タイトル:【DoL】始動!IMPマスター:橘真斗

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2008/02/03 16:55

●オープニング本文


 西暦2008年を迎えた一月某日、名古屋にあるUPC日本本部を統括する東アジア軍本部の会議室では、ミハエル=ツォィコフ中佐がいつにも増して怒号を上げていた。
「お前達が私を評価してくれたことには嬉しく思う。だがそれでは余計な注目を浴びてしまうだけというのが分からんのか!」
 問題になっている議題はツォイコフ中佐の帰郷である。本来極東ロシア軍所属の中佐がいつまでも日本に滞在する必要は無く、防衛戦の事後処理も済んだ今では中佐はロシアに帰るのが筋だった。しかし日本本部の司令官本郷源一郎大佐は、中佐の帰郷さえも一つのプロパガンダに利用できないものかと考えていた。
「だがガリーニンはもう存在しない、中佐はどうするというのだ?」
「俺を呼び出したのはお前達で、ガリーニンの突撃もお前達の指示だ! 全権を握ったのは確かに俺だが、その青写真を描いたのもお前達ではないか!!」
 吼える中佐、しかし彼に提示された案は一つしかないことも中佐は理解していた。
「お前達は何故そこまで俺をユニヴァースナイトに乗せようとするのだ!!!」

 会議室のプロジェクターは、UPC東アジア軍が提示したガリーニンに代わる中佐の乗艦「ユニヴァースナイト」を映し出していた。手元に配られた資料には「KV搭載可能、自己発電機能有、航続可能時間1000時間超」といった十分すぎる性能が書かれている。しかし最大の問題点が書かれていなかった。

「名古屋防衛戦も敵の本来の目的はこのユニヴァースナイトの破壊が目的だったのではないか?」
 ユニヴァースナイトの最大の問題点、それはガリーニンを超えギガ・ワームにさえ引け劣らない巨大な体躯だった。また空母である以上ユニバースナイト自体には十分な火力が搭載されているわけではない、いかに各メガコーポレーション合同開発の最新鋭空中空母とはいえ、KVが無い状態で集中砲火を浴びれば撃墜は免れない。
「そのユニヴァースナイトの進水式を大々的に行うと言うのはどういう了見なのだ! 再び名古屋をバグアの戦火に晒したいのか!!」
 当初中佐はユニヴァースナイトに乗ること自体に懐疑的だった。
 乗ってしまえば常に最前線を転戦し、部下を危険に晒してしまう。
 乗艦条件として提示したのが部下以外の各種専門家の搭乗と進水式の見直しだった。
「しかし名古屋以外にもバグアからの解放を期待する声は高い。彼ら彼女らに希望を持たせるのも私達UPC軍人の仕事だ」
 冷静に諭す司令官。そこまで言われた以上、流石の中佐も反論ができなかった。
「ならばガリーニンの時と同様KVでの護衛を依頼する。並びに、民間人は全員シェルター退避だ。貴様らの言う希望はブラウン管を通してでも伝わるだろう。これが俺の譲渡できる最低ラインだ」
 こうして中佐のユニヴァースナイト搭乗が決定した。

●名古屋でええで、こっちへいりゃあ

「最近ビビッとくるものがあれせん」
 名古屋独特のイントネーションで愚痴りつつ、男はジュースを啜った。
 芸能プロダクションで有名なアイベックス・エンタテイメント。
 そのプロデューサーの一人がこの男、米田時雄(よねだときお)である。
「だいたい世間が物騒すぎるからいかんだでよ」
 携帯TVでニュースをみるも、そこに映るのは戦争の話ばかりだ。
 どこどこが、バグアを倒しただの、戦局がどうの、などである。
 最近の話題はユニヴァースナイトの進水式中継の話で持ちきりだった。
 芸能情報の味気などまったくない。
 所属していたタレントの中にも軍に志願したり、エミタ適正があって傭兵に転向したものもいるくらいだった。
「うみゃあこと、飯の種でもころがってにゃあか」
 TVを動かしていると、全国ニュースで能力者の活躍が映し出された。
 その中には綺麗な男女の姿もある。
「傭兵だで、ごついのばかりかと思ったら、そうでもあらせんな‥‥げな! 傭兵の逆スカウトをやったろみゃぁか!」
 直感がビビッときた。
 こういうときは動くに限る。
 時雄はそうやって、時を動かしてきた。
「企画は‥‥IMP! 『Idole Mercenary Project』だで! はよう、動かんとネタとられちまうだでよ」
 憂鬱な気分を吹き飛ばして、時雄はラスト・ホープに連絡をするため動き出した。
 
