●オープニング本文

「まったく、ゴンザのおやっさんも無茶いってくれるもんさ」
　ベルディット＝カミリア（gz0016）はぶつぶつといいながらＵＫが不時着していた場所でＫＶパーツの回収をしていた。
　第五フェイズで撤収が行なわれる中、メルス・メス社の整備士であるゴンザレス・タシロとのある取引のため大破したＫＶのパーツを回収しているのである。
　シェイドの性能はすさまじく、バイパーでさえ落とした。
　つまりはバイパーのパーツが落ちているのである。
「疲労で寝込んでるってのに、大人しくしないのがあのおやっさんだねぇ‥‥」
　ベルディットは自分のＫＶで警戒用の装備だけもち、アクセサリのない状態で背負ったコンテナにパーツを拾いあげていった。
　建物が壊れ、ヘルメットワームの残骸や戦車の残骸などが散らばる。
　綺麗だった町並みは面影もなく、冷たい風が吹いていた。
「お、こいつは‥‥」
　ベルディットが大破ではあるが、人型を保っているＳ−０１に近づく。
　頭部は破壊され、胴に穴が開いている。
　片腕がフレームを少し残して千切れて、羽が折れてもいるが、回収できればかなり使えそうだ。
　ゆっくりと近づき、触ろうとしたそのとき、急にＳ−０１が光を放つ。
　ＫＶに搭載されているものではなく、フェザー砲だった。
「ぐぅ！？　くそ、何だってんだい」
　激しい衝撃で、吹き飛ばされ崩れたビルに埋もれつつベルディットは毒づいた。
　血で濡れた操縦シートを見せつつＳ−０１は立ち上がり、ベルディット機に攻撃を仕掛けてくる。
「『首なし騎士』ってかい！　あたいがこんなトラップにかかるなんてね」
　滑空砲を放ち、首なしＳ−０１から距離をとる。
　だが、横から廃墟に隠れていたゴーレムの一撃を受け、滑空砲がベルディットから離れた。
「ああっ、くそっ！　貧乏クジだね。こいつは！」
　ディフェンダーを抜いてレーダーを確認。
　ジャミングされていてまともに使えなかった。
「ゲリラ時代を思い出すね‥‥メーデー！　メーデー！　聞こえてるかわからないが、いっておくさ。援軍求む。ナパームレディより、愛を込めてねぇ！」
　無線に呼びかけつつベルディットは廃墟での逃亡劇をはじめた。　

