●リプレイ本文
●とりあえず言いたい事
「グランエミター‥‥こりゃ垂涎モノだぜ。くくく、俺様の全脳細胞が喜んでやがるよ!」
マッドサイエンティスト宜しくテト・シュタイナー(
gb5138)は黒い笑みを浮かべる。
「やっぱでっけぇロボは浪漫だよな! しかしこうもでっけぇと、KVってんじゃものたりねぇぜ」
テトと同じようにフーノ・タチバナ(
gb8011)は興奮しながらまくし立てた。
「この中では一番ね。名前を変えた方がいいと思うけど」
鯨井昼寝(
ga0488)は『エミタ』と名づけられていることに抵抗感があった。
「同じく‥‥。名前にエミターと、あの人の名前をつけるのはちょっ抵抗あるんです。本人のせいではないとしても」
瓜生 巴(
ga5119)も昼寝に同意を示す。
現在のバグアの幹部と能力者が能力者たらしめる希少金属と名前が一緒なのは皮肉な話だ。
「なので、折角ですからゴンザさんの名前を取って‥‥ゴンザムとかゴンザウラーとか、ゴンザット3とか‥‥」
「てめぇらの体に埋め込まれているものにちったぁ敬意をしめせよな。まぁ、名前は考え直してやらぁ」
会議始まると同時に言いたい放題言い出す能力者達にゴンザレス・タシロは頭を抱えて唸る。
「そう言えば、グランエミターの名前の由来はなにかな?」
「俺を含めた能力者の中に埋め込まれている希少金属からだよ。力の源なんだからよ。あとはゴロだゴロ」
静かに話を聞いていた夢守 ルキア(
gb9436)が落ち着いたところで由来について聞き始めた。
「個別名じゃなくて分類名なんてのはどうだ? グランエミターだからGEなんていいかもな。‥‥そのまんまだけどよ。くぅ〜っ、乗れるヤツが羨ましいぜ!」
「おう、こういうのは傭兵も喰らいつくからなぁ。データとって傭兵向けの機体開発につかったらどうだ?」
「話を聞いていただろうが、ワンオフだからこいつが作れるんだよ。まっとうな戦場じゃ変形も出来ないマシンは使えねぇよ。本題に入るぞ、本題に」
未だ熱の下がらないテトとフーノをたしなめながらゴンザレスは机を叩いて会議の開始を宣言する。
「我輩たちの出番はないようであるな」
「まったくだ‥‥だが、折角北米から来たんだ、最後まで付き合ってやろうじゃないか」
様子を見ていた八之宮・忠次とジェイコブ・マッケインは会議室の後ろで行く末を静観することに決めたのだった。
●議題1〜操縦系〜
「俺は全員が同じコックピットに乗る様なものがいいと思います。機体を動かす人、策敵・情報を行う人、火器担当というふうに3人にそれぞれ担当を設ける形がいいかなと」
千道 月歌(
ga4924)が第一の議題である操縦系について意見を上げる。
「俺も同じ意見です。ただ、担当の一人は稼動型シールドを装備させて防御に専念してもらうのが良いとは思います。イークシードコーティングをシールドに持たせらればベストですが‥‥」
3人乗りの巨大KVという言葉に惹かれてやってきた和 弥一(
gb9315)が分業に同意しながらも独自のアイディアを展開した。
戦場のシンボルになるだろうKVなのだから、持久戦を重視した意見をだす。
「ドライバー、ガンナー、ナビゲーターくらいがいいと思います。どちらかといえば砲台風とでもいうんでしょうか?」
ストレガ(
gb4457)は守りというよりは攻めに重視したポジショニングの意見をだした。
「まぁ、予想通りっちゃ予想通りだがよ。もともと3人分担は決まっていた‥‥というより話を聞けよ『ようやく』動かせる代物だって」
一通り意見を聞き終えたゴンザレスはため息を漏らして答える。
最低限でも操縦と索敵は分担しなければシステム処理を制御しきれないというのが3人乗りの理由なのだ。
SESドライブ3つ分の出力調整を人がやるか、他の部分を人がやってシステムに任せるかは変更可能であるが、ボディよりも過剰な出力があるためバランスをとらなければ危険な代物である。
