タイトル:【MN】5年後の世界マスター:橘真斗

シナリオ形態: イベント
難易度: 普通
参加人数: 25 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2009/10/03 16:29

●オープニング本文


※このオープニングは架空の物になります。このシナリオはCTSの世界観に影響を与えません。
申し訳ございませんが、相談期間中の拘束は通常通りに発生します。事前にご了承のうえご参加ください。

 西暦2014年‥‥
 
 人類は宇宙からの使者を倒し、平和を手に入れた訳ではなかった
 
 宇宙に浮かぶバグア本星を地球に落下することを許してしまったがために、地球の生態系は破壊され環境も大きく変化した
 
 ジオフロント計画を行っていた各メガコーポレーションが地下に残った人類を退避させ、細々と生きている
 
 過去にバグアと戦っていた人類側の能力者だが、環境の変化が影響したかエミタの不調によりその命を落としていた
 
 生き残ったとしても寿命は恐ろしく少なくなり、この先10年は生きられないと宣告される
 
 そのため、能力者の一部は暴徒と化して平和を守る側から混乱を生み出すものとして人類に牙を向いていた‥‥
 
●南米―エルドラドの地下―
「現状の戦力では厳しいですね‥‥」
 少女から女性へと変わったユイリー・ソノヴァビッチはショートボブの髪を揺らして作戦ボードを見る。
 ここ最近、南米の治安は悪化の一途をたどっていた。
 ×点が周囲にいくつも打ってあり、そこで略奪などの事件がおきている。
「命が短いってのは戦争中で覚悟できているとおもったがねぇ、世の中簡単にはいかないもんか」
 元UPC軍少尉のベルディット=カミリア(gz0016)がユイリーの隣で超高級となった葉巻をふかした。
 エルドラドの地下では有志の能力者による対応組織『ビジター』が結成され対応している。
「原因はなんなのでしょうか‥‥」
「最近活発なのは、どうやらバグアの生き残りが出てきたかららしいわよ。アスレードがね」
 ユイリーが悩んでいると、作戦ルームに銀髪を後ろで束ねたレオノーラ・ハンビー(gz0067)も姿をみせた。
 写真を机の上に投げるとアスレードが暴徒となった能力者を引き連れ暴れている姿が映っている。
「混乱がこれ以上続くのも癪だねぇ‥‥総力戦で頭を潰すくらいはするかねぇ。あんた、そこまで調べたんなら居場所の目ぼしもついているんだろ?」
「ええ、次来るとしたらこのエルドラド‥‥狙いはマスドライバーね」
 5年後の世界‥‥動乱の起きたエルドラドで再び争いが起きようとしていた。

●参加者一覧

/ 花=シルエイト(ga0053) / 雪ノ下正和(ga0219) / 御影・朔夜(ga0240) / 聖・真琴(ga1622) / 如月・由梨(ga1805) / 潮彩 ろまん(ga3425) / セージ(ga3997) / 宗太郎=シルエイト(ga4261) / クラーク・エアハルト(ga4961) / 皐月・B・マイア(ga5514) / シーヴ・王(ga5638) / メリー・ゴートシープ(ga6723) / ブレイズ・S・イーグル(ga7498) / 百地・悠季(ga8270) / 虎牙 こうき(ga8763) / J.D(gb1533) / セレスタ・レネンティア(gb1731) / 鳳覚羅(gb3095) / 堺・清四郎(gb3564) / 冴城 アスカ(gb4188) / 浅川 聖次(gb4658) / 獅子河馬(gb5095) / ジン・レイカー(gb5813) / ピアース・空木(gb6362) / リティシア(gb8630

