タイトル:IMP〜花嫁モデル〜マスター:橘真斗

シナリオ形態: ショート
難易度: やや難
参加人数: 10 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2010/06/26 10:13

●オープニング本文


「今年も6月がやってきましたね」
「ええ‥‥まぁ、普通来ると思いますが‥‥」
 突然の米田の言葉に秘書は何だろうかと首を傾げる。
「ジューンブライドということで、世間が盛り上がる時期です。確か一件オファーもありましたよね?」
「はい、新作ウェディングドレスのモデルだそうです。しかも、着て見たいもの作ってもらえるということですね」
 秘書はこのところ増え続けているオファーなどの依頼から一つを探し出して答えた。
 日本の大阪にあるオーダーメイドのドレス店からの依頼である。
 デザイナーの鼓も中々に有名な人物ということもあって評価向上にはぴったりの依頼だった。
「では、お返事の方をしてください。簡単なショーも行えるように場所の手配もこちらで行えるようにお願いします」
「分かりました、モデルの依頼は久しぶりですが彼女達は大丈夫でしょうか?」
「一番の古参グループではありますし、彼女達を信じていますよ。私は‥‥マネージャーもサポートしてくれるでしょうからね」
 心配そうな秘書に向かって米田時雄は笑顔を向けて答える。
 アイベックス・エンタテイメント社長としての貫禄が米田にも大分出始めていた。

〜ウェディングファッションショー〜
 数日後、ライディ・王(gz0023)は一足早く打ち合わせのために大阪のデザイナーのところへ訪れていた。
「この度はお世話になります。アイベックス・エンタテイメントのライディ・王です」
「やんやん、ありがと〜。貴方可愛い顔しているわね。うん、きっといいドレスできるわよ」
 デザイナーの鼓(♂・年齢不詳)は女性的な動きと声色でライディの顔を眺めたかと思うと離れて写真をとるように指で四角を作ったりする。
「いえいえ、僕は着ませんから!?」
「あら、いいのに似合えばいいのよ似合えば‥‥それに可愛い子を見ると妄s‥‥おほん、想像を掻き立てられるじゃない?」
「そういうのは分かりませんから。ショーのことについてお話させてください」
「じゃあ、貴方に似合うドレスを作ってきてくれるなら‥‥」
 ニコニコと笑顔を浮かべてノリノリな鼓を相手にライディは苦戦を強いられていた。
 果たして、どうなることやら‥‥。

●参加者一覧

葵 コハル(ga3897
21歳・♀・AA
常夜ケイ(ga4803
20歳・♀・BM
終夜・朔(ga9003
10歳・♀・ER
祈良(gb1597
15歳・♀・FT
鷹代 アヤ(gb3437
17歳・♀・PN
エミル・アティット(gb3948
21歳・♀・PN
水無月 春奈(gb4000
15歳・♀・HD
沖田 神楽(gb4254
16歳・♀・FC
舞 冥華(gb4521
10歳・♀・HD
フェイト・グラスベル(gb5417
10歳・♀・HD

●リプレイ本文

●Show Time!
 梅雨に似合わない明るい音楽と共にステージがライトアップされた。
 司会者の声が会場を盛り上げ、2010年ツヅミコレクション・ブライダルモアが始まる。

『コンセプトは太陽の花、オレンジドレスに身を包んだフェイト・グラスベル(gb5417)さんの登場です』
 上半身は体にフィットし、腰から裾にギャザーで広がったいわゆるお姫様ドレスでフェイトがステージに現れた。
 タキシードを着こなした米田時雄にエスコートされてキャットウォークを歩く。
「じめじめした梅雨を吹き飛ばしましょう〜」
 たっぷりのドレープやフリルを揺らしながら元気よく進み、短い袖から出る細い手を振って観客へスマイルを振りまいた。
 端まで辿りつくと、きらびやかなシルバーのティアラが乗った頭を下げてターンして戻っていく。

