●リプレイ本文
●はぢめての任務
「どうして私の初任務がもぐら叩きなの!?」
依頼書を受け取った美沙・レイン(
gb9833)は叫んだ。
すぐさまびっくりした同業者の傭兵やら受け付けのオペレーターの視線が集中する。
「お、あんたも参加するんだ。変な依頼なのは‥‥半分諦めたほうが良いぜ」
レインに声をかけてきたのはカンパネラ学園の制服を着ている山戸・沖那(gz0217)だ。
「そう‥‥なの?」
「そうだよ、俺は山戸沖那、一緒の依頼受けるなら高速移動艇の場所まで案内するぜ。年は下でも経験は俺のほうが上だからさ」
レインの目の前にいる少年は日本刀のようなものを担ぐと付いて来いといわんばかりに進む。
「こうなったら、誰よりも多くモグラ退治をしてやるわ」
頼もしい背中にレインも負けてられないと拳を握った。
以前支給された巨大ピコピコハンマーはこのためだったのかなと思いつつレインは沖那の後を追いかける。
初任務がギャグにしか思えないのはとりあえず横に流して‥‥。
●真剣勝負?
「この私が‥‥作業着に軍手をはめることになるとはね‥‥」
常に美を求める淑女ことシュブニグラス(
ga9903)は己の姿を見直してため息を一つもらす。
危険依頼で無いことと、依頼主が敬愛するお嬢様の白川仁宇であること以外余り気にしていなかったのだが‥‥。
目の前には芋畑、そしてそこから顔を出したり入れたりしているキメラの姿があった。
「軍手はめるの‥‥サツマイモ掘り出すときでよかったわね」
巨大ピコピコハンマーを担ぎ、半分諦めてシュブニグラスは芋畑へと降り立つ。
「やる気でねぇ‥‥」
既に芋畑ではブロンズ(
gb9972)をはじめとして、何人もの能力者が巨大ピコピコハンマーで応戦していた。
ピコピコピコピコピコと気の抜けるような音が芋畑に響く‥‥SESが無いため倒せないはずなのだが、モグラと見ると叩きたくなるのは人の性(さが)かもしれない。
「ピヨることしかしません‥‥残念です」
無表情に1.2mもある巨大ピコピコハンマーをキメラに叩きこんでいたセシリア・ディールス(
ga0475)は言葉で悔やんだ。
しかし、表情に表れない上、叩いている相手がサツマイモとモグラを足して二で割ったようなキメラであるためシュール意外の何者でもない。
「セシリア‥‥ぴこぴこが足りませんの! 手首を利かせてこう、こうですわ」
ぴこっぴこっとロジー・ビィ(
ga1031)の持っているハンマーが唸りを上げてキメラを叩くが、ピヨピヨと目を回すだけで倒れる気配は無かった。
円らな瞳でくるくると回る姿はちょっとだけ可愛いかもしれない。
だが、相手はキメラだ‥‥いかにふざけた外見をしていようとも、いかに可愛い動きをしようとも人類(主に一般人)にとっては脅威なのだ。
「‥‥ロジーさん、巨大ピコハン[これ]ではフォースフィールドが破れず、倒せないのでは‥‥」
「そんなことはありませんわ! ピコこそ正義! ジャスティス・オブ・ピコピコですわ!」
ロジーはピコピコ叩くことでピコ分(?)を吸収して元気になったのか、言動が意味不明になってきている。
まったくもって平和な光景だ。
「ロジーさん‥‥後ろですっ!」
しかし、ピヨりは連打で治るもの、気を取り戻したサツマイモグラキメラが体当たりを仕掛けてくる。
「ナイスアシストですわ!」
ロジーはセシリアの叫びにあわせて振り向くと共にいつの間にか持ち替えたのかアルティメットフライパンで<ソニックブーム>を放ってさっくりとサツマイモグラを割った。
グロテスクなものがでるかと思ったら、中身もサツマイモのように白くどうやって生きていたのか謎である。
「‥‥普通にSES搭載武器の方が早いですね」
