タイトル:ALP〜VMポータブル販売マスター:橘真斗

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 7 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2010/05/20 02:34

●オープニング本文


 あのアイドル達をモデルにゲームが出来た!
 
 君の選択次第でインパルス小隊のメンバーが変わる!
 
 好みに強化をして君だけの小隊を作り上げろ!
 
 セーブデーターはそのままゲームセンターのVMへのコンバートも可能!
 
 通信対戦で仲間との連携を磨け!
 
 フォーゲルマイスターポータブル 5月5日発売!
 
 ***
 
 パイロットスーツを着たアニメキャラとKVのイラストが入り、キャッチコピーが幾つも散らばったポスターを張り出しながらライディ・王(gz0023)は息をつく。
「よいよ発売かぁ‥‥。実質初めのお仕事が来てから半年になるのかな? かなりハイペースだけど、いい物になっているといいな」
 子供の日ということもあり、人が多く集まるだろうということは予想されている。
 前日からもラストホープのゲームショップの一つに出払って今、準備をしている最中だった。
 エイジアゲームショーで発表された初回特典は設定資料集とエイジアゲームショーでの対戦イベントDVDのセットで、こちらも予約分はすべて入荷済みである。
「入荷分は全部OKと、個数もあっていますね」
 店の人がやるであろう在庫確認もライディは行い、チェックをしていった。
 地味な作業だが、こういう仕事が向いているなと最近ライディは思い始めている。
 現在、スタッフルームではイベントの打ち合わせが参加アイドル達によって行われているのだ、当日の販売イベントはこちらに一任してくれたため楽しいイベントにするよう皆がんばっていた。
「俺も裏方で協力しないとな」
 店頭で特別販売スペースを確保しての売りだしとなる予定だが、どうなるのか‥‥。
 ライディにも分からないが今は裏方として頑張るときだった。

●参加者一覧

鷹代 由稀(ga1601
27歳・♀・JG
椎野 のぞみ(ga8736
17歳・♀・GD
冴木 舞奈(gb4568
20歳・♀・FC
テト・シュタイナー(gb5138
18歳・♀・ER
ミルフィーユ(gb8619
16歳・♀・HA
エイラ・リトヴァク(gb9458
16歳・♀・ER
ラサ・ジェネシス(gc2273
16歳・♀・JG

●リプレイ本文

●緊張するとき
 前日の打ち合わせも終わり、一夜明けていよいよ発売日当日がやってきた。
 店の更衣室を間借りしてアイドル達は現在着替えの真っ最中である。
「あ、ラサさんおはよーございます♪ お手伝いに来てくれたのですね。今日はよろしくお願いするのですよ」
「隊長がアイドルだった めでタイ。今日は隠密行動の訓練のため黒子になりマス」
 ミルフィーユ(gb8619)が更衣室に入ってきたラサ・ジェネシス(gc2273)の手を握った。
 指揮する小隊の隊員が手伝いに来てくれるとあれば心強い。
「とうとう発売なんですね‥‥よし、頑張るぞー!!」
 ミルフィーユにあわせたインパルス小隊の軍服に着替えた椎野 のぞみ(ga8736)はパシパシと両手で頬を叩いて気合を入れた。
 芸能活動をはじめてから1年、昨年の11月頃から開発が始まり、エイジアゲームショーでの発表をへて今日を迎えている。
 ずっと関わってきたものとしてこれほど嬉しいことはなかった。
「この時を待っていたぜ」
「長い様で短かった様な――なんか、そんな気がするぜ」
 のぞみと同じように開発の初期から関わっていたエイラ・リトヴァク(gb9458)とテト・シュタイナー(gb5138)も感無量といった様子である。
 特にエイラは芸能活動を始めたきっかけがVMポータブルであり初仕事が形となったことが驚きと喜びを混ぜ込んだ気持ちを湧き立たせた。
「打ち合わせ通り基本は握手会。トークショーの間に抽選を行って当選者発表。当選者には色紙・ゲームや特典サントラのパッケージ・ゲーム機本体の内どれかにサインよ。午前と午後の2回やるから気をつけること」
 鷹代 由稀(ga1601)がテトやエイラと同じパイロットスーツを来ながらスケジュールの確認を行う。
 IMPとして活動していたときから、姉御肌でまとめ役となっていた由稀らしい行動だ。
「来るべき時がきたよ! ヤバいよ、前日寝てないよ、テンションマッハだよ!」
「落ち着こうよ‥‥舞奈ちゃん」
「え、落ち着け? 舞奈は落ち着いてるよっ! それでもこれなんだよっ!!」
 ゲームショーで使った衣装に中々着替えれない樋口・舞奈(gb4568)はバタバタと手を動かして興奮の度合いを体で表している。
 そんな舞奈の着替えをのぞみは苦笑しながら手伝いだした。
「ようし、ラサも着替え終わったデス ジャポネのアニメで泥棒はこの格好だったね」
「なんで泥棒なのです!? レオタードなんて逆に目立つのですっ!」
 のぞみの横で腰に帯をまいたレオタード姿でよくわからないポーズをとるラサをミルフィールが顔を赤くして着替えさせる。
 次にラサが取り出したのが黒の全身タイツだったので、オペレーター服へさらに着替えてもらったのは言うまでもなかった。