●リプレイ本文

●5年後の世界、戦いの終わらない世界
「苦しみを終わらせるには‥‥これしか‥‥」
 セレスタ・レネンティア(gb1731)はKVやヘルメットワームの残骸によって出来た高台にたどりつくとスナイパーライフルをセットした。
 現在の場所な南米はエルドラド‥‥ゾディアックの一人だった男が理想郷のために用意した国である。
 もっとも、バグア本星が落ちてきたため、気候はおかしくなり人間が地上で生きることは殆どなくなっているのだ。
「ふふふ、ボクはアスレード新鋭隊だぞっ、邪魔する奴らは皆殺しだもん!」
 能力者の大半が人生を諦めている方向に対し、潮彩 ろまん(ga3425)はモヒカンカツラを被り、大型バイクを乗り回して突き進む。
「さて‥‥お前達。楽にここを通れると思うなよ‥‥」
 セージ(ga3997)がろまんの襲撃に対して、刹那と真デヴァステイターを持って立ちはだかる。
 傭兵を引退し、自らの無神流を伝える伝承者としてエルドラドで孤児院を開いていたため参戦していた。
「蜂の巣、蜂の巣‥‥マスドライバーなんていい物、隠してちゃ駄目なんだよ、ボク達が有効的に使ってあげるからね‥‥所で、マスドライバーって何?」
 銃を持って対抗しようとするかつての仲間をろまんは特性ショットガンの『ギアーズ【M:GoW01】』で彼らを容赦なく撃つ。
「確かに能力者としては錆びついちまったが、武人としてはまだまだ現役だぜ? 無神流――『不知火』」
 ショットガンの攻撃を受け止めたセージはそのままスキル<急所突き>と<豪破斬撃>をあわせた攻撃で大型バイクを斬り裂いた。
「ひゃっはー、神様だって真っ二つだもん!」
 バイクを斬られてもそれが楽しいといわんばかりのろまんはギアーズのチェーンソー部を稼動させてセージに襲い掛かる。
「マスドライバーはあの中央の塔だ。先に‥‥行くぞ」
 獅子河馬(gb5095)はセージを引き付けているろまんを放ってバイクを走らせエルドラド中心部に立つ塔のようなものを目指した。
 愛する人も守れず、過酷な未来に直面し絶望していた獅子河馬はすてべを壊すために動いている。
「私はもう戻れない‥‥、もう壊れてるもの。だから、みんな壊してあげる‥‥」
 敵味方が入り乱れだした戦場でJ.D(gb1533)は楽しそうに笑いながら近づく敵を狩っていった。
 鮮血が舞い上がり、まさしく血みどろの戦いへと進んでいく‥‥。


●ディストピアの中で輝く希望
 中心部へ通じる関所の一つではジン・レイカー(gb5813)が目を閉じながら壁にもたれ掛っている。
「綺麗だ‥‥地獄が見える」
 敵も味方も右腕一本で斬り裂いてきた堺・清四郎(gb3564)は血塗られた名刀「国士無双」を持ちながら周囲を見回して笑っていた。
「随分と‥‥楽しそうだな? でも、悪いんだがここから先は通せない。降参するか、ここで果てるか。選べ」
 言い終わると同時に唇を吊り上げて笑い、目を見開いた。
 赤い瞳が更に赤くなり覚醒したことを示す。
「お前は俺を殺してくれるというのか?」
 会話が成り立たないまま清四郎は間合いを詰めてジンに向かって3mの巨刀を振るった。
 ゴウゥと風が吹いて地を凪ぎ、ジンを襲ったが既にジンの姿は無い。
「ここで果てるというのならやってやるさ!」
 隼風と呼ばれる和槍を両手で支え、上空に上がっていたジンが清四郎に向かって落下していった‥‥。
「‥‥かつて轡を並べた者同士が、争うとはな」
「人間ってのは結局争いあう生き物ってことさね。戦争で歴史を作ってきたんだ、細かいこと気にしていると死ぬよ」
 その光景をみていた”真のサムライ”たる雪ノ下正和(ga0219)の呟きにベルディット=カミリア(gz0016)は背中を強く叩き、マスドライバーを守るように動く。
 戦場での迷いは命を失う元だ。
「わかっていますよ。敵となるのであれば、斬るのみですから」
 雲隠を抜刀した正和はベルディットを追うように地上へと駆けだす。
 空は5年前のような青空をしておらず、淀んだ紫色をしていた。
 このおかげで食物が育たなくなり、新たな人類の危機‥‥そしてエミタの不調という枷となっている。
「守りたい人がいるから希望を捨てていません」
 5年前は学生であり、どちらかといえば守られる側だったリティシア(gb8630)は守る側として、戦いに出向いていた。
 敵の狙いの中心であるマスドライバーの守るように近づく敵を<竜の爪>で強化された小銃「S−01」を撃ち迎撃していく。
「うくっ‥‥」
 激戦が続くなか、戦場へとたどり着いたシーヴ・フェルセン(ga5638)は口元を押さえうずくまる。
 ベルディットが異変にいち早く気がついて近づいた。
「こんなときに妊娠かい? そんな体で戦場にでてくんじゃないよっ!」
 シーヴは首を横に振り、息を整えて立ち上がる。
「ばれちまったですね。けど、シーヴは引く気はねぇですよ。‥‥残り時間がねぇからこそ、この子の為に未来を守りてぇんです」
「馬鹿だねぇ‥‥だけど、そんな考えはあたい嫌いじゃないさ!」
「‥‥聴こえない。雑音がまだ大きいんだ。待っててね『    』‥‥すぐだよ。すぐ静かにするからね」
 ベルディットの叫びを聞きつけたのか底冷えするような微笑を浮かべた皐月・B・マイア(ga5514)がゆらりとした動きで近づいてきた。
「逆に静かにしやがるです。大音量で音楽を聞くなです」
 希望を持つもの、希望を宿すもの‥‥人類側はまだ負けるわけにはいかない‥‥。
 バグアにも、絶望にもだ。
 
