●リプレイ本文
●Are you ready?
クリスマスを控えたある日のラストホープにある一軒家。
CD収録とラジオ放送を行うスタジオである。
「と入っても、僕の自宅なんですけどね」
ライディ・王(gz0023)がドアをあけてアイドル達を案内した。
「まずはCDの収録からいきましょうか。今回は他のグループからも来てくれていますしね」
「はいはいーい、お呼ばれしたから来たよ」
「メインの仕事ができなかったからな、こういう機会に感謝してる」
リビングに案内されたMpaメンバーの鈴木悠司(
gc1251)と宵藍(
gb4961)は楽器を持参してくるほどにやる気十分だった。
「では、案内した人からスタジオの方に入ってくださいね。最初は『lazwald』のお二人からですね」
「うむ、では参ろうかの『しゃお坊』」
「わかったが、坊っていうな。ぶっちゃけ俺とタメじゃないか」
呼ばれた秘色(
ga8202)がいつもの健康サンダルに着物姿でずんずんと先に行くのを宵藍が二胡を手に追いかけて行く。
なお、ライディも二人と同い年なのだから、世の中わからないものである。
『Cinderella of Christmas』 ―lazward―
♪〜〜
☆ふと見上げた夜の空
白い華がふわりふわり
色とりどりに着飾った街を
優しく白に染め上げて行くよ
★繋いだ手は少し冷たいけれど
お互いのぬくもりが感じられるよね
「Cinderella of Christmas
午前零時の鐘が鳴っても
君の手を離したりなんかしないよ」
☆ガラスの靴なんて脱いでしまえ
僕の腕の中 抱いていてあげるから
★魔女の魔法が解けても
僕が解けない魔法をかけてあげる
「だから雪の華の中 微笑んでいてMy Cinderella」
〜〜♪
歌われたのはPOPソング。二人の掛け合いやハモリのある歌詞が二胡やシンセサイザーに乗った明るいクリスマスソングだった。
「次はファリス(
gb9339)さん、どうぞ」
「ハイですの。『明日を夢見て』に続く新曲なの。みんなを元気付けられたら嬉しいの!」
スタジオに入ったファリスはヘッドホンをしながらマイクに向かって歌い出した。
『Take My Step』―ファリス―
♪〜〜
何も変わらないと決めつけて、
不満ばかりを言って、
まだ、
誰かが変えてくれるなんて、
そんな都合の良い事、
ありはしないと、もう気付いてよ
【現在(いま)】が気に入らないのなら、
俯いて立ち止まっていたら駄目
どんなに高い山だって頂きがあるように、
踏み出せば、そこから何かが始まるから、
その一歩は小さくても、その一歩はあなたを変えるから、
さあ、思い切って踏み出そう、
今日とは違う、明日の為に
そこにはきっと素敵な未来が待っているから
〜〜♪
「すみません、ちょっと遅れました」
「ああ、大丈夫ですよ。お子さんですか?」
「迷惑になるかと思ったんですが、仕事している姿を見せておきたくて」
ちょうどファリスが終わって入れ替わりしようとしたとき、瑞姫・イェーガー(
ga9347)が子供を抱っこしてリビングに上がってきた。
「僕よりも同じメンバーに相談された方が良かったと思いますけど、とりあえず先に済ませてしまいましょう。秋姫さんと入ってください」
「子供はわしが見ていてやろう。出番も終わったことじゃからな」
「収録‥‥がんばります」
秘色が瑞姫の子供を預かると秋姫・フローズン(
gc5849)が瑞姫と共にスタジオの方へ入って行く。
いつも以上に秋姫が緊張した様子なのは今回一緒に歌う曲が初めて作詞した曲だからだ。
深呼吸を一つしてから、二人は歌い始める。
クリスマスを祝う楽しい気持ちを表した一曲を‥‥。
『世界に聖夜の祝福を』―秋姫&瑞姫―
♪〜〜
「ハッピーバースデーハッピーメリークリスマス」
もう、怯えないで怖い影に
もう、争わないで私たちの大切な星で
失ったものは、多いけれど
憎しみは、消えはしないけれど
この世界生まれ変わっていくから
ハッピーバースデーハッピーメリークリスマス
私たちの祈り届けよう
トナカイやそりは無いけれど
吹雪を溶かすような歌声で
傷を癒やす暖かな優しさで
さあ、キャンドルをともして
祝おうこの静かなこの日を
ハッピーバースデーハッピーメリークリスマス
