タイトル:希望の風の旅立ちマスター:橘真斗

シナリオ形態: イベント
難易度: 普通
参加人数: 38 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2010/01/02 13:41

●オープニング本文


 チャイナドレスの人物とサルーンガールの人物が互いに手を握って相手の出方を見る。
「「じゃんけんぽんっ!」」
 出された手はチャイナドレスの方がパー、サルーンガールの方がグーとなっていた。
「いやったー、それじゃあ式はアタシのところでやっちゃうわね♪ 二次会はソッチ担当ということで」
 チャイナドレスの人物こと、中華飯店凛々亭のオーナー、凛華・フェルディオ(自称20代・男)はじゃんけんに勝った喜びを諸手を挙げて表現している。
「仕方ないねぇ‥‥。式の方には客として顔出しはさせてもらうからね?」
 肩を落としながらサルーンガールの人物ことロデオバー『Big Shot』の店主であるキャロライン・ブリューレは凛華に釘をさした。
「それはいいわよ〜。でもライディちゃんも挙式なのね〜」
「出会った頃は頼り無い奴だったけれど、成長したもんだよ」
 当人を他所に二人が話していると、その場にいながら無視されていたライディ・王(gz0023)が口を開く。
「あのー、決まりましたか? というか僕を除いて盛り上がらないでください」
「ごめんなさいね〜。人前結婚の流れはちゃんと押さえているから気にしなくっていいわよ〜」
「ど、どうもです‥‥えーと、費用の方なんですがこれくらいまでならだせるんですけど‥‥」
 むぎゅっと抱きつきながら話す凛華に思わず顔を赤くしながら本題を進めようと電卓を見せた。
「足りないねぇ」
「足りないわ‥‥けど、折角の晴れ舞台なんだからオマケしちゃうわよ。多くの人を呼んで店を宣伝してくれたら許しちゃう♪」
「ありがとうございますっ! じゃあ、早速招待状を書いて配りますね」
 足りないといわれて沈んでいたライディは元気になり、立ち上がる。
「じゃあ、準備の方を進めるかねぇ」
「そうね」
 凛華とキャロラインも『Redio−Hope』を後にした。
 希望の風にとって、新たな旅立ちの風が吹く‥‥。

●参加者一覧

/ メアリー・エッセンバル(ga0194) / 奉丈・遮那(ga0352) / 榊 兵衛(ga0388) / クラリッサ・メディスン(ga0853) / 鷹代 由稀(ga1601) / アッシュ・リーゲン(ga3804) / 葵 コハル(ga3897) / 夏 炎西(ga4178) / リン=アスターナ(ga4615) / 鈴葉・シロウ(ga4772) / ファルル・キーリア(ga4815) / 雪村 風華(ga4900) / クラーク・エアハルト(ga4961) / 智久 百合歌(ga4980) / ラルス・フェルセン(ga5133) / ハンナ・ルーベンス(ga5138) / リゼット・ランドルフ(ga5171) / シーヴ・王(ga5638) / 鐘依 透(ga6282) / アンドレアス・ラーセン(ga6523) / 九条院つばめ(ga6530) / ティーダ(ga7172) / ラウル・カミーユ(ga7242) / シェリー・神谷(ga7813) / 百地・悠季(ga8270) / 守原有希(ga8582) / 椎野 のぞみ(ga8736) / 終夜・朔(ga9003) / シュブニグラス(ga9903) / 神撫(gb0167) / クロスエリア(gb0356) / 鹿嶋 悠(gb1333) / 嵐 一人(gb1968) / 鳳覚羅(gb3095) / 風雪 時雨(gb3678) / ルノア・アラバスター(gb5133) / 天原大地(gb5927) / 相澤 真夜(gb8203

●リプレイ本文

●前準備〜BigShot〜

「おはよう御座います〜今日はキッチンお借りしますね〜」
 椎野 のぞみ(ga8736)はBigShotに裏口から入ると同時に店主であるキャロラインへ挨拶をする。
「ご苦労さんだね。料理の数が多いから助かるよ」
「すみません、食材だけでも冷蔵庫に入れさせてもらえませんか? 披露宴の準備を先に済ませておきたいので‥‥」
「わかってるよ。人手があるって安心感があれば違うものさ。いってやりなよ」
 申し訳無さそうに顔をだしてきた夏 炎西(ga4178)をキャロラインは笑顔で見送り仕込みを続けた。
 のぞみもエプロンをつけ、手を洗い食材を刻み始める。
 規則正しいリズムが人の少ないキッチンに広がっていた。
「ええと、夏さんはこちらに来ていますか?」
 再び裏口のドアが開かれると、服の端々から包帯を覗かせる九条院つばめ(ga6530)が顔をだす。
「えっと、今さっきでていかれました‥‥けど」
「す、すれ違い‥‥うぅ、こんな体なばっかりに迷惑かけてしまっています」
 のぞみが心配そうにつばめを見ながら答えるとつばめの体が重力に引っ張られるように沈んだ。
 その体を鐘依 透(ga6282)がささえる。
「大丈夫です。僕が支えていますから、先に他の方へ連絡して新婦たちに知らせないようにしながら進めていきましょう」
「何かの相談でしょうか?」
「はい、ガーデン小隊で寄書をしようという話になったんです。だから、夏さんにも協力してもらおうと‥‥メアリーさんからもメッセージが届いているんですよ!」
 つばめが取り出したのは小さな色紙だが、そこにはガーデンの元総大将たるメアリー・エッセンバル(ga0194)の直筆メッセージシールが中央に貼られていた。
 その周りを既に何人かのガーデン小隊のメンバーがお祝いのメッセージを飾っている。
「新婦のシーヴもえらい人気のようだねぇ。疲れているなら、中に入って少し休んでいきな」
 ドアを挟んでつばめとのぞみが話を続けているとキャロラインが透と共につばめを中に入れた。
 大きく負傷しながらも祝いに来てくれる友人がいるシーヴのことをキャロラインはほんの少し羨ましく思う。
 二人を中にいれ、ドアを閉めようとしたとき今度は守原有希(ga8582)が屋台を引きずりながら姿を見せた。
「お世話になります。あの、中に入れてもらえないとですかね?」
「キッチンやカマド類はこっちにもあるんだからこっちを使って貰いたいんだけどねぇ‥‥使い慣れたものがいいっていうのもわかるさ。ただ、裏口からは入れないんで置いていくならそこにおいておいとくれよ」
 有希に向かってキャロラインは複雑な思いを口にする。
「ご協力感謝とす。では、うちも凛々亭の方へいって参ります」
 キャロラインの心遣いに感謝しながら有希はBigShotを後にした。
 
