●リプレイ本文
●プロデュースチョコ試食会
「自他共に認める甘党にてチョコスキーな舞奈が試食するよ! 候補生だから場違いとかないよね?」
現在Impalps候補生扱いとなっている樋口 舞奈(
gb4568)がパティシエ達によって完成されたチョコを前に意気揚々となる。
「大丈夫ですから、どうぞ。じゃあ、僕は整理券とかの準備を始めていますね」
舞奈の不安をライディ・王(gz0023)は笑顔で払拭させると部屋から出て行った。
ここはラストホープにあるImpalpsの事務所でバレンタインイベントを行う店からプロデュースチョコの試作品が届いたのである。
「おーできあがっている。たべるのもったいない‥‥」
ライディが出て行くのを見送らずにチョコに集中していた舞 冥華(
gb4521)は呟いた。
デフォルメされた動物チョコの詰め合わせであり、タイトルは『ずーっといっしょ』で動物園とかけたようである。
「私のチョコもイメージ通りですね〜さすが職人さんなのです」
フェイト・グラスベル(
gb5417)は瓶詰めにされた七色のチョコを持ち上げながら眺め、関心した。
林檎、オレンジ、バナナ、メロン、プルーン、グレープ、カカオ多めの7つの味が味わえるお洒落なチョコである。
値段も4000Cと高めだが、素材にこだわった一品だ。
「ケイちゃんは喫茶スペースで出しているものを試食して選んだ苺ムースをストロベリーチョコムースにしたのを提案したでつ。オススメできる一品でつね」
常夜ケイ(
ga4803)はオリジナルではなく、アレンジという形でのプロデュースを行い気に入った苺ムースをバレンタイン仕様にしあげたのである。
「どれもこれも美味しそう‥‥早速端からいただいちゃえ♪」
放って置くとこぼれてきそうな涎を飲み込み、舞奈は試食品を食べだした。
どれも甘くて実に美味しい。
舞奈に続き、他のメンバーも自分のイメージと味が違っていないか確認していった。
折角の有名チョコレート店とのプロデュースなのだから、いいものを作りたいと思っている。
「あ、プロデュースってわけじゃないけどアルファベット型のチョコと台座になるチョコケーキのセットなんて面白そうかも。味はいいし、どんなものでもいけそうだよ」
チョコを口にしながら舞奈は自分なりに盛り上げようと考えを頭にめぐらせたのだった。
●当日準備開始
「お早う御座います。本日は宜しくお願い致しますね」
”料理上手alp”こと椎野 のぞみ(
ga8736)が従業員達が準備をする時間に裏口から入ってくる。
抽選用の手作りチョコレートを作るためにやってきたのだ。
「それでは少し場所お借りしますね♪」
すぐに借り受けた制服に着替え、エプロンをきゅっと締めて厨房から道具類を借りての控え室で作業に取り掛かる。
料理も好きなので、今日のイベントは楽しみだった。
「おう、早いなぁ」
「おはようございます」
のぞみがチョコの湯銭をはじめていると制服姿のテト・シュタイナー(
gb5138)と大和・美月姫(
ga8994)も姿を見せる。
この店の制服は絵画にでも描かれているような町娘らしい落ち着いた衣装だ。
萌えを追求する最近の流れに逆行しているが、落ち着いた雰囲気とチョコの味で勝負している。
「抽選用のチョコを作っておこうとおきまして〜」
「そうか、抽選券も整理券も昨日までに配っておいたから後は待ちだな」
「喫茶スペースの準備をしましょうか? チョコを作りませんが時間を友好に使わないてはありません」
美月姫がいうように既にパティシエ達は厨房を動き回り、アイドル達が考えたチョコレートを作り始めていた。
「おはようございますなの。今日はよろしくお願いしますの♪」
打ち合わせのときに聞いていた店のイメージに合わせた服で終夜・朔(
ga9003)が控え室に顔をだし、耳を動かしながらのぞみの手元に近づく。
解けて混ぜられているチョコが気になるようだ。
「猫はチョコ苦手なんじゃ?」
「さ、朔は猫だけど、猫じゃないから大丈夫ですの‥‥はっ、別に朔は食べたいとかでは決して無いですの」
「目がチョコから離れてないよ? じゃあ、焼きあがったら一口だけあげるね」
ホワイトチョコと生クリームを混ぜた特別なブラウニーを作りながらのぞみは尻尾をぱた着かせる朔に向かって小さく笑う。
「た、食べてる場合じゃないですの。Noirもプレゼント用チョコを作りますの」
蕩けそうな顔をして甘味を味わっていた朔だったが、時計を見て慌てて自分のチョコの作成をすべく厨房へと駆け込むのだった。
●イベント開始〜午前の部〜
♪〜〜
バタバタお掃除したり
本に栞を挟んだり
そろそろ冬物のお洋服どうしようかな
なんて考えてる間にも
あなたが心をよぎります
ううん、何でもないわ
あっ、もうこんな夜更け
録画番組を見たり晩御飯の支度や
メールも打たないと
うん、判ってるわ
忘れられないの
ううん、何でもないの
そっとひっそり私の心の隅で
咲いてて恋の雪化粧
〜〜♪
落ち着いた店内にクラシカル調になった『Impalps〜絆の翼〜』に合わせてケイのポエムが流れ出す。
