●リプレイ本文
●砂浜に落りた天使[アイドル]達
まぶしい太陽の下、二胡の奏でる旋律から選手入場が始まった。
出てきたのは宵藍(
gb4961)とリュイン・カミーユ(
ga3871)の二人である。
明るい青のチェックのツーピースに白い花のワンポイントコサージュ付の水着を着たリュインが視線のあった観客にウィンクを飛ばして腰についているパレオを空へと放り投げた。
♪〜〜
嫌なコト全部忘れてしまえ
溢れる光のPassionが
奏でる真夏のSession
後悔ないほどバカみたくはしゃごう
眩しい程のShine
でもキミの笑顔こそOh my shine
〜〜♪
テンポのある歌に乗せて二人はダンスをする。
青いチェック柄のトランクスタイプの水着に白いパーカーを羽織った宵藍も二胡を演奏しながら軽いステップで存在をアピールしていた。
「「シャオチャーン!」」
男性だけでなく、女性からも宵藍に声援がおくられる。
がんばってきた活動が芽生えてきたと安心もしたいが、未だに男性ファン層の厚さには何ともいえない気分だった。
リュインの方も自信のある細いながらもしっかりと筋肉のついた足を惜しげも無くさらして歓声をもらっていく。
「いくぜ! バハムートぉ!」
ランディ・ランドルフ(
gb2675)の掛け声と共に次のペアがAU−KVバハムートに乗って入場してきた。
砂を巻き上げて停止するバイクの上にはランディとウォンサマー淳平(
ga4736)がまたがっている。
おそろいの水着を着こなし、二人は手を振って観客へと答えた。
そして、淳平は手に持っていたボールを淳平はリフティングしたり、ボールを上空になげてからのバク転キャッチなどで更に客席を熱気で包む。
ランディと淳平の入場パフォーマンスが終わると次のペアが出てくる
『いくよ』と犬耳をぴこっとさせて鈴木悠司(
gc1251)がアイコンタクトを送る。
『おうよ』とばかりに隣で同じように入場してきたヤナギ・エリューナク(
gb5107)もアイコンタクトで答え、砂浜の上で片手ロンダートから、バック転を華麗に二人は決めた。
ヤナギはファイヤーパターンのはいった黒地の水着にドクロTシャツといったワイルドな姿で人を食ったかのような笑みを浮かべ続けている。
「応援よろしくねー」
悠司のほうは人懐っこい笑みと覚醒で現れる犬耳と尻尾を揺らしてぶんぶんと手を振ってアピールした。
対称的な魅力のあるペアに客席の女子は黄色い声をあげている。
「みなさ〜んっ! こんにちはっ。はじめましての方ははじめまして! クラリアです。今日は楽しんでいって下さいねっ!」
長いロングの髪をツインテール上に結わえてアイドルとして切り替えたクラリア・レスタント(
gb4258)の姿は頼もしい。 彼女は紺色セパレートの競泳用というビーチバレーでよく見かけるタイプの水着姿を披露した。
しかし、彼女は一人である。
いつまでたってもペアの七市 一信(
gb5015)の姿は見えなかった。
「えっと、じゃあ変わりに沖那君が‥‥」
総合マネージャーのライディ・王(gz0023)が七市を欠席させようとしたとき、頭上の太陽が隠れる。
「ちょっとまったぁぁぁ!」
バイクに乗った七市がAU−KVを装着して華麗に着地した。
全員がそろい、ビーチバレーの頂上決戦が行われようとしている。
●Boy Meet Boy
試合は淳平とランディのペアとヤナギと悠司の対決から始まった。
今回使用するボールは、能力者のスキル使用に耐え、その威力を十分に発揮できるよう、SES搭載の特別製を用意している。構造的には超機械とほぼ同じものらしい。
「騎士たるものが敵に背を向けることは出来ん。ランディ・ランドルフ! いざ参る!」
《機鎧排除》を使い、AU−KVを装着せず、生身でドラグーンのスキルが使えるようにななったランディは水着姿ながらも何か強い力を帯びたかのように見える。
「それじゃ、いくよっ!」
気合の入っているランディに向かって腕をぶんぶんと振り回した悠司が《紅蓮衝撃》を使ったサーブを始めた。
ボールが高速回転して一見、取れそうも無いコースを描く。
「同じビーストマンとして負けられないよね、これ!」