●前準備〜新婦編〜
「付き合ってるのは知ってたけど‥‥、もうそんなに経つのね」
 凛々亭に用意された控え室の扉の前に立ったファルル・キーリア(ga4815)は中にいる新婦のことを思い返す。
 自分の小隊に所属していたときから交流があったことは知っていたが、先を越されるとは予想がいのことだ。
 ノックをして中にはいると、着付けのための仕度をはじめるシーヴ・フェルセン(ga5638)の姿がある。
「おめでとう、昔のシーヴからは想像出来ないわね」
「そ、それはいわねぇ約束です」
「くっ、しかもこんなに胸があるなんて」
「それはいうがよし」
 シーヴの着付けをしながら、ファルルは彼女が明るくなったことを目と耳で感じていた。
(「出会ったときは無表情であったのに、今ではこんなにコロコロ表情を変えるなんて‥‥」)
 恋をして変わった乙女を見て、ファルルは自分も出会いがあれば変わるのだろうかと自問するが答えは出てこない。
「シーヴ、入っても良いかな?」
「コハルですか、いいですよ」
 ドレスの着替えを終え、メイクに移る前に葵 コハル(ga3897)が控え室に入ってきた。
 新郎新婦と共に友人であり、今回の司会進行役を務める。
「あたしの一番とも言える友達同士が結婚するなんてね〜。こんなサプライズそれもこんな嬉しいやつはそう無いよ。今も充分幸せだと思うけど、これからもっと幸せになって、みんなの希望になってよね」
「こ、こらまだメイク中ですっ!」
 感極まったコハルがメイク中のシーヴへと抱きついた。
 楽しい笑い声がこだまして、明るい雰囲気が控え室を包みこむ。
「シーヴ、結婚おめでとう。Something Borrow(幸せな結婚している人からの借り物)よ」
 コハルと共に入ってきていた百地・悠季(ga8270)がシーヴに桃色のハンカチを渡した。
 自らが周りから幸せに思われるようにという願いを込めた一品である。
「ところでシーヴ、ウェディング・ドレスの白って『あなたの色に染まります』っていう意味らしいわよ?」
「もう、シーヴは‥‥ライディに‥‥」
「くっ‥‥本当に幸せなのね‥‥」
 ふっと思いついた弄りを試すファルルだったが、返ってきたのは照れどこか惚気だった。

●前準備〜凛々亭〜
「ライディ君たちに料理を食べてもらうのは久しぶり。腕が錆びたって言われないようにしっかり作らないとね」
 咥え煙草を今日はやめてリン=アスターナ(ga4615)は凛々亭のキッチンで腕を振るう。
「お久しぶりね〜、カレシさんは今日はいないのね?」
 店主の凛華はリンと再会のハグをするとキッチンを往復しながら話を持ちかけた。
「生憎と来れないみたいね。伝言は預かってきたわ」
 ふっと微笑みを返してリンは魚介のサラダを用意していく。
「あ〜、もう食材が足りないかな。ちょっと近くのスーパーまで行って来るね」
 参列者の人数と出来上がっていく料理の数を数えていた雪村 風華(ga4900)が冷蔵庫の中身と相談した上で買い付けを決めた。
 風華は傭兵アイドルとして名を上げてはいるものの料理の腕前はよく、妥協しない強い心を持つ少女である。
「あら、冷蔵庫にまだ一杯あるけどたりないの?」
「今日のメンバーは結構食べる子がいるから、ちょっと不安なんだー。じゃあ、いってきます」
「はーい、いってらしゃーい。ラウルちゃん達はケーキの方どう?」
 風華を見送った凛華はケーキの用意をはじめているラウル・カミーユ(ga7242)とアッシュ・リーゲン(ga3804)の様子を見に行った。
「ラッキードラジェの仕込みも出来たからネ。うん、いい感じだヨ」
「まさかライディとあのシーヴが結婚するとはね‥‥事実は小説より奇なり、って事だな?」
 二人の作っているケーキは二段式で、スポンジはライディの色である紫を表したラズベリーとシーヴの色である赤を表したストロベリーを交互に重ね合わせた特別仕様である。
 周囲を生クリームで固め、中にアーモンドの仕込みもつけた一品だ。
 作り上げた二人の顔は実に晴れやかである。
「うんうん、準備もOKね。乾杯のお酒の方は大丈夫かしら?」
「この白熊にぬかりはありません。一角をお借りしますが、普通のカクテルからノンアルコールカクテルまで用意できます。とりあえず、一杯目はジュースとシャンパンでいきましょうか」
 顎に手をあて『きらん』という効果音がでそうな笑顔を鈴葉・シロウ(ga4772)は凛華へと返した。
「期待しているわよ、白熊ちゃん♪ あとは新郎新婦の準備だけね。空いている人は料理を並べにいくの手伝って〜」
 出来上がったサラダ類を持った凛華が一足先に式場となったホールに向かおうとすると天原大地(gb5927)とリゼット・ランドルフ(ga5171)に遭遇する。
「よう、人手足りてないとかあるか? 飾りつけ終わったんで手伝いにきたぜ」
「私も何かお手伝いできればと思いましてきました。料理を運べばいいんでしょうか?」
「料理運ぶのおねが〜い、大地ちゃんはお酒の方を白熊ちゃんと一緒によろしくねん♪」
 クルリと振り向きチャイナドレスの裾を揺らしながら凛華は二人に指示をだすのだった。

