●リプレイ本文
●振袖がーるず
「正月に単独番組を頂けるトコまで来ましたか‥‥そろそろゴールデンの2時間枠にも手が届いちゃったりするのカナ?」
うひひひとアイドルとは思えない笑みを葵 コハル(
ga3897)は浮かべ、しゅるしゅると帯を運び桜色地に花を散らせた振袖を着る。
武家の出身だけはあり、巫女服や和服系の着付けは一人でできていた。
「コハルさん、あの着付けを手伝っていただけますか? 着物は慣れているのですが振袖はなれていないもので‥‥」
加賀 弓(
ga8749)が肌襦袢姿でコハルに応援を頼みだす。
元々振袖は未成年の女子が着るものであり、そうでなくても未婚の女性の正装としての印象が現在でも強いのだ。
「着物が着れるなら大丈夫だと思うけど、手伝っちゃうよー。弓姉さんのお色気シーンを堪能したいしね、うひひひ」
「あ、あの私はお色気を押すつもりはありませんから‥‥確かに最近多いのは認めます‥‥認めますけど‥‥」
コハルの奇妙な笑い方に弓は汗を垂らさずにはいられない。
「弓さんは藍色で落ち着いた色を選んだのですね」
友禅模様に御所車の紋所を随所に描いた振袖を着、髪をポニーテールにまとめた大和・美月姫(
ga8994)が着替え中の弓を見る。
落ち着いた色合いは大人の弓に実によく似合っている。
「わぁ、皆綺麗‥‥私のは変じゃない?」
「祈良さんもお似合いですよ。薄紅色で桜柄のものなんですね」
弓の次にコハルに手伝ってもらい着替え終わった祈良(
gb1597)がくるりとその場で回った。
長い袂がふわぁっと浮かんで降りる。
「一年ぶりのお仕事になるけど、私、がんばる」
「新年の初仕事がんばりましょう」
ほわんと祈良が微笑むと、弓も微笑みを返した。
●あ、はぴーにゅーいやー
「せーのっ!」
田中 アヤ(
gb3437)のアップが映り、すぐさま引き絵になると振袖のアイドル達がそろった挨拶を行う。
「「あけましておめでとうございます!」」
新春らしい軽快なBGMと共に番組が始まった。
「改めまして、ハッピーニューイヤー、ケイちゃんです」
春らしく花が満開の振袖にマイクをもった常夜ケイ(
ga4803)がカメラ目線でハキハキと話す。
MCを担当することになって気合十分だ。
「去年はアジアを中心に復興チャリティソングを歌いました。エルドラド、北京上空、ドイツ、英国まで行っちゃいましたね〜。今年は『地球をハグして』をテーマに全世界の子供達のために歌おうと思います」
総括と抱負を述べたケイは各自の挨拶へと移る。
「あけましておめでとうございます、なの♪ 去年は大きなライブが二回も出来てよかったの。今年も応援よろしくなの♪」
白百合と赤椿、金と銀の鞠、白と黒の猫の柄が描かれた黒基調の振袖姿の終夜・朔(
ga9003)が猫耳を動かしながら可愛く挨拶をした。
手には首に赤と白のリボンを巻いた猫のぬいぐるみを抱えている。
「でっかいのにバーット書初めをしたかったのですが社長に断られてちょっとしょんぼりのFateです!」
赤と金をベースに明るい感じだが、派手過ぎない振袖のフェイト・グラスベル(
gb5417)が元気に挨拶を続けた。
桜の花や鳥が柄として生えた衣装がよく似合っている。
しょんぼりと口ではいっているものの元気そのものだ。
「アヤです。去年はソロでの活動が多くなりました。ファンの皆さんに感謝を込めて新年の番組を楽しく行いたいと思います!」
桜の花びらが散りばめられた全体的には赤く、足元のあたりは黒へグラデーションをかけて染め上げた振袖のアヤは高いテンションのまま自己紹介をすませる。
その後、コハル、弓、美月姫、祈良へと回り、1つめのコーナーの書初めへと番組は進んでゆくのだった。
●抱負の書初め!
