●リプレイ本文
●暖かな空間へようこそ
「ライライのとこでパーティーって、懐かしいネ。マネージャーの仕事も大変だろーケド、こゆ機会、もっと増えるとヨイよね」
ラウル・カミーユ(
ga7242)がキッチンでシーヴ・王(
ga5638)に箱を手渡しながら、笑顔を見せる。
「シーヴがいやるのに予定に困るとか、どういうことでありやがるですかと小一時間といつめ‥‥」
「ダヨネー。でも、ソユとかがよかったんでしょ? それに、夜にイチャイチャすればいいと思うんだヨ!」
「そ、それはそうでありやがるですが‥‥い、イチャイチャなんかしねぇです!」
からかってくるラウルにシーヴは顔を真っ赤にして否定するが、肯定も同じだった。
「あ、ラウル。来ていたんだね」
丁度シーヴがラウルから受け取った箱をしまったとき、屋上から降りてきたライディ・王(gz0023)が顔を見せる。
「きたよー。ワインもいろいろ持ってきているんだヨ」
「俺は飲めないんだけど‥‥ありがとう、お酒飲む人が上にいるからね」
両手に赤と白、そしてロゼのワインボトルを掲げるラウルにライディは苦笑で答えた。
「こんばんわ。シーヴさん、お邪魔します。ささやかながら飲み物類を持ってきましたよ」
話しているとピンポーンとチャイムがなり、シーヴがドアを開けるとクラーク・エアハルト(
ga4961)が姿をみせる。
「こんばんわです。クラーク。レオノーラは奥でくつろいでやがるですよ?」
リビングからレオノーラ・ハンビー(gz0067)が手を降るとクラークが中に入っていった。
すぐさま、チャイムが鳴る。
「今度は俺がでるよ」
案内をしているシーヴに代わってライディが玄関のドアを開けた。
「HAPPY BIRTHDAY & Merry Cristmas!」
してやったり顔のヤナギ・エリューナク(
gb5107)が挨拶と共にクラッカーを鳴らしている。
「び、びっくりした‥‥」
「何事でありやがるですか?」
いきなりの騒音にシーヴがリビングからワタワタと駆けてきた。
「ヤナギってモンだ。ライディには世話になってンぜ、宜しくな‥‥で。こんな可愛い奥さん、何処で見付けたンだ? ライディ」
シーヴにウインクをしながらヤナギは驚いているライディの肩に手を回し、抱き寄せるようにして聞き始める。
「ま、まぁ、玄関よりも上がってからゆっくりと話そうよ。ね?」
何かを感じ取ったライディがヤナギを引きがしていると、次の客が姿を見せた。
「今日は招待有り難うございます。それとお誕生日おめでとうございます」
両手にコスケンコルヴァとワインを3本ずつ下げてきた乾 幸香(
ga8460)である。
「ライディさん今回はお招きいただいてありがとう御座います‥‥これ弟が作ったブッシュ・ド・ノエルとそれと合うように選んだワインだから」
続いて南 星華(
gc4044)がケーキとワインを持参で玄関に入ってきた。
「あ、どうもありがとうございます。リネーアさんは屋上で飲んでいますし、リビングにはレオノーラさんもいますのでどちらでも移動してください」
狭くなった玄関をあけようとライディは廊下に上がってヤナギや乾達を案内する。
一しきり人がはけると、再びチャイムが鳴った。
「は、はーい」
慌てふためいた様子でライディはドアをあける。
「誕生日おめでとう、ライディ」
「遅れてすまないさ、コレ探すのに手間取ったもんで」
「こんばんわ、今回はお誘いありがとうございます」
そこにはアイドルとマネージャーとしては顔なじみの宵藍(
gb4961)と金城 ヘクト(
gb0701)の二人、そして奉丈・遮那(
ga0352)だった。
宵藍は老酒をヘクトは泡盛を持っての参加である。
「二人ともありがとうございます。友人として、楽しんでいってくださいね」
笑顔でライディは二人を出迎え、案内をしていった。
「本当に‥‥本当に何も無かった頃からは、想像も出来ない程に。希望の風は絆を育み、多くの人の心を励ましていたのですね」
ハンナ・ルーベンス(
ga5138)はライディの誘いを受けて集まってくれた能力者達を見て、そっと微笑む。
だからこそ、自分は見守ろうと改めて決意したのだった‥‥。
●雪見酒
「「「かんぱーい」」」
屋上では既にリネーア・ベリィルンド(gz0006)を中心とした飲み会組が早速宴会をはじめる。
「頂き物の日本酒ですが空けれてよかったですよ」
遮那は友人からもらった日本酒をリネーアに酌をした。