オープン準備が整い、店の扉が開くと多くの人がなだれ込むようにして入ってきた。
「いらっしゃいませ! 寒い中きていただきまして有難う御座います♪」
「店内も普通のお客さんもいるので、Impalpsのチョコを買う人はこっちにきて〜」
のぞみと舞奈が店の制服を着用し扉の両脇にたってなだれ込む人の整理を笑顔で行う。
ザワザワとライブなどの物販ブースのような光景が広がるが、ここはシックなチョコレート店なのだ。
「ここはいつものライブ会場とは違うんだお静かに頼むぜ?」
ウィンクをしたテトに促がされ、人の波は落ち着きを戻し売り子をするアイドル達の元へと整列していく。
整理券番号順に外でも並んでいたため一度統制が取れれば人波は規則正しく流れ出した。
「早くから並んでくれてありがとよ、じっくり味わって食べるんだぜ?」
口調はいつものままだが、穏やかに微笑みながら並んだ人にテトはチョコレートを渡す。
テトが作ったのは十字架型のチョコレートで、ミルクチョコレートをベースとし、ホワイトチョコで簡素な装飾っぽい模様を入れてあるものだ。
箱は逆にシンプルでルビーレッドの細長い物で、金色のリボンを十字形に巻きつけてあった。
一緒につけられた白地に薄く月桂冠のイラストが描かれたメッセージカードには以下のように書かれている。
『親愛なる貴方へ
愛と幸運が、貴方の元へと訪れる事を祈っています
――美味しく食べてくれよな☆
テト・シュタイナー』
最後の名前は手書きのサインで、一枚一枚チョコの数に合わせてテトが書いたものだった。
「寒い中ありがとうございます。プレゼントとして喜んでもらえるといいですね?」
チョコを買いに来た女性に対し、美月姫は手渡しながら笑顔を向ける。
小さなハート型の生チョコでリーズナブルな価格と飾らない仕様が友チョコとして人気のようだ。
出されたアイディアのうち手渡し販売にはならなかったが、美月姫のザッハトルテや舞奈のメッセージチョコが通常の商品と共にしばらくの間コラボメニューとして販売もされている。
『皆さんに愛と希望と夢をお届け致します』と書かれたメッセージカードが添えられ、空白の多いカードは送り主からのメッセージも書ける様に配慮していた。
「そろそろ時間みたいですね。抽選会をはじめましょうか」
チョコレートを渡しながら店内にあるアンティークな柱時計に目を向けると小さく手渡ししているアイドル達に合図を送る。
「はい〜、今から午前の部抽選会ですにゃ。整理券の番号の中からお一人にのぞみちゃんの手作りチョコレートがプレゼントされますにゃ」
制服姿のケイが手を上げて注目するように声をかけた。
整理券配布時に告知されていたことでもあったため、期待と不安の入り混じった視線がケイに集中する。
「のぞみさん、引いちゃってください!」
「は、は〜い。今行きます〜。お店に迷惑がかかりますので、整理券方式にご協力ください‥‥本当にごめんなさい」
チョコレートを買いにきていたファン達のクレームに対応していたのぞみは人波を分けて売り子をしている皆と合流した。
「ではっ、料理上手Alpのキャッチフレーズに恥じないチョコを今からプレゼントしますよ〜‥‥幸運な人は、38番!」
「やったー! のぞみちゃんのチョコ貰えた!」
番号が呼ばれたあと、自分の手に持っていた整理券の控えを見た男性が両手を上げて喜ぶ。
「おめでとうございます。味は大丈夫だと思いますが、お口にあわなかったらごめんなさい」
「い、いえ‥‥あの、のぞみちゃんのファンなのですごく嬉しいです‥‥ああ、ブログに書かなきゃ!」
前に出てきて手渡された男は子供のように顔を輝かせて興奮しきった様子ではしゃいだ。
「手作りチョコ用のメッセージカード添えておきますね。今回はおめでとうございます」
自分の手作りチョコでこれほど喜んでくれるとは思っても見なかったのぞみの顔にも思わず笑顔が浮かぶ。
メッセージカードには手書きでこう書かれていた。
『いつも応援してくれて有難う御座います♪
元気だけがとりえのボクだけど
愛を込めて作ったので
美味しく食べてくれるとうれしいな♪
椎野 のぞみ』
●DIVA DE ぷろでゅーす
「ごごのぶ、かいし? でぃーばめいんでがんばる」
ヒーリングミュージック風にアレンジされたImpやAlpでリリースされた曲が流れている。
事務所のミキサーさんが頑張って編曲してくれたお陰だ。
午前中は手作りチョコ作成で参加できなかったため、午後はDIVAの3人をメインに盛り上げようというプランである。
「はい、ど〜ぞ! ハッピーバレンタインなのです!」
「心を込めたプレゼントなの♪」
衣装は統一しようという意見もあり、朔とフェイトは予定とは違ってお店の制服姿でイベントの販売を行っていた。
午前中にも負けずに午後も人が規則正しく並ぶ。
一人一人に丁寧に手渡し、サイン会さながらに流れよく処理をしていった。
「混雑解消にご協力いただきありがとうございます」
フェイトがちゃんと並んでいるファン達に丁寧にお礼を述べながら、メッセージカードをつけた『虹の雫』を渡す。
『
Happy Valentine!