『スレンダーラインのオフホワイトカラーのドレスは沖田 神楽(gb4254)さんです。大人っぽいかっこよさをコンセプトに仕上げられています』
「ウェディングドレスってやっぱり憧れるよね。エミル、それじゃあいきましょうか」
 さらしで胸を押さえてタキシードを着たエミル・アティット(gb3948)にエスコートされるように神楽がステージからキャットウォークへ歩いていった。
 肩から胸、背にかけて露出を多くしたオフショルダーデザインのドレスで左右の客に笑顔を見せて歩き続ける。
 スレンダーラインのドレスが神楽の動きに合わせて形を変え、スタイルのよさを浮かび上がらせていた。
 憧れの視線を向ける女性たちを横目に見た神楽は手ごたえを感じると共に頭を下げる。

『続きましてはシースルーのような透き通る白をつかったエンパイアラインドレス。古代ギリシアの女神をコンセプトにした水無月 春奈(gb4000)さん』
 拍手と共にライディ・王(gz0023)にエスコートされた春奈がステージに姿をみせた。
 身長が125cmと小柄すぎる春奈の歩幅にライディは上手く合わせてキャットウォークの中央まで歩く。
 BGMに流れるのは貴族の結婚式をイメージしたクラシックの一曲だ。
 中央までたどり着くと、春奈は豪華なティアラのついた頭を下げてお辞儀をする。
 さらにクルリとターンしてお辞儀をして来た道を戻った。
「もう少し‥‥身長が欲しいですね」
 客席に聞こえないほどの小さな声で呟くと、春奈は今一度客席へと体を向けてお辞儀をすませる。
 
『続きましては「純潔」の花言葉をもつ桜をモチーフにしたマーメイドラインドレスの葵 コハル(ga3897)さんです』
 司会者に呼び出されて、米田と共にコハルステージへと歩みを進めた。
「仕事で着られてもプライベートは見込みどころか気配もナシ‥‥うん、まだまだ時間はあるよねっ!!」
「俺としちゃあ、アイドルはみんなの恋人であって欲しいでよ、そのままがええけど‥‥恋は綺麗にしてくれるで難しいがねぇ。五日できると思って今をがんばるだけだがね」
 ぐっと握りこぶしを見せるコハルに米田は腕を組みつつ笑顔を見せる。
 クラシックの落ち着いた音色と共に二人がステージに姿をみせた。
 桜色をベースに白の刺繍で桜の花びらや枝についた形を全身に散らしたドレスを身につけ、「優美」を花言葉に持つ枝垂桜の長く枝を垂らした様子が刺繍された白のヴェールを纏っている。
 鮮やかといった衣装に思わず客席から感嘆の声が上がる。
 注文どおりの仕上がりにコハルも満足をしており、歩く姿も背筋を伸ばして自信たっぷりだった。
 キャットウォークの端でターンするとき、花びらが舞うかのようにヴェールを靡かせてコハルは戻っていく。

『イメージは白鳥、オフホワイトのAラインドレスで登場していただくのは常夜ケイ(ga4803)さんです』
「じゃあ、行きましょう」
「うにゃ〜、ちょっとだけ‥‥幸せニャ」
 ライディにエスコートされたとき、ケイは少しだけ照れた様子を見せた。
 しかし、すぐにいつもの元気な様子に戻り一緒にステージへとあがる。
 弦楽をメインにした優雅でしなやかなクラシックをバックにキャットウォークへライディの手を離れてケイは歩きだした。
 ショールを羽のようにまとい、猫の軽快さやしなやかさを前面に出した動きで少しジャンプしたり、ふわっと丸い動きをして白鳥が翼を優雅に振るう様なステップをケイは踏む。
 キュキュっというバイオリンの響きと共に可愛く体をしならせ愛らしく毛づくろいをする仕草を決めるとターンして戻っていった。