 そして、しばらくしてラスト・ホープの本部に奇妙な依頼が届く。
 
●アイドル募集
 傭兵の皆さん!
 アイドルになって、有名になりませんか!
 皆さんの夢を、アイベックス・エンタテイメントは応援します。
 オーディションを早急に行いたいので、以下の条件でご応募をっ!
 
 <条件>
 ・プロ、アマといません
 ・経験者歓迎! 性別不問!
 ・一芸のある人優遇
 ・新人アイドルとしてデビュー
 ・アイベックス・エンタテイメントがバックアップいたします
 ・自分の力でメジャーデビューも夢じゃない!
 
 
 
 
 ・名古屋でデモンストレーションとしてKVでアクロバットおよび、キメラを倒してね♪
 
 最後だけは非常に小さく書いてあった。

●参加者一覧

ジーラ(ga0077
16歳・♀・JG
鷹代 由稀(ga1601
27歳・♀・JG
夕凪 春花(ga3152
14歳・♀・ER
緋霧 絢(ga3668
19歳・♀・SN
葵 コハル(ga3897
21歳・♀・AA
沢辺 麗奈(ga4489
21歳・♀・GP
小田切レオン(ga4730
20歳・♂・ST
雪村 風華(ga4900
16歳・♀・GP

●リプレイ本文

●今がそのときだ!
「まぁ、ブッキングだから仕方あらすか」
 ユニヴァースナイトの進水式。
 それにあわせて行われたアイベックス・エンタテイメントの記者会見会場は静かだった。
 米田時雄は少人数の報道陣にかこまれつつ、席に着いた。
「今回のアイベックス・エンタテイメントの新企画発表記者会見に参加していただきありがとうございます」
 癖のある名古屋弁から、標準語に切り替えて話し出す。
「進水式のほうに向かわれた方もいるようですが、こちらにいていただいた方にはそれ以上のものを見せますので今日を幸運と思ってください」
 丁寧ながらも自信のあふれる言葉を述べ、時雄は会見席の背後にあるディスプレイに映像を映し出させた。
 そこではユニヴァースナイトが飛び上がり、その横を黒い8機のナイトフォーゲルがフォーメーションを描いて飛行をする。
 KVの左翼にカメラがズームすると、そこには『IMP〜Catch the Heart〜』と8機には描かれていた。
「IMP(インプ)、これこそが私の新たなプロデュース企画なのです。傭兵をアイドルとして売り出すのです」
 その言葉に記者会見場はざわざわとなり、フラッシュがたかれる。
「ラスト・ホープの傭兵達はアイドルに関心のあるようで、今回も厳選な抽選の上8人を売り出しました。しかし、これからも発掘し続けます」
 時雄の発言と共に8機のナイトフォーゲルがディスプレイの中で、息のあったバレルロールを見せる。
「彼らにスタントは必要ないため、映画などにも十分適応できます。足りないのは業界知識と作法。それらを私達アイベックス・エンタテイメントがサポートしていきます」
 続いて旋回をして、空域を離れていく8機のKV。
 その動きは訓練された軍人にも匹敵する。
「『Idole Mercenary Project』‥‥IMP(インプ)は今日この日から、芸能界の時を動かします! その彼らの活躍をあとはディスプレイにてごらんください」
 時雄はディスプレイを注目するよう手で促した。
 
