タイトル:【BT】魚座と鳥獣1マスター:橘真斗

シナリオ形態: シリーズ
難易度: 難しい
参加人数: 10 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2012/04/24 20:19

●オープニング本文


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●カカオの大地で‥‥
 バミューダトライアングル。
 魔の海域と呼ばれたそこで、人とバグア、そしてそのハザマにいる者の意思が混ざり合っていた。
 人の尊厳、バグアとしての威圧、人類側からはじきだされた強化人間の復讐心‥‥。
 それぞれが混ざり合い、大きな渦となっているのは小さな島だ。
 カカオの産地とも知られ、2009年の2月に現れたシェイドによって制圧されている。
 首謀者の名前はアスレード(gz0165)‥‥バグアの精鋭”ゾディアック”のリーダーだ。
 およそ二年に渡り、バグアの侵攻作戦から人類の反抗作戦が繰り広げられている。
 中でもアスレードの配下である4人の強化人間、”パペットマスター”、”クインビー”、”ネゴシエイター”、”グリフォンライダー”との戦いは北米や南米にも渡って行われた。
「だが、今じゃあ‥‥てめぇだけだな」
「サー」
 カリッとチョコをかじる音だけが響く暗い静かな部屋でアスレードと”グリフォンライダー”ジェニス・アンナは向かい合っている。
 アスレードのいうとおり、配下はジェニスのみ、そして残存戦力もはじめの制圧していたカカオ農園の守備に回しているものだけとなっていた。
 南米でも北米でも司令官が次々と落とされ、戦力の余裕が宇宙そして、地上に残された占領地の防衛に回っている。
「状況が状況だ。そろそろ最後の花火をあげてやろうかと思ってなぁ‥‥ずいぶん熟しただろうし。食い時は今だと‥‥なぁそうだろ?」
「それには答えられません。ただ、私は前回の雪辱を果たせればそれだけでいいのです」
 冷笑ともいえる笑いを浮かべるアスレードに対し、ジェニスは怒りを抑え込んだ瞳で睨みかえした。
「最後は好きにしろよ、そのためにてめぇを生かして動かしてきたんだ。人間の欲望の果て、可能性の限界をみせてもらうためによぉ」
 試しているというよりも遊んでいるといった印象をアスレードは放っている。
 すべては自分の欲求を満たすための道具だと冷ややかな眼が語っていた。
「サー、死力を尽くします‥‥」
 ジェニスは敬礼で答えると格納庫へと足を向ける。
「さて、ファームライドもそろそろ使い終わらせねぇとな。あいつを動かしてやるのもこれで最後だなぁ」
 一人残ったアスレードは呟き、チョコレートをかじった。

●参加者一覧

榊 兵衛(ga0388
31歳・♂・PN
終夜・無月(ga3084
20歳・♂・AA
葵 宙華(ga4067
20歳・♀・PN
宗太郎=シルエイト(ga4261
22歳・♂・AA
クラーク・エアハルト(ga4961
31歳・♂・JG
M2(ga8024
20歳・♂・AA
ユーリ・ヴェルトライゼン(ga8751
19歳・♂・ER
赤崎羽矢子(gb2140
28歳・♀・PN
朧・陽明(gb7292
10歳・♀・FC
綾河 零音(gb9784
17歳・♀・HD

●リプレイ本文

●出発前夜
 アスレード(gz0165)の居城を攻める日が決まった。
 そのための戦力が集められている。
 能力者の傭兵にUPC北中央軍のKV小隊‥‥そして、この土地の戦車隊。
 そしてアスレードの配下であるグリフォンライダーと縁の深いイーグルドライバー達がこのミッションの戦力だった。
 出発前夜である今は各自で明日の準備を進めている。
「あ、あのっ! あたし、たいして強くもないし無名の下っ端傭兵だけど‥‥全力でいくので援護してくださいっ! お願いしますっ!」
 綾河 零音(gb9784)が景気付けに一杯やっている戦車隊の男達を前に頭を下げた。
 初々しい姿に男達達はガハハと陽気に笑うと飲み物や食べ物を奢ってくる。
 零音にとって緊張の解れるかけがえのない時間となった。