『コンセプトは「いつまでも、貴方だけに恋するお姫さま」恋する女の子の夢を表現したプリンセスラインドレスの祈良(gb1597)さんです』
「じゃあ、神楽はエスコートよろしくね」
「それでは行きましょうかお嬢様」
 黒いタキシードをキッチリ着こなし、頭の上で結んでいた髪を項辺りに結び直した神楽が祈良と腕を組んでステージへとでた。
 BGMには女性シンガーの一途な思いを歌った曲が流れ、祈良は幸せな笑顔で手を振る。
 袖なしタイプのドレスに胸元と腰に大きなリボン。
 ふんわりと広がるドレスに合わせて飾られた、贅沢なラッフルフリル。
 髪は下ろして、少し巻いてふんわりとさせて、頭には小さめティアラとショートのベールを飾っていた。
 ネックレスとイヤリングはシンプルにパールで。手袋は手首丈の短いもの。
 ブーケは丸いラウンド形で、赤系の小さめな花を使い可愛らしさをアピールしていた。
 少女の夢であるお姫様をこれでもかと再現したドレスは祈良にとてもよく似合っている。
 キャットウォークの中央までエスコートされてくると、背伸びをした祈良は神楽の頬へキスをした。
「ちょっと照れるね」
 はにかむように笑うと祈良はキャットウォークの端まで行き頭を下げて戻る。

『着物をリメイクした和風ドレス。コンセプトは「自由奔放」常識に囚われない淡い水色のスレンダーラインドレスの舞 冥華(gb4521)さんです』
 司会者が説明を続けているとちまっとした冥華が一呼吸してエミルにエスコートされながらステージに出てきた。
 振袖を作り直し、細身のドレスにオーバースカートをとりつけた2Way仕様である。
 薄い水色のドレスのようになった振袖を冥華は見事に着こなし、教わった歩き方で緊張しながらもしっかりとキャットウォークを進んだ。
 ペコリとお辞儀をするとオーバースカートを取り外しながらターンして戻っていく。

『続きましてはロングトレーンの黒を基調としたドレスを身につける終夜・朔(ga9003)さんです』
 白のフリルと天使の羽のような装飾や薔薇を散りばめたドレス姿の朔が神楽のエスコートでステージに出てくる。
 優雅な足取りでステージを進み、キャットウォークまでくると会場の視線と素敵なドレスを着れた幸福感で覚醒してしまった。
 白基調で黒を少し交えたヴェールをネコミミが押し上げながらキャットウォーク端のターンするとき、両手を上げて丁寧にお辞儀をする。
「Noirですの♪ どうぞよろしくお願いしますの♪」
 一言述べつつ、朔はスカートの両端を摘んで小首をかしげて微笑みかけた。
 そのままターンして下がると、BGMが新婦入場でおなじみの曲へと変わる‥‥。

●Final Stage
『最後となりました。すっきりしたマーメイドラインタイプのドレス。シンプルさを追求に胸に一厘の華を添えたデザインの田中アヤさんです』
 旧姓で最後の仕事を向かえた鷹代 アヤ(gb3437)は緊張した面持ちでステージに出る。
(「やっぱりこういうのは身長あったほうがいいよなあ‥‥」)
 背の低さをカバーするためにハイヒールブーツを履いての登場だった。
 装飾のないロンググローブには左手の薬指に指輪が光り、ロザリオ型ともう一つのネックレスを肌の上に載せてゆっくりとキャットウォークを歩く。
 エスコートには着替えを終えた祈良がつき、背丈のバランスをとっていた。
「もういいから、ありがとう‥‥ここから先は一人でいくね?」
「うん、最後のお仕事がんばってね」
 キャットウォークに入る前で祈良と別れたアヤは一人、胸を張って歩く。
 バージンロードに見立てて、歩きながらアイドルになってからのことを振り返っていた。
 昨年の今頃はCDを作っていたのだが、遠い昔のようである。
 端まで来ると、両手を前で組み客席に向かってアヤは深くお辞儀をした。
 ターンをしてステージまで戻るとアヤは袖に帰らず、客席の方へ体を向け、マイクをスタッフから受け取る。
『ええと、実はホントにウェディングドレス着る事になりまして。あたし、田中アヤはこのショーを最後にIMPALPSから卒業します』
 突然のアヤの言葉に客席の一部からどよめきが上がった。