●新世紀型アイドル
『兄貴の奴、『その歳でアイドルはどうよ?』とか言ってくれちゃってさ。酷いと思わない?』
「そうですね」
 ユニヴァースナイトから離れて編隊飛行をしているとき、緋霧 絢(ga3668)は鷹代 由稀(ga1601)の声掛けに当たり障りなく答えた。
『‥‥なんでボクはここにいるんだろう。アイドルとか時代錯誤のようなきもするし』
 由稀に続きジーラ(ga0077)のつぶやきが入ってくる。
『それよりも、このプロジェクトのネーミングが聞いた事ある気がするけど、気のせいかな?』
 雪村 風華(ga4900)は素朴な疑問を投げかける。
 非戦闘時なので、皆は肩の力が抜けている感じだった。
『それは私も思いました‥‥こあくまとの注文もちょっと難しいです』
 今回のメンバーの中では外見最年少の夕凪 春花(ga3152)は戸惑いつつ飛行をしている。
 深呼吸をする声が通信からもれてくる。
『春花は気にしなくても十分、小悪魔な魅力を持ってるよ。俺には無い気がする』
 さらに、小田切レオン(ga4730)が通信に割り込んだ。
「小田切様もストリートシンガーのようですから、一番近い存在だと思います」
 絢は小田切のため息交じりの声に対して言葉を返す。
『そういってくれれば助かるが‥‥岩龍のレーダーには何かとらえてないかー?』
 最初の方は小声で、後半はごまかすかのように大きな声でレオンは聞いてきた。
「いえ、今のところ‥‥すみません、反応でました。テレビ塔に向かって5mくらいの生命反応をキャッチ。数は6です」
 絢の手錠がチャリリと鳴る。
 戦闘に対する緊張か、体の体勢を無意識に変えたからだ。
「米田様、テレビクルーの位置など教えてください。テレビ塔付近にキメラが近づいています」
『ちょっと失礼‥‥今、記者会見中だ。テレビ塔にクルーはいるから、テレビ塔を守れば問題ないはずだよ』
 絢からの通信に、雑音のかぶる声が帰ってくる。
「わかりました、これから迎撃に向かいます。各自、フォーメーションをアルファからベータへ変更。ロッテを組みつつ戦闘空域へ移動してください」
『『了解!』』
 絢は答え、岩龍をテレビ塔に向かって飛び出させた。
 岩龍を先頭にして7機のKVがついていく。
 大空に鋼鉄の鳥達が羽ばたいた。
 
●トリノウタ
 空域に入ると、目の前に鯱が編隊飛行をしていた。
 色は金色であり、名古屋の町にふさわしいといえる出で立ちをしている。
「TACネーム、Doragoon。R−01スタンバイ‥‥デビュー戦をかざるでぇぇっっ!!」
 アイドルデビューに対して気合を入れている沢辺 麗奈(ga4489)のR−01は葵 コハル(ga3897)のR−01と共に1体のシャチホコキメラに向かっていく。
『ここがあたしたちIMPの晴れ舞台! ブレイクするから、麗奈さんよろしく!』
 コハルのR−01が螺旋を描くようにシャチホコへ接近し、ガドリングを叩き込みだす。
 左翼下面に描かれた『Wind Of Hope』の文字が太陽に光に照らされた。
 コハルのガドリングにより、シャチホコキメラの鱗がはじけ飛ぶ。
「ありがとなコハルはん! いくで!」
 麗奈はガドリングを使いキメラに突撃する。
 コックピット内の麗奈の髪と胸が揺れた。
 ぶつかるかと思ったとき、麗奈のR−01は人の姿にかわりシャチホコキメラを踏み台にする。
「うちの決め技パート1! 名づけて、『配管工直伝1UP踏み』や!」
 コハルと麗奈自身の打ち込んだガドリングで鱗のはがれたシャチホコキメラの頭部に、アグレッシヴ・ファングをこめたヒールキックを麗奈のR−01は蹴りこんだ。
 そのまま、落下するシャチホコキメラを踏み捨て麗奈のKVは次の獲物を狙いに飛び上がる。
「おっしゃー! このまま次いくでっ!」
『次はあたしに止めをささせてよー』
 そんな麗奈の姿を見て、コハルはそういうしかなかった。
 