●宿命か、運命か
「げほげほっ‥‥私も、もう長くはありませんね‥‥」
 口から出る血を手で受け止めた如月・由梨(ga1805)は己の寿命が近いことを感じる。
 日本人形のようだった黒髪も白髪になり、5年しか立っていないはずだが老化進行によるものか、とても妙齢の女性とは思えない姿へと変わっていた。
 足元には倒した死体が転び、たっているのは由梨だけである。
「‥‥如月か。我が無二の友、君の夫は健勝か? ――いや‥‥それならば良いと、思ってな」
 倒壊した家屋の影から御影・朔夜(ga0240)が大怪我を追った姿で立ち、声をかけてた。
 既知感ははれず、バグアの調整を受けた御影だったが結局何も変わっていない。
「貴方には関係ありません‥‥覚醒は嫌でしたが、四の五の言っていられませんね」
 かつての戦友とぶつかった由梨は瞳を赤くして闘気を増加させた。
「ハハッ、怒ったか? ――あぁ、それで良い。ならば存分に殺し合おうじゃないか。此処に大義は成った」
 由梨が覚醒をすると御影はその様子を楽しむように笑い、真デヴァステイターの引き金を引く。
 銃弾が飛び交い、二つの影が交差した。
「何が平和なのでしょう‥‥争い続けるのが人の宿命でしょうか?」
「愚問だ――生きるために他者を殺すのが生命の本能。そう、闘争とは本能だよ。彼を殺そうとする私から、君は彼を護る為――だ。手は抜くなよ?」
 由梨の月詠を真デヴァステイターで受け止めた御影は言葉で牽制しながら腹を蹴る。
 蹴られた拍子に胸元からムーンストーンのロケットが飛び出し鎖が引きちぎれた。
「うわぁぁぁぁぁっ!」
 体の痛みよりも心の痛みを感じ取った由梨は御影に向けて<急所突き>と<流し斬り>をあわせた高速の斬撃を繰り出す。
「‥‥本当は、彼に殺して貰いたかったのだがな‥‥。古い馴染みだ、君に殺されるのも、悪くない‥‥」
 心臓に一太刀を受けた御影は苦笑しながた血のこぼれる口元に煙草をくわえた。
 宿命というには酷な闘いをしているのは他にもいる。
『とんだじゃじゃ馬だが‥‥この体は中々いいぜ、アスレードよ』
 宗太郎=シルエイト(ga4261)の体を獲たバグアが下衆な笑みを浮かべている。
「俺の命を狙ってきたイイ奴だったからなぁ? 溢れる力を使ってやればいいぜ!」
 隣ではアスレード(gz0165)が楽しそうに吼えていた。
「たとえ貴方がそちら側に行こうとも‥‥バグアだけは許さない。アスレード、特にお前だけは‥‥っ」
 髪をばっさり切り落とし、ここ数年笑顔を浮かべたことの無い月森 花(ga0053)は怒りや悲しみを原動力に戦いにでる。
 それがかつての恋人であったとしてもだ。
『覚えてるぜ? 花さんだったなぁ? こっちにこれば恋人と一緒にいられるぜ?』
 宗太郎の姿をした下衆は花に向かって挑発をしだす。
「答えは‥‥これだ」
 体格のいい男を振り回すアラスカ454を片手で持ちながら花は撃った。
 5年前は恋人と共に敵を撃てなかったが今は違う。