金色の瞳と紺の毛並みを持つ猫獣人へと姿を変えた淳平は《瞬速縮地》でボールへと追いついて相手のコートへ返す。
「うぉぅ、やっるぅー」
「感心している場合じゃねぇぞ、悠司。絶対ェキメろよ」
ヤナギが犬耳と尻尾を振って喜ぶ悠司を諌めながらも、楽しむようにボールをトスする。
「もう! ちょっと高すぎるってば! よいしょぉーっ!」
高く上がったボールをまさに犬のごとく追いかけていった悠司はロンダートで勢いをつけたジャンプからアタックを撃ち込む。
客席から華麗なプレイに歓声と拍手が飛んだ。
「よっし、ナイスアタック。さすが悠司!」
コートに叩き込まれたボールを見てヤナギと悠司はハイタッチをかわす。
次のサーブはヤナギが行うこととなり、《ファング・バックル》をこめた重い一撃を繰り出した。
「これで、どうだ!」
勢いをついたボールが相手側のコートの端へと飛んでいく。
「マジ!? そんなのありかよ」
「甲冑が無ければスキルが使えない。ドラグーンの弱点だな。だが上級のハイドラグーンはコレが使える‥‥甲冑なくとも戦えることを証明する!」
取れないかと思い驚愕する淳平をよそに《竜の翼》を使い、ボールに追いついたランディが高くはねあげた。
「よし、決めちゃえ!」
「ひっさーつ! ギィガァア! ドォラァグーン! ショッットォォォ!!」
あげられたボールがコートスレスレ落ちてきたとき、瞬時に《竜の翼》で近づいたランディが《竜の瞳》で精度を高めたアタックを決める。
「よっし、やりぃ!」
淳平とランディもお互いにハイタッチをして喜んだ。
同じようなスキルと戦法をもった両者の対決は一進一退の攻防を生み出す‥‥。
●金と銀
「サーブはまかせろ、我がとびきりの一発をきめてやる」
金色の髪をそよぐ風になびかせたリュインがボールを上へ投げると宙返りをしてからサーブする。
特に意味はないのだが、流れるような動き、自慢の長い足が弧を描く姿に見惚れる男女が数多くいた。
「パンダブロォォッック!」
砂浜であるにもかかわれらずパンダの装飾をほどこされたAU−KV「パイドロス」で駆け寄りその体で力強いサーブをはじく。
「パンダは硬いからずるい気がする‥‥けど、そうもいってられないよな」
返ってきたボールを今度は自分たちの攻撃にするべく宵藍がボールを体でうけてサッカーのようにリフティングして高くあげてリュインへと繋いだ。
「よし、補助を頼むぞ、シャオ!」
宵藍に向けて駆け出したかリュインは踏み台となったシャオの組んだ腕に足を乗せて大きく跳ぶ。
まぶしく光る太陽で髪を光らせ、更には《練成超強化》の光を受けて全身に虹色の輝きを纏うと、ボールをオーバーヘッドキックの要領でスパイクした。
急降下と共に加速してくるボールを今度はクラリアが《スマッシュ》を使って半ば強引にレシーブしてボールをあげる。
「七市さんっ! お願いします!」
「パンダ忍術、空駆け!!!」
七市が《竜の翼》で助走をつけ空中に向かって大きく飛び上がると、丸々としたからだからは想像しがたい動きでスパイクを繰り出した。
「ひっさああああつ、パンダすまーーーーッシュ!!!」
くるくると三回転しながら着地するとコート内にボールが入って点数になる。
異様に決まる姿に客席から拍手が響いた。
(大規模で気持ちの荒んでいる人もいるだろうしそこに笑いをもたせるため‥‥もはやここも一つの戦場なのだ)
七市は強くこの仕事に燃えている。
パンダである限り笑いを取り続けることが七市の生き様なのだから‥‥。
●パフォーマーズ
試合は総当りであり、更には演技派集団Mpaでもあるために試合は実際の試合とは違い華麗なパフォーマンスの対決が重視されているように見える。
リュインと宵藍のペアとヤナギと悠司ペアの対決は特にその色が濃かった。
「大リーグボール1号、消えずに光る魔球!」
何か競技を間違っている気もしなくもないことを叫びながらリュインが盛大に《練成強化》を使った光るサーブを放てば、悠司が追いかけて返す。
「クールにアタックさせてもらうぜ!」
アタックチャンスを捉えたヤナギが《ファング・バックル》を使い足でのアタックを繰り出すと、拳法の呼吸法で息を整えた宵藍が強い衝撃を持つアタックを拳の一突きでトスへともっていったりと普段では見ることのできない映画のような展開が繰り広げられていた。