『気になるあの人と飲んでね』と渡された日本酒なので、約束が果たせてなによりである。
もっとも、渡してきた友人はリネーアと二人きりを期待していたのかもしれないが‥‥。
「雪を見ながら屋上でバーベキューというのもいいですね。体が冷えるようでしたらコスケンコルヴァもありますから一口でも飲んでください」
リネーアの隣に座って微笑みを浮かべる乾は焼きあがったトウモロコシを頬張った。
冷えた屋上でも体を温める酒と熱々の料理があればきにならない。
「リネーアちゃん久しぶりね。妹さんも元気? 今度また一緒に遊びましょう」
「南さんもお久しぶりです。アダーラは最近私に会うよりクラスメイトと遊ぶことが多くなりまして‥‥少し寂しいところですよ」
口では何でもないようにいっているが、寂しいとリネーアの表情は物語っていた。
「それは寂しいですね。けれど、携わる人が替わっても時が過ぎ、時代が流れても、変わらない物も在ります‥‥特に人と、人の絆は‥‥」
ジュースを口につけたハンナがリネーアに向けて慈愛の笑みを浮かべて諭す。
「そうですね」
ハンナの言葉にリネーアは笑顔を取り戻し、本日3本目の缶ビールをあけた。
「ご機嫌だな、お姫様?」
「美味しいお酒と楽しい雰囲気があればそれはご機嫌になりますよ」
タバコを吸うついでに顔を出してきたヤナギは軽く手を振りつつ溜まり場に近づく。
ぐびぐびっと自前の缶ビールを飲みほしながら、リネーアはヤナギににっこりと笑った。
クールな印象の多いUPC本部のオペレーターのときの姿とは印象が違う。
「噂どうりの酒豪っぷりさ、とことん付き合うって良いか」
リネーアの飲みっぷりにヘクトが泡盛をもってやってきた。
屋上ではいつしかバーベキュー台とテーブルを取り囲む円形に椅子がおかれ、それぞれの顔を見たり酌をしながら楽しむ。
「ほらほら、ヤナギさんも飲みましょう」
「ああ、俺も少しくらい‥‥って、それはコスケンコルヴァじゃないか」
アルコール度数60%の酒をなみなみと注ぎ、ロックにしてリネーアはヤナギに渡してきた。
『飲め』と笑顔のおくから威圧感が届くような気もするが、気のせいであって欲しいとヤナギは願いつつ酌に答える。
「遮那もいける口さ? 泡盛も飲むといいさ」
「じゃあ、お言葉に甘えさせていただきます」
泡盛をつがれた遮那は日本酒を返杯して酒を交し合った。
「いいわね。こうして色々なお酒を飲むのも」
ワインを口につけつつ南は柔らかく微笑む。
「リネーアさんは本部づとめで忙しいから、尚更ゆっくりできる機会は貴重ですからね」
自前のワインを口にする乾も楽しそうに笑い、ライディの用意してくれた餃子を食べた。
「じゃあ、おじいには敵わないけれど、余興で一曲歌うさ」
酒を飲んで楽しんでいるときにヘクトは立ち上がり、大事にしている三線で沖縄の民謡の歌いだす。
雪の降る静かな夜に三線のピンと張り詰めた音色が響き渡った。
●若奥様大忙し
「この味、どうでありやがるですか?」
あーんとライディの口をあけさせてシーヴは作った料理の味をたずねる。
むぐむぐと口を動かしたライディは飲み込むと満足げに頷いた。
「うん、いいよ。このから揚げはそのままだそうか。あとはサラダをだしていこうかな」
「次はサラダでありやがるですね。それならシーヴもできるです」
「あとは、いつも俺に出しているくらいの料理で大丈夫だよ。自信もって」
プチ気合を入れるシーヴにライディは微笑みかけるとからあげを盛り付けてリビングへと運んだ。
「ここまで会話が聞こえているんですけどー」
意地悪くレオノーラがからあげをもってきたライディをソファに座りつつ見上げる。
「ライディさんとシーヴさん、幸せそうなのです。レオノーラも幸せ?」
「さぁ、どうかしらね?」
「聞いているこっちが恥ずかしい」
隣に肩を寄せ合って座るクラークとレオノーラの姿にテーブルを挟んだ対面にいる宵藍はライディのことも含めて肩を竦めた。
「もう、ライライはもっとキッチンでイチャイチャしてればいいーんだよ。料理はボクがもってくるからさ」
カラアゲを置いたライディの背中をラウルが押してキッチンへと戻していく。
一連の話を聞いていたキッチンのシーヴは顔を赤くして俯いていた。
「料理貰ってくんデ、どぞ、ごゆっくりー♪」
出来上がっていたサラダを持ってラウルはウィンク一つしてキッチンから離れる。
まるで嵐のようなラウルをシーヴもライディも目で追いかけると互いに照れ笑いを浮かべるのだった。
●真剣勝負?