●前準備〜新郎側〜
「ご結婚おめでとうございます。私と彼の絆を結んでくれた風も、今度は自分の絆を結ぶ番ね。けしてシーヴさんの手を離さないように。守ってあげてね?」
「百合歌さん‥‥ありがとうございます。飽きられないよう僕もがんばりますよ」
 新郎側の控え室では智久 百合歌(ga4980)の挨拶にライディ・王(gz0023)が頭を下げる。
 百合歌はライディの行ったラジオ番組で告白を行い、その彼と今は夫婦として幸せに過ごしていた。
 『Wind Of Hope』と呼ばれるライディのラジオが結んだ縁のあるカップルがいるのである。
「ライディ君は新たな家族となりますねー、宜しくお願いします〜」
 にこにことした顔のラルス・フェルセン(ga5133)が深々とライディに対して頭を下げた。
 新婦の兄であり、ライディの義理の兄ともなるため、緊張して硬いお辞儀をライディは返す。
「まったく可愛い嫁さんもらいやがって、末永く幸せにな!」
 硬くなったライディの体を嵐 一人(gb1968)が挨拶共に軽く叩いて解した。
「ついに結婚‥‥か。早い気がしてたけど、実は結構経ってるのな。結婚おめでとう、音響での盛り上げは任せてくれよ」
「アンドレアスさんもありがとうございます。プログラムの方は本当にお任せする形で申し訳ないです」
 嵐の次に挨拶をしたのはアンドレアス・ラーセン(ga6523)である。
 ライディとはラジオ番組を通じて知り合い、イベント等にて音響を担当してきた信頼できる兄貴分だ。
「任せておけよ。そろそろ時間じゃないか?」
 時計を確認したアンドレアスが式の開始時刻が迫っていることを知らせる。
「うぅ‥‥緊張してきた。大丈夫かな‥‥」
「大丈夫ですよー。自信もってください〜」
「は、はい‥‥」
 ライディは大きく深呼吸をすると控え室から出て行くのだった。
 
●始まりのとき
『僭越ながら本日の司会を務めさせて頂く葵コハルと申します。何かと不手際も多いかと思いますがよろしくお願い致します』
 会場へ一同が入ると桜色のノースリーブワンピース姿のコハルが壇上に立って、挨拶を始める。
 軽いノリの多い彼女だが、このときばかりは真剣そのものだった。
「新郎新婦を入場と共に紹介させていただきます」
 コハルの言葉が終わると共に、ドアが開きライトグレーのタキシードを着たライディ・王が白のAラインドレスにヴェールを纏ったシーヴと腕を組みながら現れた。
 二人の先を白いワンピースに身を包んだルノア・アラバスター(gb5133)が小さな花をまきつつ進み、シーヴの後ろを終夜・朔(ga9003)がドレスの裾を持って続く。
「あれが‥‥シーヴの旦那さんなんだ‥‥優しそうで安心できるな」
「番組のことは知っていたけどああいう感じの人だったのね」
 コハルに紹介されながら自分の席に向かって進むライディを見たティーダ(ga7172)とシェリー・神谷(ga7813)が各々の感想を漏らした。
 シーヴの友人として参列しているが、新郎についてはあったことなかった二人は若干の不安を持っていたが、ゆっくりとだが確実な足取りで進むライディの姿に安堵する。
「こんな時代だからな。一組でも幸せなカップルが生まれてくれる事は戦場に身を置く者としては何よりの喜びだ」
「シーヴさん、幸せそうですわ。やはり愛する人の隣にいることが女にとっては何よりの幸せなんでしょうね」
 別のテーブルでは戦友でもあるシーヴの結婚を純粋に祝う榊兵衛(ga0388)とその妻であるクラリッサ・メディスン(ga0853)が二人の姿に自分たちの姿を重ねていた。
「家もシーヴさんとライディさんには負けないのですよ〜。ね、レオノーラ?」
「ふふ、そうね?」
 同席にはライディに挙式の手伝いをしてもらったクラーク・エアハルト(ga4961)とレオノーラ・ハンビー(gz0067)が同席し仲のよさを見せている。
 祝われる側から祝う側へ、傭兵同士のカップルも増えまた結婚していくものも多かった。
「しっかし、今年は多いわねぇ‥‥。聞いただけのも含めて‥‥知り合いだけで‥‥4組‥‥いや、5組?」
 また別のテーブルでは鷹代 由稀(ga1601)が相方不在の参加で今年の挙式カップルについて数えている。
 戦闘が激化する中で幸せを手にした傭兵も多くいる‥‥何故今年が多いのかまではわからなかった。
 そうこうしているうちに新郎と新婦は席へ着き、ルノアはシーヴからキスを受けると自分の席へと戻っていく。
「‥‥しかし、あんなに緊張して大丈夫でしょうか。まぁ‥‥意外な一面を見れて面白いですが」
 ルノアの席の隣に座る鹿嶋 悠(gb1333)は式の進行が続く中、緊張硬くなっている新郎新婦を見て苦笑すると共に微笑ましさに思わず頬を緩ませたのだった。
 