「このアタックはどうだ!」
《迅雷》でコートの端かコート際にトスされたボールまで瞬時に駆け寄った宵藍が《豪破斬撃》も加えたスーパーアタックを打ち込むと相手のコートに決まる。
「我のフォローのおかげだな」
唯我独尊な台詞を吐き仁王立ちするリュインの姿も決まっていた。
「今度はサーブも綺麗に決める」
勢いづいた宵藍がその場でターンしつつのサーブを繰り出し、試合を盛り上げていく‥‥。
***
「次、決めてやるぜ」
応援の声が強くなるなか、自らもテンションを高めている淳平が《紅蓮衝撃》をつかっての必殺アタックを決める。
「よっし、やりぃ!」
「まだまだ、試合は続いているからなぁ。油断はできないね」
淳平とハイタッチをするランディは大きく息をつき汗をぬぐった。
自分の持ちうるだけの練力を出し切っての試合は普通のキメラとの戦いよりもハードである。
「スキル併用の高機動戦闘、疲れるな。後でジュースでもがぶ飲み確定かな? 甘味求めてケーキバイキングもいいかも」
半分ほど自分に言い聞かせるかのように呟いてランディがサーブを放つ。
「女性でないなら手加減無用! パンダ真拳の真髄見せてあげよう」
サーブをはじき、幾度かラリーの後、トスしてチャンスを作る対戦チームである七市‥‥。
「好機! 七市さん! 行きます!」
そして、七市のトスにあわせてクラリアが七市の肩に手を乗せ、身体を丸めるようにジャンプした。
空中でボールと平行位置になると、ボールを地面に見立てて《迅雷》を発動。加速した足がボールを強く蹴り、相手コートへとアタックを決める。
ツインテールが空中で羽のように舞い、更に反作用で吹き飛ぶ体をくるくると回転させながら自分のコートへとクラリアは着地した。
その瞬間の拍手の大きさは類を見ないほど大きなものだったのは言うまでもない。
●おめでとうとありがとう
『優勝は七市さんとクラリアさんのペアです。おめでとうございます』
ライディが表彰台の上に上がる二人へ記念トロフィーを渡すとフラッシュがたかれて、その姿が多くのカメラに収められた。
『ありがとうございます! 今日応援していただいた皆さんのおかげです!』
太陽に負けない眩しい笑顔をカメラに向けつつクラリアは七市と共にポーズを決める。
まるで何かのマスコットとお姉さんのようだがそういった和む雰囲気が二人から出ていた。
『えー、こちらでは惜しくも優勝を逃したけれども奮闘した皆さんにコメントをもらいたいと思います』
審判やら飲み物を配ったりなどの雑用を続けていた山戸・沖那(gz0217)が緊張した面持ちでレポートを担当している。
『皆楽しめたかー? ん、それなら満足。今日が夏の思い出の1ページになるよう願ってる』
試合中ではないので白いパーカーを羽織った宵藍が客席に手を振って返ってきた声の多さに満足そうにうなずき、マイクを次に渡した。
『勝っても負けても応援に感謝だ。隣の宵藍が女性ファン募集中らしいので、男性ファンも負けるな。我らの試合、楽しんでもらえたなら良いのだが‥‥今後のMPAも宜しく』
リュインの負けるなの一言にはシャオちゃんコールがあがり男性ファンの根強さが伺える。
彼女のコメントの後には女性の黄色い声援が続いたのが何ともいえない空気だった。
『俺は楽しい試合だっけど、皆はどうだったかな? 皆もビーチバレー、楽しんでねー!』
『ビーチでナンパするのもいいけど、どうせなら女の子と一緒に汗をかくのもいいもんだぜ? 今年の夏はビーチバレーで決まりだぜ』
悠司とヤナギが続けざまにコメントを残し、二人仲良く手を振ってコメントを締めくくった。
『初めてやったけど楽しくできました。顔面にスパイク食らっていたらやばかったけれど』
苦笑しつつも眼鏡の位置を直して淳平がコメントを残す。
『ハイドラグーンとしての役目を全うできたと思います。また、少しでも騎士道精神が伝わってくれたら嬉しいですね』
ランディも宣言どおりスポーツドリンクをがぶ飲みしつつコメントを終えた。
全員にいえることは負けて悔しいなどとは言わないスポーツマンシップに溢れていることである。
魅せる力をもったMpaならではのすばらしい試合がここに閉幕となった。