 ***

「グリフォンはそっちで引きつけてくれ。その間に俺達が回りを掃き掃除するからさ」
「ですって、隊長。いい奴らじゃないですか」
「からかうな‥‥引きつけるだけでも骨だぞ、あいつはな」
 格納庫ではユーリ・ヴェルトライゼン(ga8751)から話を持ちかけられたジェイド・ホークアイ大尉は茶化す部下をたしなめた。
「それでも伝えたい言葉があるなら伝えなさい。全てがなくなるその前に」
 何時の間にかそこにいた葵 宙華(ga4067)がジェイドを見つめながら言葉を紡ぐ。
「仕方ない。やるだけはさせて貰おう」
「なくしたらなくしたまま。心は虚無に飲み込まれて朽ちていく‥‥なんて嫌よね」
「何かいったか?」
 葵の小さな呟きは届かなかったのか、ジェイドは不思議そうな顔を向けている。
「なんでもないわ。今日の記念に小物の交換してもらえる?」
 何事もなく振る舞う葵にそれ以上誰も追求はできなかった。

 ***

「いい加減ケリをつけねぇとな。チャイナタウンのあの日からずいぶんたったしよ」
 気持ちが昂ぶって眠れない宗太郎・シルエイト(ga4261)は外で夜空を見上げている。
「やっぱり眠れなかった‥‥のですね」
 終夜・無月(ga3084)に声をかけられても、宗太郎は振り向く事なく空を見あげた。
「早く終わりにしないとな」
「ええ、雌雄を決しましょう‥‥」
 二人の見つめる先には赤いバグアの星。
 そこへ向かう為にもこの地上を何とかしなければと改めて思うのだった。

●ドラゴンスレイヤー達
『キューブワーム(CW)やヒュドラを放置して置いたら満足には戦えないからな。早々、駆除して置かねばなるまい』
『首が生えてこないだけヒュドラは神話よりましだけどさぁー。ちゃっちゃと片付けようぜ』
 雷電改『忠勝』に乗る榊 兵衛(ga0388)の言葉にウーフー2『ココペリ』のM2(ga8024)は同意を示す。
 夜明けと共に開始した作戦では能力者を多く割いた対ヒュドラ・CW部隊が先に動いていた。
『ヒュドラから500m以内で発射したSES兵器の威力は半減する。同じ効果の煙幕もうつから各自範囲外から攻撃して!』
 シュテルンGの赤崎羽矢子(gb2140)が指示をだすと答えるように一斉放火が始まった。
『厄介なCWから落とすとしますかね。姉御‥‥』
『スナイパーライフルのリロードの隙は我らが補う。そうであろう?』
 慕っていた人物を思い浮かべるスレイヤーのクラーク・エアハルト(ga4961)へ竜牙弍型を操る朧・陽明(gb7292)が作戦を確認するように長距離バルカンを発射し続ける。
『そうですね‥‥まずは作戦の成功そして、全機生還です』
 クラークの声に張りが戻り十式高性能長距離バルカンでCWを撃ち落としていった。
 すでに他の部隊も戦闘がはじまっているのか視界の端々で爆発が見えてくる。
『PRM−A−Fモード、お前たちに構っている暇はないんだよ!』
 キューブワームが落ちたところで赤崎機からK−02小型ホーミングミサイルが放たれ、空を覆った。
『雲がでたなら、嵐が参る。我が雷光が秘めし激しき雷撃を刮目し、その身に受けて灰となれ!』
 ミサイルの雨を逃げようとするヒュドラを朧機の試作G型放電装置の連射が食い止める。
 続く爆音にヒュドラの首が吹き飛んでいった。


●喰らい尽くす者
 ヒュドラ達と戦っている間も、各線戦は様子見をするようにアスレードやグリフォンライダーを抑えに回っている。
 アスレード対応の宗太郎のスカイスクレイパー改『ストライダー』と無月のミカガミB『白皇 月牙極式』が≪怪音波≫などの影響を受けない距離から砲撃を続けている。
『遠くからちまちま狙うだけかぁ? そんなんじゃぁ、俺様の首は取れねぇぜ!』
「うるさいっ! 首は取れなくても背負っている魚座の肩書きくらい貰ってみせるさ!」
 精一杯の挑発を愛機のスフィーダ『ペテルギウス・フレイム』のコックピットから零音はアスレードに向けた。
『はん、くだらねぇ。こいつらに勝ってからものをいいなっ!』
 アスレードが鼻で笑い見下すようにタロスとキメラを零音へ放つ。
 だが、零音の狙いはまさにそれだった。
「3機でタロス1機を狙ってっ! 戦車隊はキメラの対応を! 一斉砲火!」
 零音は指示を飛ばし、少しでも敵の数を減らし、アスレードとの分断を測った。
 ≪メテオブースト≫で機体の性能を底上げした零音自身も回避しながらタロスを相手どる。
『そして、雑魚は俺様が掃除だぁっ!』
 ファームライドの両手に装備されたアームガンが火を吹き戦車を爆発させていった。