●多くの人に認められた瞬間
『新郎はシーヴ・フェルセンを妻にすることを誓いますか?』
「誓います」
『新婦はライディ・王を夫にすることを誓いますか?』
「誓います‥‥」
 コハルが普段は神父や牧師がやるようなことを行い、新郎と新婦への確認を取っていく。
 静かに進行する式に誰もが注目していた。
『みなさまには御異議はございませんか』
「異議ありません、シーヴさんおめでとうー!」
「異議なし、おめでとう!」
 一人一人に確認していく中、相澤 真夜(gb8203)やクロスエリア(gb0356)が元気に承認したかと思えば‥‥。
「異議はないね。おめでとう」
「おめでとうございます。二人の場合ライディさんのほうが尻にしかれるのでしょうか?」
 鳳覚羅(gb3095)と神撫(gb0167)が静かに承認をした。
「異議はないわ。おめでとう、どれほど弄られるか楽しみにしておくわね?」
 茶化すようにシュブニグラス(ga9903)が承認をし、最後にハンナ・ルーベンス(ga5138)の確認を待つばかりとなる。
「私は姉として二人の結婚を承認します‥‥」
 慈愛に満ちた瞳で二人を見つめていたハンナの言葉を受け、ライディとシーヴは婚姻届のサインと捺印を済ませた。

●事実から真実へ
「シーヴが花嫁だなんて、まだ夢みてぇです‥‥」
 婚姻届に署名をはじめるシーヴの手が震えだした。
 夢のように思っていた出来事が今、目の前のサインと捺印によって完了する。
 晴れて二人は名実共に夫婦となる瞬間が近づいているのだ。
 隣のライディも緊張をしているのかいつもより表情が硬い。
 それでも、そっとシーヴの手を握る手はいつもどおり暖かく優しかった。
「これで終わりです‥‥」
『今ここに署名と捺印が完了しました。皆様ご確認ください』
 シーヴが捺印を終えるとコハルが婚姻届を取り会場中に見せる。
「皆に認めてもらえるのがすごく嬉しいです‥‥」
 小さな拍手の中、シーヴは静かに呟き微笑んだ。
『これより新郎新婦が誓いの言葉を朗読します。皆様ご静聴お願いします』
 コハルの合図でライディとシーヴは席から立ち、寄り添うようにして一枚の紙に書かれた原稿を読み始める。
 
 〜誓いの言葉〜
 
 私共二人は、今日のよき日に、皆様の前で誓いあって結婚を致します
 
 この広い世の中に終生の伴侶として選び選ばれましたことをまことに幸福と思います
 
 今日より心を一つにして深い理解と愛情と誠実とをもって夫婦の道を守り、苦楽をともにし平和な生活をいとなんで子孫繁栄のみちをはかり
 
 終生二人の愛情の変わらぬことをお約束致します
 
 何とぞ末長くお守護下さるようお願い致します
 
 ここに謹んでお誓い致します
 
 2009年12月17日
 
 (夫)ライディ・王 (妻)シーヴ・フェルセン
 
『次は指輪交換となります。新郎新婦は前に出て指輪の交換をお願いします』
 朗読という一仕事を終えた二人だったが、すぐさま呼び出されて新郎新婦席と来賓席の間へと歩いていった。
 多くの視線が集中する中、ライディの上司でもある米田時雄が指輪を持って二人の間に立つ。
 米田の持っている指輪は二人がおそろいで新調したものだ。
「シーヴ、これで‥‥」
 ライディがシーヴの左手の薬指に結婚指輪をはめる。
 その小さく光る指輪にシーヴは涙がにじんでくるのがわかった。
「俺の方にも指輪をお願い」
 そっと手を握るライディに優しく頼まれシーヴはライディの指へ指輪をはめる。
 二人の指にメビウスリングデザインの指輪が光った。
『お二人のご結婚を祝して、乾杯をお願いします』
 コハルの合図で来客者達が一斉に立ち上がる。
『乾杯ではなく、おめでとうございますでいきます』
「「おめでとうございます」」
 シロウの用意した飲み物をそれぞれが手に持ち掲げて祝いの言葉を捧げた。
『皆様。ありがとうございます。コレにて式は‥‥』
「ちょっと待ったー! 誓いのキスが無いヨ。キット皆もそれを望んでいるはずだヨー!」
 ラウルがコハルの進行に突っ込みを入れる。
「そうよ、やっぱり結婚式には熱いキスで締めるのが普通よね」
 ラウルの突っ込みにシュブニグラスが乗っかった。
 それらが呼び水となって周囲のKissコールが強くなる。
「うぅ‥‥これはするしかねぇですよね?」
「う、うん‥‥。じゃあ‥‥」
 周囲の反響にあわせてシーヴとライディは向き合い、顔を近づけて互いの唇を重ねあうのだった。