●人波を捌け
 シャッターがガラガラとあがり、外からの光りが差し込んでくる。
 既に人が列を作っているのはライディ・王(gz0023)をはじめとしたアイベックス・エンタテイメントのスタッフが列の整理を手伝っていた。
 入り口から進んだ先に作られた特別店頭販売スペースではのぞみ、舞奈、ミルフィーユが椅子に座って購入者が来るのをまっている。
 人波がゆっくりと来る感覚は圧倒されるほどの勢いがある。
「おおっと、俺様との握手は午後からな?」
 商品を並べるのを手伝っているテトは握手を持ちかけられたファンをいなした。
 初回特典もあっという間に売れていき、好調な滑り出しである。
 購入者の中にはエイジアゲームショーで知って買いに来たという人もいた。
 販売を行っているテーブルの横にはのぞみとラサが設営したTVに3パターンのCMがエンドレスで流れている。
「ありがとうなのです。楽しんでくださいね♪」
 簡単な握手と共にミルフィーユが商品と抽選券を渡していった。
『業務連絡、業務連絡。「フォーゲルマイスターポータブル発売記念イベントは午前1回、午後1回の開催です。抽選券は書かれている回でのみ有効となりまーす』
 店内放送を間借りして由稀がアナウンスをおくる。
「すみません、こちらは販売店内ですのでイベントが開始するまでは外で待っていただけるようお願いします」
 ザワザワとした雰囲気が一層強くなり列が停滞しだすとのぞみが大きな声を出して外へと誘導をした。
「はい、こちらです。イベントの時間は11時からとなっていますので、しばらくはお店の外でお待ちください」
 ライディらスタッフも購入者を外へと誘導し喧騒を少しでも減らそうとする。
「ハイはーイ! 並んデ並んデ! 抽選券ハコチラですヨー。そこ! 横入りしナーイ!」
 購入側の混乱も少しおきるもラサが手際よくレジ処理をしてくれたため午前中の販売は大きな問題には発展せずに済むのだった。

