●リプレイ本文
●寄付金の正体
「寄付金? AC研はそんなに切羽詰った状態だったのか‥‥。それにしても、和奏は太っ腹だな」
依頼の経緯を聞き、煉条トヲイ(
ga0236)は自分より小さな少女を見て感心した。
「ボクが原因で、ピンチになっちゃったから‥‥ミユお姉様とも仲良くなって欲しいんだ」
水理 和奏(
ga1500)はドローム社内のAC研へ移動する間に経緯を端的に話す。
開発をがんばっているという告げ口が原因で、成果を出さなければならないという状況で今回のマニューバ武装がミユ・ベルナール社長の目に止まらなければAC研は解散ということだ。
「もう一方にブースターのテストがあるようだが‥‥これってつかえないのか?」
須佐 武流(
ga1461)はAC研の中に入ってロレンタに言葉をかける。
「テストではなくて、開発です。まだ詳細データすらきまってませんからシミュレーターに混ぜるのは無理なんですよ。方向性だけは決まっているのですけれどね」
そうロレンタは苦笑しつつ武流に対して答えた。
「追加ブースターじゃが、戦闘機形態が無論。変形した状態でも使えないと意味が無い代物じゃな」
「私が担当しますから、室長もそれほどうるさく言いませんよ。それに昔ほどKV嫌いではなくなったようですし」
二ヶ月ぶりの再会となる刃金 仁(
ga3052)にロレンタは優しく微笑む。
最後の方は小声でこっそりといったが。
「わたしもサイエンティストですから、計算とかお手伝いします。なんでもいってくださいね。後、私の報酬はAC研のために使ってください」
エレナ・クルック(
ga4247)がぐっと握りこぶしを両手で作ってロレンタを見上げた。
「わかなちゃんといい、今の子供達って優しい子ばかりなのね‥‥」
献身的態度にロレンタの目に涙が少し流れる。
「とにかく仕事をはじめよう、我々はそのためにきたのだからね」
スーツと共に気を引き締め、阿木・慧慈(
ga8366)が一同を促した。
●マニューバ・シミュレート1
『機体はR−01のみである。S−01は入手できなかったが、まずはこの辺で成果がでねば応用も利かないのである』
「了解っ」
砕牙 九郎(
ga7366)は八之宮忠次室長の声を聞きつつ、答えた。
『シミュレーターが3機ギリギリあってよかったですね』
面白い武装を作っていると聞いてやってきた赤村 咲(
ga1042)が九郎にはなす。
『実弾系のマニューバ・ガンファイト(仮)をとりあえず試す形だな?』
ヒューイ・焔(
ga8434)が残り2人に確認をとる。
『そうですね、ヘルメットワーム相手ですがやってみましょう』
3機の3Dでモデリングされた世界に3機のR−01が飛び出す。
相手は1体のヘルメットワームだ。
「ミサイルのタイミングはこんなところかっ!」
射出口の改良はさすがにできなかったので動きつつ打ち込むことで軸を変え、1機のヘルメットワームの退路を断つようにミサイルを撃つ。
『そして、ダイブしつつ、ショットっ!』
ヒューイが掛け声と共に上空からヘルメットワームを狙いつつシュートした。
「俺は腹から狙う方がいいと思うんだが‥‥」
九郎はそういいつつ下からバルカンで攻撃を叩き込んだ。
『空戦の基本は上をとることですからね、慣性移動するなら尚更でしょう』
2人の攻撃で倒れたようで、次に出てきたヘルメットワームに対して咲がマニューバの制御具合を試す。
九郎の戦い方でいくのなら、ミサイルは2つ撃つ必要はなく、1発ずつ3回でも十分だろうという結論に達した。
『使用回数を増やせるほうがいいからな』
ヒューイもその案に同意する。
ブースターを使うかどうかは、個人任せで基本動作の構築が今回のベースとなった。
●ブースター開発
「‥‥俺の守護天使は堅実を好むようだ。兵器開発は初めてで至らない部分はあると思うがよろしくお願いする」
ホアキン・デ・ラ・ロサ(
ga2416)はロレンタに一礼をした。
「とりあえずだ、盛り込むのは後回し、今回は移動力強化だけに絞ろうと思う」
「そうですね、基礎ができれば応用はそれなりには‥‥」
阿木の言葉にロレンタがモデリングデータをたたき出す。
ベースは緊急用ブースターだが、これを完全に燃料タンクを切り捨ててでも詰め込めば重量は軽くなりそうな計算である。
「やっぱりアクセサリーですよね〜。希望としてはこれくらいであるとうれしいところですぅ〜」
エレナが費用の希望をだす。
「実際にはそれですと、赤字か改造できないレベルですけれど‥‥そうでもないと寄付金だけでの開発は厳しいですね」
ロレンタは安さに頭を抱えるが、寄付金も多いわけではない。
開発費として使えるレベルは決まったようなものだ。
「無理無理といわずになんとかせんか!」