「おもしれぇ‥‥最高におもしれぇ! 5年前の敵が目の前で争いあっているなんてなぁ! 完璧なショーだぜ!」
「ショーの観覧者だけでいいの? アスレード‥‥かつて格闘家として名を馳せた貴方と‥‥手合わせ願えるかしら‥‥」
 アスレードが狂喜していると、背後に軍服にボロボロのマントを着込んだ冴城 アスカ(gb4188)が立っていた。
「まだ、俺に牙を向けようってのがいたかぁ‥‥久しぶりだから楽しませてくれよ、よぉへぇぇいっ!」
 アスカが飛び上がるとアスレードも追うように飛び上がり空中で互いにぶつかりあう。
 落下速度よりも早く、蹴りがぶつかり合い静止しているかのようにも見えた。
「この数年‥‥鍛えた技よ‥‥存分に味わって頂戴‥‥」
 <限界突破>で行動力を高め、<疾風脚>で動きを俊敏にさせたアスカはアスレードを押している。
 宿敵とであって喜んでいるものもこの戦場にはいる。
「ありゃ、兄貴まだそっちいたノ? やめトケ、んな馬鹿ども守ったところデあるノハ絶望だけダゼ?」
 強化人間となった虎牙 こうき(ga8763)は幾度の改造手術のせいか口調がおかしくなっていた。
 見つけた相手は数少ない生き残った戦友であるブレイズ・S・イーグル(ga7498)である。
「‥‥いい加減お前の面も見飽きたんでな。仕舞いにしようぜ」
 ブレイズはこうきと何度も戦い、瀕死にまで落とし込んでいた。
 せめて自らの手でと思っていたブレイズの気持ちはこうきには届いていない。
「アニキもこっちに? あっちに? ドッチデモいい‥‥最高に楽しもうぜ」
 超機械「カタストロフィ」を起動させたこうきの周りにプラズマ化した光りが纏わりつきだした。
「くそったれがっ!」
 ジュンとブレイズの体内に血ではないものが廻り加速する。
 バイザーとフェイスマスクで隠された唇をかんで決意をした。
「ヒャハハハハ、しねぇっ!」
 プラズマ化した光りがブレイズに向かって進む。
 体の半数を機械にしていたブレイズにとって、電磁波などは天敵だ。
 全身が軋み、一撃でバラバラになりそうな衝撃を訴えている。
「昔のアニキはこんなモンじゃなかったダロぉ? ほら、やっちまうゼ?」
 こうきがパンチを繰り出すと電光が迸りブレイズの体を容赦なく叩き、沈んだ‥‥かに見えた。
 起き上がったブレイズが電光の一撃を受けながらも右拳を超機械「カタストロフ」に叩き込む。
「片腕ぐらいくれてやる、だからよ‥‥ッ! てめぇの命も貰って行く! 灰燼へ誘う炎獄の刃[レーヴァテイン]ッッ!」
 至近距離にこうきを捕らえたブレイズはフェイスマスクを開かせて最後の一撃を見舞った。
 コンユンクシオに溜まったエネルギーがこうきもろともブレイズすら吹き飛ばす。
 二人の男は半身を灰燼にしながら、向かい合うようにして落ちた。
「これで‥‥よかったんだよな。イル‥‥」
「これで‥‥俺もお前の元へ行けるんだな、やっと、やっとお前と‥‥愛してるぜ、つる‥‥」
 二人は同じように天を見上げて手を伸ばす。
 愛した女の名前を口にだし、二人はそのまま静かに眠りについた。
 