いつも応援してくれて有難うなのです♪
私が歌えるのは皆のお陰っ
日頃の感謝を込めて!
』
元気な丸文字で書かれたメッセージカードは読む人も元気になりそうである。
「きょうはさむいところありがとー。冥華はたべるのもったいないちょこだけど、たべてくれるとうれしい」
フェイトの隣では冥華がお土産にでもつかえそうな箱入りチョコを手渡していた。
メッセージカードはグリーディングカードのような写真入りのもので、『ん、はっぴーばれんたいん。冥華のおーえんよろしく』とシンプルな一言が書かれれている。
午後の販売は午前中からの呼びかけもあり、混雑なく順調に進む。
多めに用意されたチョコだったが、夕方ごろにもなれば残りは少なくなってきた。
「それでは、今から午後の抽選をはじめるの。DIVAからは合計4人にプレゼントなの♪」
朔が耳と尻尾を動かしながら、声をかける。
準備時間ではできなかったぶん、祈りなどを込めた朔の黒猫、冥華のゆきうしゃぎ、フェイトのライオンの大きめな動物チョコの3種。
さらに、動物チョコで使った型の小さなものを使い、大きなチョコにDIVAの文字と共に動物が乗ったものが一つ。
実際に販売するとなるとかなり高額になるほど材料にも拘ったのでプレゼントしてすごく贅沢な一品だった。
「それでは抽選を始めますの♪」
整理券の控えの入った箱に手を入れ、3人がぐりぐりと同時にかき混ぜる。
そして各自が一枚ずつ引き出した。
「19番なの♪」
「6番の人ー」
「86ばーん」
個別に渡すチョコの宛先が決まり、女性3人がその幸運にめぐり合う。
「最後はリーダーのNoirちゃんが決めてー!」
「うん、冥華もそれがいいと想う」
一人一人に握手と共にチョコを渡したあと、最後の大きなチョコの抽選を朔が行った。
「65番なの♪ 本当におめでとうなの」
当てたのはDIVAのファンらしい男性である。
手を叩き大きな声をあげて喜んでいた。
「女の子が少し大人になれる聖なる日にNoirからの甘〜い贈物と感謝の気持ち、召し上がれ♪」
メッセージカードに書かれたものと同じ言葉を口にしながら朔がプラスチックケースに入ったチョコを渡す。
見事に抽選に当たった人の要望で、携帯電話による写真撮影が行われ販売イベントは無事終了したのだった。
●お疲れ様
「皆さん、イベントお疲れ様でした。混乱もなく無事終了してよかったです」
ライディが店の中へと入り、イベント終了後のアイドル達を労う。
「楽しいイベントで舞奈はよかったよ。美味しいチョコも試食できたし。これで候補生から正式登録かな?」
期待に満ちたまなざしで舞奈がライディをみるもライディは苦笑を返した。
「報告して社長が決めることなので‥‥僕からはなんともいえません。ええと、あまったチョコは皆さんの希望があれば持っていってもらってかまいませんのでバレンタインプレゼントに使ってください。お題は僕のポケットマネー払いにしておきますから」
マネージャーとしてのバレンタインプレゼントである。
「おー、太っ腹ですね〜。でも、そろそろ帰っていいですよー。お片づけとかお店の掃除とか制服きてますし一緒にやっちゃいますから」
フェイトがライディからのサプライズに感動しながらも、何かをたくらんだ顔でライディを送り出した。
「え、ええっと‥‥じゃあお先に失礼します」
顔を赤くしながらライディは頭を下げて店を後にする。
「新婚さんですからねー。ふふふー」
「しんこんさんだからはやくかえる? 冥華よくわかんない」
フェイトのにやけ顔を見た冥華は何がなんだかと首をかしげるのだった。