セシリアは巨大ピコピコハンマーをぽいっと投げてバトルスコップを出してサツマイモグラキメラの脳天をカチワリだした。
サクサクッサクッと小気味よい音と共に脳天を割られたサツマイモグラキメラは倒れていく。
「‥‥こりゃ楽できそうだな」
ぼへーと眺めながらブロンズは凶行に走るセシリアを見ていた。
ブロンズがピヨらせたキメラはゼンラー(
gb8572)が超機械「シャドウオーブ」を使い黒いエネルギー弾で潰している。
「昔を思い出すねぃ‥‥この感じ!」
動きまわり、甚平が脱げるのも気にせず‥‥否、全裸を愛するゼンラーにとっては望むこととばかりに無駄に激しく動いてサツマイモグラキメラを倒し続けた。
倒してはいるものの、どうもキメラの数は減っていく様子がない。
「眠いとか言ってる場合じゃないか‥‥」
眼を見開き、覚醒したブロンズは機械剣αとハンドガンに持ち替えて応戦を始めた。
覚醒をしなければSESは動かず、キメラのフォースフィールドを破ることはできないのである。
シュールな光景から一転した殲滅作戦が動き出した。
●いっつ、そー、しゅーる
「しかし‥‥芋キメラとは‥‥」
コートを脱いで臨戦態勢をとりながら紅月・焔(
gb1386)は静かに呟く。
「‥‥バグアもふざけた事を‥‥」
しかし、焔が装備をしていくものは熊の手をかたどった文字通りの”熊手”やタオルだった。
「だが‥‥今回は本気で行かせてもらうぜ?」
ガスマスクの奥の瞳が怪しく輝く。
「さぁて! いっちょやったるべよ」
完全装備を整えた焔は何故か方言していた。
バグアをふざけたという前に己の姿を今一度確認してもらいたいと思うが、言うだけ無駄かもしれない。
「手早くサツマイモグラを退治するのだ! 普通の芋も食べられてしまう!」
そんな焔を他所に依頼主である白川仁宇はいたって真面目に100tハンマーでサツマイモグラを打ち砕いていた。
ドスンという大きな音と共にキメラは潰され、マッシュポテトのようになっている。
「にうたん、ナイスネーミングッ! 他にも亜種でサトイモグラとか、ジャガイモグラとかもいそう‥‥だとしたら豊作だよね!」
仁宇の鼓舞にラウル・カミーユ(
ga7242)がぐっとサムズアップを返した。
穴から飛び出してきたサツマイモグラにバトルモップによる大振りのアタックも忘れてはいない。
「民を脅かす存在なれば、諸手を上げて喜ぶわけにもいかぬ!」
細い腕で100tハンマーを担ぎ直すと仁宇は次のサツマイモグラへと狙いを定めていた。
「ぴょこぴょこと、何かおちょくられてやがる気がしやがるですよ‥‥」
一方、円らな瞳をしながらもぴょこぴょこと穴から出入りしているキメラに苛立ちを感じながらシーヴ・フェルセン(
ga5638)はアルティメットフライパンでサツマイモグラを叩く。
ゴンと鈍い音がなりキメラは沈黙する。
その様子に脅威を感じたのか別のキメラが潜ろうとしたがシーヴのメトロニウム傘が貫いた。
血が吹き出ないのでグロテスクではないのだが、生モノだったら酷い光景である。
「お見事、シーヴ殿」
シーヴの活躍に思わず感心した仁宇だが、その後ろに迫るキメラに気づかないでいた。
「仁宇、そっち顔出してやがるですっ! ――つーか、<ソニックブーム>っ!」
ブオゥンと風が唸り、真空波が芋畑の上を撫でるように走りキメラをスパッと割る。
「しーちゃんノリノリだね!」
「シーヴはこういうの向いて無いと思うです‥‥」
ウキウキとバトルモップでキメラと戯れるラウルを横目にどこか遠くを眺めたくなった。
●収穫開始
「さすがに、暑いわ‥‥もう少しみたいだけど」
百地・悠季(
ga8270)は土まみれたツナギの間から引き伸ばされた皇帝ペンギン親子のプリントシャツを覗かせる。