●取り残された悲しみの中で‥‥
「俺の過去! 俺の罪! 俺の絶望! さぁ受けきって見せろ!」
 常に微笑を浮かべている優しい人柄だった鳳覚羅(gb3095)は今や狂乱の使徒となりエルドラドを縦横無尽に荒し尽くす。
「貴様の覚悟受け取った!」
 人類側の能力者の数は少なく次々に倒れていく中、クラーク・エアハルト(ga4961)がドローム社製SMGを使って撃った。
 鳳は『GunScythe「Ain Soph Aur」』と呼ばれる大鎌を回転させて銃弾を弾く。
「こっちは受け止めれるか知らね!」
 レオノーラ・ハンビー(gz0067)が飛び出し、超機械「BC」を使い、エネルギー弾を鳳の死角に当てた。
「‥‥初めまして、顔見知りの方は御無沙汰しております。僭越ながら、皆さんの妨害をさせて頂きます」
 死角に撃ったはずの攻撃は戦闘地帯に割り込んできた浅川 聖次(gb4658)によって阻まれる。
 浅川は最愛の妹を守れず行方不明にさせてしまったことを悔やみ、今は死に場所を求めているのだ。
「妨害するなら容赦しないわよ、こっちは絶望して捨てるよりも生きるのに必死なんだからね」
「今更何かを護ったトコで何になるってンだ? 希望を持つのは勝手だがよ‥‥」
 クラークと背中を合わせて戦うレオノーラにピアース・空木(gb6362)が言葉による追い討ちをしかける。
「希望を失っていなかったからバグアと闘ってきたんでしょう? バグアに勝ってから希望を失ってどうするのよ!」
 レオノーラより先にピアースへ反論の意志を飛ばしたのは聖・真琴(ga1622)だ。
 言葉での蹂躙に怒りを示した真琴は控えていた覚醒を行い<疾風脚>でステップを高めピアースへと迫る。
「よぉネェちゃん。速度のグラップラーか‥‥けど俺様にゃぁ、かなわねぇみてぇだな!」
 <疾風>でもってピアースが真琴に対抗し、グラップラーとフェンサーという似て非なるもの同士が戦い始めた。
 だが真琴は妊婦であり、ピアースが強化人間であることが勝敗を分ける。
 ジュグと血の滴る音と共に真琴の腹部がピアースのルベウスによって貫かれたのだ。
「ぃや‥‥だめ‥‥私の‥‥いやぁぁぁ!?」
 真琴は戦闘中であることも忘れ、零れ落ちる血をかき集める。
 男の子であれば夫の名前、女の子であれば死んでしまった妹の名前と決めてもいた。
 死んだ夫の形見でもあり、未来への希望がこのとき消える。
「いい感触だな〜♪」
「この最低の下衆がっ!」
 目の前で起きた惨劇にレオノーラがキレ、覚醒すると共にピアースをアサルトライフルで突撃しつつ撃った。
「弱いのが悪いんだよぉっ!」
 迫ってくる銃弾をピアースはかわし、笑いはじめる。
 そのピアースを背中からキアルクローが心臓を貫いた。
「がはっ‥‥アンタもあとみじけぇのにしぶてぇな‥‥死神か悪魔みたいだぜ。最後に楽しめたぜ‥‥サイコーだ」
 キアルクローを放っていたのは傷ついた真琴である。
 しかし、通常の覚醒状態よりもトライバルが全身に広がっていて、髪も真紅に染まっている。
「そぉだよ‥‥私は悪魔になったンだから‥‥」
 心ここにあらずといった状態で腹から溢れる血をもろともせずに真琴は闘いを続けだした。
「覚醒の第二段階? 待ちなさい、あなた持たないわ‥‥よ‥‥」
 真琴に警告をだそうとしたレオノーラを遠くから放たれた銃弾が貫く。
 弾道の先にはセレスタと同じように狙撃ポジションを取っていた百地・悠季(ga8270)がいた。
「私も馬鹿よね‥‥妊婦相手に引き金を絞れないなんて‥‥くっ」
 全てを撃ち抜いて終わらせようとしていた悠季が自嘲しながら血を吐く。
 自分を庇って死んだ旦那との間に出来なかった未来を見たきがしたのだ。
 再びスコープを覗くとクラークが睨みつけている。
「頃合ね‥‥場所を変えましょう」
 人類側もアスレード側も関係なく能力者を殺してきたスナイパーライフルD−713をもって悠季はその場を離れだした。

