●リプレイ本文
●ドラゴンロードに風が吹く
今日も近畿地方の国道では攻防が行われようとしていた。
ブゥブゥンとバイクを鳴らすマサオ率いる【無頼沌】のヤンキーたちが9人のよそ者を囲むように走り回る。
「マサオ、ドラゴンロードをいつまでもてめぇら【無頼沌】の好きにはさせとかねぇっ!」
囲まれ、普通ならビビル状況だが、暴走族【ブラックウィングス】のホアキン・デ・ラ・ロサ(
ga2416)はソードを肩でトントンをしつつメンチをきっていた。
「うう、特攻みます、夜露四きゅっ!」
ブラック・ウィングスの総長である阿木 慧斗(
ga7542)は緊張のためか最後は舌をかみつつ存在をアピールした。
「では、行きましょう。てっぺん取りに‥‥」
雑魚に用はないといわんばかりにそろいの500ccのアメリカンバイクをうならせているのは周防 誠(
ga7131)率いる『殺伐』だ。
周防はサングラスをかけ、アラスカ454とショットガン20の二丁を携えヤル気満々であった。
「正々堂々と、な」
アメリカンバイクにまたがるには不釣合いはダンディズムスーツ。
黒で統一された衣装は、暴走族というよりはマフィアの雰囲気さえ漂わせるUNKNOWN(
ga4276)。
ただ、平手打ちをされたのか頬が少し赤かった。
「おうおう、誰に断ってこのシマ荒らしとんじゃー!」
また、白い特攻服に鉢巻を巻いた坊主頭。
アメリカンバイクに『賄芭庵(わいばーん)』と白い筆文字で描いたバイクにまたがったスティンガー(
ga7286)が吼えた。
この異色の3人組に、さすがのヤンキーズもビビル。
だがしかし、リーゼントをきりっと決めたことの男マサオは違っていた。
「よそ者にビビってんじゃねぇぞ、俺らの背中の李哩庵が泣くぞおらぁ!」
マサオが背を見せるとそこには特攻天女らしい10歳くらいの金髪の女の子が描かれていた。
「マサオさん!」
「兄キィ!」
よくわからない歓喜がおこる。
その中でも冷静な二人がいた。
(「パラレル、か‥‥俺も、連中にとっても‥‥俄かに信じ難い話だが、こうして現実の中に立っている以上、認めざるを得まい」)
一人は”クールドライ”の称号を持つ南雲 莞爾(
ga4272)とパートナーの緋室 神音(
ga3576)である。
緋室は南雲が思っていることをわかっているのかいないか、南雲の肩を叩いてこうつぶやく。
「最早この先言葉は不要‥‥」
二人の乗るバイクはシャープなデザインで速度重視であるスポーツタイプであった。
色も赤と青と分けている。
残り2人の余所者たちもガン付けには応じない。
「いい根性だ! 天辺とることで勝負しようじゃねぇか!」
マサオが9人のよそ者を眺めると、勝負を挑んだ。
ドラゴンロードに、今新たな風が吹き出す。
●ヤンキー狩り
国道の上下を塞いでバイクが並び、それぞれがスタート合図を待ちわびるようにヴゥゥンとうなりをあげる。
「“この世で狩に勝る楽しみなどない”とは言うが、今この瞬間だけは力(速さ)こそ全てだ‥‥!」
御影・朔夜(
ga0240)はいつもとは違う気迫をかもし出し黒の750ccスポーツバイクにまたがりレースに挑んでいた。
「まずは舎弟潰し‥‥そのあとは‥‥」
御影の隣にならんだのは同じ黒いバイクでも軽量さの目立つ750ccバイクにのったみづほ(
ga6115)である。
「ルールは簡単さね。一番はじめに天辺についたチームが勝ちだ。このルールはずっと続いているもんさね。たとえ、ヘッドがかわっても!」
こえたからかにいうのは、近辺のレディース総長”爆弾女”という赤髪の女だった。