〜〜♪
「では、次、エイラさんお願いしますね」
「あいよ、今回はラブソングでいくぜ‥‥らしくねぇかもだがな」
エイラ・リトヴァク(
gb9458)が少し照れ臭そうにしながら瑞姫達と入れ替わった。
曲調は彼女の故郷でもある北欧のロックバラード調である。
『フェアリーズマインド』―エイラ―
♪〜〜
判ってくれないのか、あたしのこと
気持ちを伝えるのがへたな、妖精なのに
クリスマスだって言うのに 距離は縮まらないまま
素直になれないから すれ違ってしまってばかり
こんなに“お前”が、好きだって
どうしだろう こんな気持ち初めてなんだ
愛情なのか判らない ただあいつしか見えない
なのに、伝わってこない
あたしを、この吹雪から
助けて 助けて、助けて
あなたのお城に近づけないよ。
あたしが、消えてしまう前に
〜〜♪
「ラストはsendのお二人ですね」
「はーい、ユウは負けないつもりでがんばるよ。いい曲があるから負けられないんだよー!」
最後に声をかけてもらったユウ・ターナー(
gc2715)とペアを組む悠司がスタジオへと入っていく。
「今年も皆にハッピーを届けるために頑張るよ」
「じゃあ、ユウさん、みんなに負けないようにいこうか」
スタジオの中で二人は仲のいい兄妹のように音合わせをすると歌い始めた。
『send to ×××』―send―
♪〜〜
the snow is shines a town(雪が街を染める
breathe out is white(吐く息は白い
沢山の日々を越えたこの日に
笑顔が降り積もる
雪より白く誰にも
笑顔をあげるso special(特別な
誰にもできないextraordinary(とびっきりの
this thought also melts snow(この思いは雪をも溶かす
the breath of life((命のように)たいせつなもの
It’s you!(それはあなた!
〜〜♪
勢いのあるドラムとベースから歌とギターにハイスピードで切り替わっていく。
アイドル達の描く様々なクリスマスを歌にしたCDがここに完成したのだった。
●On Air
一休みを終えた後、番組が放送される。
今回はライディの番組への参加なので途中からのゲストという流れだ。
「ライディ・王のWind of Hope。ここからは特別コーナーとしてアイベックス・エンタテイメントのアイドルグループ、Alpの皆さんに参加して貰っています。早速、いくつか質問がきているようですね。瑞姫さん、紹介してください」
「はい、では最初の質問にいきます。ええっと、こちらをいきましょう。ラジオネーム【恋する漢女】さんから『クリスマスの思い出を教えてください』とのことです。私は母と過ごせた楽しい時間だったという感じですね。今では母親です‥‥他の皆さんはどうですか?」
パソコンを見ながらメールを確認するライディと瑞姫のやり取りでコーナーは順調に進んでいく。
「ファリスの故郷はオーストリアの田舎で、雪化粧をした教会にいって神父様にプレゼントを貰っていたの」
「あっ、ユウもね。シスター達と讃美歌を歌ったのが思い出なんだよ」
孤児であるファリスとユウのクリスマスは日々の質素な生活の中では特別な日の様だ。
「わしは滅多に作らぬケーキをつくったのぉ。夫や息子と3人で飾り付けをしたものじゃ。ちなみに健康サンダルもクリスマス仕様じゃぞ? 見せられぬのが残念じゃ」
「私も‥‥クリスマスは‥‥家族と一緒に‥‥すごしてました」
秘色と秋姫は家族との思い出を語る。
彼女達の話す声のトーンの高さから楽しい思い出だというのが聞いている者に伝わった。
「では、次のテーマにいきましょう。今度は僕が選びますね。ラジオネーム【Alp命】さんより『これからの活動について教えてください』とのことです。気になるファンは多いでしょうね」
ライディが選んだ質問は能力者として活動してきた彼女らの今後を気にしてのものである。
引退や卒業か、それとも今後も続けていくのか‥‥。
「ユウも何かあったら皆のところにばびゅんと駆けつけれるようにしたいから。本当はない方がいいのかも知れないんだけどね?」
「アイドルとしての‥・・活動は‥‥続けたいと‥‥思い‥‥ますが‥‥その前に‥‥旅を‥‥したいと‥‥考えています‥‥」