●変わる世界‥‥、変わる人々
「昔の俺なら、ほぼ間違いなくあんた達の側にいたんだろうな‥‥。でも、そんな俺を変えてくれた恩人達がここにはいる。だからこそ、ここを破壊させる訳にはいかねぇんだ!」
 肩で息をはじめたジンは清四郎と戦い合いながら自分の変化を語り、通じ合えないかと刃を交えあった。
「が‥は‥‥なんで、かな‥‥今頃にな、って出来る、なん、て思うんだ、ろうな‥‥」
 傷ついた清四郎の虚ろだった瞳に活力が戻った。
 国士無双を捨て、侍としての誇りとしていた蛍火を抜く。
「いい目に戻ったな、あんた‥‥。最後の決着つけようぜ!」
「人生‥‥最後の一撃だ、いざ‥‥参る!!」
 誇りを取り戻した清四郎がジンに向かっていった。
 ジンが突撃してくる清四郎へ隼風を<両断剣>と<流し斬り>を合わせた必殺の一閃でもって相手をする。
「我が、一撃‥‥は、流‥‥星、我が、一刀は‥‥誇りなり!」
 一閃を背中に一度担ぎ直し、体の動きにあわせて大きな薙ぎ払いを発生させ、ジンの槍を弾いた。
 そのまま手を刀の鍔元から柄尻まで横滑りさせ、相手に間合いを見誤らせる必殺技を清四郎は放つ。
 5年前から戦いながらも一度も出せなかった己の流派最高の一撃を死を前にして打ち出したのだ。
「‥‥ここまで、か。いざ死ぬとなると呆気ないもの、だな‥‥」
 胸から血を流したジンはそのまま息を引き取る。
「出せた‥‥最高の、一、振り‥‥親、父‥‥ぐはっ」
 だが、ジンとの戦いで酷く傷を負っていた清四郎も口から血を吐き出すとジンに折り重なるように倒れた。
「クスクス‥‥死んじゃえば皆一緒だよね‥‥?」
 敵も味方も死んでいく中、J・Dは歪んだ笑顔を振りまいてセージに向かっていた。
 セージは目を閉じ、J・Dの攻撃を受けるような素振りを見せる。
「敵を断つのは力に在らず、技に在らず、刃に在らず。斬ると決めた心の在りよう――即ち覚悟」
 J・Dの月詠みがセージに触れようとした瞬間にセージは目を見開いて<豪破斬撃>、<紅蓮衝撃>、<急所突き>の三種あわせた技をカウンターで放った。
「無神流奥義――『奮鶻砕神(フンコツサイシン)』! 羽ばたく隼は、神をも砕くぞ」
 セージの放った刹那による一撃はJ・Dの月詠を砕き、そしてJ・D自身も斬り裂く。
「あはは‥‥これで終わりかぁ‥‥。残念だけど‥‥よかった‥‥」
 横一文字に線が入り上下に体が引き裂かれるとき、J・Dは本当の笑顔を浮かべていた。
 また一つ命が散り、どちらが勝っているのか、負けているのかさえわからない状況が続く。
「まさか、こういう再会をするとは、思わなかったでありやがるですよ」
 シーヴは目の前でシーヴを庇って倒れるベルディットの奥を睨んだ。
 ベルディットの背中には大きな鎌、それを無造作に引き抜いたのは鳳である。
「致命傷じゃない、苦しむだけ苦しんでも生きなきゃならない‥‥そう、今の俺たちのように!」
 鳳の目は常軌を逸しており、会話ができるとは思えない状態だった。
「絶望に負ける気はねぇです! シーヴにゃ守りてぇモンがありやがるですから」
「それを失ったとき、絶望しないと言い切れるのか、君はっ!」
 引き抜いた鎌にあるトリガーを鳳が引くと内臓されたSMGが火を吹きシーヴを襲う。
 鳳の言葉に一瞬動きの遅れたシーヴだが、お腹の子供を守るようにコンユンクシオを構えて弾丸を防いだ。
 ガードに集中したシーヴに迫るよう鳳が間合いを狭め大鎌を振るう。
 直撃コースを軌跡が描きシーヴの肌を傷つけた。
 幾度となく攻防が続いたあと、不意にシーヴをつわりの嘔吐感が襲う。
「君の力はこんなものじゃなかったはず‥‥そうか‥‥そんな状態で‥‥」
「だったら、どうだっつーんです」
 狂喜を帯びていた鳳の顔が一瞬緩み、シーヴが不思議そうに見ると鳳の肺を銃弾が突き抜けた。
「この辺が潮時か‥‥無事、生き残るんだよ」
 憑き物が落ちたような顔をした鳳は胸元を押さえてその場から走りさる。
 鳳を撃った先では悠季がスコープを覗いていた。
 ボロボロの体で<活性化>しても回復が追いつかない状況でも悠季は自らの目的を果たそうとしている。
「そこまでして何になる? 自らの命を賭けてまで仲間を殺してどうするというんだ!」
 悠季をボロボロにしてきた本人でもあるクラークが悠季の足を撃った。
 銃弾の当たった箇所が痙攣するようにびくついて動かなくなる。
「昔の敵も味方も‥‥一掃できたらならば民間人だけで立ち直れて前に進めるのだから‥‥皆、居なくなってしまえば良いのよ」
 足が動かない状況でありながらもスナイパーライフルD−713を握った手は離さず視線は獲物を探していた。
「‥‥悪いが、俺にも譲れない物がある。消えるのは貴様だ」
 悠季の額に銃口が当てられる。
「いた‥‥最後の獲物‥‥」
 それでも悠季は白くなる意識の中で撃つべきものを見つけていた。
 ダァァンと二つの銃声が同時に鳴り響く‥‥。
 命の灯火がまた消えた。
 