「できたっ! あたしの抱負は『挑戦』で!」
「お、私の『冒険魂』とにてますね」
筆で力強く文字の書かれた半紙をコハルとフェイトは掲げる。
フェイトにいたっては紙からはみ出るくらいに大きく文字が書かれていた。
「あたしは社長が持ってきた仕事ばかりだったから、自分でもアンテナを伸ばしていろんな仕事を見つけてあたしだけじゃなくてImpalps全体の活動を広げたいなって」
「私はですねー。ほら、体当たりimpってキャッチじゃないですか! だから、他の皆さんみたいに確り考えるのとか苦手なので、まずはやってみる的なっ」
コハルとフェイトがそれぞれに抱負に関わる思いを口にしだす。
「私は『救』。私は、傭兵としてもアイドルとしても、未熟者で‥‥私の力じゃ、助けられない人が、いっぱいいる。そんなの嫌だから、もっと頑張って傭兵として皆の命を、アイドルとして皆の心を救えるようになりたいな」
ほわんとした笑顔を浮かべながら祈良が救という文字が目一杯に描かれた半紙を見せた。
本格的な頑張りを込めた一文字である。
「弓さんは『初志貫徹』なんですね?」
隣に座り、書き続けている美月姫にいわれ、書き上げた半紙を弓は掲げる。
バランスよく一文字ずつ丁寧に書かれた文字は弓の人柄を現しているようだった。
「2008年の5月下旬からアイドルになって一年以上になります。後輩も増えましたし、なんだかんだで古参に近い位置づけになりました」
弓は最初期メンバーではないにせよ、事務所と共に成長してきたこともあり思い返せば感慨深い。
年齢の高さでアイドルになれるのか不安だったころが懐かしいくらいだ。
「だからこそ、初めにアイドルになろうと思った意味、意志と決意を忘れずに頑張っていきたいです」
弓が抱負を締めると、アヤが半紙をカメラに見せる。
「あたしは『日々精進』です。今年は色々勉強しようと思うのです。作詞とか、料理とか。だから、日々精進で‥‥そこ、アイドルっぽくないとかいわない」
アヤが突っ込みを入れていると最後に美月姫と朔が半紙を掲げた。
「遅くなりました。私は『絶対大丈夫』で文字バランスに悩んで時間がかかりました」
「Noirは『夢の実現目指して頑張るの♪』なの♪」
Noirこと朔は小さな半紙に音符まで入れて書き上げ、美月姫は左右に分ける形で文字のバランスに気を使って抱負を書き上げている。
「私のものは一種のおまじないの様な物です。今年もいろいろとあると思いますが、どんなに困難であっても負けずにがんばる時のおまじないです。自分へもありますが、皆さんへの励まし・応援でもあるんですよ」
珍しいポニーテールを揺らし、美月姫はハキハキと抱負について語った。
「Noirの『世界に平和の歌を響かせること』のために文字通りがんばるの。そのためにもっともっと頑張って、それを可能にするステージに立てるよう、それを可能にできるアイドルになれる様に頑張りますの♪」
終始猫耳をピコピコと動かし続け抱負を終える。
「ケイちゃんの抱負はオープニングで言ったとおりです。有言実行で皆さんがんばりましょー。そんなところでCMです」
カメラに向かってケイが合図をだすとCM兼小休止がはじまった。
●羽根つきでポン
『書初めの次は羽ニャ突き大会ニャ』
場所が広めのスタジオに変わり、ケイの第一声と共にファンファーレのような効果音が鳴る。
振袖にたすきをかけたアイドル達が拍手をして競技の開催を祝った。
『まずは美月姫、コハルペア対アヤ、フェイトペアです』
「羽根突きはこれでも得意ですから、負けませんよ」
「運動はばっちこいです。がんばります!」
「ばっちこーいです。前世代IMPとALPの対決でなんだかワクワクですよ」
「ふふふ、×ゲームをこなす準備はできている、盛り上げようじゃありませんか」
ケイがレフリーのように呼び出すと羽子板を持った4人が相対する。
「今回は例外的に4人で行いますが、連続で同じ人が打ち上げない限り落球以外の負けはないでつ。ぐるぐる歌を歌いながら回しましょー」
一歩下がり、ケイが選手達を見守った。
「一(ひと)ごに〜」
美月姫が羽をフェイトに打ち上げ、羽根突きが始まる。
「フェイトちゃんっ! 二(ふた)ごっ」
届かないフェイトをサポートするようにアヤが駆けて羽を打ち上げた。
「ええっと、三(み)わたし!」
「四(よ)めごっ!」
バレーのように味方の補助を受けたフェイトが小さい体ながらにスタジオを駆けて遠くへ返す。
『おーっと、大きい大きい〜スタジオの外に飛び出す勢いです』
大きく弧を描く羽をカメラが追いかけた。
「五(い)つ来ても‥‥」
羽の下に待ち構えていた美月姫が軽々と返す。
得意といっているだけはあって動きが軽快だ。
「ちょっとは手加減してくださいよぉー。だめっ、届かないです!」
