●リプレイ本文
●巫女がいっぱい
「リネーアさんはどういう経緯で‥‥ハッ!? まさかセクハラ上司に強要されて!?」
皇 千糸(
ga0843)はりネーア・ベリィルンド(gz0006)の胸の強調され、腿の露になった巫女装束姿を見ていろいろな憶測を脳内に広げる。
「そ、そんなことはありませんから‥‥趣味でもありませんよ」
リネーア・ベリィルンドは注視される胸元を押さえながら否定した。
「『和装は胸が大きいとみっともないし』サラシを撒きまへんとな」
髪を黒く染め、いたって普通の着こなしをするエレノア・ハーベスト(
ga8856)がリネーアに視線で牽制をする。
「そう? 折角なんだから魅力満載でいこーよ♪ サービスサービスぅ〜」
一方、相沢 仁奈(
ga0099)はミニ丈の袴に、肩、胸元、腋を露出させた子供には目の毒になりそうな姿だった。
「えーと、こんな感じでいいのかな?」
「そうですね、お手伝いしますよー。こちらを巻いて〜」
初めての巫女服に四苦八苦する雪代 蛍(
gb3625)をノーマルな巫女服に白いリボンを頭に結わえたフィリス・シンクレア(
ga8716)が蛍の着替えを手伝う。
日本人ではないのだが、フィリスの手際は非常によかった。
「皆さん着替え終わったみたいですね? こから一週間よろしくお願いします」
さまざまな巫女さんがそろったところで、リネーアは頭を下げる。
お辞儀をとき、胸がぷるんと揺れた。
●オープン初日
「ご、御参拝有難う‥‥御座います」
緊張ゆえか、入り口でたどたどしい挨拶をした結城 有珠(
gb7842)が来客の奉丈・遮那を席の方へと案内する。
フロアに近づくまでもなく、ザワザワとした声が聞こえてきた。
「「喫茶みっこ巫女にしてやんよへ、ようこそ」」
遮那がフロアに入ると、フロアにいる4人の巫女さんが輝く笑顔とお辞儀で出迎えてくる。
「あ、空いているお席‥‥カウンターですが、座って、ください」
席へ案内し終わると結城はすぐに下がった。
「お冷にゃ〜。お目当てはリネーア姐さんかにゃ?」
長膳と呼ばれる神事につかう木製の台にお絞りとお冷を載せてアヤカ(
ga4624)が遮那へと出す。
口元がにやけているのは見間違いではないようだ。
「そうではないのですが‥‥甘味制覇にきまして、ははは」
「リネーアさんでしたら、今の時間は外の宣伝ですよね?」
他のところを給仕していたレティア・アレテイア(
gc0284)が通り過ぎるときに一言残していく。
「そ、そうですか‥‥」
「明らかに残念がってるニャね。ローテーションしているから頑張って待つのニャ。さて、ご注文は何にするニャ?」
虎柄の猫尻尾を揺らしアヤカはメニューを取り出し注文を聞きだした。
「えーと‥‥では‥‥」
「やっほー、シーちゃんいる?」
「御参拝ありがとうご‥‥」
遮那が餡蜜を注文しようとしたとき、入り口でシーヴ・フェルセン(
ga5638)が固まるのが見える。
「ほら、シーヴ。ちゃんと案内しなきゃ‥‥」
一瞬固まったシーヴへ葵 コハル(
ga3897)は近づくと肘で小突いて止まった時を動かしだした。
フロアまでくると、再び「みっこ巫女にしてやんよへようこそ」という挨拶でお客様であるラウル・カミーユを出迎える。
遮那と同じカウンター席に座ったラウルは注文を始める。
「この御神籤クッキーとお抹茶で。立ててくれるサービスとかもあるノ?」
「そういうサービスもあるです」
「じゃあ、しーちゃんの旦那様のために写メってあげるね!」
「い、いいですから‥‥注文承りやがったので、すぐに持ってきやがるです」
ラウルの突拍子も無い行動に顔を真っ赤にしたシーヴは長膳を小脇に抱えるとポニーテールを揺らしてキッチンの方へ駆けていった。
(「この様子なら、声をかけなくてもよさそうですね」)
遮那は餡蜜を注文しながら、店内の活気に企画の成功を信じはじめる。
(「ローテーションでリネーアさんが来るまで待ちましょうか」)
餡蜜を待ちながら、本日はいつ来るのかと考え、遮那はメニューへ目を戻すのだった。
●二日目〜広場での宣伝〜
シャンとラストホープの広場に鈴の音が鳴った。
憩いの場や交流の足がかりとしても使われる場所ということもあり、響く音色に誰もが集中する。
広場の中央に近い広い場所でレティアが鈴を鳴らし、扇を流れるように動かして舞っていた。
本当は無毛であったが、リネーアから黒髪のウィッグつけてもらった今は清純な巫女らしい姿である。
珍しい舞に歩いていた人々が足を止め、レティアの姿に集中した。
「喫茶巫っ女巫女にしてやんよ 開店中です。あたしを含め、可愛い巫女さん達が御接待してくれるよ。運気上昇、邪気払い、恋愛成就間違いなし。ふるって御来店を」