「げっ!? また負けた‥‥」
神経衰弱をやっていたリビングでは、宵藍が項垂れてへこんでいる。
運動神経は悪くはないのだが、どうにも勝てなかった。
「むう、こうやって皆でカードゲームをやるのも楽しいですね。次はポーカーでもやります? 何か賭けた方が面白いかな、レオノーラ?」
トランプをシャッフルしつつ、クラークがレオノーラにたずねる。
久しぶりに嫁とのんびりできるのが嬉しいのかクラークは妙にべったりだ。
「俺は何でもいい‥‥自信ないしな」
諦めというよりも、目の前でイチャつかれて見るに耐えないといった様子で聞かれてもいないのに宵藍が答える。
そんな宵藍の姿が可笑しいのかレオノーラはくすくすと笑い続けるだけだった。
「僕もいいよ、勘はヨイんで得意なんだよね。駆け引きだって負けないヨ」
「じゃあ、やりましょうか。でも現金を賭けるのはさすがに悪いから、折角なのでこのケーキを賭けるのはどう?」
南が手土産で持ってきていたブッシュ・ド・ノエルの切り分けを見ながら、首をかしげて見る。
「ケーキくらいなら、負けてもいいか」
「ならばいきましょうか、カジノの定番ルールで参りますよ」
クラークはトランプの束を半分に割ってテーブルの上におきバラバラと交互に重ねあわせるリフルシャッフルの後、片手で支え、片手で上部を移動させるヒンズーシャッフルをした。
その後、5枚のカードを各自に配り一斉に手札を覗く。
皆、表情からはよいか悪いかは伺えない‥‥。
「さぁ、では勝負といきましょうか交換しますか?」
親代わりをするクラークは眼鏡を軽く光らせながら口をあけた。
勝負は既に始まっている‥‥。
●ザ・ガールズトーク
「‥‥それにしてもリネーアさんほどの女性をこんなチャンスに誘わないなんて、LHの男性陣も存外甲斐性がありませんね」
屋上で酒を煽っているリネーアへ近寄った乾が気になっていたことを尋ねてくる。
遮那がぶふっと酒を噴出すが、スルーされた。
「乾さんの方が素敵な女性だと思いますよ? 柔らかい雰囲気で女性らしさというかありますね。南さんはクールな美人という感じで人気ありそうですけど」
ぐびぐびっと10本目のビールを飲みつつ、リネーアは首を横に振る。
自分の魅力に対して、自信がないようだ。
無論、メロンのような胸は否応なしに存在感を誇張しているのだが、それはそれ、これはこれらしい。
「リネーアさんは十分魅力的ですから、もっと自信を持ってください。ほら、アダーラさんにも心配されていたではありませんか」
料理を運ぶ次いでに宴に参加したハンナも真剣な目でリネーアの魅力について後押しした。
妹のアダーラとも何度か依頼で一緒したこともあり、余計に心配なのかもしれない。
「‥‥わたしも縁がありませんね。知り合いの男性陣は大概彼女持ちとかですしね。何処かにステキな人でも現れませんかね?」
「どうなんでしょう? 私の素敵なイメージと乾さんのステキのイメージが一緒とも限りませんし‥‥何より、私は今、そういう相手を見つけるよりもアダーラの方が大切ですから」
リネーアの言葉に遮那がショボンとなるが、気づいているのは一緒に飲んでいるメンズだけだ。
「褒められるのは嬉しいけれど、縁はないのよ。しかし、あれねいい女がこんな時期にこんな所で何してるのかしらね。来年は良い人に巡りあえることを祈って乾杯とかどうかしら?」
魅力的と評価をされた南は微妙な笑みを浮かべて、持ってきたワインを注ぐ。
元モデルとして人気ではあったものの、そこが高嶺の花となっているのか未だに縁はなかった。
もっとも、南も弟のことが好きなのでそちらを優先している部分もあり、リネーアの気持ちは分かる。
「乾さんも一緒に乾杯しましょう。ハンナさんもどうですか?」
「私は結構です。皆さんの幸せを影ながら祈らせていただきます」
ワインの注がれたグラスを持ちながらリネーアはハンナに尋ねるが、ハンナは微笑みを浮かべて一歩引いた。
「来年はいい年になりますように‥‥かんぱーい」
リネーアも強制はせず、仕切りなおすように笑顔でグラスを掲げる。
それに従い、乾も南もグラスを掲げ、願うのだった。
●ドキドキ急接近!
