タイトル:Imp〜春ライブ〜マスター:橘真斗

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 7 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2011/06/12 22:29

●オープニング本文


●五月病を吹き飛ばせ!
 4月半のLH某所
「この時期はなかなか仕事がはかどらにゃーてこまるわ」
「社長の場合はいつものことですけど。好きなものばかり優先して、他を後回しにするのは何とかしてください」
 書類を確かめ、判子を押す米田に向かって秘書は厳しい目で監視している。
 手にはまだまだ社長の承認が必要な書類が一杯あるのだ。
「そんでもよ、やる気をプッシュするような何かが欲しいと思うでー?」
「もうすぐ5月ですから、五月病といいますからね。私はクラシックとか聞いたりしますけど‥‥」
「それだで! 五月病で悩む貴方に送る元気になるCD! ミニライブ合わせてCD作って売ればいいでよ」
「今からですか? 確かに、ミニライブ程度なら抑えられなくはないですがCDの販売は難しいかもしれません」
「CDは最悪後からでええから、てこ入れできるような元気な歌をライブで伝えれればと思うでよ。チケットもなしでやるからほぼゲリラだがねー」
 ぽんぽんと書類を確認し、リズミカルに判子を押しながらも米田は企画の方を楽しそうに語る。
 米田時雄はそういう男なのだ。
「‥‥わかりました。場所などの手配はやっておきますが‥‥その分、これを片付けてくださいね」
 どさっと書類の山を追加すると秘書は部屋を後にする。
「五月、さつき‥‥さすがに彼女を呼ぶのは無理だでなぁ‥‥」
 米田は社長室の大きな窓から見える晴れた空を見上げて呟いた。

●参加者一覧

葵 コハル(ga3897
21歳・♀・AA
雪村 風華(ga4900
16歳・♀・GP
大和・美月姫(ga8994
18歳・♀・BM
終夜・朔(ga9003
10歳・♀・ER
沖田 神楽(gb4254
16歳・♀・FC
舞 冥華(gb4521
10歳・♀・HD
秋姫・フローズン(gc5849
16歳・♀・JG

●リプレイ本文

●ジャケットミーティング
「うわぉ、Imp単独活動が約半年ぶりとは‥‥もっと長かった気もするけど大丈夫、全く問題ありません!」
 どこかに向かってサムズアップを決める葵 コハル(ga3897)にライディ・王(gz0023)が声をかける。
「コハルさーん、ジャケットのミーティング始めますよ」
「はいはーいと、今回はこの7人なのね」
 コハルがくるっと見回すと顔なじみのImpのメンバーに混ざって、秋姫・フローズン(gc5849)の姿があった。
「よろしく‥‥お願い‥‥します。秋姫・フローズン‥‥です」
「彼女は候補生という形でバックコーラスなどをやって勉強してもらったり雑用を手伝ってもらいます。AlpかMpaへの配属になると思いますけど」
 ライディが秋姫について説明を終えると本題の今回のCDの話に移る。
「それなんだけど、新曲でNextDoorというのをグループ曲で歌おうと思ったんだ」
 沖田 神楽(gb4254)が手をあげてライディに意見を持ち込んだ。
 いつもは悩んでたり緊張していたりする神楽も今回はリラックスした様子でミーティングに参加している。
「ん‥‥じゃあ‥‥あるばむのたいとるも‥‥Next Doorにする?」
 首をちょこんとかしげて見せたのは舞 冥華(gb4521)だ。
 Impの10歳アイドルユニット”DIVA”の一人で、今日は終夜・朔(ga9003)と二人だけの参加だった。
「いいと思うの。シンプルイズベストなの♪」
「私も賛成です。収録曲はグループ分けをこちらで考えていますので、ライブの収録を複数行っていいものを使う形を希望します」
「そうだねー。ゲリラといっても久しぶりのライブだから生の音をいれるのはいいかもね」
 朔がぴょんぴょん跳ねるように冥華のアイディアに賛成していると大和・美月姫(ga8994)としばらくぶりにアイドル活動に参加する雪村 風華(ga4900)も意見を出す。
 積極的に皆がいいものを作ろうとしていることにライディは思わず頬を緩めてしまう。
「あ、ジャケットの写真なんだけどさー。光が差すドアの前にみんなが立って手招きとかしてる、ってゆーのはどうカナ?」
 コハルの提案に更にいいとか、こうした方がいいとか更なる意見が出されてミーティングは時間一杯までもりあがったのだった。