●幸せのお裾分け
「あんなに幸せそうなシーヴは初めてみました‥‥」
「本当に幸せそうですね」
 隣に寄り添うつばめの言葉に透は同意を返す。
(「つばめさんの晴れ姿も見れる日が来る‥‥のかな‥‥」)
 しかし、内心はつばめの晴れ姿のことを考えていた。
 恋人であっても、そのとき隣にいることができるのか透にはわからない。
 ただ、もし自分であったらば一番の幸せだと確信はできた。
「どうかしました?」
「なんでも‥‥ありません‥‥」
 照れているのか赤面しているつばめが上目遣いで透を見上げてくるも透は心の中に浮かんだ言葉を沈める。
「あ、あたりましたー!」
 少し気まずい雰囲気になるかと思いきや、真夜が大きな声を出して立ち上がった。
 切り分けられたウェディングケーキに仕込まれたラッキードラジェがあったのである。
「一番は真夜ですか‥‥おめでとうです」
 淡ローズのプリンセスラインドレスにティアラへとお色直しをしたシーヴの手から真夜に小さなオルゴールが手渡された。
「僕の方もあたったようです‥‥何か申し訳ない気もしますが‥‥」
「二番目は遮那ですね‥‥おめでとうです」
 遮那の方へシーヴが近づき紫色のキャンドルを手渡す。
「私も‥‥見つけました」
「見つけるためにそんなに急いで食べなくても‥‥ほら、口元汚れていますよ」
 最後に見つけたルノアは鹿嶋に口元を拭かれながら白く糖衣掛けされたアーモンドを口から取り出した。
「フラワーガールもありがとうです。最後のルノアにも幸せのお裾分けです」
 ドラジェを確認したシーヴがルノアへ琥珀色のキャンドルを手渡す。
「悠ちゃんいいものもらった‥‥」
「よかったですね‥‥ルノアさん。シーヴさん‥‥ちゃんと美味しいものを食べさせていますから安心してください」
「ふふ、安心したです。二人とも楽しんでいって欲しいです」
 鹿嶋の言葉にシーヴはゆっくりと微笑みを返して自らの席へと戻っていった。
「悠ちゃん、また料理が来た」
 ルノアが期待に満ちた目で待っていると炎西がテーブルの真ん中に大きな白身魚を揚げ、野菜と茸の餡かけしたものを置く。
 中国での発音では魚と結が同じ音であり縁起物なのだ。
「披露宴でのメインディッシュですね。どうぞ味わってください」
「頂きます‥‥」
 炎西に促がされるまでもなく、ルノアは目の前の料理を食べはじめる。
 幸せのおすそわけはこんなところにもあった。

●たどって来た跡
『えー、私が実家からの手紙を読ませてもらいますが〜。まずはー、とても綺麗ですよ‥‥シーヴ』
 マイクの前に立ちながらもほろりと流れる涙を拭いながらラルスが話を切り出す。
 持ち出してきたのはスウェーデンの兄弟からの手紙だった。


 仲睦まじい様子が見られるのを、楽しみにしているわ。おめでとう。長女

 年上の義弟、妹を頼むぜ。国で待ってるからな。次男
 
 姉ちゃん泣かしたら許さねぇぜ! 幸せになりやがれよ。三男&四男

 ライディお兄ちゃん初めまして。お姉ちゃんと幸せになってね。三女


 シンプルではあるが、それだけにシーヴに対する思いが伝わる手紙である。
『最後に私から〜。喧嘩は大いに結構ですがー、不幸にだけはー、‥‥しないでくださいね?』
 ラルスの顔が笑顔ではあるが目が笑っていないことに誰もが気づくが誰もが何もいわなかった。
「はい、シーヴのことは幸せにします。‥‥お義兄さん」
 ライディの言葉に頷くいたラルスが下がると、男モノのスーツでピシっと決めた由稀が出てくる。
『続きましてあたしの個人企画を披露するわ。ライディマネージャーとはIMP結成以来からでー』
 仕事の中で撮ってきた写真やDVDを使ったスライドショーでライディのマネージャーとしての仕事振りを振り返るというものだ。
「よぅ、お疲れ。‥‥で、やっぱ寂しいんだろ?」
 席に戻ったラルスを迎えたのはアンドレアスである。
 手には酒ビンを持ちグラスへ並々と注いだ。
「シーヴは小さい頃からー、責任感の強い子で〜。弟達にものすごく慕われていましてー」
 涙をハンカチで拭いながらスイッチの入ったラウルがアンドレアスにシーヴのよさを語りだす。
 披露宴終了まで続くとはアンドレアスはこのとき予想できなかった。