「そろそろヤナギって呼んでくれても良いんじゃねェ?」
「いや、そんなこといわれても‥‥まだ、僕とヤナギさんはそういう関係じゃないですし‥‥」
ラジオルームの壁にライディを押し付けた状態で、ヤナギが見下ろしている。
防音の部屋とCDなどが置いてある棚に隠れているお陰もあって、パーティをしている一同には二人は気づかれていなかった。
屋上への食材補給が終わったら、今度はリビングへの給仕と嫁のシーヴが忙しくしているシーヴの姿が窓を横切る。
思わず息を止めていたライディの深い吐息が漏れた。
「なぁ、今は仕事じゃないんだろ? だったら、友達としてさ‥‥普通に接してくれてもいいんじゃねェ?」
ヤナギの顔が触れ合うくらいにライディの顔に近づく。
どうみても普通の接し方ではない。
「ラウルみたいに呼び捨てすればいいんです‥‥か?」
この状況をなんとかしようとたれ目で上目遣いし、ヤナギの肩に手を置いてライディは離そうとした。
「ああ、なんかズリィだろ?」
「はぁ‥‥このまま見つかって妙な誤解されるよりは、それで納得してくれるならそれで‥‥えっと、ヤナギ?」
「ありがとうな、これからもよろしく頼むぜ。ライディ」
もう一度ため息をついて名前を呼ぶライディの姿に気をよくしたヤナギは一歩離れてニヤッと笑う。
「それとだ、先に誕生日プレゼント渡しておくぜ。二人っきりで渡したかったからな」
聞き様によっては極めて危ない台詞を口にして、ヤナギはライディにミリタリーボアジャケットを渡した。
「あ、ありがとう‥‥ヤナギさ‥‥」
思わず敬称をつけようとしたとき、ヤナギの目が強い力を見せる。
「ははは‥‥ありがとう、ヤナギ」
苦笑しつつライディが言い直すと、ヤナギはギターを持ち出して軽く鳴らした。
「ライディの為だけのライブだ。特別、だゼ?」
誕生日の定番とクリスマスの定番曲をヤナギは歌いだす。
さすがにそこで気づいたのか、シーヴがラジオルームに顔を出してきた。
「ここにいやがったんですね。中々戻ってこないから探したです。調味料がちょっと切れちまったんで買いに行ってもらえるですか? 特売がこの店でやってるんで」
シーヴはプレゼントを持ったライディとギターを鳴らすライディの姿を交互にみやると、何事もなかったかのようにチラシを手渡す。
「わかった、すぐにいってくるよ。ヤナギも屋上の方で楽しんでいってくださいね」
チラシを奪うように手に入れたライディは脱兎のごとく買出しにいくのだった。
●サプライズプレゼント For You
「おかえりなさいませ、ご主人様」
「お荷物をお預かりします」
執事服を着込んだラウルと、衣装はそのままではあるが中国風従者のように振舞う宵藍が玄関をあけたライディを出迎える。
「え‥‥これはなに?」
自分が買い物にでている間に何が起きたのかとライディは考えこんだが、答えは見えなかった。
そうして、買ってきた調味料と着ていったコートを預かられて、リビングまでされるがままに連れて行かれる。
雪の降っていた外は冷え込んでいたが、リビングは空調のお陰で暖かくなっていた。
リビングを見回せば飾り付けがクリスマスムードから何か変わっている。
飾り付けだけでなく、目の前にいる妻の姿も違っていた。
「お誕生日おめでとうございます、旦那様」
ライディの視線を受けたシーヴは微笑を浮かべて恭しく頭をさげる。
ヒラヒラしたフリルのついたメイド服はいつものワンピースとはまた違った雰囲気を漂わせていた。
「う、うん‥‥ありがとう」
照れて頬をかいてライディは手作りケーキの置かれた椅子に座る。
ケーキには26本のろうそくが立って小さく揺らめいていた。
パチンとリビングの明かりが消されると、宵藍が二胡でメロディーを奏でる。
手を叩いて歌うシーヴに続き、クラークやレオノーラ、、ヤナギに屋上からサプライズの為に降りてきた乾やハンナ達もその場で手を叩いた。
大勢からの拍手に送られた祝いの歌にライディは思わず涙ぐむ。
「「‥‥ディア、ライディー。ハッピバースデートゥーユー‥‥」」
パチパチと拍手がおきて、暖かい視線がライディに集中した。