●Tough Girl
「ちぃっ! 結構速いっ!」
 由稀は一発目のスナイパーライフルを撃ち、リロードして距離をとるとシャチホコキメラ達はすぐに接近してきた。
『リロードの‥‥タイムラグが大きい』
 ジーラがクールに返す。
 2人ともスナイパーライフルのため、1発限りでリロードのタイムロスがあった。
 1匹を集中砲火で落とすも、別のシャチホコはテレビ塔へ向かってくる。
「天下無敵のスナイパー! 鷹代 由稀は狙った獲物は逃さない!」
『由稀、何をする気?』
 ジーラの声が動揺を帯びる。
 テレビ塔に向かうシャチホコキメラに対して、由稀は思い切って戦闘機から人型になってつかみかかった。
 掴まれた巨大なシャチホコキメラの牙が由稀のS−01の肩にくらいつく。
「強引ぐ、MY WAYは伊達じゃないわよ! 生身じゃなければハンデは無いからね!」
 由稀のS−01の襟首辺りに描かれた『Going my way』が示すように、そのままチタンナイフを抜いてシャチホコキメラの目を突き刺した。
 ひゅぅぅぅとキメラと共に由稀のS−01は回転し、落下をしだす。
『無茶しすぎ‥‥でも、うまくキメラだけ狙ってみせる‥‥ね』
 ジーラからのため息交じりの声が由稀の耳に聞こえる。
 その言葉を信じ、由稀はなるべくもがくシャチホコキメラに組み付いた。
 ドォーゥンという大砲のような音と共に、ブレス・ノウによって狙いすまされた弾丸がシャチホコキメラに迫る。
 弾丸はシャチホコキメラの胴体を貫き、アスファルトの道路に穴を開けた。
 そのまま、由稀はシャチホコキメラを地面にたたきつけ、自前のライフルの銃口をシャチホコキメラの額に押し当てる。
「この派手な戦闘はいい魅せものになったでしょ、米田さん」
 由稀は聞こえているかどうかわからないプロデューサーに向けて問いかけ、そのまま引き金を引いた。
 
●Just Fly Always
「しかし‥‥名古屋にシャチホコキメラか。随分と空気読んでるヤツだなー、キメラの癖に」
 レオンはスナイパーライフルD−01を撃ち、リロードする。
 麗奈の踏みつけで弱ったキメラがレオンの放った弾丸によって落ちた。
 そして、絢達A班と共に右旋回をしてシャチホコキメラに向かっていく。
『でも、微妙にチープな光景です‥‥』
「あー、春花。慣れてないからとは思うが、チーム組んでるんだからそっちと通信するようにな」
 別班である春花からの急な通信に少し驚くレオン。
『はぅ‥‥すみません』
 姿は見えなくても、レオンにはコックピットで小さな体をさらに小さくしている春花の姿が目に浮かぶ。
 もしかしたら、この中で一番アイドルらしいのは春花かも知れないとレオンは思った。
『IMPリーダーより、各機へ。手遅れかもしれませんが、市街への被害も減らすようにお願いします』
「派手に戦っているのが多いからな、仕方ないかもねー」
 絢からの通信に対して、レオンは苦笑しつつ答えた。
 レオンの目の前ではシャチホコキメラを飛び石のように軽快に踏んでいった麗奈のR−01が見える。
『レオンさん、こっちも負けてられないですね!』
「おうよ、FenrirよりCrowへ。こっちは遠距離型なんで連携を提案するぜ。4機のコンビネーションを『魅せて』やろうじゃないか」
『Crow、了解。こちらも接近戦仕様ですし、そのほうが見栄えもいいでしょう』
 残り2体となったシャチホコキメラを相手に4機の鋼鉄の鳥達が飛び掛った。
「よっし、まずはこいつを食らえ! 必殺アグレッシヴ・ファング! ダブルシュートッ!」
 レオンがリロードしたD−02を1体へ撃ち込み、すぐリロードしてもう1体へと撃つ。
 2発の弾丸は2体を捕らえ食らいついた。
『Little snow、突撃っ!』
 レオンの攻撃を受け、動きの止まったシャチホコキメラに向かって風華が突撃をし、ガドリングを放つ。
 絢と春花も風華の攻撃にあわせ、バレルロールと共にガドリングの雨をキメラに向かって放った。
 数百にわたる鉛弾の雨を受け、シャチホコキメラは釘付けになる。
『まだ、終わりではないです』
 絢の岩龍が横並びになった2体のキメラの間に入り、変形をする。
 落下をしながら刃となった翼でシャチホコキメラを斬った。
 1体はそれで落ち、残った1体に対して、春花が全力の高初速滑腔砲を撃ちだす。
『これで、とどめです! アグレッシヴ・ファングファイア!』
 エネルギーを集中させ、加速を増した弾丸はシャチホコキメラのフォース・フィールドをたやすく破った。
『Little snowからシュベルトライデへ。おめでとう』
「ナイスショットだシュベルトライデ」
『はい、ありがとう‥‥ございます』
 風華とレオンからの祝辞を受けて春花はおずおずと答えた。
『IMPリーダーより各機へ。今、米田様より住民の避難解除が出されたとの報告がありました。公園に着陸してPRを行って欲しいそうです』
「Fenrir、了解。服装とかチェックしないとな」
 レオンは目の前に薄く写った自分の姿を見て、髪の毛とかを整えだす。
『あーん、それならコスプレしてこればよかったー』
 不意にコハルから通信が入りだす。
『ボクそういうの苦手なんだけどな‥‥』
『ええやん、撮影会もやろ〜や。一回100Cとか』
『お金とったら、さすがにまずいってば』
 ジーラ、麗奈、由稀も会話に混ざってくる。
「やっぱり、俺って場違いな気がするぜ‥‥黒一点か」
 レオンはため息混じりに苦笑し、次のメンバーには男性が欲しいなと心の隅で願うのだった。