●元凶の消滅、そして‥‥
『ぬ‥‥ぐっ。何だ、この感覚は‥‥!』
 近距離戦に持ち込み優位に立っていた宗太郎が花にトドメを誘うとしたとき、動きに揺らぎが生まれる。
 一瞬の隙を見逃さず、花は護身用に持っていた苦無をずぶりと宗太郎の腹に刺し込んだ。
 震える手を押さえ、両手で奥まで苦無を入れていく。
 そして近づききったとき、花は顔を上げ血に濡れた唇をそっと重ねた。
「‥‥愛しています‥‥この先も‥‥ずっと‥‥貴方だけを」
『うぉ‥‥あぁっぁあっっ!?』
 花のキスを受けた宗太郎の体に異変が起きる。
 獣のような叫びが当たり一帯に広がりだした。
「一体何ご‥‥」
 叫びへの反応とスキルを多量に使った代償でアスカの動きが止まる。
「余所見をしてんじぇねぇ‥‥よ。どっちにしろクスリでぼろぼろの状態で俺様に勝とう何ざはぇェンだよっ!」
 動きの止まったアスカへアスレードの抜き手が胸部を砕いて刺さり、血に濡れた体を動かしていた心臓を握りつぶした。
「がはっ!? ‥‥うぐっ‥‥ようや、く、ここまで‥‥畜生‥‥」
 冴城アスカは戦うために前へ前へと進んできた29年の生涯を終えた。
「‥‥アス、レードっ‥‥ぉおおお!」
 長らく発することのなかった宗太郎本来の声が飛び出し、その勢いは止まることなくアスレードを狙う。
 全身の傷から血を噴き出しながら、全ての練力を槍に込め命を賭けた一撃を放った。
 アスレードはアスカを貫いていない手で宗太郎の攻撃を受け止めるが、ヨリシロとなりまた能力者としての力が上乗せされた宗太郎の勢いをとめるにはいたらない。
「タノシモウゼ‥‥‥‥アスレードぉぉぉぉ!」
「俺様もヤキが回ったか‥‥テメェの執念を舐めていたなんてよぉぉぉっ!」
 アスレードが気迫を込め、弾き返そうと力を乗せた。
 だが、全身に炎を纏い限界を超えたランスチャージに負ける。
「なにぃ!?」
 ここ数十年、味わったことの無い感情をアスレードはえた。
 ドムンとランス「エクスプロード」が火を噴き、アスレードの体を大きく吹き飛ばす。
「ぐ‥‥てめぇ‥‥やりやがった‥‥な‥‥」
 肉を抉られ、長らく離れていた『死』を近くに感じ出したアスレードが全力を出そうとしたとき、悠季が放った銃弾が額を貫いた。
 目が白くなり、体の半分以上が炭の様になったアスレードが地面に崩れ落ちる。
「アスレードっ! 宗太郎クン!」
 二人の名前を同時に叫び、花が近づく。
「‥‥ごめんな、花」
「謝らなくていいから、私も『さようなら』はいわないから‥‥いつかまた、貴方とめぐり合うために」
 宗太郎の謝罪を花は溢れる気持ちを抑え、手を握ることで答えた。
 最後に宗太郎は声にならない言葉を伝える。
 