「なるほどな‥‥グライドルのようなKVやAU−KVを脱出用に乗せることはできないのか?」
「10mのものにそれだけのオプション積んだら武装とか禄につかえなくなるぞ? 3人分乗せていたら空間が勿体無さ過ぎる」
月城 紗夜(
gb6417)は生存性について質問をするもあっさりと返された。
「脱出なんてのは3人乗り自転車があればいいんですよ。いざというときはSESドライブを暴走させて超強力自爆装置! 搭乗者はいわくつきで〜実は怪しげな動力炉が本当で〜」
そんな中、なにやらスイッチが入ったかユーフォルビア(
gb9529)が一人ペラペラと話し出す。
内容は空想とも妄想ともいえるものでさすがのゴンザレスも目を点にするほどブッ飛んでいた。
「まぁ、自爆装置はあったほうが良いかもしれないな。パイロットの脱出が最優先だがバグアに鹵獲されるのも惜しい」
ユーフォルビアの妄想に突っ走っている話の中から月城はいたって冷静につかえそうなネタを拾い上げて提案してくる。
「まぁ、いざって時だが使わないに越したことはねぇだろうな‥‥」
自爆装置については是非のはっきりしない回答をゴンザレスは呟くのだった。
●議題2〜武装〜
「脱出用KVが無理なら、マルチロックオン対応の多連装ビームランチャーとかSES搭載の大剣などの物理兵装とか収束モード、拡散モード切り替え可能のビーム兵器なんかどうでしょうか?」
ストレガは涼しげな顔をしながら比較的無茶に近い武装アイディアを持ってくる。
「巨大な武器は必要だな。巨大なトマホーク!」
「いや、ドリルですよドリル!」
「グランエミターより大きい15m〜20m位の巨大剣いいですよ。刀身の各部に制御用スラスターがついていて切れ味をましているとか」
「ハルバードの方が良いと思いますけど‥‥」
武装アイディアとなるとフーノ、ユーフォルビア、月歌、弥一らの意見に熱が異様に篭りだした。
浪漫を求めてやまない瞳がキラキラと輝いている。
「まぁ、まてよ。装備が異常なものになるほど整備性や調達性に欠ける。ここは南米のジャングルなんだぜ? 武装は店売り装備でマルチロックウェポン見たいに使えるほうが俺は良いと思うぜ」
「私もテトのいうように武装は最低限必要なもの程度でいい。実用性が伴ってこその浪漫。見た目が派手なだけじゃ野暮よ」
冷静に意見を飛ばしたのはテトと昼寝だ。
「まぁ、実質3機分だから擬似的なマルチロックは不可能じゃねぇが‥‥。パイロットの負担が高いぞ? 三連装で一体なら通常通りだろうが3機を狙うなら一度照準あわせをした後でない限り無理だろうよ」
ゴンザレスは萎れた煙草を口に咥えながら仮想データの提示をしていく。
固定武装としても3個以上になるほどパイロットの数がいるとしても上手に扱えるかといわれれば難しいとのことだ。
「腕4本生やして全てにバルカンとかつけたかったんだけどなぁ」
「んなセンスのねぇメカはバグアメカだろうに」
「それもそうか‥‥」
フーノが残念そうに呟くがゴンザレスに突っ込まれて納得する。
冷静に考えてみれば悪役メカといっても過言ではないデザインだった。
「マルチウェポンだがホーミングというのができれば嬉しいかな?」
「そこで指向性ビームランチャーですよ。これで万事解決」
「できるわけねぇだろ。それだけで半年以上開発に掛かるっての。答えは簡単だ。ホールディングミサイルをつみゃあいい。非物理がいいならUK−10AAEMあたりをランチャーと選択式ってのが無難だろうよ」
ストレガに突っ込みを入れつつもゴンザレスはルキアに可能な策を答える。
どちらかといえば突っ込まれる方が多いゴンザレスだが、今回ばかりは突っ込みを入れすぎて疲れてきていた。
●議題3〜特殊能力〜
「脱出機は陸戦用にしてオミットした機能をまたつけてしまうので本末転倒です。ワンオフなのに機体を放棄する発想も本末転倒‥‥ならば、倒れなければいいんです」
発想の逆転といわんばかりに巴がアイディアをぶつけてくる。