冬の京都は頬を刺すような寒さがあったのだが、モグラ退治の運動により暑くなっていた。
汗を拭う悠季の手にはバトルスコップとアルティメットまな板‥‥凡そキメラ退治に使われるものとは思えない装備である。
「こ、この〜!! ちょこまかと動かないでちょうだい!!」
レインがピコハンで最後のモグラを叩くと、沖那が夕凪で<ソニックブーム>を放ち潰しきった。
芋畑という慣れないフィールドの戦いのためか、何度もつまずいたりしたレインの姿は悠季に負けないほど土にまみれている。
「コレでラストか?」
沖那は夕凪を鞘に収めてあたりを見回す。
ぽこぽことあれほ出てきたモグラの姿は見えなかった。
「こちらはいないみたいよ。さぁ、普通の芋もあるから本当の収穫をはじめましょう」
超機械でもある黒の書を閉じてシュブニグラスは皆に向かって声をかける。
刻まれたり、潰されたり、叩かれたりしたサツマイモグラキメラの残骸と共にちゃんとしたサツマイモも協力して掘り出しはじめた。
「お芋‥‥お芋‥‥お芋‥‥です」
墓標のようにスコップを地面に突き刺したセシリアは無表情のままに芋のつるのしたにあるサツマイモを掘り起こしていく。
目が付いていればキメラと見間違うほどに大きなサツマイモを掘り当てるとロジーが「お見事ですのー」とキャッキャッとはしゃいだ。
「しかしこのキメラの見た目‥‥なんだかちょっと、汚いような‥‥まあ、食べたら一緒かねぃ」
サツマイモグラキメラの残骸を集めていたゼンラーはじーっと眺めるも、深く考えることを放棄する。
故人いわく『腹に入れば皆同じ』だ。
「まっとうに食える様なものはあるのか?」
ブロンズが残骸を集めながら、頭を掻く。
眠そうな目は先ほどまでキビキビとキメラを倒していた男のようには見えなかった。
「う〜ん、バラバラなものなんだからスィートポテトパイにすればいいと思うんだヨ」
「私も芋餡のおはぎを作るつもりだったから逆に潰れている方が楽ね」
ラウルと悠季はお菓子としての利用を既に考えている。
「それは楽しみだ‥‥」
眠そうなブロンズの目が一瞬見開かれたがすぐに戻った。
甘いものが好きらしい。
「形のよいものは焼き芋にするとしよう。その他の調理は各自出来るものを好きにやってもらって構わないぞ? しかしだ、皆土まみれになってしまったが故に仁宇の屋敷で湯冶するとよい」
仁宇も踏まえ、畑を走り回っていた面々は服も汚れていたため次の作業の前にお風呂タイムをすることとなった。
●しんぷる いず べすと
「芋〜洗い♪ 芋〜洗い〜♪ 芋洗い〜マスク〜♪」
一時期流行った妖怪のテーマソングのリズムに乗せて焔はガスマスク姿のまま芋を洗い続ける。
冬の寒空の下で地味な洗い作業は手から温もりを奪っていった。
鼻歌を楽しそうに歌ってはいるものの焔の機嫌は悪い。
「寺は苦手なんだよなー」
ひと段落をしてガスマスクの口元から白い息を吐き出しながら焔は空を見上げた。
「この洗ったサツマイモグラキメラを貰っていきますわね」
「貰っていきます‥‥」
焔を上から見下ろすにロジーとセシリアが姿を見せると焔が洗ったサツマイモグラキメラを貰っていく。
「俺は某頭痛薬同様‥‥半分はやらしさで出来ている!」
絶妙なアングルで何かを堪能した焔は機嫌を直して芋を洗い続けた。
一方、サツマイモグラキメラを貰ってきたロジーとセシリアはゼンラーに集めてもらった落ち葉の山へサツマイモグラキメラをぽいっと投げ込む。
「なんというか、これは火葬なのか調理なのか僧侶としては悩むところだよねぃ‥‥」
投げ込まれたサツマイモグラキメラの行く末を火をつけながらゼンラーは眺めだした。
「これが私の初任務‥‥」
