●リプレイ本文
●ねぇ、これ何の集まり?
「やぁやぁ、今日もええ娘(こ)がそろっておって俺も嬉しいがね」
エイジア学園都市のドローム社フォーゲルマイスター開発局で能力者達を待っていた米田時雄はいつもどおりのアロハとサングラスで出迎えた。
「米田さんはお久しぶり。去年のCD販売以来だね?」
犬塚 綾音(
ga0176)は裏方の頼み込みをした去年のことを思い出し不敵に笑った。
「おお、久しぶりゃーて。まだ契約書はのこっとるでよ? そこんとこ考えといてくれたがや?」
「ちゃんと覚えてるんだね‥‥今でもガラじゃないとは思うけどさ、あたしみたいなのでもこういう形で皆の希望になるなら喜んで引き受けるよ。『いろんな個性の需要があるからこそ成り立つ世界』なんだろ?」
胡散臭い名古屋弁で話書ける米田に目線を少しだけそらして綾音は返事をだす。
「今まで地道? にアピールを続け、今回遂にオーディションに参加。ソフィリアも‥‥そしてレオノーラさんもアイドルになっちゃいますわ!」
「私を巻き込まないでよ‥‥そんなガラじゃないわ」
ソフィリア・エクセル(
gb4220)とレオノーラ・ハンビー(gz0067)が先に着替えを済ませてきたのかレースクィーンのような格好で姿を見せた。
ソフィリアにいたってはドローム社のレースチームのモノをわざわざ借りたらしく、胸の部分に歪みながらもロゴが存在をアピールしている。
「そう? アタシ達の歌、もっと広い世界の役に立ててみない? アタシは戦うだけでなく歌が命の架け橋に為れればと思っているの」
シェリー・ローズ(
ga3501)が一際派手な露出度の高いレースクィーン風衣装でレオノーラを煽った。
「今から気合が入っているのもいいですけれど、まずは動作テストからですよね?」
ヴェロニク・ヴァルタン(
gb2488)の突っ込みにレースクィーン軍団は唖然となる。
「アイドルになるための意気込みですの! い、いきますわよ!」
ソフィリアは慌てながらレーサー用ヘルメットをかぶり、練習用筐体へ走りだした。
●ゲーム好きなヤツラ
「学生アイドルってちょっと憧れていたんですよねー。ふひひ、これで私のみりきもアップなのですよ」
小悪魔らしい笑いを浮かべ、如月・菫(
gb1886)は二人乗りになった翔幻を飛ばす。
増設されたコックピットの複座にはフェイト・グラスベル(
gb5417)が計器類を確認しながら、戦闘の感覚をつかもうとしていた。
「ゲームでもこれがKV初なんですよね。緊張します‥‥あっ、3時の方向にドローン!」
「了解、おりゃっ!」
菫がフェイトの指示にあわせてスナイパーライフルを使って無人操縦戦闘機を撃つ。
精度は個人で行うものより高くはなっているが、あとは経験と対応速度が問題になるだろうと菫は感じた。
「じゃあ、ちょっとキリモミ旋回とかいこうかー。大丈夫、ゲーム機だから落ちないし」
「ちょっ、タイムタイム!? ダ、ダメですって、いーやー!?」
菫は操縦による複座へのGの影響を確かめるために機体を回転させるようにして高度を下げる。
意図的に行われたジェットコースターのような勢いにフェイトは目から涙を流して叫んだ。
『激しい動きしているの‥‥コックピット汚れていないの?』
終夜・朔(
ga9003)が外から見た映像による率直な感想を漏らす。
「これくらいじゃ私は吐かないのだ! ねーフェイトさ‥‥ぎゃぁぁ!?」
菫が振り向くと、後ろでは顔を青くし、目が白くなったフェイトが力なくシートにもたれていた。
『だ、大丈夫? ちょっと早いけど休憩入ったほうが良くない?』
大きな叫び声に心配した香倶夜(
ga5126)が回線に割り込んでくる。
『ふふ‥‥女の子と密室‥‥同じ空気をすってゲームをプレイ‥‥ごふぅ!?』
さらに火絵 楓(
gb0095)の危険な通信が実験の中断をせかす様に入ってきた。
『ゲームでも、皆命がけなんだね‥‥これが傭兵の戦い』
「いや、違いますから! 違いますからねー!」
沖田 神楽(
gb4254)の呟きに菫は必死に訂正をいれる。
ゲームだからやれることだってあるんだよと、言い続けるのだった。
●休憩タイム
一人は失神、一人は鼻血を出して中断されたテストのあと、調整ついでの休憩を能力者達はとっていた。
「ねぇ、二体合体の方がコストがいいと思うのだけど、何で三体合体からなの?」
休憩時、シェリーは開発者の鹿嶋明美に声をかける。
「2機合体もあったんやけど。複座システムとのバランスがとれへんかったんわ〜。二種類に変形合体できればウリになりそうなんやけど、それはプログラムとデバッグで間に合いそうもあらへんの」