●参加者一覧

●リプレイ本文

●トラップ！
「くぅ‥‥はぁ‥‥不味いね」
　ベルディット＝カミリア（gz0016）は戦いつつ唇を噛んだ。
　フェザー砲でやられたときの負傷し、血がジャケットを赤く染め出している。
　何よりも、敵の動きが即死させるようなものではないのが問題だった。
「持久戦は操縦に厳しいってのに‥‥」
　ゴーレムと『首なしＳ−０１―デュラハン―』の２体による時間差攻撃を受け、逃げるにしても攻撃するにしても不利だった。
　そのとき、上空に照明弾があがる。
「援軍‥‥？　来てくれたようさね」
　だが、ベルディットを狙っていたデュラハンが突然変形し、照明弾の方向へ飛んでいく。
「そういうことか！　援軍に来た奴ら、注意しな！　こいつらの目的はあたいらの鹵獲だ！」
　通じるかわからない通信機に、ベルディットは力一杯叫ぶのだった。
　
●予定外
「本当はわかなさんとは買い物とかに行きたかったんですけれどね‥‥」
　照明弾を放ったクラーク・エアハルト（ga4961）は一息ついてつぶやく。
『え、僕とどうしたかったの？』
　宗太郎＝シルエイト（ga4261）が乗るＬＭ−０１のジャミング中和領域に入ったのか、クラークのつぶやきは水理　和奏（ga1500）に通じていたらしい。
「い、いえ何でもありません‥‥宗太郎さんも追いついてきたようですし、レーダーを‥‥」
『１０時の方向に煙が見える。あの変で戦闘があったんだろう。向かうぞ』
　躊躇するクラークを援護するかのように沢村　五郎（ga1749）が煙を見つける。
　だが、クラークが乗るバイパーのスコープシステムはもっと別のモノを見つけていた。
「高速で来るもの発見！　機体コードはＳ−０１！？」
　叫ぶクラーク。
　そして、そのＳ−０１から２００発を越えるミサイルが能力者たちに撃ち込まれた。
『あんた達！　敵に嵌められてる！　早くおりな！』
　ベルディットの叫びが通信機から響く。
　しかし、対応はすでに遅い。
　ＬＭ−０１を除く全機で捜索をしていたため、ミサイルの射程圏内にとらわれていた。
『Ｋ−０１ミサイルか！　こっちの武装をそのまま使ってくるとは‥‥面倒だっ』
　白鐘剣一郎（ga0184）機は警戒していたために回避できるが、多くの機体はダメージを受ける。
『きゃぅ！　滑空砲が吹き飛んだ！』
　回避に失敗するも滑空砲を犠牲にして水理機は飛行状態を保つ。
　他にも吾妻 大和（ga0175）機、アルヴァイム（ga5051）機、クラーク機、五郎機がミサイルに揺すられた。
　改造をしていても１割近いダメージを全員が受けている。
「各自、降りましょう。もう一発食らうのは厄介です」
『あんた達、目の前の敵を片付けていきな！　レーダーにはゴーレムがあと２機廃墟に隠れている、ちっ！』
　ベルディットの声が通信機から響き、さらにガシィィンと金属がぶつかり合う音も続く。
　救出に向かった騎士達は罠に嵌ったことに改めて気づいた。
　
●どちらを救出するのか‥‥
「出だしは違ったが、予定通りわしらは救出に向かうぞ！」
　醐醍　与一（ga2916）は宗太郎に連絡をいれる。
『それしかないですね、他の方も心配ですが‥‥』
　宗太郎のつぶやきをさえぎるように廃墟から宗太郎と与一に向かって突如弾丸が飛んできた。
『くぅ！　与一さん、よけれましたか』
「ぬぐぉっ！？　いかん、直撃だ‥‥」
　与一のＸＮ−０１『桜華』は煙を上げつつ人型に変形した。
『待ち伏せしているとは‥‥こちらの予想が大きく外れましたね』
「遮蔽とりつつ接近するしかないな」
　時間差によるリロード時間を二機のゴーレムが補いつつやっているのか砲撃に隙はない。
　そんな状況をかんがみて与一がうなった。
『ベルディットさんの居所は此処から１ｋｍくらい先ですね』
「碁盤上になっておるから、逃げつついくしかないか」
　与一が息をつけば牽制班が降りてくるのが見えた。
『行きましょう、攻撃のひきつけは私がやります』
「直撃受けないようにな！」
　与一に注意を受けながらも、宗太郎機は駆け出した。
　
●襲撃
「無人機か？　‥‥パイロット不在で動くＫＶというのも厄介だ」
　識別信号は味方機のコードを放っているＳ−０１を見て、剣一郎は唇をかむ。
　外観が壊れているため、目視で敵とわかり戦えるが、これが多数大規模作戦などに投入されたときのことを考えるとぞっとする。
『空戦で決めましょう』
「それしかないようだ」
『ナパームおねぇにはがんばってもらうっきゃないな！』
　アルヴァイムの言葉に剣一郎は頷き、吾妻も同意して動き出す。
　３機が揃ってＳ−０１を攻撃しだす。
　まずはＳ−０１はＫ−０１ミサイルを再び撃ち込み、ミサイルポッドを捨てた。
「先手を取られていると厳しいなっ‥‥」
　剣一郎達は直撃を避けつつも２００発近いミサイル群を交わしきることはできない。
　装甲にミサイルが叩き込まれ、激しい振動が伝わる。
『だが、こちらもやりますよ』
　アルヴァイムが接近してレーザー砲で攻めたてる。
　Ｓ−０１は回避できずに食らうも、フォースフィールドが発生していた。
「フォースフィールドまであるのか‥‥悪趣味な改造を」
『くのくのっ！』
　吾妻が同じように突撃しつつガドリングを打ち込むとボロイ装甲が剥げ、Ｓ−０１は廃墟へ落ちるかのように飛んでいく。
「追いかけるぞ　アルヴァイム、吾妻」
　剣一郎はそういい、機体をＳ−０１に向けた。
　アルヴァイム機、吾妻機もそれに続く。
　暗い廃墟へ４機の戦闘機が消えていった。
　
●牽制
「よう、ママ景気は最悪なようだな」
『五郎かい、あんたの‥‥いるところに、コンテナが‥‥あるから‥‥その中身‥‥、南米まで‥‥はぁ‥‥届けるんだ、よ』
　ベルディットの余裕の無い声が聞こえてきた。
　息も荒く状況が悪い事を知らせる。
「もうすぐナイトが助けにいく‥‥がんばってくれよ」
　そんな事をいっていると、アラートサインがなる。
　ゴーレムが壁を壊して現れ、肩からキャノン砲を放ってきたのだ。
「マヌケ、そんな攻撃当たるかよ！」
　五郎はその攻撃をやすやすと避ける。
『五郎さん、後ろ！』
「何っ！　ちぃ、そういうことか！」
　水理の呼びかけに五郎は舌打ちをして回避する。
　背後のビルがキャノン砲によって砕け、崩れだしていた。
『無人機だとしても知能があがっていますね‥‥』
　クラーク機がゴーレムに向けて隠れながら接近をし、ライト・ディフェンダーで攻撃を仕掛けた。
　避けられそうではあったが当たる。
　だが、ゴーレムもお返しとばかりにクローの一撃を浴びせてきた。
　強烈な一撃がクラーク機のバイパーの装甲を引き裂いた。
『クラークさんを放せっ、このっ！』
　回り込んだ水理機のＤ−０２がクラーク機を掴むゴーレムを撃ち、引き剥がしにかかった。
「オマエごときに手間取っているわけにはいかないからな、つぶれてもらうぜ」
　五郎の一撃を受け、ゴーレムの腕が切り落とされた。
　引き剥がされつつもゴーレムはキャノン砲をクラーク機に撃ちこんだ。
『小さい女の子にばかり、戦わせる訳には行きませんから‥‥やらせてもらいますよ！』
　そのまま受けつつクラーク機のライト・ディフェンダーがゴーレムを切り裂いた。
「ひゅー。若いっていいね。さ、もう一体を倒しにいこう」
『ええ、これくらい撤退するまでもありません』
　クラーク機は立ち上がる。
『‥‥と、クラークさんありがとう。僕を女の子って認めてくれて‥‥』
　水理の通信はクラークに聞こえるか聞こえないかわからないほどに小さいものだった。
　
●騎士の手助け
「ベルディットさん、こちら『蒼月』、ラブコールは受け取りましたよ」
　戦闘を続けているベルディットの元へ、宗太郎のＬＭ−０１が廃墟を走ってやってきた。
　後ろから人型になっている与一の『桜華』も居る。
　与一は接近戦仕様の装備のため、廃墟を壁にしつつレーザー砲で近づいた。
　しかし、宗太郎はブースターを使い、横から一気に接近する。
「食らえっ！　じっちゃん直伝の体術」
　ゴーレムを投げようとするも軽量なＬＭ−０１では投げられない。
　仕方なく、シールドスピアによる攻めを実行、ベルディットが弱らせていたためか腕が破損した。
『それじゃ、わしがとどめをさすぜ！』
　与一のビームコートアックスがうなり、ゴーレムを一刀両断する。
『よくやったねぇ‥‥いい連携‥‥落ち着いて手当てできるよ』
　つかれきったベルディットの声が宗太郎の通信機から響く。
「やばいんじゃないか？　後ろに下がっていろよ‥‥」
『どっこい、そうは‥‥いけそうにない、さね。首なし騎士のお出ましだ』
　ベルディットがいうと宗太郎のレーダーに味方の信号をだしている機影が近づいてきていた。
　ボロボロの機体が人型に変形しつつフェザー砲を放ってくる。
　頭部が破壊されているそれはまさに、首なしＫｎｉｇｈｔ―デュラハン―というに相応しい姿だった。