神楽の終わったレティアは自前の宣伝文句でビラを笑顔と共に神楽で集まった人に向けて丁寧に配る。
「巫女喫茶、店名はご愛嬌、どうぞよろしゅう」
同じようにビラを配るエレノアは千早と呼ばれる貫頭衣を着込んでいて、巫女装束は店内でという焦らし(?)作戦で宣伝をしていた。
初日は本部、本日二日目は広場へと場所を移しての宣伝を続けている。
「みっこ巫女にしてやんよに着てくれなきゃ怒るからね? 友達もつれてきなさいよ!」
一方の蛍は『ツンデレ』らしさを前面に押し出し、ビラを乱暴に渡していた。
ほぼ素だというのは仲間内だけの秘密である。
肩をだして、名前の通りの雪色の肌を覗かせ、二の腕に縛られた袖が腕を大きく動かすほどにゆらゆらと揺れた。
違った魅力を誇る二人によるビラ配りはバレンタイン前の人通りの多さもあり用意したビラは次々となくなっていく。
「すみません、写メいいですか?」
「許可貰っているから大丈夫だよ。じゃあ一緒に撮ろうか!」
さらにレティアはビラを貰った少女とツーショット写メを撮られたりとサービスをしていた。
「今日の客引きはええ感じやね。この調子でビラがなくなるまでがんばりまひょ」
さまざまなサービスの効果もあり、多くの人がビラを持ち帰りの足で『みっこ巫女にしてやんよ』のある通りへと向かっていく。
用意したビラも6割はなくなり、交代時間より早く終わりそうである。
「はい、残りもがんばりましょう」
レティアは元気に答えビラくばりに励みだした。
●五日目〜フロアでサービスサービス〜
五日目になると、フロアスタッフの方は仕事になれてきぱきと片付けるようになっていた。
しかし、それ以上に巫女さん達のファンが固定客としてつき始めている。
「えと‥‥すみません‥‥。私よりも‥‥他にも綺麗な方がたくさんいますので‥‥そちらのほうが良いのではないしょうか?」
その日の午後4時ごろ、結城は困っていた。
ずっとフロアスタッフやレジ番をしていたということもあり、今客の男性からツーショット写真のお願いをされたのである。
「一生懸命に頑張っている貴方を見ていました。もうすぐお別れになるのなら、せめて一枚お願いします」
聞き方によればプロポーズのような発言に結城は火が出るほど顔を赤くし、モジモジと視線を逸らしながら体を動かして考えた。
その間にも会計を済ませようとレジに並ぶ人が増えているので、決めなければならない。
「‥‥え、えと‥‥、どうしてもとおっしゃるのでしたら一枚だけ‥‥そ、それ以上は無理です‥‥」
「じゃあ、俺も!」
「私も!」
一枚ぽっきりという結城の発言に便乗しようとする客が数名手を上げてきた。
目立たないように動いていた結城にとって予想外意外の何者でもない。
「レジはうちが変わるから写真の方とってあげな♪ いっぱいサービスせなあかんよ?」
露出の高く、きわどい衣装の仁奈がいうと別の意味に聞こえてしまうが助け舟は嬉しかった。
店内にある神棚のようなオブジェの前に結城が立ちその周囲を男女の客が囲む。
「はい、撮影しますね。にっこり笑ってください」
リネーアがデジタルカメラを借りて一枚の写真を撮った。
結城の顔はぎこちないが、それもまたいい記念だろう。
「最後のイカポッポでるにゃ〜。アリスちゃんテーブルまで運んでくれにゃ」
「あ‥‥はい、今‥‥届けます」
キッチンにいるアヤカから呼び出された結城は集まってくれた客に丁寧に頭を下げると品物を受け取りにキッチンへと向かった。
「あの‥‥こちらを受け取って、貰えますか?」
一方、座敷の方に料理を届けたフィリスは上目遣いに男性客へチョコ生八橋を手渡している。
本日は丁度バレンタインであり、『みっこ巫女にしてやんよ』でもバレンタインキャンペーンの最中であった。
「あーりがとぉー!」
「地球に生まれてよかったぁぁぁっ!」
ささやかなバレンタインプレゼントに渡された男性客は涙を流して感動している。
リアクションが派手なのは‥‥言うまでもないだろう。
「喜んでもらえて何よりです♪」
ぴょんとフィリスが飛び上がりながら笑うとリボンが揺れて可愛らしさがより引き出されていた。
「いらっしゃいましー♪ ご参拝の方ですね? ほな御案内しまーす♪」
「「みっこ巫女にしてやんよへ、ようこそ〜」」
レジがひと段落した仁奈が次のお客を連れてフロアまで来るとフィリスやリネーア、結城などが一斉に挨拶を返す。
終了まで残り2日目であるが、最後まで気を抜かずにかんばろうと挨拶をし終えた誰もが思うのだった。
●六日目〜キッチンは戦場だ〜
「はい、レシピは壁にはってあるからそれを確認して確実にこなしてね。これからお昼からデザートという時間にもなってくるわ。料理を手早く出して回転率を上げるわよ」