炎と煙を上げる落ち葉の山を見つめながらレインは少したそがれる。
キメラをピコピコハンマーで叩き、温泉に入ったあとにキメラを焼いて食べようとしているのだ。
普通のサツマイモももちろん入れてはいるが複雑な気分である。
「いろんな経験をこれからしていくんだから、このくらいでへばっていると持たないぜ。特にこの京都はなー」
レインが持ってきたお茶を飲みながら沖那は京都で戦ってきた魚ギルマンやら、胸を揺らすゾンビの話をした。
「キメラもいろいろいますわよ。わたくしが戦ったのは‥‥イエティや丑の刻参りをする鬼でしたかしら?」
「拙僧はアメリカで人間に卵を産み付ける昆虫とも戦ったねぇい‥‥バグアの考えることはとても不思議だねぃ」
「そういうキメラとも戦ったりするのか‥‥これで驚いている場合じゃないわね」
先輩能力者からの話を聞き、レインは世界の広さを感じる。
これから先、いろんな任務をやっていかなければならないのだからサツマイモグラキメラくらい‥‥やっぱり微妙な気分だった。
「そろそろいいんじゃないかねぃ?」
落ち葉の山をいじりろうとゼンラーはバーベキュー用の串を持って近づこうとする。
「いけませんわ! 相手は元はキメラ注意をすべきですわ。復活するかもしれませんもの!」
ゼンラーを静止させたのはロジーだが、その格好はいつの間に着替えたのか迷彩服に安全ヘルメット姿だった。
「‥‥なるほど‥‥流石ロジーさんです‥‥」
ロジーの説明に納得したセシリアは服の上から迷彩服を着込み、安全ヘルメットをつけて匍匐全身の姿をとる。
「進みますわよ、セシリア! 奇襲をしかけてくるかもしれませんもの」
じりじりと匍匐全身で近づきながらバーベキュー用の串でフェイシングをするかのように落ち葉の山をロジーは突っついた。
「‥‥でもロジーさん、これ‥‥無意味な気がとてもしてきました‥‥」
セシリアはロジーの姿と落ち葉の山を見ながらぽつりと呟く。
バーベキュー用の串はおよそ50cmでありこの距離で襲ってこないのなら息の根が止まっているとみていい気がしてきた。
「ただの焼き芋とは違うのです、ただの焼き芋とは‥‥ッ!」
セシリアの突っ込みをロジ一は声で一蹴する。
「‥‥これが私の初任務」
セシリアとロジーのやり取りを見て、レインは再びたそがれるのだった。
●ああ、無情 In 炊事場
「もしかしてと思ってやがったんですが‥‥炊飯器ではなくカマドでありやがるですか」
炊事場ではシーヴが汗をたらりと流し、目の前のカマドを眺めていた。
芋を細かく刻んで調味料と共に米と一緒に炊くというものにチャレンジしようとしていたのだが、カマドはボタン一つでご飯を炊いてはくれない。
「できたできた〜♪」
シーヴの後ろではピッピッと電子レンジが調子し終えたことをつげ、ラウルが嬉しそうにパイを取り出す。
ボタン一つでパイは完成していた。
「米はカマドでたくのが一番美味しいのだ。大丈夫、火加減など仁宇が伝授いたそう」
なんともいえない気持ちで電子レンジを眺めていたシーヴへ仁宇がカマドの使い方を教え始める。
着物に着替え、割烹着に身を包む仁宇を湯上りで香水やトリートメントセットでキッチリ整えたシュブニグラスは心のファインダーにその姿を焼き付けていた。
シーヴが四苦八苦している間に、炊事場では次々と芋料理が出来上がっていく。
エプロン姿の悠季が作った芋餡のおはぎは特に珍しく注目の的となった。
「後でレシピ教えてもらえないかしら? きっと平良さんは気にいってくれると思うの」
シュブニグラスは仁宇の様子に後ろ髪惹かれつつも悠季のおはぎを食い入るように見つめる。
西洋人でありながら芋ようかんの作り方を習得していたりするシュブニグラスは磨理那のためにも和菓子のレパートリーを増やしたいと常日頃思っているのだ。