●飛べよブーケ
「シ−ヴさん、折角ですからブーケトスの方やられてはどうですか? ブーケは自分の方で用意しましたから」
 風華の用意した卵春巻きや炒飯なども平らげられ、披露宴も終わりに近づいてきた頃、クラークがシーヴの方へ近づき、小さなブーケを差し出す。
「やってきなよ、プログラムには無いけど折角だからさ」
 お色直しで黒のタキシードを着たライディに勧められ、シーヴは軽く頷き白百合と紫の薔薇のあるブーケを受け取った。
『おおっと、ここでイベントだぁ! ブーケトスがはじまるので、受け取りたい人は集まれー!』
 式も終わり堅苦しい流れから軽いノリに戻ったコハルがマイクで声をかけるとブーケを求める人が集まる。
「ブーケトス! ブーケトス! ここは気合を入れなきゃダメですよねー!」
「受け取って花嫁さんになりたいの♪」
「相沢真夜突貫します!」
 ティーダと朔、さらに真夜はブーケトスに気合をいれていた。
 傭兵であっても年頃の女の子、夢を見たい年頃である。
「ブーケをとったくらいで春が来るなら苦労はしないわ‥‥」
 強がりかフンと鼻を小さく鳴らし参加を拒むファルルのような人もいた。
「強豪がいるから今回は不参加ね。皆がんばれ〜」
 ブーケトスに気合をいれる面子をシェリーは応援している。
「取れたらいいかな‥‥」
 少し控えめではあるがブーケに興味のあるリゼットも参加する。
 悠に肩車をされたルノアをあわせて総勢5人での対決となった。
『えー、ルールというほどでもありませんが皆さん覚醒なしのフェアにいきましょう』
 コハルからマイクを受け取ったクラークが温度の高くなる空気を前に注意をいれるとシーヴが投げやすいように場所を空ける。
「それじゃあ、いくです」
 くるりと後ろを向いたシーヴがブーケを手に持ちタイミングを計りだした。
 緊張が高まったとき、ブーケが宙を舞う。
 駆け出すよりも落下地点をそれぞれが探り、手を伸ばして掴みに掛かった。
 一人の手に宙を待ったブーケが収まる。
「やった、とったよーシーヴ!」
 ブーケを引き寄せたのはティーダで、ティーダはシーヴに抱きつき喜びを全身で表した。
『はいはーい、司会の方から連絡です。そろそろ二次会の用意もできたそうなので皆さん移動しましょう。その前に新郎新婦が移動しますのでライスシャワーにて見送りお願いします』
 拍手が巻き起こり、喜びと祝福で彩られる中コハルが次なるイベントへの移行を指示する。
 悠季が先に外へと出て、それに続くように能力者達も悠季からまき米、ラルスから花びらを受け取ると外に出た。
 ライディとシーヴが手をつなぎあって外へと出ればシャワーのように米と花びらが舞う。
「ガーデン[うち]のアイドル泣かしたらただじゃ済まんよ? ともかくおめでとう」
 神撫は眩しいほどの笑顔で祝辞を送るもライディに向かって撒き米を節分のごとくぶつけていた。
 暖かい(一部厳しい)見送りを受けた二人は二次会会場であるBigShotへと一足先に向かう。
「我々も参りましょう。宴はこれからですぞ」
 カクテルを披露し続けたシロウだったが、まだまだ足りぬとばかりに眼鏡を光らせ二次会への気合を見せるのだった。

●セカンドステージ
『本日はランディさん、シーヴさんご結婚おめでとうございます! ボクからは料理と歌のプレゼントをさせていただきます』
 二次会の口火を切ったのは料理の準備をしていたのぞみである。
 全員が到着するころには笹巻きのチマキやプレッツェル、さらには鮭のマリネや『ヤンソンさんの誘惑』と名づけられたジャガイモ料理などが並んでいた。
 もちろん、それ以外にもキャロラインの用意したステーキや守原が屋台を開いてピザなどを振舞うという披露宴に負けない豪華な宴が広がっている。
『歌は賛美歌ですが、聴いてください。百合歌さん伴奏をお願いします』
 のぞみの合図で百合歌がBigShotに備え付けられたオルガンを弾きはじめた。
 キリスト教の結婚式ではおなじみともいえる静かな旋律が流れ、それにあわせてのぞみが歌をのせる。
「のぞみさん、素敵な曲をありがとうございます‥‥でも、僕の名前はライディですから」
 歌い終えるとライディが一番に拍手をするも、苦笑と共に名前の訂正を入れた。
「あぁ!? ご、ごめんなさいっ!」
 間違った恥ずかしさに顔を真っ赤にしたのぞみは着物姿にもかかわらずキッチンの方へ猛ダッシュしていく。
「ライディの名前ってそんなに覚えづらいですか?」
「さ、さぁ‥‥」
 シーヴは首を傾げるもライディはやはり苦笑するしかなかった。
『次はお二人にスペシャルな料理がありますので、その発表です』
 炎西がマイクを受け取るとアンドレアスがドラムロール音を鳴らして場を盛り上げる。
「何だろう‥‥あれはおばあちゃんの奴だ!」
「シーヴの好きなチェットブラーもあるです」
 ドラムロールのあとに現れた料理はどちらも豪華や派手といったものとは程遠い温かみのあるメニューだった。
 しかし、どちらも新郎新婦の好物であり守原や炎西が多くの人に協力してもらった末に完成した一品である。
『レシピは教えられたものの通りです。お二人にとってとても懐かしい味に再現できたと思いますので味わってください。ご結婚おめでとうございます』
 炎西はそう締めくくりライディとシーヴの前にその料理を持っていくのだった。
 二人は嬉し涙を流し、料理を食べる。
 思わぬサプライズに驚きと共に感謝をするライディとシーヴであった。