●リハーサル!
「私の名前にも『姫』って入ってれば、面白かったんだけどなぁ‥‥」
 衣装合わせとリハーサルの準備に入った風華は今回ユニットを組む、美月姫とバックコーラスの秋姫を交互に見てふぅと息をつく。
 自分の名前が嫌いではないのだが、演出的にこだわりたい部分があるのはアイドルとして活動してきたが故かもしれない。
「ふふふ、そういえば長く一緒に活動していますけどユニットを組むのは初めてですね」
 春らしい楽曲に合わせた緑をベースにしたチュニックスカートにシャツというシンプルで動きやすいデザインの衣装を着た美月姫も軽く飛び跳ねてみた。
「おかしな所は‥‥ない‥‥でしょうか?」
 秋姫も二人と同じ衣装をまとい、くるりと回って見せた。
「二人ともいい感じ、いい感じ。じゃあ、早速練習だね」
 美月姫の作ったデモテープを再生しながら風華は秋姫に顔を向ける。
「私達は慣れてるけど、秋姫はそうじゃないからね。練習しても本番のプレッシャーで上手く出来ない事も多いし‥‥。まずはどんな歌なのかを体で覚えてみて」
「は‥‥はいっ!」
 真剣な風華の言葉に秋姫はぴしっと姿勢を正して答えた。
 伴奏が流れ、l曲の始まるまでにもダンスパートがしっっかりとつくり出されようとしている。
 踊りだす前に、曲を一度切って風華ははじめに巻き戻した。
「歌に込められた思いを‥‥。心で理解しなきゃ、人の心を感動させる事なんて出来ないよね」
「私も‥‥がんばります。アドバイスを‥‥お願いしたい‥‥のですが‥‥?」
「はい、まずは衣装も合わせられましたし流れを復習しつついきましょう」
 風華の気合をみた秋姫は自分もがんばろうとコーラスの練習を風華や美月姫と共に続けた。
 
 ***
 
「来れないめんばーの分の想いもこめて歌っとく」
「うん、練習なの♪」
 10歳アイドルユニット”DIVA”の朔と冥華も歌の練習をはじめる。
 作詞はNoirこと朔が大体行っているので、Mayこと冥華は覚えるだけだった。
 それでも、真剣に歌詞カードを見ながら歌い、更に振り付けも行っていく。
 二人は色違いのフリフリのゴシック服に身を包み、時に互いを見つめあい、時に手を胸にやり、そして互い互いに歌ったとりといった練習を続けていた。
「練習は順調ですか?」
「久しぶりだけどばっちりだよ、マネジャー‥‥といっても新曲から衣装までかぐらん任せなんだけどね」
「一応、私達の共通点考えてやりましたから、大丈夫ですよ。本番もよろしくお願いします。コハルさん」
 ライディーがノックをした後に部屋に訪れるとコハルと神楽がライディに答えた。
 コハルとしては後輩が頼れるくらい立派に育ってくれたのが嬉しい反面、新曲が考えれない自分に苦笑を隠せないでいる。
「では、あと1時間ほどで現地に移動しますので最終確認の方をお願いします」
「「「はい!」」」
 元気な返答に思わず目を細めて笑うライディだった。