アヤとフェイトが走って打ち上げようとするも一歩届かない。
『残念、一歩届かず落球でつ。それでは×ゲームをいってみましょー』
軽いノリでケイが負けたチームのアヤとフェイトへ×ゲーム表を見せた。
ランダムに決めるのが通例だが、要望によりこういう形式となっている。
「ええっと、ほっぺに○×くらいの可愛いのでー」
「にゅふふ、その心意気やよし。さっきの墨もあるから早速書いちゃうよ? でもね、この墨塗りは厄除けの縁起行為なんだよ」
墨塗りを選んだアヤに武家のたしなみとばかりにコハルが説明を加えた。
「私はロシアン餅で!」
『ロシアン餅きましたでつね。餡餅の中にハバネロ入りがありますので、どうぞ選んでください』
ケイが6つの餅ののったお盆をフェイトに差し出す。
悩んだ末、一つの餅を選んで一口食べた。
二口目にいこうとしたとき、フェイトの顔が一変する。
「かっ、かっ、カラァァァァイ!」
口から火を出さんかという勢いで叫びを上げた。
「フェイトさん、ほら水ですよ。水」
美月姫から差し出されたグラスをフェイトが一気に飲み干す。
『では、罰ゲームも受けたところで次の4人でつ。ケイと朔ペア対弓と祈良ペアです』
次の組み合わせは猫耳な二人と振袖の色などが対称的な二人の対決だ。
「Noirもがんばりますの♪」
「こちらも負けていられませんね」
「精一杯、やってみる」
「では、一球目いくでつよ」
四人が向き合うとケイが羽を放りあげる。
カメラがそれを追いかけ、落ちるところをケイの羽がカンといういい音を響かせて打ち出した。
●トークショー
「丁度出来上がったところみたいですね。ささ、皆さんで食べましょう」
「お餅、お餅」
羽根突きのあとはトークタイム。
コタツの用意された場所へ上がりこんでアイドル達は鍋やお節を囲んで座りだした。
「年末年始は皆さんどうすごされましたか?」
最年長である弓が自然と尋ねだす。
「Noirはこうやっておこたで丸くなっていましたの」
「私はお友達の家で過ごした、よ。一緒に年越しそばを食べて、テレビ見てのんびり、したの」
暖かいコタツに入りながらほわほわとした朔と祈良が弓によそわれたお雑煮を食べながら答えた。
「あ、でも初詣にはいきましたの。人ごみでNoir、迷子になっちゃったけど神様にはお願いしてきたの♪」
「人ごみといえば、初売りという名前の戦場に出かけた。‥‥凄かった」
同じ人ごみの中を抜けてきたはずだが、朔と祈良の反応は正反対である。
「年始めから皆さん大変でしたね‥‥私も一番下の妹が小学校に入ったくらいの時は一緒に羽根突きをしていましたが、最近はそうでもなかったですね」
二人の話を聞きながら弓はふっと遠くを見た。
「年末の話に戻しますけど、ぎりぎりまでお部屋の掃除やら年越しの準備をしていました。お片付けをし始めるとなかなか終わらないものですね」
弓の遠くを見る目が気になったのか、美月姫が年末の出来事を口にする。
「年末というか去年を総括するけど、ラジオ番組が凄く印象深かったね。うちのマネジャのラジオ番組手伝って出張収録とかしてたから割と懐かしく感じてたりもしたけど」
コハルは昆布巻きを口にしながら思い出話に花を咲かせた。
「私は今年、この番組が一番の思い出になりそうです。バラエティ番組はImpalpsの仕事以外でも受けたことありませんし、新年から皆さんとお仕事が出来て嬉しかったですよ」
「うん、私もワイワイやれて楽しい‥‥初売りも楽しかったし、皆で一緒に過ごせるのって、いいね」
ほわほわとした笑顔を浮かべながら祈良が弓に同意する。
「Noirもね、初詣のお祈りは皆のこともお願いしたの。今年も楽しく過ごせるといいの♪」
満面の無垢な笑みで猫耳パタパタと朔が動かしているとイントロが流れ始めた。
「楽しい時間でしたが終わりのようです。最後に常夜ケイさんの歌でお別れとなりますが、今年もImpalpsを皆さんよろしくお願いします」
全員がカメラへと向き直り弓が前に出て正座をする。
残りのアイドル達も丁寧にお辞儀をすると、にじむようにフェードアウトしていった。
●ソロエンド
にじむようにフェードインしていくと、ステージの上に一人立つケイの姿が映る。
振袖姿のままでマイクを持ち、童話っぽいメロディのイントロを体で聞きながらスタートをカウントした。
負けて激辛フードを味わったケイだが、そのことを微塵も感じさせない。
♪〜〜
ハッピーハッピーお正月
ラッキーラッキーね正月
もう幾つと思ったら
あっという間の松の内
虎虎猫も寝とらんと
末広がりに遊びましょ
〜〜♪
「皆さん、またお会いしましょ〜」
歌い終わる手を大きく振りだすケイ。
そこからゆっくりとカメラは遠ざかって番組が終了した。