シマのヘッドが変わるということでジャッジ代わりにきたとのことである。
「この旗が降りたら、スタートさね! あんたら、気合はいってるかい!」
「「おう!」」
全員が声をだし、爆弾女がそれとともに旗を降ろした。
天辺(テッペン)トリレースが始まったのである。
ブロロロロゥンとマサオのごついバイクが先頭をきって走り、振り向く。
『メンチビーム!』
マサオ特有の強烈なガン飛ばし。
その威圧的な瞳に幾人もの猛者がやられてきた。
狙われたのは、阿木と南雲。
南雲はクールに受け止めるも、阿木への精神ダメージは大きく、ハンドルを握る手が震えていた。
「総長、しっかり!」
ホアキンの一言でなんとか気を取り戻す。
そんな事をしている間にマサオとは距離が大分離れてしまった。
「アイテール‥‥限定解除、戦闘モードに移行‥‥」
緋室がバイクをうならせ、チンピラたちを華麗なハンドルさばきと、月詠で捌きだす。
緋室の月読で9,10人のチンピラが切り刻まれた。
「意外とあっけないのね‥‥」
月読についた血を舐めつつ、緋室は微笑んだ。
背に広がる虹色の羽の揺らめきが恐ろしさをかもし出す。
「どうした、私の速さにはついてこれないか?」
次に動いたのは御影。装備を軽くしていたので、マサオを抜き一気にトップへと躍り出た。
「阿木総長のお通りだ! てめぇら道を空けやがれ!」
阿木と同じ黒い特攻服を羽織ったホアキンが緋室によって数の減らされたチンピラにガンを飛ばす。
それとともに、フォルトゥナが火を吹き、オイルタンクが爆破した。
「でかい花火だぜ!」
ホアキンがうなり、次の獲物を見てニヤリと笑う。
にらまれたヤンキー達はおびえるもホアキンの攻撃は止まらなかった。
辛うじて巻き込まれなかったヤンキーが走り出す。
「悪いが、かしらの落とし前はあんたでつけてもらう」
その横を南雲が並走し、蛍火によってシャフトごとタイヤを裁断した。
チンピラはそのまま地面に引きずられ、バイクの下敷きになる。
「先にいくぞ」
相棒の緋室を残し、南雲が先行する。
レースは雑魚だけが相手ではないのだ南雲がマサオに追いつき、攻撃を仕掛けるもマサオ軽々とよける。
「俺のメンチビームを喰らって喧嘩を売ってきたのはてめぇがはじめてだぜ!」
マサオはそういいだす。
「俺からも言わせてもらう、牙を突き立てるのは、俺だ!」
南雲とマサオがデットヒートをしている間に、UNKNOWNがショットガンをチンピラに向けた。
「総長前を走る奴はなんぴとだろうが撃つ」
クールに響く声、ショットガンと葉巻が良く似合う。
漂う紫煙にショットガンの白煙が加わった。
飛び散る弾丸により、チンピラたちはあっという間に肉の塊となる。
「さぁ、総長。道をどうぞ」
礼儀正しくUNKNOWNに案内され、御影には追いつかないにも南雲や、マサオより前に別車線でた。
「ぶっこんで行くんで夜露死苦!」
気合を入れなおしたスティンガーは照明銃を真横のホアキンに向けた。
「何!?」
「さすがに女性は狙えないでしょ!」
しかし、照明銃は難なくよけられた。
「この野郎!」
叫ぶホアキンを尻目にスティンガーは賄芭庵を走らせ、先行した。
「ホアキンさん、大丈夫?」
「阿木総長は奴らより先に、こっちだってやり方ってもんがありますからね」
ホアキンは不敵に笑う。
「すでに、非情な戦いがはじまっているようですね。御影さんがトップですから、支援をすれば」
みずほはそう思い、バイクを走らせ御影と並走しだす。
トップはこの二人だが、勝負の行方はわからない。
●漢マサオの生き様
トップを走っていた御影がスリップし、ダメージを受ける。