●優しき旋律の贈り物
『はっはー、ベテランアイドルから歌のプレゼントっ! ‥‥一人は元だけど気にすんなっ つーても、あたしは一緒に歌うだけ。曲と詩はコハルちゃんのオリジナルよっ』
 スペシャルメニューを食べ終えたライディ達の前に由稀がコハルと共に現れ、マイクパフォーマンスを見せる。
『二人のために頑張って作ってみました。聞いてください‥‥光路』
 コハルが照れながら一呼吸を置くと嵐のギターが流れてきた。
 
 〜光路(こうろ)〜
 
 ♪〜〜
 
 離れた星が 惹かれ合い巡る
 夜空の中を 手探りで捜す
 微かに届く 呼ぶ声標に
 暗闇の中 彷徨い(さまよい)歩く
 広い世界にたった1人 あなたの元へ
 重ねた手から伝わる思い 温もりとなり体を満たす
 繋いだ心分かつ事なく 永遠に寄り添う

 〜〜♪
 
『ちょっと短いけど精一杯思いを込めてみました。聞いてくれてありがとう、何度もいうけど二人ともおめでとう!』
 歌い終わったコハルは相変わらず照れているのか顔を赤くしつつ頭を下げる。
『NoirからはIMPのCatch The Hope。続いてALPのALPha夢への翼なの♪』
 コハルが一歩横にずれるとNoirこと朔がライディとシーヴの正面にあたる位置に立ち、二次会に参加しているアイドルメンバーを呼んでの合唱をはじめた。
 新郎のライディがマネージャーとして支えてきたアイドル達からささやかなお返しである。
『演奏ものが続くけど、そこは勘弁して欲しいかな? 俺からは二人の永久の愛を願ってこの曲を送らせてもらうね。照明さん、雰囲気作り宜しく』
 アイドル達の歌が終わると、鳳がトランペットを片手に姿を見せた。
 鳳が吹くのは有名な豪華客船が出てくるラブロマンス映画に使われていた愛のテーマである。
 ムーディーな曲をスポットライトを浴びる鳳が静かに、そしてしっかり演奏しきった。
 その後はアンドレアスによるアコースティックギターのソロやアンドレアス、嵐、鳳、百合歌の4人が即興で組んで演奏するジャズミュージックなどが合間合間を埋めるように続く。
「こんなに豪華なセッションが聞けるなんて幸せだなぁ‥‥」
 ライディは自分たちにさまざまなプレゼントをしてくれる人々に感謝をしていた。
「ライディ様、私達からもプレゼントがございますの」
 素敵な曲の後に姿を見せたのはアッシュ‥‥もといメイド少女(?)アシュリーである。
 手に持っているのはメイド服で、笑顔ではあるが半ば有無を言わさない気迫で迫ってきていた。
「え、いや‥‥ぼ、僕は‥‥」
「これからはシーヴちゃんに独占されちゃうんだもの。今日くらいいいじゃないのよ。ね? ね?」
 後ろに後ずさろうとしたライディをいつの間にいたのか凛華が逃げ場を塞いでいる。
 哀れ、ライディはメイド服へと着替えさせられしばらく撮影されたのだった。

●酒の友に
「ウィスキー、ロックで。しかし、あのシーヴが結婚よ? 出会ったときからは想像もつかないわよねぇ‥‥」
 ファルルがカウンターでシロウと共にバーテンをやっているティーダへと注文をする。
「もうちょっとこう、女性らしいカクテルとかどうですか? ‥‥でも、本当に不思議ですよね」
 ワイルドな注文に少し汗をたらしつつティーダは頼まれたメニューをだした。
「私にしては貴方も昔に比べてずいぶん変わった方よ」
 表情のコロコロ変わるティーダを見てファルルは目を細める。
「湿っぽい話はやめてトコトン飲んで祝おうぜ。うい、カンパーイ」
 ファルルのグラスへ大地が自分のグラスを軽く当てるとグイグイと飲みはじめた。
「旧知の戦友達にめでたい事が続いている。今日の二人に続く者が現れて、また皆とこうやって祝杯を挙げたいものだな」
「やはり女性にとっての一生一度の晴舞台ですわね。今日のシーヴさんは本当に輝いていましたし。次に幸せを手に入れるのはどなたなのかしらね? ブーケを手に入れたティーダさんかしら?」
 近くのテーブルで話をしていた兵衛とクラリッサが話に加わる。
「そ、そんなこと‥‥あったらいいなーとは思いますけど‥‥」
 クラリッサに話を振られたティーダは顔を赤くして照れた。
「スウィートな空気は実にいいですなー。酒が美味しくなります‥‥だが、今日以外でやると責任もちませんぞ」
 チビチビと片手間にアルコールを摂取しだしたシロウが目を光らせる。
「いちいち気にしてんじゃないよ。今日くらいは祝ってやろうじゃないか」
 料理をあらかた出し終えて、メインの給仕を有希にパスしてきたキャロラインがカウンターに腰掛けた。
「シーヴの姉として、祝福してあげるのが正しい姉の在り方であると。‥‥本当に、侭ならぬものですね。自分の心すら、人は思い通りに出来ぬのですから‥‥」
 キャロラインの隣ではノンアルコールの飲み物を口にするハンナがいて、祝いの席に会わないアンニュイな表情を浮かべている。
「自分の思い通りにならないから突然の出会いに恋したりもするのさ。それが人間‥‥で、寂しいときに傍にいてやれるのも人間さ」
 キャロラインはそんなハンナの肩を軽く叩いて静かに付き合うのだった。