●トークショー〜午前の部〜
 緊張のためか汗ばんだ手を洗った舞奈が戻ってくると同時にイベントがはじまる。
 店内のBGMがゲームの主題歌でもある『鋼の翼』に変わると、イベントスペースへキャラになりきった再登場した。
「ボクの名前は柏野・望! 今日も精一杯‥‥掃除に洗濯頑張るよ!」
「料理も洗濯もだけど、マイナ達は戦争をやっているんだよ」
「あ、いやもちろん本来の業務も頑張るよ! ‥‥と言う事で柏野・望のモデルをさせて頂きました、椎野のぞみです!」
「同じくマイナ・クロードのモデルをやった樋口・舞奈だよ」
 マイクを持って軍服姿の舞奈とのぞみが掛け合い漫才のように自己紹介をする。
「ミルを忘れないで欲しいのです! ということでミルフィーユなのです」
 遅れてミルフィーユが挨拶と共にウィンクとピースのポーズを決めた。
 拍手によって3人が迎えられると握手会がはじまる。
 舞奈は握手をする購入者と同じほど緊張していたが優しい声をかけられると肩の荷が下りたように笑顔が増えていった。
「握手会の次はトークショーとなります。3人の方に自分のキャラクターについて一言聞きたいと思いますがどうでしょうか?」
 ライディが司会を行い、握手会からトークショーへと流れる。
「ボクがモデルをさせていただいた柏野・望は、CMでも一部みえますが部隊の家事全般を一手に引き受けている元気一杯の女の子です」
「ミルルのキャラなんかは、結構VVの操縦が苦手な子なので、使うにはちょっと苦労するかもしれないですね」
「舞奈のキャラはお兄さんのために頑張る子だよ。親近感とか持ってもらえたら嬉しいかな?」
 3人は自分達を模したキャラクターの大きなポスターを振り向いてみながら思いをつづった。
 絵師によって描かれたアニメ調のキャラクターは自分たちの似顔絵のようで、どこかこそばゆい。
「インパルスの方々だけでなく、敵側の皆さんも凄く個性的で、本当に飽きのないストーリーに仕上がってると思うのですよ」
「そうそう、ボクのモデルの子も、過去には‥‥これから先はゲームで確認してくださいね!」
「ストーリーもいいから舞奈もゲーム欲しいね。実用・保存用・観賞用の3点セット! いや、冗談だよ、冗談だからね! だから、本気にしないで、ドン引きしないで、お願いだから!?」
 キャラの感想からゲームの軽い内容に触れつつもツボは押さえて行われる3人のトークショーは安定感があった。
 舞奈が舞い上がってしまっているが二人がしっかりフォローをいれて、仲のよい3人組らしさが伝わる。
「じゃあ、抽選いくね。代表で舞奈がやるよ〜ええっと、この人! 45番!」
 カラーボールを手に取り、高らかかに掲げながら舞奈が書いてある数字を読み上げると、拍手に送り出され、舞奈に近い背丈の少年がステージの方へ小走りに近づいてくる。
「当選おめでとうなのです。商品はミルル達3人のサインなのです♪ 名前はなんというのですか?」
「原田鎖ノ輔です」
 マイクを向けられた少年は照れた顔で答える。
「サインは何に書けばいいかな?」
「シャツにお願いします」
 白いシャツの背中を3人に向けると鎖ノ輔は書きやすいように背をかがめた。
「じゃあ、原田くんへとも入れておくのです♪」
 ミルフィーユはどこかほっとしながら司会のライディと目配せをしつつもサインを書く。
「う、緊張するけど練習の成果みせるよ」
「はい、出来上がりです」
 舞奈が震えながら、のぞみはさらさらっとサインを白いシャツの上に走らせると4人はカメラに向かって記念撮影を撮るのだった。
 