●デュラハン
『どうやら、彼女に狙いをつけたようですね‥‥』
　アルヴァイムが変形しつつ降下したデュラハンとそれと戦う３人を見て予想を立てる。
「これだけの数で当たれば何とかなるっしょ、短期決戦！」
　それを聞きつつも吾妻は変形し、割り込んでいった。
「アメノムラクモ、哨戒っ！」
　襲い掛かる吾妻に対し、デュラハンがフェザー砲で迎撃を試みるがそれを吾妻はディフェンダーを構えて耐える。
　装甲が熱で溶けていくが、落ちるまでには行かない。
　切りかかる吾妻の攻撃をデュラハンはスラスターをふかして回避した。
「アルヴァイム、剣一郎、回ってくれ！」
『その物騒なものをもらうぞ』
　剣一郎機がアグレッシヴファングをこめたディフェンダーで斬りかかり奪おうとするもデュラハンは遮蔽をとって逃げる。
「だが、隙を見せたなっ。この一撃で終わりだ！」
　吾妻がフレームだけが覗く腕のほうへ回りこみ、デュラハンに向かって雪村を抜いて切りかかった。
　しかし、そのフレームだけのように見えたものが光り輝く。
　まるで雪村のように‥‥。
「うそだろ！？」
　切りかかるのを止めるも、勢いは止まらず吾妻のＲ−０１はコックピットを光の刃によって貫かれた。
『吾妻さん！』
　辛うじて脱出できた吾妻がＲ−０１のコックピットより転がりだし、それをアルヴァイムが拾い上げる。
　一瞬、時が止まるがその隙にデュラハンは変形し吾妻のＲ−０１を連れて逃げ出した。
　その先にはヘルメットワームの軍団が見える。
『援軍か‥‥』
『こちらわかな、ゴーレムは排除したけど‥‥そっちは？』
『吾妻が重傷を負った。帰還する‥‥』
　剣一郎は苦い思いをしつつ、撤退を指示した。
『この先、面倒な‥‥戦いになって、いきそうだねぇ‥‥』
　ベルディットのつぶやきは能力者たち全員の思いと一緒だった。