●言葉の贈り物
「『希望の風』が動き出してから、早いものでもう2年になるわ。あの時はちょっと頼りなかったライディ君が、今やこんなに立派になるとはね?」
 リンが昔を懐かしむようにライディへと話を持ちかけた。
 スタッフとして手伝いをしていた時期はもうずいぶん前のことになる。
「ありがとうございます。これからは一家の大黒柱になるのでもっとしっかりしないといけませんね」
 頭を軽く掻きながらリンへと答えた。
「ライディさんはは、口説いたの? 口説かれたの?? そこいら辺の経緯を詳しく教えて欲しいなぁ。初デートの場所は? 初キスはどこ?」
「え、えっとそんな詰め寄ってこなくても話ますからっ‥‥」
 ずずいっと身を乗り出して風華がライディを質問攻めにする。
 一つ一つ照れながら答え、それらを聞くためにさらに女性陣がライディの方へと詰めてきた。
「ライライはこういうとき控えめだけど、シーちゃんと仲がいいからいつでも子供できそうダヨネ」
「シーヴや、孫の顔はいつみれるんだろうねぇ?」
「ラ、ラウルもコハルも気がはやいですっ!」
 ライディに人が集まる中、隣のシーヴにもラウルやコハルが意地の悪い質問をぶつける。
「二人の子供だから素敵なレディになりそうね。私も見るのが楽しみよ」
 シュブニグラスまでノリノリだった。
「盛り上がっているところごめんなさい。ちょっとしたサプライズになるのかな? 『ガーデン』の皆からのお祝いの気持ち、受け取って下さい」
 新郎新婦弄りで盛り上がっているところにツバメが色紙を持ってやってくる。
 色紙にはメッセージと共につばめを隣で支える透がデザインしたデフォルメ岩龍が描かれていた。

『結婚おめでとう。思いっ切り尻にしいてやれよ! by天原大地』
『祝福せよーっ こうしてまた人の歴史が紡がれて目指せエピローグまでハッピーに by白熊』

 シーヴさん、ライディさん、ご結婚おめでとう。
 
 お二人がこれから共に歩む道に、沢山の幸せが待っていますように!!

 PS.シーヴさんのウェディング姿の写真、楽しみにしてる!(笑)

                by メアリー

『希望の風いよよ爽やかに、鋼の龍沿いて共に福路を歩まれん事を。御二人の門出を心よりお祝い申し上げます。 by夏 炎西』
『これからも支え合って、それがお二人の戦い方でしょう。ご結婚おめでとうございます by智久 百合歌』
『ご結婚おめでとうございます。末長くお幸せに。何時までも恋人同士のような御二人でいてくださいね byリゼット・ランドルフ』
『末永くお幸せに‥‥この幸せを守っていきましょう。 byフリージア・透』
『お互いくれぐれも体に気をつけて、幸せな家庭を築いて下さい。 by九条院つばめ』
『御結婚おめでとうございます。こんな時代だからこそ、何時までも永久に幸福であれ。願わくばその一部をおすそ分けください。 by神撫』
『シーヴちゃん、おめでとう!! 大規模ではいつも頑張ってくれてありがとね。これからはライディくんが支えてくれるけど、ガーデンのみんなもいっしょだからね♪ byクロスエリア』
『二人に祝福を! お幸せに by鳳』

「こんな素敵なものありがとうです」
 戦場を共にかけた仲間たちからの想いが篭った一枚の色紙をシーヴは胸に抱く。
 一度目を伏せて頷いたシーヴは立ち上がり、皆が一望できる二回のテラスの方へ移動した。
『皆さんへ一言お礼を言わさせてください』
 マイクを通したシーヴの声が会場に広がる。
『LHに来たばかりの頃、私は表情がありませんでした。人並みに笑ったり泣いたり出来るようになったのは、夫を始め、共に戦い支えてくれた皆様のおかげです。今私は‥‥幸せです。本当に‥‥ありがとうございました』
 涙で言葉に詰まりながらもシーヴはお礼を述べた。
 ここに来てくれた人、こられなかった人、今の自分を作ってくれた全ての人へありがとうをシーヴは贈る。
 二人の未来の門出として申し分の無い日となった。

●番外
「さて、祝いの席が終わったところで‥‥三次会とかどう? 『出会いが無い・もてないを嘆く会』だけどさ」
「フハハ、そんなものにこの熊が釣れるとでも? いいだろうやってやろうじゃないか」
 二次会も終わったあと、神撫の提案した企画にシロウが乗り出す。
「あらぁん、じゃあ私も参加しようかしらぁん?」
「私‥‥いや、俺も参加したいだがねぇ」
 凛華と米田が神撫の企画に便乗し、その他にも恋に破れたりその場のノリで三次会へと乗り出した。
 次に幸せを掴む人がこの中から出るかも知れない‥‥。