●リプレイ本文
●十人十色
10人のアイドル達がラストホープの事務所に集まる。
夏のコミックレザレクションに向けたCDが作られるのだ。
「えっと、まずはジャケットの方からやりますね。その後収録と共にPVに移りますから」
マネージャーのライディ・王(gz0023)が全員に向けて確認を取る。
「ジャケットか‥‥撮影場所はここか?」
「下手に移動するとファンとかに探られちゃいますからね。背景は後で合成する形で対応しようと思います」
眼鏡を直しながら尋ねる鷹代 朋(
ga1602)にライディは答えた。
「よーし、エイラ。俺様たちは脱ぐぜ!」
「姐さん、ぬぐって‥‥」
「水着だよ、水着。ビーチの一枚取らなきゃだめだろ?」
テト・シュタイナー(
gb5138)の突然の振りにエイラ・リトヴァク(
gb9458)は困った顔を見せる。
「じゃあ、俺達は花火でもバックにしてもらうか‥‥」
「そうだな、花火をバックに演奏でいこうか。PVもあるので合成に頼らせてもらおう」
ヤナギ・エリューナク(
gb5107)と嵐 一人(
gb1968)がベースとギターをチューンしながらアイディアを持ちかけた。
「では、ユニットごとにジャケットを取って買った人が選べるようにしましょう」
「それがいいな‥‥ところで、そうなると俺も水着を着なきゃいけないのか?」
朋があっと声をだしながらテトをみると、テトはサムズアップで返す。
エイラとそろって朋は大きくため息をつくのだった。
●デュオ&デュオ
「『impalps』として初のアルバムに参加出来るなんてね、責任重大だよね‥‥ま、いつもどーり楽しんでいけばウマくいくでしょ!」
「音を楽しむのが音楽なんだから、楽しんでやろうな」
背丈が同じ男女デュオ【Azure】の葵 コハル(
ga3897)と宵藍(
gb4961)は控え室でお互いに声をかけながらも収録前の準備をしている。
音だしの練習もできるように一通りの楽器も備えてあるため、コハルはキーボードの前に立つと指慣らし用の簡単な曲を演奏しだした。
「はーい、お邪魔しまーす。PV用の撮影ですよ〜、いつも通りのんびりしていてくださいね〜」
ハンディカメラを持った水無月 春奈(
gb4000)が入ってくる。
「春奈か‥‥のんびりともいかないな、これから収録なのだから」
宵藍は少し苦笑をもらすとすぐさま真剣な表情へと変わり、体をゆっくりと動かしながら呼吸を整えていった。
太極拳の準備運動でもある八段錦をひとつずつゆっくりとこなす姿は凛々しい。
「ほぉ‥‥こんな風になるんですね」
春奈が思わず関心の声を漏らしていると、レコーディング室からライディが顔をだした。
「準備できましたのでAzureからお願いします」
「よし、いくか‥‥」
「はいよ〜」
コハルと宵藍は顔を見合わせて頷くとレコーディング室へと入る。
軽い音合わせの後、収録が始まった。
―Sunflower― 作詞:宵藍 歌:Azure
♪〜〜
※
Love is like a Sunflower
視線シラズ 貴方追う
夏空花咲く恋心
(前奏)
薄着の距離のせい? 落ち着かない熱
気だるい空気 ゆらゆら泳ぐ
光をチョウダイ 目覚めた花に
寝ぼけた心 シャンと伸ばそう
貴方へ真っ直ぐ向う眼差し
太陽見つめるヒマワリ
会えない夜は俯いても
夏空の青さ 凛と咲き誇っていたい
※Repeat
でもイツカ
The Sun stares at the Sunflower
視線ワタシ 離さない
太陽くぎづけ夏の花
ヒマワリ 夏恋 蒼に溶け‥‥
〜〜♪
曲調はミドルテンポのバラードで、楽器はキーボードと二胡で仕上げている。
ツインボーカルでコーラスとメインを入れ替わったり、歌ったりと変化に飛んだ曲にしあがった。
「ハモリのあるいい曲ですね〜」
控え室で流れてくる曲を耳にした春奈はウンウンと頷きながらカメラをぐるっと控え室の方へと向ける。
「年長‥‥おほん、アダルトデュオの方が準備されているみたいですね」
夏らしい涼しげな洋服でピアノを弾く加賀 弓(
ga8749)と沖縄の楽器三線の調子を整える金城 ヘクト(
gb0701)がいた。
静かに音楽に没頭する二人には近づけない何かがある。
「お二人とも静かに集中されていますね‥‥」
「『ちゅらうみ』のお二人、レコーディング室まで来てください」
「はい、ではいきましょうか?」
「わかっのみぐさぁ〜」