「ええ、いいわよ。まだ、餡はあるから塗るのを手伝ってもらえる?」
悠季は笑顔で了承し、残った芋餡でおはぎを作りはじめた。
「おっきーがまりにゃんにお土産が欲しいいっていたからパイもミンナで食べる以外にも切り分けた方がいいよね」
「シーヴもこれが炊き上がったらおにぎりにして用意をするです。ちったぁ上手くなったところを見せてやらねぇとです」
スィートポテトパイの焼き具合を見て満足そうに頷いたラウルは思い出したようにパイを切りだす。
「山戸君が平良さんに手土産ね‥‥なら、私も芋羊羹を作りましょう。シーヴさんも時間があるなら手伝う?」
「芋羊羹って簡単なものです?」
「カマドでご飯を炊くよりは簡単よ」
上目遣いにシーヴがシュブニグラスへ確認を取ると、シュブニグラスは輝く笑顔を返すのだった。
●尼丹生如来様とお食事
焼芋など全ての調理が終わった後、一同は本堂に集まり宴を行うこととなった。
「ついでになんか祈っておくか‥‥」
昼寝をして調理時間をすごし、オーブンで焼いた焼き芋を備えたブロンズは手を合わせて慎ましい胸の如来像へ祈る。
「これからもにうたんを守ってください」
「健やかに育つ白川さんを見守ってください」
「シーヴは慎ましくねぇですが‥‥これ供えておくです」
ブロンズの次にラウルのスィートポテトパイ、シュブニグラスの芋羊羹、シーヴの芋ご飯お握りが尼丹生如来の前に供えられていった。
表情は変わってないはずだが、いつにも増して微笑が優しくなったように思える。
「彼女は、ささやかな胸を如来像として描かれているけど‥‥それって、大事な要素だったりするのかねぃ?」
祈りを捧げる人を眺めていたゼンラーは素朴な疑問を仁宇へとぶつけた。
「大事かどうかは仁宇にはわからないが、この尼様のおかげで南丹の大地は無病に生活できているのは確かだ。仁宇はとても感謝しているし、競合地帯としてバグアと戦えているのも尼丹生如来様の加護といえよう」
尼丹生如来の由来は慎ましい胸とは一切関係がない。
名前の付け方に誤解を招くものがあるようだ。
「何でここは微‥‥慎ましい胸なんすか? あ? 聞いてねぇっすよ? 貧‥‥慎ましい胸とは。俺のパッションどうしてくれんすか?」
ガスマスクをはずさない焔がゼンラーと仁宇の間に割り込んでくる。
「何でといわれても‥‥しかしながら、その発言はセクハラに当たるぞ。能力者として先輩とはいえ、精神を鍛えな押さねばならないな」
「まぁまぁ二人とも。ここは宴席なんだからちゃんと食べてからやるといいんだねぃ。慎ましい胸は悪くない。ありのままに受け入れられない、歪んだ視点こそが悪いんだよぅ!」
フォローしているのか追い討ちをかけているのかわからないゼンラーの仲介で仁宇も焔も落ち着き席に着いた。
「では皆のもの、手を合わせて‥‥いただきます」
「「「いただきます」」」
一仕事の後、寒い冬にはたまらない暖かい焼芋を皆で食べる。
「こういうのも悪くないわ‥‥さて、次の私の任務はなにかしら?」
甘く焼けた芋をほうばるとこういう依頼も満更ではないとレインは思い始めていた。
「どんな依頼でも楽しく過ごせるといいわね? 一緒になることがあればよろしくね」
シュブニグラスはレインの隣に座り奇妙な視線を送っている。
もちろん、レインがそれに気づくことは無かった。
「どれもコレも美味しいです‥‥キメラも美味しい‥‥」
意外といった雰囲気をただよわせたセシリアが芋を食べる。
サツマイモグラキメラもホクホクであり、美味しかった。
友達へのお土産に持っていこうと思えるほどに‥‥。
寒い冬のひと時を暖かい芋と共に過ごした能力者達であった。