キッチンの中で皇はリーダーのように共に働くシーヴやコハルを鼓舞する。
レシピの案もそうだが、朝からの準備などキッチン業務は皇の力の入り方は他とは違っていた。
「が、がんばりやがるです」
料理は絶賛勉強中なシーヴにとって皇はとても頼りがいのある存在に見える。
「味噌汁は私が作って、シーヴは御神籤くっきーのストックの補充ね。コハルの方はどう?」
「了解です。好評みたいでシーヴは嬉しいです」
「出来れば裏メニューに挑戦したいなーと。鮭と鯛の紅白おむすびとかね? そろそろ通常メニューじゃ飽きてくるし、後二日だけどここで最後のてこ入れしようと思ってさ」
手際よく指示をしながら、引継ぎつつ無くなっているメニューの補充を皇ははじめていった。
作業を続けている間も注文がひっきりなしに入り、伝票の束が分厚くなっていく。
「追加の注文あります。桜餅と抹茶です。夕方に少しあくと思いますが、もう少しがんばりましょう」
注文を取り付けてきたリネーアがキッチンで頑張る3人に向けて励ましの言葉をかけた。
「新メニュー完成。丁度いいや、リネーアさん、これを遮那さんにサービスしちゃって。感想も聞いてきて」
このために買っておいた鯛と鮭を蒸し、解した身を詰めてお握りを握ったコハルは新メニューの追加をリネーアへ頼んで、幾つもおにぎりをつくり出した。
手で綺麗な三角に握られたお握りの並ぶ姿をシーヴがじーっと親の敵でも見るような目で眺めている。
もちろん恨んでいるわけではなく、料理勉強のためにコハルの腕を盗もうという考えだった。
「シーヴも握るの手伝う? ほら、教えるから‥‥じゃないと、あっちで急がしそうにしている千糸さんに怒られちゃうよ」
「手を休めないで早くやってね。もう、何でこんなに注文がくるのかしら? 皆巫女に飢えてる?」
シーヴがコハルから皇の方へ視線を移すと縦横無尽にキッチン内を歩き、焼き時間などの合間をつかった時短調理で注文を片付けていく。
「美人オペと現役アイドルのコンビネーションを甘く見ていたです‥‥」
シーヴは出しても出しても減っていかない伝票と、次々と減っていく食材を見比べては戦慄した。
「シーヴ〜、クッキー焦げるよっ!」
「あ、わかった‥‥ですっ!」
コハルに指摘されて、慌ててシーヴがオーブンの様子を見る。
息つく暇も無いとはこのことであった。
●全日程終了! お疲れ様!
「それではまたのご参拝」
「「お待ちしております」」
最後の男性客二人をフィリスが見送ると、声をそろえて全員が見送った。
7日間に渡る巫女喫茶営業もコレで終了である。
「ほんまに皆お疲れ〜。乳尻腿とサービスしきったで〜」
お色気担当と自他共に認められる仁奈が露出部をぱしぱしと叩きながら皆を労った。
「まだ、フロアの掃除が残っておます。うちらとしてはまだこれからやね」
片付けの終わっていないカウンターや、座敷のテーブルを眺めたエレノアが肩を軽く鳴らして気合を入れる。
「おつかれさまです。私達も手伝います」
「もう最後なんだ‥‥なんか寂しいな」
たった七日間‥‥バレンタインをはさみ、ここで作っていたチョコ生八橋を貰っていったことなど蛍は思い出し、思わず涙がこぼれた。
「今回も結構人気だったからそのうちやるかもだよ。そのときはまた集まればいーよ。今度は皆、普通の巫女装束にしようか!」
裏テーマとしてちゃんとした巫女を宣伝しようとしたコハルだったが、改造した衣装の人が多く残念な部分がある。
「そうです、衣装といえば今回のものは皆さんに記念にお渡ししますのでどうぞ受け取ってくださいね」
片付けていた手を一瞬止めたリネーアが巫女装束のプレゼントというサプライズを持ってきた。
「うにゃ、リネーア姐さん太っ腹にゃ! これで次のイベントもばっちりニャね」
「イ、イベント‥‥あまり無いことを祈ります」
リネーアは苦笑して答えるしかできない。
「おみくじクッキーが好評でありやがったのはよし。写真撮影も撮られてちょっと嬉しかった‥‥です」
「私は‥‥はずかしかった‥‥かな? もうちょっと頑張らなきゃって思った‥‥けど」
シーヴと結城は写真を撮られたが感想はそれぞれだった。
雑談をしながらも片付けはすみ、綺麗になった店を後に入り口へ全員が並ぶ。
『みっこ巫女にしてやんよ』とオーナーが書いたのか筆の大きな字が目立つ看板が目に入った。
「最後になりましたが、皆様方の運気上昇、邪気払い、恋愛成就の為にの神楽を舞う事にします‥‥では」
感慨深く眺めていると、レティアが一歩前にでて振り返り、巫女装束のまま神楽を舞う。
夜の町に凛とした鈴の音が響わたった。