緋室もガードレールにその体を引きずられ、みづほにいたってはエンジントラブルか大きくバイクが倒れ、火花が散る。
「てめぇら、よくもシャテイをやってくれたな!」
マサオが背中から二本の鉄パイプを取り出すと、両サイドにいる南雲と阿木に対して攻撃を仕掛けてきた。
攻撃してきたのは二人、そして攻撃し終わった後鉄パイプをホイールに投げ込む。
二人は負傷しスリップは免れるも、パイプを抜くまで走れそうにもない。
「阿木総長!」
「南雲!」
ホアキンと緋室が叫ぶ。
阿木にいたっては負傷が大きい。
二人を尻目にマサオは御影を追いかけだした。
「相棒の仇とらせてもらうわよ!」
緋室がバイクをうならせマサオに近寄り、仕込んでいたソードを振りかざす。
「―――禁忌・地獄車」
南雲がやられたようにマサオのバイクのホイールにソードを指し、グルグルンとマサオのバイクが回転した。
「そんな手でやられる俺じゃねぇぜ!」
二、三度回ったかと思うとウィリー走行で走り続けた。
マサオとて、ヘッドである。
「ちっ、だがそれなら斬るだけよ!」
月詠を持ちながら、緋室は舌をうつ。
「このまま独走させてもらおう、みづほには悪いが‥‥今は速さがすべてだ!」
マサオに喧嘩を売っている一同に対し、興味のない御影はそのままゴールまで駆け出した。
「ホアキンさん、テッペン取ってください! 落とし前は自分でつけます」
どうしようか、迷っていたホアキンに阿木が傷だらけの体で指示をだす。
ホアキンは頷き、全力でバイクを走らせた。
動けない南雲を尻目にUNKNOWNがスティンガーに近づき耳打ちをする。
「スティンガーという名前はミサイルと同じだよね?」
「ええ‥‥」
そのとき、UNKNOWNがもれているオイルチューブを指差し、タバコを落とす。
「総長のための特攻隊長となるんだよ」
「UNKNOWN、はかったなぁ!?」
ぼぅんと火がついた特攻隊長スティンガーの賄芭庵はマサオのバイクに文字通り『特攻』を仕掛けた。
ドゴォンとすさまじい音がし、アフロヘアになったスティンガーが道路に落下する。
マサオのバイクはボロボロになりながらも走り続けていた。
「しぶといものだね、まぁ総長の邪魔には消えてもらおう」
南雲のバイクでさえショットガンで破壊し、UNKNOWNは平然と微笑む。
味方の援護をうけつつ、周防もテッペンを目指し走りこんだ。
残ったみづほは考える。
(「ボロボロになりながらも目指すマサオ‥‥そこに何があるというの?」)
御影との勝負もあったが、それ以上にこのマサオをどうにかしてあげたかった。
「楽にさせましょう‥‥勝負をもう、しないように‥‥」
これは夢かもしれない、ばかな幻想かもしれない。
だが、その幻想の中ただ一人、楽しまず苦しんでいるのが目の前にいた。
みづほの顔面に顔に『鷲掴みにされた』痣が赤く浮かび上がり、右腕が黒く染まる。
マサオに走って近づき、アラスカと、S−01を抜き撃ち込んだ。
アラスカがウィリーをしているタイヤのパンクさせ、続いてはなったS−01がオイルタンクを吹き飛ばした。
ドラゴンロードの覇者マサオの壮絶な生き様は此処で幕を閉じたのである。
●勝者の宴
結局、レースは御影の独走で勝負がついてしまった。
最速マシンと操縦技術の見事なさばきだった。
「まぁ、レースも終われば皆仲間。一杯やりましょうや」
アフロになったスティンガーが甘酒と日本酒をもってやってくる。
ゴールには桜が夕日の見える丘があった。
此処をマサオは自分だけの物にしたかったのかもしれないと、能力者たちは綺麗な景色を眺めつつ宴を楽しむ。
再び、この場所でここを守るために戦うのだ。