●小悪魔の凱旋
「わー、すごーい! お兄ちゃんたちありがとー!」
 KVたちが公園に人型に変形して着陸すると、シェルター内のTVで見ていた少年少女達が出迎えてくれた。
(「私と同じくらいの子達です。エミタの適性がなければあの子達と同じ立場だったかもしれません」)
 春花はコックピットから笑顔で手を振りながら思った。
 1000分の1という確率に当たったがために、春花は目の前にいる人々を『守らなければならない』立場になっている。
 春花の隣へ機首にドラゴンのペイントのされた麗奈のKVが降り立つ。
「アイドルとしてデビューするReinaやで〜。皆応援したってな♪」
 麗奈はハッチを開け立ち上がり、思い切り手を振って自分をアピールしていた。
「応援ありがとー。私達『IMP』をこれからもよろしくね」
 先に降り立っていたコハルは子供達と握手をしている。
「傭兵とアイドルを一緒にやる事になった雪風 風華です。みんな応援よろしくね♪ えへっ☆」
 風華にいたっては、マスコミを相手に取材を受けるほどだった。
(「皆さん、アピールが上手です‥‥私はこれでいいのかな?」)
 いまさらながらに、春花はこのアイドルとして参加したことを考え出す。
 人見知りの激しい自分がこんなことをしていていいのだろうかと‥‥。
『民衆はいつでも、偶像を求めるもの‥‥怖い軍人より可愛い子達が活躍するほうが共感できるもの』
 春花の不安を知ってか知らずかジーラからそんな通信が春花に聞こえてくる。
「そうですね‥‥私、がんばります」
 ハッチを空けて春花は立ち上がり、先ほどよりも大きく手を振り出した。
 
●Next
「どうでしょう? 彼らの活躍を皆さん見ていただけたと思います。彼らの可能性は無限大です、是非業界関係者の方も注目していただきたいと思います」
 記者会見会場のディスプレイには、手を振る春花の姿が流れている。
『え? どうしてアイドルになったのかって?』
 髪を結いなおしていた由稀にカメラが向けられている、質問を受けた由稀は突然のことに少し考えていた。
 そして、カメラに目を向けサムズアップしてこう語る。
『こんな時代だけど、暗く生きてちゃ余計に人生損してると思うのよ。やっぱ、人生楽しまなきゃいけないっしょ。 あたしも、勿論みんなもね?』
『そうそう、バグアだろうが何だろうが、俺達『IMP』に掛かれば赤子も同然! 皆の応援待ってるぜ☆』
 レオンが由稀に向けられたカメラに割り込んで親指を立てて笑顔を向ける。
 人々に希望を与える素敵な笑顔であった。