 ――また、いつか――
 
 最後に二人の気持ちは通じたのだった。
 
●終末に向かって‥‥
「アレ? 真琴殿、静かになったね。そっか、やっと歌を聴いてくれるんだね。いい歌だよ? きっと真琴殿も好きになるよ」
 血塗られたメイド服の皐月が銃弾で蜂の巣になり、大型チェーンソー『Nightmare on Friday』で頭部を砕かれた真琴にヘッドホンを当てている。
 真琴は答えることなく、静かに沈んでいた。
 最後の言葉は皐月には伝わっておらず、手に持ったポータブルCDプレイヤーからは綺麗な歌声が大音量で流れ続けている。
「ね?いい歌でしょ? ‥‥‥聴こえない? 大丈夫だよ。真琴殿の傍なら‥‥聴こえそうな気がするんだ‥‥」
 その言葉を最後に皐月もぐったりと倒れこむ。
「こんな世界‥‥誰も望まなかったはずなのにどうしてこんなことになったのでしょう」
 倒れていく様を眺めていたリティシアは静かに呟く。
 形勢はビジター側に傾きマスドライバーを守りきれているも、勝利の喜びよりも悲しみの方が大きかった。
「アスレードが倒れたそうだ、これ以上の抵抗をするのは無意味な筈だ」
 リティシアが空を眺め、その空の下ではセレスタを追い詰めた正和が生き残った蒼穹武士団を引き連れて最後の勧告を行っている。
 ククリナイフとハンドガンで応戦をしていたセレスタだったが、大勢の敵に囲まれもはや退路さえない。
「何故です? もはやこんな理想も希望も無い世界で生きることに意味など無いでしょう‥‥!」
「理想や希望は与えられるものではなく、自分たちで見つけ、努力することだ」
 迷いの末に得た答えをぶつけるセレスタに対して正和は迷いの無い答えを返した。
「わかりました‥‥では、願わくば平和な世界を」
 頭の横に銃口を当てたセレスタが自害を持って決着をつける。
「セレスタさ‥‥あれ?」
 その光景を見ていて手を伸ばそうとしていた浅川が起き上がるとそこはラストホープの兵舎だった。
「私は確か戦った末に死んだような‥‥けれど、セレスタさんが自殺するところも見ていたわけで‥‥」
 内容を思い出すとおかしな部分が多くみつかり、首をかしげながらも浅川はベッドから降りる。
 窓を開ければ青い空が広がっていて、夢で見たような紫色はしていなかった。
「おかしなところもありましたが‥‥悪くない夢、でしたね」
 苦笑しながら浅川は月一で書いている妹への手紙を書く準備を始める。
 浅川のように奇妙な夢を見たという能力者が何人もいたが、病気やらなにやらではないとULTからの公式見解もでていた。
 5年後の世界‥‥。
 遠いようで近い未来は今の行動から決まろうとしていた。