ユウ、秋姫が進路について語った。
若さからの戸惑い、そして新しい世界への期待が込められている。
「このまま傭兵もアイドルも続けていくつもりじゃな。能力者の力も必要じゃし、アイドルとして心の復興にも携われよう」
「ファリスもまだまだキメラとかで苦しんでいる人が居るから、もうしばらく傭兵さんを続けるつもりなの。もう少し平和になったら、人の役に立つ人になる為に勉強したいの‥‥アイドル活動も楽しいから続けるの」
はっきりと傭兵としても頑張ると秘色とファリスは答える。
需要がどちらもある限り全力で答えようという力強さに溢れていた。
「あたしはアイドルを辞める。けど、故郷[くに]に帰ったら歌手になるつもりだ。北欧の音楽を復活させてフィンランドの復興の後押しをしてぇんだ」
「私は父親の仕事を継ぎます。町工場なので地味な仕事なんですけど京浜工業地帯の復活‥‥いや、世界をよりよくする為に。職業訓練からだから、軌道に乗せるのに時間掛かるでしょうけど」
エイラは約3年、瑞姫は候補生だった期間も合わせれば約2年というアイドル活動に一つのピリオドを打とうとしていた。
平和になってきた世の中だからこそできることをしたいという願いからである。
「残ってくれる人が多くてちょっとマネージャーの僕が驚いています。ふつつかなマネージャーですがよろしくお願いしますね。アイドルを辞められるお二人も応援させていただきますよ」
「おう、ありがとうな。世界進出できたときにはアイベックス・エンタテイメントで日本とかラストホープでのデビューさせてくれよ」
「もちろんです。あっと、ここでCMに入ります。周波数はそのままで皆さんお待ちくださいね」
●Present for you
「Wind Of HopeフューチャリングAlp! 最後の質問は私が選ぼうと思います。これですねラジオネーム【アロハ社長】さんからです『これまでの活動を振り返ってどうでしたか?』とのことですが、どうですか?」
瑞姫がメールを選んで尋ねながら外で見ている同僚に抱かれた息子に手をふっていた。
「わしらの活動が、戦いに疲れた皆の心を癒せたのであれば、それは幸いに思う。常にわしらしくあったつもりじゃ」
「‥‥いろんなことが体験出来てものすごく楽しかったの!」
「Impalps感謝祭みたいに沢山のアイドル達で集まって、どっかーんって、おっきなコトするの、楽しかったな〜。1人で出来ないことも皆でなら出来て。より沢山のおにーちゃんやおねーちゃんに見て貰えて。笑顔と元気をあげて。笑顔と元気を貰って」
「あたしは、一人だったらここまで続けられなかったんじゃねえかと思っている。ゲーム開発とかで先輩アイドルに教わったことも多いし、お陰でゲームのキャラクターと共に今のあたしがある気がするぜ」
それぞれが仕事を通じて学んだことや経験できたことを振り返っている。
真剣に取り組んできた仕事も今夜で一つの区切りとなってしまうのも少し寂しくもあった。
「さて、最後のリスナーへのプレゼントじゃな? 読まれたもの全員にわしらの新曲CDをプレゼントじゃぞ」
少ししんみりしてきた空気を吹き飛ばすように秘色が瑞姫にパスを投げる。
「そうですね。読まれた3人には一足早くCDをお届けしますので、クリスマスプレゼントとして受け取ってください。収録に参加したメンバー全員のサイン入りですよ」
瑞姫が答えていると、エンディングのBGMに静かな夜を讃える曲を流し始めた。
「そろそろ番組もおしまいですね。最後に皆さんから一言ずつメッセージをお願いします」
「楽しむ為にも風邪なぞひくでないぞ。秘色じゃ」
「たくさんの思い出をありがとうございました。瑞姫です」
「ラジオの向こうで聞いているみんなの為にこれからもがんばるの! ファリスなの」
「夢を追ってこそ人間は輝くんだぜ。お前らも夢を忘れるなよ。エイラ」
「ユウ達はいつも皆と一緒だよ! だから約束。ライブで会おうねっ☆ ユウだよ」
「不束な私ですが‥‥宜しく‥‥お願い致します。秋姫・フローズン‥‥です」
「最後にこの番組のメインパーソナリティーのライディでお送りしました。それでは、せーの」
一言ずつアイドル達の言葉を沿え、番組の締めへと入る。
「「「メリークリスマス!」」」
素敵な夜を貴方が迎えられますように‥‥。