「実機作るときよりも難しそうなの‥‥」
「それでも普通なら承認おりへん機能やコンセプトの方がこっちの業界なら受けようから、うちは好きどすえ」
明美は疲れながらも達成感に満たされた笑顔を能力者達に向けた。
「合体は浪漫だからねぇ、ゲームだけってところを踏まえても熱くなるもんだね」
炭酸飲料をぐびっと飲みつつ綾音も今回の依頼に期待を向ける。
「綾音さんはお疲れ様なの‥‥PV撮影前には着替え済ませて欲しいの」
チョコチョコと朔が綾音に近づき、米田に頼んで用意してもらった白いゴスロリ服を渡した。
「や、やっぱりこれを着るのかい? なんか、恥ずかしいね‥‥」
手にした衣装を眺めて綾音はいつになく緊張しだす。
「似合うと思いますよ。私はカンパネラの学生服でいきます。学生ですからっ」
戸惑う綾音にフェイトが背中を押した。
友達も知り合いも少ない彼女は交友を増やしたいのである。
「同じカンパネラ学園生としても仲良くしてくださいね?」
そんなフェイトにヴェロニクは手製のお菓子を手渡して微笑んだ。
「私達の衣装はレースクイーン風で統一だよね?」
「そうそう、赤と蒼と緑のカラーでね」
「私は少しアレンジを加えてロングスカートタイプで。素材はあわせていますけど」
合体VV『トリケラスター』へと乗り込む神楽、シェリー、ヴェロニクらは互いのコスチューム合わせの相談などを始めた。
機体装備は合体して1機分の扱いのため、分離状態では兵装1、アクセサリ1という配分になるとのことでそちらの調整もこの時間に行いだす。
「フォーメーションバルカンとかすごく熱い装備だよね‥‥燃えてきたー!」
神楽は装備のアイディアをだしつつ、トリケラスターの設定に熱いものを感じて拳をぐっと握った。
「ねぇ‥‥レオノーラさんはアイドルになるの?」
「ん? 私? 私は‥‥」
スカートの裾をひっぱりながら聞いてくる朔にレオノーラは答える。
「今は無いわね。表にでるよりは裏で動く方が性にあっているもの」
薄く微笑みを浮かべレオノーラはリンゴジュースを飲み干した。
●ドリームパレスで撮影会
「おみゃあさん達のやりたいって要望もあったでよ。撮影は置いておいてもおみゃあさん達のプロモーションのためにちょっと出向いてくりゃあよ」
といった米田の指示に従い、PVに使う映像も兼ねて大阪はエイジア学園都市に立てられているドリームパレス本店へと能力者達は出向く。
「二人の」
「友情パワー」
「「見せてやるです」」
VMの筐体の前ではフェイトと菫が左右対称でグーを天へ突き出しポーズを決めてカメラで撮影をされていた。
制服を身にまとい幼さの残る二人の人気は上々のようだ。
「ちょっとこの格好は照れ臭いんだけど‥‥これもお仕事だし、今は我慢、我慢‥‥」
アイドルになるつもりはないが、プロモーションを盛り上げるためにと香倶夜はレースクィーンスタイルの衣装に軍用のケブラージャケットを羽織ってPV撮影を見に来た来場者に笑顔を振りまく。
普段着からは目立たないメリハリの付いたボディが照れたしぐさと共に男性客の心をくすぐった。
「ほーい、とり放題だよー。チャンスは今だけだけだから取ってとってー」
香倶夜とは違い、楓は香倶夜と同じような衣装だがものすごくノリノリで撮影を受けている。
特別にドリームパレス内へ運ばれたスカイスクレイパーのボンネットへ座り、パラソルをくるくると回しながら注文されてもいないのにいろいろなポーズを見せていた。
「スカイスクレイパーの上でこんな格好しているとモーターショーのイベントコンパニオンね」
水色のレースクィーン姿のレオノーラが苦笑する。
「レオノーラさんもお似合いですよ」
ソフィリアがレオノーラの姿を褒めると、米田が割り込んできた。
「お、準備ができたようだでよ。筐体の中に入ってくりゃあ」
米田の指示に従い、能力者達は乗り込む。
バージョンアップのデモンストレーション兼プロモーション撮影が始まった。
●完成! プロモーション
「こちらソフィリア‥‥突貫しますわ」
「R−P1いっけぇぇぇっ!」
地上を走るスカイスクレイパー。
そして、その中へと入りソフィリアと複座に座る楓が声を出して目の前から迫る地上戦艦を攻撃していった。
『レオノーラさんも火気管制よろしく。シュテルンの操縦はこっちに任せて! 操縦に集中できるぶん思いっきり飛ばすよ』
続いて香倶夜のシュテルンが戦艦からの対空砲火を潜り抜け、レオノーラの螺旋弾頭ミサイルや高分子レーザーが空を飛ぶ敵護衛のR−01を落としていく。