「そこで特殊能力として自己修復機能‥‥練力をバイパスして変わりに運用。燃料が切れるまでとにかく動くというのはどうでしょう?」
「私としては既に土台としてあるアクセルもしくはイクシード・コーティングの装備を求めたいところだ。正直時間の無い状態での開発になるだろうから穴ができてしまう。戦に投入することを考えるならそういう穴は減らしたいからな」
月城は安定性を重視した意見をだした。
こちらは弥一やストレガなど多くの賛同もある。
「今求められているのはそんな守りではなく、いかにも強面でゴツいマシンが実は知的な電子戦機でしたというギャップよ。3機分のドライブと人員を無駄なく使うならこれよ」
かなり変わったアプローチをかけてきたのは昼寝だ。
ジャミング中和の分類である3種を一機に集約しようという話である。
「ただの一機で、効果範囲内の味方機全ての回避、命中値を大幅に上昇。また見通しの悪い熱帯多雨林地域で、活用頻度の多いと思われる地殻変化計測器を装備。ジャングルの戦闘で必要なのはアタッカーではなく腰の据わった情報機体よ」
「面白いアイディアじゃないか。俺たち軍人が扱うってことを考慮しているし、連携補助としても十二分に使えるな」
静かに見ていたジェイコブの口から賞賛の言葉が出てきた。
鬼軍曹と呼ばれ恐れられている彼の口から褒め言葉がでるのはよほどのことである。
「特殊能力っていうことになるかどうかわからないが、脱出補助のためにパージと共に煙幕が欲しいかな?」
「他の陸戦機には普通んなもんついてねぇからな‥‥こいつだけにつけるのはどうにもな。まぁ、危険度は高いからありっちゃぁありだな」
ルキアから提示されたパージ煙幕案はテトなどからも賛同もあり採用の方向で検討することとなった。
「タロスから何か分捕って歩行形態で飛行とかさせて欲しいです。謎のエネルギーで使える障壁[バリア]とか〜」
「ああ、はいはい‥‥そこまでできりゃあいいな」
再びスイッチが入って語りだすユーフォルビアをゴンザレスは涙をほろりと流しながら宥める。
「大まかな議題はこれで終わったようであるな。我輩とジェイコブはここで失礼するのである」
「タシロは死なないように頑張ることだ」
静観していた二人が出て行き、いつもの開発会議よりどっと疲れる会議はこれにて閉幕となった。
●最終結論
「今までの相談を統括するとだ‥‥グランエミターで決定だがこのままじゃ開発にはいれねぇ」
休憩を挟み、静まった会議室で開口一番ゴンザレスが口にしたのは否定的な意見である。
「かなり無茶聞くっていってただろ? どういうことだよ」
フーノは不満そうに口を尖らせてゴンザレスに食いついた。
「出来なくはねぇが、期間もコンセプトも違いすぎる」
「そういや、期間はどれくらいだったんだ? 先に聞くのを忘れていたぜ」
「最長一年、武器の開発なんかも含めてだな。そうするとだ全部踏まえたり取捨選択するにしても難しすぎる」
テトの質問に答えながらゴンザレスは手持ちのノートPCのキーボードを叩きディスプレイへ表示をする。
「ということで期間とコンセプトごとに分けて再度傭兵から選んでもらう形式をとるぜ」
ゴンザレスが表示したのは昼寝の支持したオールラウンド電子戦機、テトやフーノの上げている多武装多数ロックタイプ、そして当初の決戦兵器仕様の3つだった。
「まとめなくてもいいと入ったが、こうもばらけると決めるにきめれねぇってことでわりぃが今回は結果だせねぇ方向出た飲むぜ」
「名声も金もくたばったら意味がないからな‥‥慎重であるに越したことはない」
ゴンザレスの謝罪に月城は頷きを返す。
「あー、最後に一つだけ‥‥カラーリングは直した方がいいと思います」
「悪いが、そこだけは譲れねぇ‥‥そこが俺の浪漫だ」
疲れていた顔のゴンザレスだったが、弥一の言葉には不敵に笑い返した。
ゴンザレス・タシロ、やはり幾つになっても浪漫を忘れない男である。