「ご主人様、ろうそくを吹き消してください。いつまでも暗いままでは困ります‥‥ですよ?」
丁寧な口調でいいながらも、最後はいつもの口ぶりで座っているライディの肩にシーヴは手を置く。
「ごめんね。ふぅーっ!」
勢いよく息を吹きかけてケーキの上にあるろうそくをライディが吹き消すと照明がついて、再び大きな拍手がライディに向けられた。
「まずはプレゼントでありやがるです。ネクタイは多い分にはかまわねぇですから、これを‥‥」
「普段着にどぞデス」
シーヴからはファッションブランド【Steishia】のネクタイ、ラウルからは同じブランドのレザージャケットがライディに渡される。
「お誕生日おめでとうございます。普段にでもお召しになって下さい‥‥なんて、同郷の出身者でもあるから仕事以外でもよろしくな?」
徹底した執事スタイルをつらい抜いていた宵藍も最後は少し崩しながらプレゼントにUネックカットソーをプレゼントする。
「あは‥‥はは‥‥はい、よろしくお願いします」
乾いた笑いを浮かべてライディは宵藍からのプレゼントを受け取った。
ちらりとそのときヤナギをライディは見るがヤナギはニヤニヤとしたままである。
「自分からは鉄道の写真集を‥‥」
「あら、私も写真集なんだけど‥‥まったく一緒とは思わなかったわ」
クラークとレオノーラが渡そうとしたプレゼントは同じ鉄道の写真集。
DVD付でライディが好きそうだというチョイスだったのだが、まったく同じものだったのにはお互い笑いあった。
「ありがとうございます。コレクションは多いぶんには構いませんから、ありがたくいただきますね」
二人からプレゼントを受け取り、ライディも笑う。
暖かい、本当に暖かい仲間に囲まれて誕生日を祝えたことをライディは心より嬉しく思うのだった。
●もう一つのサプライズ
多くの人がリビングでライディの誕生日を祝う中、屋上には食器類を軽くまとめて片付けを適度にはじめていたリネーアと遮那がいる。
トイレ休憩などに行く人もいたため、都合よく二人きりになれたので遮那が話を切り出した。
「直接、メリークリスマスが言えて良かった」
「そうですね、先日まで北京が急がしかったこともありますから、『友達』とクリスマスを祝えるなんて思ってもみませんでしたよ」
リネーアの何気ない言葉が遮那の胸にグサリと刺さるが、今日という日は遮那にそれで退く事のない勇気を与えている。
「いつかアダーラさんも一緒に、『家族』として、こんな日を過ごせたら‥‥良いですね」
遮那はリネーアを見つめながら、思い続けていたことを告げた。
「え‥‥家族って‥‥」
目をパチクリと瞬かせてリネーアは遮那の言葉を復唱する。
しばし、何が起きたか理解できていないようだが、ようやく分かったのか少しだけ顔を赤くした。
「それは‥‥その告白‥‥なのでしょうか?」
「縁がないといわれていたのは残念ですけれど、ずっと前から思ってはいましたよ」
コンコンと降る雪の中、息を白くさせながら遮那は照れくさそうに思いを告げる。
リネーアがどう答えたものかと悩んでいると、屋上へのドアが開いた。
「Merry Xmas!」
シーヴがケーキをもって姿を見せ、ぞろぞろとリビングにいたメンバー達も雪の中での祝宴の為にやってくる。
「メリークリスマスです。ケーキいいですね、テーブルを少し片付けたところなのでここにおいて切り分けましょう」
リネーアは悩んでいた表情を笑顔に切り替えてシーヴを出迎えた。
遮那の横を通り過ぎようとしたとき、小さな声で伝えた。
「ごめんなさい‥‥今は答えをだせないので、また‥‥別の機会に‥‥」
「はい、それで構いません。あ、忘れるところでした」
遮那は戸惑いを見せるリネーアに渡そうと思っていたプレゼントを取り出す。
小さなアクアマリンのイヤリング『人魚の涙』だ。
「遅れましたが、誕生日プレゼントです」
そっと手渡すと遮那もやってきた人たちへ酌をして回りだす。
屋上から見える夜景と雪を肴に乾杯をして、遮那もリネーアもパーティを続けた。
今年最後のイベントは誰の心にも思い出深いものとなる。
来年も、願わくばこうしてパーティが開けますように‥‥。