派手なエフェクトで機体が爆破し、手前に破片が飛んできた。
護衛の機体が多く落ちていく中、陸上戦艦へ翔幻の『幻霧発生装置』が甲板を包み、そのまま降り立つ。
そして、コックピットがクローズアップされ、カンパネラ学園制服で動かす菫とフェイトの姿が写った。
「着地成功、残弾は問題なし?」
「AAMは0、スナイパーライフルのリロードは完了しました。近接モードへのシステム切り替えオールグリーン!」
「よっし、いくよ!」
菫の掛け声で、コックピットから遠ざかり、翔幻を移す。
機爪「プレスティシモ」を装備した翔幻が戦艦の砲塔を潰し、ブリッジへと詰め寄った。
『旗艦の制圧が出来たみたいなの』
『それじゃあ、地上を潰したら帰還するかね』
ワイバーンがストライクファングで陸上にいるテンタクルスを屠ると同時に陸上戦艦のブリッジが爆発するシーンが入る。
コックピットがクローズアップされるとデザインがおそろいで綾音が白、朔が黒のゴシックロリータ服を着ていた。
「まって‥‥レーダーに反応、ワイバーンがマイクロブーストとブーストで10機お出ましだ」
レーダーに映らない距離から一気に近づいてきた敵機に恐ろしさを感じながらも、綾音は装備の確認を行う。
年の離れた姉妹のように二人が移るとコックピットから機体の方へ映像が離れ、ワイバーンが地を駆けた。
加速した後、変形して飛び上がる。
10機のワイバーン編隊も一糸乱れぬ動きで朔達を迎撃しようと動いた。
『増援なら私たちだって‥‥いくよ!』
バックアップを負かせ、香倶夜のシュテルンも迎撃に回る。
だが、戦闘を続けていたメンバーの弾薬の少なさや機体の疲弊が響き、押されだした。
『くっ‥‥ここで退くわけには‥‥』
甲板の上でスナイパーライフルRを空に向けて翔幻も迎撃に回るがリロードの隙を付かれ、のしかかられる。
ピンチと思われたそのとき、体当たりと共にのしかかったワイバーンを弾いた編隊が姿を見せた。
3機の戦闘機がそのまま旋回して戻ってくる。
『楽しませて貰うよ、シェリー、ヴェロニク、タイミングを合わせるんだ!』
神楽が熱く叫ぶと、3人のコックピット映像が画面を三分割した形で割り込んだ。
『ゼロ、シェリー・ローズ、目標を殲滅する!』
『もう少し静かにできませんか? 耳が痛くなります』
シェリーとヴェロニクが言葉を交わすと、3機の映像に変わり、タイミングを合わせたバルカンの雨を敵ワイバーンへ叩き込む。
「すごい‥‥あれが、新型?」
助けられたフェイトの方へ画面が切り替わり、驚く様子が映った。
『まだこれで驚いちゃいけないぜ‥‥』
『みんな準備はいい? 情熱合体いくわよ!』
『出力上昇、合体シークエンス、完了よ』
ワイバーンを落とした3機の戦闘機が上空へ登り縦一列に並ぶ。
「合体!」
神楽が気合を入れてレバーをひくと各機が変形を行い3機の戦闘機が1機の人型ロボットへと合体した。
『情熱合体! フルメタルエンジェル、トリケラスターッ!』
シェリーが締めるとトリケラスターと呼ばれ人型ロボットは両手でハートを作るポーズを決める。
増援に現れたトリケラスターにより苦戦していた味方が息を吹き返した。
『あたしの弾で落ちる奴は敵機だよ! あたしの弾をかわす奴はよく訓練された敵機だよ!』
逆境からの立ち直りに興奮したように綾音が大きく叫びスナイパーライフルD−02でワイバーンを撃墜していく。
『回避運動、気をつけるの』
機体の操縦に集中できる朔は綾音と息を合わせて動いた。
「おりゃぁー! ユニコーンズホーン!」
腰まで届くほどの長いポニーテールをブルーベリーのような飾りの付いた紺色のゴムバンドで留めた神楽の姿が映り、髪を揺らしながら敵を貫く。
「よっしゃ! アタシ達も負けてられないよ!」
映像が楓の方へと切り替わり、ソフィリアからメイン操縦システムを切り替える様子が見えた。
『誰もがここではヒーローになれる』
キャッチコピーが割り込み、戦場を人型で走っていたスカイスクレイパーが止まりハッチのアップが映った。
ハッチが開き、ソフィリアが降りながらヘルメットを脱いで首を振り煌く髪が舞った。
ズームアウトされると、ドリームパレスの中で車両形態のスカイスクレイパーが姿を見せる。
レオノーラが合流を果たし楓と共にスカイスクレイパーのボンネットに座り込んだ。
右から楓、レオノーラ、ソフィリアとレースクィーン風の衣装に身を包んだ3人が流れるように写しだされ、最後にソフィアの顔のアップが映る。
『リアルな感動をあなたに』
ソフィリアの一言で完成したプロモーション映像は締めくくられた。