●ゲリラ的ライブ
『これは、私が教えていた子たちを思って書きました。でも、ここにいる人たちファンのみんなにも伝わると思ってます』
 Impとして3年前に活動をした記念すべきCDショップでの小ライブにマスコミやファンが詰め掛けて応援にきていた。
『見知った人もそうでない人も、今日は楽しんでいってねー。じゃあ、行くよ!』
 神楽とコハルが一番手を担い、ライブがスタートした。
 二人の衣装はコハルの私服を色違いで神楽で着こなすシンプルなもの。
 ありのままの姿で明るいポップチューンを神楽がキーボードで演奏して雰囲気を盛り上げた。
 
 ―Smiling supporter― 作詞:沖田 神楽

 ♪〜〜

 君たちの笑顔貰えてること忘れてないよ
 だから、迷わないでいられてるんだ。
 今は、いろんな距離が離れて
 何かしてあげられないけど
 笑顔は返してあげられるから

 届くと信じて
 くれた思い無駄にしない
 希望なくさないないで 今は笑えなくも

 笑おうよ 心から
 きっとできるよ
 笑おうよ 何も考えずに
 たまには それでもありじゃない
 誰だって 思ってると思うから

 私たちの笑顔届いてるかな
 きっと 伝わってるよね。
 暗い顔なんてらしくないから
 それが 出来る応援なんだと思う
 
 〜〜♪

 細かい演出はいらない。
 ありったけの笑顔と歌で勝負する。
 自信を持った神楽とライブ活動はベテランともいえるコハルのセッションは小さな会場の熱気を大きく盛り上げた。
『こんにちは、DIVAのNoirなの♪ 今日はMayちゃんとで二人だけど、力一杯、元気一杯に歌うから、Noir達の歌を聞いて皆も元気一杯になって欲しいの♪』
『ん、ひさかたぶりーにアイドルかつど。DIVAを楽しみにしているふぁんのためにも、みにらいぶせーこーさせる。ん、冥華のうたおきけー』
 どこか気の抜けるような感じではあるものの、そのあたりにマニアックなファンが付いて冥華も人気が高くなってきていた。
 永遠の10歳アイドルユニットDIVAも結成から2年が経ってしっかりと活動の足跡が付いてきている。
 ファン達に答えるべく、疾走感のあるリズムの伴奏から歌に入った。

 ―共に歩き行こう― 作詞・作曲:Noir

 ♪〜〜

 私は 此処に 
 貴方は 此処に
 二人は共に在るの
 夢追いかけ 
 励まし合い 
 力合せて 行く
 この一瞬を 忘れずに 
 二人手と手 繋ぎ 
 前だけ向き 突き進むの 
 自分達が決めた道を 
 後ろ見ずに 目指し続け 
 辿り着きしは
 光り輝く 未来

 〜〜♪
 
 一つの節目ごとに交互に歌ったり、動きを二人で合わせたりしながら歌う姿は経験と練習を重ねたプロのアイドルである。
 歌い終わってお辞儀した二人の愛らしい姿に客席から拍手や口笛がおきると、今一度二人はお辞儀をしてステージを後にした。
『はーい、皆、ふ〜かだよ。覚えてる〜?』
 普段とは違った猫を被った可愛い雰囲気で風華はファン達に手を振って挨拶をした。
 思えば3年前にブロマイド付きCDを販売したときもこの場所でライブをやったのでここに来ているのは風華だけである。
 風華の問いかけに答えてくれるファンが数人いて、思わず風華は嬉しくなった。
『今日は皆さんありがとうございます。元気一杯、五月病を吹き飛ばすように歌いますのでよろしくお願いします』
 笑顔を振りまき美月姫も挨拶すると拍手がわきあがる。
『それじゃあ、いくよ〜。春 跳びだそう!』
 元気良くイントロが流れ出すと、バックコーラス担当の秋姫は体中がこわばってくるのを感じていた。
(やはり‥‥緊張‥‥します‥‥)
「さっ、それじゃ行くよ。秋姫、練習通りにやれば、大丈夫だよ。私達がいるから」
「はい、3人いるから足を引っ張るのではなく、3人いるからお互いを助け合いましょう」
 一度集まり広がる踊りの演出の最中に風華と美月姫はそれぞれに秋姫に直接声をかけてくる。
 そして、ポジション取りが終わった。
 