●The Back Stage
 アヤがステージで挨拶を行っているとき、舞台裏ではライディ包囲網が出来上がっている。
「な、なんか皆さんの顔が怖いんですけど」
「最後にブーケトスをするとき、ライディさんも一緒にやりましょ〜。ほら、鼓さんに頼んでドレスも作ってもらいましたよ〜」
 フェイトが小悪魔スマイルを浮かべて見せたドレスは淡いピンクにベルラインのゴシック風だ。
「いや、僕はですね‥‥マネージャーとしての仕事が‥‥」
「‥‥往生際が悪いですよ。もっと早く気がついていれば逃げられましたのに‥‥米田さんから許可は貰っていますから」
 にっこりとステキな笑顔をみせて春奈が長髪のカツラとパットを持ってくる。
「マネージャーさん‥‥」
 朔は耳をピコピコと揺らし、ライディの服の裾をひっぱって期待のまなざしを向けてきた。
 もう逃げることは出来ない‥‥。

 ―10分後―

 下着までは脱がされなかったが、コルセットで締められ、パット詰め、化粧をしてカツラをつけたゴシックドレスの美女レイリン(仮)が完成する。
「すごい‥‥こんな風になるなんて‥‥」
 驚いた様子でライディは鏡を見た。
 自分とは思えない人物がそこにあり、またなんでこんなことになったのかと寂しさが押し寄せる。
「ライディさん、自信もって良いレベルだよ‥‥私ももっと精進いや、もっと磨かないと」
 神楽はライディの変身した姿に小悪魔的笑みを浮かべながらも、自分の女らしさと比べて拳を小さく握った。
「あら、お似合いじゃないですか。これでファンがついたらそのままデビューしてもいいんじゃないですか?」
「デビューなんてお断りです‥‥もうお嫁に‥‥って、結婚済みでしたね。ええ」
 含み笑いを残す春奈の冗談とも本気ともいえない言葉にライディはただ涙をながす。
 そして、着替え直してもらう前に最後のブーケトスイベントへそのまま借り出されるのだった‥‥。

●Bouquet toss
『‥‥ということで、これからもIMPALPSをよろしくお願いします』
 突如おきた引退宣言に観客の大半は驚いていた。
 しかし、アヤのこれまでを振り返った話や、結婚に向けた思いに心を惹かれ、今では盛大な拍手がアヤに注がれている。
『私のショーに来てくださったのにこんなイベントを起してゴメンナサイね。けど、結婚を期に仕事を捨てる勇気を持てたこの子に華を添えたかったの』
 デザイナーの鼓がマイクを持ってアヤの隣に立つ。
『今のドレスもよかったら本当の式でも使ってね? じゃあ、他の皆も呼びましょうか‥‥みんな〜』
 鼓が教育番組のお姉さんのように呼び出すと各自のウェディング姿にブーケを持って集まってきた。
『アヤへこれは皆からの寄せ書きと「門出」と「永遠の喜び」を花言葉にもつスィートピーの花束だよ』
 コハルが寄せ書きと共に花束をアヤに手渡す。
『ありがとう‥‥ござい、ます』
 思わず涙を流してアヤは受け取った寄せ書きに目を通した。
 
『幸多き旅路を祈ります byコハル』
『偕老同穴 byケイ』
『アヤさんとはいつもお仕事一緒で本当に御世話になったの(涙)、やめちゃっても絶対元気で居てね、約束だよ by朔』
『今まで一緒にお仕事出来て、楽しかった。ありがとう。これからは、大切な人と幸せにね by祈良』
『末永くお幸せに by春奈』
『アヤおめでとう、これからが始まりだから頑張って私たちはいつも一緒だよ by神楽』
『その衣装のまま結婚式いってらー by冥華』
『ALPからの同期で、お友達なアヤさんが卒業。ちょっと寂しいけど、ご結婚おめでとうとお幸せに!! God bless you! フェイト』

『ケイちゃんのは夫婦仲良く同じ狢でむつまじくって言う意味の格言ですよ。大勢のファンを虜にし幸せにした優しさと魅力で家庭をしっかり支えてあげてくださいね』
『ありがとう‥‥ケイ‥‥さん』
 溢れる涙を拭いながらアヤはケイに頭を下げる。
『じゃあ、全員でブーケトスしようか?』
 祈良がブーケを見せながら首を傾げるとアヤや、ライディ、鼓も含めてキャットウォークの左右にちってブーケを持った。
『皆にも幸せを、そーれっ!』
『それ〜』
 アヤの掛け声と共にブーケが会場を舞った。
 次なる幸せを求める人々の下へ、願いよ届け‥‥。