 ***

 同時にもう一つの空では鳥獣と鷲がぶつかりあっている。
『グリフォンって知ってる? 七つの大罪では傲慢、らしいわよ?』
 中世ヨーロッパに流行った七つの大罪と悪魔や動物を関連づけることを知っていた葵はユーリに告げた。
「鷲は自由の象徴らしいし、ここはあの二人にはなるべく悔いなくやって貰いたいとこだな。こっちはこっちで面倒な相手になるけどさっ!」
 大型ヘルメットワームに向ってユーリのR−01改『ディース』は刃のように鋭利な翼を斬りつける。
 その傷口に向けて短距離リニア砲を撃ち込んで抉った。
 一撃離脱を支援すべく随伴のKV小隊がバルカンを放つ。
 葵がかるタマモ『ナイトメアローズ』はグリフォンライダーとイーグルドライバーのジェイドが言葉をぶつけ合う姿を見ながらユーリ機と共にヘルメットワームに仕掛けていく。
 本格的な戦闘はキューブワームやヒュドラが落ちてからと割りきり、注意を引き付けるべく2機は損傷を受けつつも戦っていた。
『もう、やめろ。ジェニスっ!』
『私を見捨てた癖に、今更何をいう! 男は皆、好き勝手な馬鹿だ! ならば私も好きにさせてもらう!』
 感情を表面化させたグリフォンライダーはK−02小型ホーミングミサイルの様な大量の誘導弾を空へと放つ。
 飢えた猟犬のごとくミサイル軍がジェイドやヘルメットワームと戦う葵機らを捉えた。

***

「くっ、そぉー!」
 アスレードの容赦ない攻撃が命の炎を激しく燃やして消していく。
 しかし、少女は頭痛に顔をしかめ自らを襲うタロスに精一杯だった。
『燃えろ燃えろぉっ!』
 遠距離からの砲撃の合間を縫ってアスレードが無慈悲な弾丸を放っていると空で爆発が起きる。
 文字通り頭痛の種だったキューブワームやヒュドラが消えていく音だった。
『待ちわびたぜこの時をを! いくぞ』
 宗太郎機がブーストを使ってのランスチャージを仕掛けにいくとファームライドがその姿を光学迷彩に包み出す。
「照明弾お願いします!」
 零音がチャンスとばかりに声を上げると残っている戦車が光を放つ。
 大地にファームライドの影が落ちた瞬間を狙い無月機が接近しながらのペイント弾でピンク色に敵機を染めた。
『これで、迷彩は無意味』
『おもしれぇ、ようやく面白くなって来たじゃねぇかよ!』
 宗太郎機のランスチャージを受け止めざるをえなくなった魚座はそれでも楽しそうに笑うのだった。

●大空に散る
 空を覆うミサイルの雨にイーグル達が撃墜されていく。
 ジェイドとジェニスの決着を着けさせる為に進んで犠牲となったのだ。
『援軍に来ました‥‥全力攻撃、いくぞ!』
 散っていった戦闘機の姿を横目に見ながらクラークは気合を入れ直す。
 ≪宙空人型機動制御システム「エアロサーカス」≫を起動させ、クラーク機は大型ヘルメットワームの前に通せんぼする様に立ち塞がった。
『能力者だけでも‥‥全機帰投させます!』
 ゼロ・ディフェンダーを抜いたクラーク機は空中で殺陣をおこなうように舞、斬りつけていく。
 ブーストで加速された機体に≪「SES200改」スルトシステム・オーバーブースト≫が唸り、クラークの揺るぎない意志を具現化させるべく敵機を斬り捨てた。
『かっこいーねー。後ろは援護していくからガンガンいっちゃってよ』
 増援にきたM2も試作型スラスターライフルやスナイパーライフルD−02で戦線を持ち直す様に弾幕をはる。
『援軍もきたなら、周りを片付けるだけだな』
 ユーリ機が敵の射線を上手く利用しながら同士討ちを狙うように動き、KV隊が集中砲火を浴びせれる状態を作り出した。
『ええ、言葉を聴くことも忘れたのなら嘴も翼もいらないわよね、もいであげるわ』
『貴様らの翼こそ、ここで散らしてくれる!』
 挑発するような傭兵少女の声を受けた女軍人はバレルロールをしつつ再び空を埋め尽くすようなミサイルの雨を降らせる。
 二度目となれば警戒もできるため、各機はミサイルの合間を縫うように飛んだ。
 避けきれずに受ける機体も致命傷を防ぐようにする。
 葵機は序盤の損傷の影響がではじめていることもあって、ブレードウィングを当てようにも、グリフォンライダーには当てることができずにいた。
『決着をつけなきゃいかんな‥‥あの日、俺だけ帰ってきたのが原因ならここで』
 ジェイドが呟きに近い言葉を漏らす。
 ヘルメットワームから放たれるプロトン砲の発射音や銃声、砲音などに包まれた戦場では掻き消えるほどに小さな声でだ。
 RF−15がプロトン砲を受けて半壊している武装をパージして機体を加速、機銃を撃ちながら葵機と戦う元相棒へと迫る。
『また私だけ置いていくのか、貴様はっ!』
『いや、そのつもりだったが気が変わった』
 感情を露にする女軍人に対して男の大尉は冷静に答えると、葵機が攻撃する瞬間を狙って自らの機体を敵機にぶつけた。
 回避するタイミングを失ったグリフォンは葵機のブレードウィングで斬られ、宣言どおり翼を失ったかのように落下していく。
『黄金は私が頂くわね』
 起き上がることを許さず葵機が8基の展開・可動式エミオンスラスターを使った攻撃機動である≪FETマニューバA≫で突撃しながらのヘビーガドリング砲や高分子レーザー砲を叩き込んで破壊した。
 大きな華を咲かせて散っていくのを眺め、葵はポツリと呟いた。
『一つだけ、同意できることがあるわ‥‥男って本当に馬鹿よね』
 