「怒りたい気持ちも分かるが、今回はわかなの寄付金でできた余分なものなんだ。我慢してくれ」
仁は怒り出すが、阿木がそれを制す。
「練力マイナスを覚悟なら、かなり軽量だ‥‥これなら、売り物になりそうだが‥‥運試しのネタにされなくもない」
ホアキンは苦笑した。
どうも好みの武器があるのだが籤運に恵まれずに手に入れられないようである。
「納品はしますけれど、それをどう売るかはULTやUPC軍に一任されてしまいますから‥‥」
ロレンタもそればかりは仕方ないと苦笑した。
「時期早々かもしれぬが、我輩の考えた総合パックを提案しておくのじゃ」
そんなロレンタに向けて、仁が今出ているアイテムを合体させたようなアイテム案を提示しだす。
熱く語る仁をよそに阿木を中心に、データのまとめに入る残りの能力者たちであった。
(「ロレンタさん、ごめんなさい〜。データ試算とかなら引き継げますから〜」)
グッと涙を飲んでエレナは仁の相手をロレンタに任せる。
仁の熱い語りは小一時間続いたと後にホアキンは語った。
●マニューバ・シミュレート2
「32mmレーザー砲で牽制撹乱しつつ、ラストにM−12帯電粒子加速砲で攻撃ってのが引っかかるんだよなぁ軽くできないのか?」
『威力を求めてこうはなったのであるが‥‥では、プログラムをこう変更するのである』
今度は、マニューバ・インファイト(仮)担当のメンバーがシミュレーターに乗り込んで実験しようとしたとき、須佐からそんな要望が飛んできた。
『なるほど、試作G型放電装置をあえて近距離で当てるか。確かにこれなら大分軽くなるな‥‥』
トヲイが変更されたプログラムを見て納得する。
命中率が高く射程が長い武器で遠距離兵器として使われていたが、逆にこれを近い射程で逃さないように当て、そのあとレーザー砲を叩き込むだけ叩き込む流れに変更された。
「俺の理想とは違うが、仕方ないか‥‥」
須佐の考えではもっとバリエーションを増やしたかったが、物理、非物理で分けるのが八之宮室長のコンセプトでもあったため却下された。
『とりあえず、これをピンで試してみようよ。懐かしいな、Karateって名乗っていたとき乗っていた機体だ』
少し不満の残る声を残す須佐をわかながなだめ、シミュレートが始まった。
3機のヘルメットワームがでてきて、各個人をに襲い掛かって来る。
「俺としてはインファイトとガンファイトを混ぜた形がいいんだが‥‥」
『重量を軽くしたのでどちらも装備すれば問題あるまいて、どちらかに特化せねば費用対効果は得られぬのである‥‥現状ではな』
古い機体であるR−01をたくみに使いこなし、避けれないような距離で放電装置をあて、バレルロールで詰めつつリロードするまでレーザー砲を叩き込むことで威力をカバーした。
そこまでされた小型のヘルメットワームは爆発する。
「まぁ、このくらいがちょうどいいんじゃないの?」
レーザー砲をリロードしつつ物足りなさげに須佐は言った。
『機械的な動きだけでは、敵エースには対抗出来無い―‥‥が、この動きも含めてひとつの武器と考えて対処すればやりようはありそうだ』
試作G型放電装置を使うことになったため、練力消費は0になったのでブーストとの並列使用などでバリエーションは考えれそうでトヲイは満足の様子である。
『こういう武器が早くあったら‥‥あの人も‥‥ううん、なんでもないっ!』
ふとキメラに体当たりしたイーグルドライバーを思い出しそうになったわかなだが、それを乗り越え敵機を倒した。
●ラスト・タイム
「そういえば、名前はどうするんだ?」
休憩を挟むことになり、AC研からドローム社の社員食堂で各々ジャンクフードを食べながらヒューイが忠次に問いかけた。
「今のところ案はないので、そのまま申請するであろうなマニューバGFとマニューバIFあたりであろうか‥‥今後の発展を考えてな」
むしゃむしゃとハンバーカーを食べつつ忠次は答えた。
「えー、忠次・ガンファイト、わかな・インファイト、ロレンタ追加ブースターとかいいと思ったのにっ」
わかなが炭酸飲料を飲みつつ頬を膨らます。
「個人名を使うといろいろ面倒なんですよ、会社としての製品ですからね。追加ブースターは『ユニバーサルバーニア』で申請しますよ。使うときに言う分には一向にかまわないですよ」
苦笑しつつもロレンタがわかなの頭を撫でた。
「なんか、二人と別れるのが寂しいな。もうちょっとチェックしたらお別れなんだよね」
急に寂しくなったのか、わかなは涙を流しだす。
「これが最後ではない。ここの兵装ができれば再会するようなものさ。ミサイルポッドCのようにな」
九郎もわかなの頭を撫でた。
その後、連携調整を終えた能力者達はラストホープへ帰っていく。
AC研であるが申請された武装や、アクセサリがミユに評価されまたエレナの寄付金により無事閉鎖は逃れたのであった。