ライディに呼び出された弓とヘクトはレコーディング室へと向かった。
その際、ヘクトは春奈の前でとまると顔を向ける。
「‥‥と、君? PVに使うなら自分は古民家のシーン考えてるから、後にしておいてほしいさ」
「あ、はい‥‥わかりました」
ぬぅと約70cm上から見下ろされて少し驚いた春奈は首を縦に振って答えた。
前のユニットと入れ替わるようにレコーディング室に入ると収録となる。
―遠くに消えた日々― 作詞、歌:ちゅらうみ
♪〜〜
(弓:らら ら ら ら ららら)
ヘクト:あの頃は 上手く行かなかった
ヘクト:大切に思いすぎて 重すぎたから
ヘクト:キミをかえって 縛り付けてしまったのか
ヘクト:あの日の写真に 映るキミの笑み
ヘクト:大切に想う 遠くに消えた日々‥‥
弓:今ならばと思う それは きっと未練でしかない
弓:ただ、今のキミが生きていれば良かった
弓:忘れる事も出来たのかもしれない
ヘクト:いないキミを思うのは 失ってしまったから
ヘクト:だけど 悲しんでいる顔をしている
(弓:だけど 悲しんでいる顔をしている)
へクト:ボクをキミは らしくないと笑うだろう
(弓:ボクはキミを らしくないと笑うんだ)
ヘクト:歩き出そう 今の自分のために
〜〜♪
二人が歌ったのは男女でパートわけしたフォークデュオソング。
ピアノと三線の優しい音色と共に紡がれる歌は心地よさがあった。
悲しい歌詞でありながらも、それを前向きに取っていこうという思いの篭った一曲である。
「さすがですね、この二人は一味違います‥‥さて、他のメンバーの撮影にもいっちゃいましょうか」
カメラを片手に春奈は控え室をスキップしながら出て行くのだった。
●Rock On Roal!
「一度やれば緊張とかすっ飛ぶ、ねぇ‥‥微妙なアドバイスくれよってからに‥‥」
朋はため息をこぼすと携帯を閉じて立ち上がり、ヘッドホンをつけて歌詞を読みだす。
外界の音を遮断し、自分の中にリズムを作りイメージを膨らませていった。
アニメソングや特撮ソングのような熱い映像を広げて、指で膝をリズミカルに叩き出す。
「いい表情ですね〜女性ファンがつくほど格好いいですよ〜?」
そんな朋の横顔をカメラが春奈と一緒に動き表情を捉えた。
「嫁さんが嫉妬するかもよ?」
テトが突っ込みをいれるとカメラがそちらを向く。
ノートパソコンに向かってシンセサイザーの調整をテトはしていた。
何でもある控え室もそうだが、小柄な体で高速なブラインドタッチを見せるテトの姿は漫画のようである。
「緊張して‥‥、いやいける。んじゃ、テト姐さん、朋、軽く合わせいくぜ」
メインボーカルを務めるエイラは緊張した顔を両手ではたいて朋の前に来きた。
テトがシンセサイザーでリズムを作り、前奏からメロまで軽く流す。
高い音程のエイラに低音の朋が続く旋律が広がった。
「よし、いい感じじゃねぇの?」
テトが音楽をとめて二人を確認する。
「次のユニット、お願いしますー」
「呼び出しか‥‥俺もなんか楽器練習した方がいいんかなぁ‥‥楽譜の読み方から始める必要あるのがのがネックだけど」
「歌が歌えりゃ大丈夫さ、そうだろ姐さん?」
「おうよ、やる気があれば何でもできるってぇなぁ? ほらいくぞ」
朋の悩みをエイラとテトは軽くいなしてレコーディング室の方へと入っていった。
―fairys sky― 作詞:エイラ 歌:Heating Heart
♪〜〜
fairys sky
飛んでみせるこの大きな空を 小さな翼でしかなくても
想いを邪魔させはしない 嵐にまかれ雨に叩き付けられ
一人になって この身が力尽きても
意味が無くても構わない 無いのなら
見つけて見せてやる 自分だけの奇跡描いて
fairys sky
誰かが笑った幼い夢だけど 思い続けてみせる
挫折や後悔の刃が 幾度もこの身つらぬくとしても
越えてみせる その先に何も無くても
この翼 鋼鉄に変えて飛んでいく
鉄の嵐の中を 護りたい者がそこにあるから
生き抜いてやる 誰も悲しませたくはない
それが無茶な事だとしても
〜〜♪
テトがチョイスをしたエレキギターやドラムのサウンドが響き、それに合わせたロックなエイラの声と低い朋のボイスが乗っかる。
アニメソングにも使えそうなくらいの熱い曲が仕上がった。
「あれ、嵐さんがいない‥‥」
曲を聞いていた春奈が控え室の外へ行くと、壁にもたれてメールをしている嵐がいる。