●終わりははじまり
『今行くからな〜』
 朧機を始めとし、榊機、羽矢子機がタロスやキメラ相手に押されていた味方の援護に回ってきた。
 シュテルン・Gからプラズマライフルが掃射されればキメラが駆逐され、朱漆の雷電改2が機槍「千鳥十文字」を縦横無尽に振るい、竜牙弍型の短距離リニア砲の支援を受けつつタロスを1機ずつし止めていった。
『助かったよ、後はアスレードに集中できる!』
 零音の明るい声が残った戦車隊やKV隊の戦意を鼓舞する。
 一方、そのアスレードはクロスカウンターを狙うようにアームガンを接近戦を仕掛ける2機に同時に当てて戦っていた。
 慣性制御で背後からの死角を防ぎ、生身の格闘技でもするかのような戦い方だった。
『初手で‥‥練力を使いすぎましたか‥‥』
 M−12強化帯電粒子加速砲は威力があるものの燃費が悪く、必殺の一撃とブーストを考えると緊急回避に回せなく、無月機は被弾を余儀なくされる結果となる。
『アームユニット、オールパージ‥‥ウィング展開! 飛ぶぞストライダー! 『シルフィード』、ドライブ!!』
 ≪回避オプション≫による軸ずらしで致命傷を受けることなく攻撃を続けてきた宗太郎機は練機刀「白桜舞」を残して武装を外した。
 高出力ブースターと鎧型推進装甲「ヴァルキュリア」をもブーストによる加速と共に切り離し捨て身ともいえる姿で居合からの連続攻撃を仕掛けた。
『ハハハハッ! いいぜ、最高の気分だァ! 』
 太刀筋がかわり片腕を失ったアスレードだが狂った様に喜びの声をあげ、ファームライドに頭突きからソバットを繰り出させる。
『アスレード。そろそろ背中が煤けてるんじゃない? お前の居場所はここにはもう無いんだよ!』
 ピンクの斑色に染まる機体に向けて羽矢子機がスナイパーライフルDー02を背面に目掛けて放つ。
『いや、違うなぁ。ようやく俺様が生死をかけれる居場所ができたんだよっ!』
 殺気を感じた格闘家のようにファームライドが射線からずれるが、そこをミカガミBが捉えた。
『ならば‥‥ここで死んでもらうまで‥‥』
 ブーストを使い、加速させた機体で必殺の練剣雪村を内臓分も合わせた二刀流の五連斬撃がファームライドを斬り裂く。
 両腕、足と逃げる手立てをなくすように斬り刻まれた魚座の機体は火花を散らして沈黙する。
『クククク、今回はてめぇらの勝ちだ。次はこの俺の命を懸けて相手をしてやるから楽しみにしているんだな!』
 アスレードの言葉にコックピット内に武器を持ち込んでいたものは構えるが、声が途切れると共に機体が爆破した。
 しばらく警戒するものの何の動きも無いことに誰からとはいわずに息をつく。
 本当の決戦、本気の戦いが近いことを嫌でも予感させる瞬間だった。