵の液のようなものがたれた。
「いい光景ではないですね。死体もろとも集中砲火! 全部綺麗さっぱり消しましょう」
 ふぅと息をついたクリストフは兵士達と共に集中砲火を死体もろとも叩き込む。
 しかし、すでに出ていた幼生体が遠くへ逃げようと動いていた。
「遠いですね‥‥」
 ライフルで照準を定めようとするとその小型の形状と距離からして難しかった。
 だが、幼生体は大きな斧で潰され命を絶つ。
「遅くなりました」
「ヴァルター、いいタイミングでしたよ」
『こちらチームGことAポイント。対象と死体、ともども排除完了した』
 クリストフの無線にUNKNOWNからの通信が届いた。
『こちら中心地Dポイント。よって来たゴキメラの排除は終わった。怪我人の治療中以上』
 与一からも通信が届く。
「終わったようですね。念のため、燃やしておきましょう」
 焼夷弾をクリストフは投げ込み、沼地から立ち去った。
 
●任務完了
 すべてを終えた一同はキャンプ地に集まっていた。
 50人集められた隊員の被害は3人。
 能力者たちの采配のおかげともいえよう。
 そして、研究員ガブリエルも戦闘結果に満足した様子を示していた。
「ご苦労だったね。能力者たちとの共同戦線とはいえ一般人でも一種のキメラに此処まで被害を抑えて戦えたのは十分な成果だとおもうよ」
 褒めてはいるも顔つきは冷笑を浮かべている。
 子供には似つかわしくなかった。
「ゴキメラは殲滅できたことだし、勝手に増えることはもうないだろうね。どうして減ったかはまた帰って僕が研究するよ」
「では、この部隊は解散ということなのかな?」
 坂本が前に進みガブリエルに苛立ちを抑えながらも荒くなる口調で問いただした。
「現状維持だね。これから先再び出たとき再編成するのも面倒だからね。そんな事が無いことを僕は祈りたいよ」
 そういうガブリエルの顔はさらなる進化を遂げたゴキメラを待つかのように微笑んでいる。
 ガブリエルがそのまま輸送機と共に帰ると、坂本は能力者たちの方に向いて敬礼をした。
「長い戦い本当に感謝する。私個人でここまでできる事ではなかった。君達の協力を忘れない」
 坂本の目から流れる熱いものを能力者たちは胸に刻みつつ、敬礼を返す。
 一つの戦いの幕が今降りた。