●トークショー後半
 主題歌BGMに合わせて由稀が一人で姿を見せる。
「隊の若いのに置いてきぼりくらった‥‥寝てたあたしも悪いんだけどさ‥‥」
 寝起きらしい演技をしながらステージの中ほどまで来ると、客席にいる購入者に目を向けて親指を立てて挨拶を始めた。
「っとー‥‥よく来た、新兵! ‥‥なーんてね。インパルス小隊へようこそ、あたしは隊長のユキ・ラグナイト。よろしくっ」
「あたしらを、忘れてんんじゃねぇぞ隊長さんよぉ‥‥そうだよな、ティーダ姉さん?」
「その通りだぜ、オーディンのインパルスどもにデカイ顔はさせねぇぜ」
 初めは声だけが響き、その後BGMがCMにも使われたアレンジ版『ヘルヘイム〜焔の意志〜』に変わるとテトとエイラがパイロットスーツ姿で現れる。
 ドラマのような演出の登場に大きな拍手が起こる。
 拍手に迎えられながら席に着くと、BGMが再びテーマソングへと戻って挨拶に移った。
「ってわけで、フォーゲルマイスターポータブル。ユキ・ラグナイトをやらしてもらった鷹代由稀でーっす」
「テト・シュタイナーだぜ」
「エイラ・リトヴァクだぜ」
「今更なんだけど、こういうのってキャラと本人代わってないわよね」
 挨拶も終わって、席につくと由稀がMCを兼ねつつトークショーをはじめる。
「俺様も実際にやってみたんだけどよ。なんつーか‥‥強いな、俺様」
「あんた達の動きは確かにすごいわよね‥‥でも、本人がキャラ勝てないってのもどうよ」
 話題は遊んだときの感想で、テトが思わず遠い目をしているところに由稀が容赦のないツッコミを入れた。
「あたしは初仕事だから、楽しんでくれるのが嬉しいぜ。今じゃあたしの機体もヘルヘイムになったしな」
 エイラは輝くような笑顔で話を続ける。
 芸能活動の一つの集大成である商品が手の上で動いているという事実はライブで歌い終わった後の拍手を受けると同じくらい心が昂ぶった。
「こないだのゲームショーもいい感じだったし‥‥続編とかメディアミックスもちょっち期待してたり。ところでゲームショーに参加した人はいる?」
 由稀がマネージャーを意識しながら、尋ねてみると客席から手が上がり、10人程度が参加したことが分かる。
「結構いるなぁ‥‥宣伝効果はあったってことだよな。本家の方を遊んだ奴は?」
 由稀に続いてエイラが質問をすると同じくらい手が上がった。
「本家の方は俺様はまだプレイしてないんだよな。噂じゃグランエミターが使えるらしいから対戦したいぜ。‥‥だが、まずはタイマンで勝負なユキさんよ」
 ゲーム機を操作するジェスチャーを入れながらテトがユキにニヤリと笑う。
「いいわよ、付き合ってあげようじゃない‥‥だけど、まずはここを片付けてからね。抽選会いくわよ〜。午後の幸運を勝ち取った人は‥‥16番!」
 大きな拍手と共に一人の成人男性に由稀、テト、エイラ3人のサインが限定BOXの方へ書かれた。
 写真撮影が終わると、そのまま握手会へと移行する。
「ちゃんト全員デキマスから落ち着いテー」
 ラサはアホ毛ならぬアホ花を揺らしながら、列の整理などイベントの締めを手伝うのだった。
 
●最後の追い込み
「本日発売VMポータブルです! 宜しくお願いいたします! VMポータブルのサントラも発売です。宜しければ一緒にお買い上げください!」
 予約分は売り切ったが、のぞみが声をあげて呼び込みを行った。
 サントラCDはまだ残っているし、ここで頑張らなければと思ったからである。
「女性部隊の中の、主人公ということですので、視点を部隊の仲間において、主人公へ宛てた曲、というものを意識しているのです。是非是非、CDの方も買って、この曲を聴きながらゲームをプレイしていただきたいのですよ」
 ミルフィーユも自分が歌った主題歌入りCDということもあり強くアピールを続けた。
 サインなどはできないとしても、売り子として夕方まで店のほうを手伝う。
 自分たちが関わったものだから、できる限りのことをしたいと思ったのだ。

 ――夕方

 一人、控え室で着替えを済ませたエイラが手元にゲームが来るまでに起きたことを思い返している。
 ゲームの駆け出しに関わって、CMを撮影し、ゲームショーで体験版販売イベントをしたりと長かった一連の出来事が次々と脳裏に蘇ってきた。
「よう、エイラ‥‥なんて顔をしているんだ?」
 テトが入ってくるなりエイラの顔を見て苦笑する。
「姉さん‥‥なんでもねぇよ。ただ、嬉しくてよ涙が抑えらんねぇだよ」
 思い出と共に噴出してくる涙にエイラはどうしようもない声をあげた。
「余程嬉しかったみてぇだな。しゃーねぇなぁ、ったく」
 子供のように泣き出したエイラを優しく抱きとめるとテトはエイラの背中を撫でる。
「社長、マネージャーぜってぇ帰ってくるぜ、あたしはまだこれからなんだからな‥‥」
 テトに抱かれながらエイラは決意を新たにした。
 アイドル活動は終わり、傭兵として大きな戦いへこれから向かうのだから‥‥。