 ―春 跳びだそう― 作詞:美月姫
 
 ♪〜〜
 
 春うららかに まどろむ良いけど
 新緑の季節 家でいるのはもったいないよ
 外へ繰りだそう 気分爽快なんだよ
 新しい何かに出会えるかも ジャンプアップ

 〜〜♪

 動きやすい衣装に合ったやや派手めな踊りを明るいポップミュージックに合わせて踊る。
 付き合いの長い風華と美月姫はもちろんのこと、今回のミニライブで初競演となる秋姫の3人が流れるようなダンスをしながら歌い続けた。
 歌に合わせて飛び上がったりと、明るく元気に彼女達は歌い続けた。
 歌が終わると、下がっていた残りのメンバーも再びステージに集まる。
『はーい、新曲楽しんでくれた? 最後はね、Impとしての最新曲。NextDoorで締めちゃうよ。短い時間だったけれど、皆にあえてあたしの気分は最高チョーだよ!』
 マイクパフォーマンスをコハルが行い、横一列にならんだアイドルと候補生の秋姫。
 他のアイドル達からも前に出させて欲しいと要望があったために最後は一緒に歌えることとなった。
『皆もNext Doorを開いて新たなスタートをきりだしてよ!』
 ぶんぶんと腕を元気に振り回し、コハルが指を鳴らすと伴奏が始まる。

  ―Next Door― 作詞:Impアイドルズ
 
 ♪〜〜
 
 新しい扉 開いてみよう
 どんなこと待ってるか判らないけど
 出会えること信じてる
 いくつの扉で 泣いてしまうとしても

 扉の先に待つ 未来
 信じて 歩き続けよう
 必ず この先に在る

 大切な何かに出会えるから

 Next Doors

 〜〜♪
 
 耳に残りやすい遅いテンポのメロディーに乗せて全員で歌いだす。
 始まりのこの場所から、次のステップへと進もうとしていた。
 歌い終わればスタンディングオベーションでアイドル達はファンから迎えられる。
『皆、ありがと〜。今日歌った曲は後日CDになるから、そっちもよろしくね。ふ〜かからのお・ね・が・い♪』
 最後に風華がちゃっかりと締め、ミニライブは成功で終わりを迎えた。

●本当の終わり
 アイドル達は衣装から普段着に着替えると秋姫が用意したミネラルウォーターを飲む。
「お姉ちゃんこれなかったみたいなの」
 成功したライブではあったもののしょんぼりと朔が呟いた。
「そうでしたね。あちらもお仕事の都合があるみたいですから次に期待しましょう」
 同じく残念そうな美月姫が朔の頭を撫でる。
「今回は候補生を押したかったし、これでいいんじゃないかな?」
「次回かぁ、本とか読んで歌詞作りとか衣装のセンスも磨かないとだめなぁー」
 椅子に座って向かい会って話をしていると、自然と今日の反省会のようになっていった。
「今日の曲ができたのは秋姫のおかげだよありがとう」
「い‥‥いえ‥‥そんな‥‥」
 神楽が笑顔で秋姫に礼をいうと秋姫は恐縮して縮こまる。
「今日めだったから、あいどるとしていっぱい活躍できるといーね。夏には大きなイベントが今年もあるかも?」
「そうだねー。あたしは色々被ると動けないかもだけど燃え上がる夏を今年もしたいよねー」
 冥華が首をかしげていると、にははとコハルが笑いながら胸をそらした。
「打ち上げの時間がもうすぐだ。さー、今日のライブの成功を祝ってどんちゃんやろー。マネージャーの驕りで」
「おお、まねじゃーふとっぱら」
 時計を目にしたコハルは立ち上がると皆を先導して美月姫が予約してくれたお店に向かうのだった。