「こーんなところで何をしているんですか〜?」
「か、関係ないだろ‥‥」
カメラを構えてにじりよると嵐はすぐさま携帯をしまった。
「クールな嵐さんが慌てているのが何よりも怪しさを際立てていますよ〜」
「ちょい、春奈ちゃんよ。音あわせしているから静かにしてくれね?」
カメラを持ったまま控え室に戻る嵐を春奈は追いかけるとヤナギがベースをいじりなが苦笑いを浮かべる。
「あ、ごめんなさい‥‥」
春奈がおとなしくしていると音あわせの終わったヤナギが今度は花火を意識した早めのテンポでベースを弾き出した。
ヤナギのベースに合わせて嵐もギターを奏で、即興のセッションが生まれる。
「う〜ん、その辺は‥‥ちょっと、貸してもらっていいですか? こんな風に弾いてもいいんじゃないかと」
カメラを置いてヤナギのベースを借りた春奈は自分なりの花火のイメージを形にした。
出だしは緩やかにそして、連続で花咲くように激しくと波をつけたいようである。
「いいねぇ〜。それはもらいっ!」
パチンとヤナギは指を鳴らして答えるとライディがレコーディング室からエイラをつれてやってきた。
「さて、皆さんでユニットは最後ですよ」
「ヤナギ、一人、こっちはいつでもいけるぜ、かましてやろうぜ‥‥さぁ!」
サムズアップしてエイラが二人を呼び込むと嵐とヤナギは楽器を持って立ち上がる。
そのままライディを含めて4人はレコーディング室へと消えていった。
―Sultry night Flower― 作詞、歌:a rabble
♪〜〜
夏の夜の夢心地
乱れ咲く夜の華
一瞬の駆け引き
乱れ咲く夜の罪
Flame Blossom
狂い咲け儚き恋
Burnin Blossom
真夏の幻想
さぁ、夜はこれからだ
闇に溶ける花 咲くのはひと時でも
焼き付けた輝きは 消えやしない
〜〜♪
流れるメロディはハードなロック、ギターでの演奏と共に一人がメインで歌う。
サビのポイントではヤナギもハモリをいれ、曲の仕上がりをよりいいものに仕上げていった。
エイラのシンセサイザーはテトがチョイスしたエレキギターやドラムのリズムをそのままに歌の厚みを増させる。
Imp、Alp、Mpa、それぞれのメンバーによるコラボレーションユニットソングがここに完成したのだった。
『皆様、お疲れ様です。4曲ですがこれで終わりに‥‥』
「いや、まだ後一曲あるぜ。全体曲のアレンジをみんなで歌うんだ」
嵐がガラスに隔たれたミキシング室にいるライディへと声をかける。
「ああ、5曲までいいならそれくらいはいいだろ? ライディ」
ヤナギもウィンクを飛ばすと春奈に先導されてきた収録済みのメンバーがレコーディング室に入り、ミキシング室には春奈がカメラを回して入ってきた。
「こうして他のグループとCD収録なんてなかなかないんだ、いいものを作ろう。曲はIMPALPS〜絆の翼〜だ」
宵藍が曲目を宣言すると、ヤナギと嵐、エイラがイントロを奏でる。
ロックアップされた曲調にあわせ、二本のマイクに散らばった10人が斉唱するのだった。
●完成! 新作CD
「出来上がりましたか」
ジャケット写真を眺めながら社長室の米田はうれしそうに頬を緩ませた。
商店街の降りたシャッターの前で歌うヘクトと弓、水辺で遊ぶエイラ、テト、朋。
花火をバックに歌うヤナギ、嵐、エイラ。ひまわり畑で水をかけるコハルとかけられる宵藍。
ユニットごとに一枚の絵となっていて、中央に『COLORS』と書かれているジャケットだった。
「PVは外での収録の希望もありましたが、それもこれから編集して入れているとコミレザに間に合わないかもしれません。今回は撮影風景を宣伝用で流すだけにしましょうか」
春奈が撮影しているビデオを眺めて米田は満足そうにうなずいた。
「後日ちゃんとしたPVと共にDVDとセットでショップ売りですか?」
「もちろんですよ、コミレザはパイロット版ということでいくつもりですから」
秘書からの問いかけに米田は振り向きながら笑って答える。
子供のように心底楽しそうな笑みだった。
「コミレザの目玉商品にしましょう。音の編集と共にPVの製作も合わせてお願いします」
「わかりました、7月31日までに出せる用に動きます」
秘書は米田の指示を聞くと、一礼して部屋を後にする。
「さて、今年の夏はどうなるのか楽しみですね」
ラストホープの夜景を見ながら、米田は腕を組み椅子にその身を預けるのだった。