タイトル:海に漂う命を救えマスター:橘真斗

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 10 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2008/06/16 02:28

●オープニング本文


「はい、こちらLAD! 沖にボートが流された? キメラのいる危険地帯!? 人数は8名‥‥」
 南米のとある消防署のような施設。
 そこでオペレーターの女性は通信を受けつつ、メモを取っていた。
「隊長、チリより西海岸にボートが流されて救援を求めている人がいます。キメラ地帯のため通常の航空隊では対応しきれないとのことです」
 オペレーターの女性は眼帯をつけた男性指揮官にメモを手渡す。
 キャップという名前以外は素性の分からない男だが、信頼されていた。
「俺たちの仕事だな‥‥だが、水中からの支援も欲しいところだ。ラスト・ホープの傭兵に連絡してくれ。今回の任務は能力者でないと厳しいだろう」
 キャップはそういって、オペレーターに連絡するように指示をだし、ポールをすべり降りて外に待機している岩龍の元に来た。
 岩龍には赤十字にタンポポのエンブレム。『ダンデライオン財団』と呼ばれる慈善組織であることを示している。
「今回もお前を頼らせてもらうぞ。相棒」
 アクセサリスロットを人員が乗れる空間に改良し、ラぺリングができる道具や医療器具などを乗せれるようにした特殊な岩龍『サヴァイヴ』をキャップはコンコンと叩いた。
 南米ではこの岩龍を従える組織をこう読んでいる『突撃救助空挺隊(Lifesaving Assault Divers)』通称:LADと‥‥。

●参加者一覧

煉条トヲイ(ga0236
21歳・♂・AA
水鏡・シメイ(ga0523
21歳・♂・SN
潮彩 ろまん(ga3425
14歳・♀・GP
シーヴ・王(ga5638
19歳・♀・AA
ロジャー・ハイマン(ga7073
24歳・♂・GP
レイアーティ(ga7618
26歳・♂・EL
風羽・シン(ga8190
28歳・♂・PN
久瀬 和羽(ga8330
11歳・♀・DF
御崎 緋音(ga8646
21歳・♀・JG
ライセンシー(gb0483
24歳・♀・SN

●リプレイ本文

●翼広げて
『‥‥イ、レイ? そっちで船や敵は見つかったか?』
「あ、いえ‥‥すみません。まだです『緋音君』」
 御崎緋音(ga8646)からの連絡にしばらく気づかなかったレイアーティ(ga7618)が返事を返す。
(「不謹慎ですね、緋音君と肩を並べて空を飛べることに浮かれるなんて‥‥」)
 少しの間気が抜けていたことにレイアーティは気を引き締めた。
 レーダーを見直せば、敵機はない。
 しかし、青い海の上に白い船が大きく揺れているのが見えた。
「目標発見。座標は‥‥」
 レイアーティはLADの本部へと連絡をいれ、上空警戒を続ける。
『レイ、羽アリキメラを察知した。船より東の方向』
「では、そちらへ向かいましょう緋音君」
 レイアーティのディアブロと緋音のバイパーは共に飛び立った。
 緋音がいった通り、その座標には羽アリキメラが4体いる。
「先手私が行きます、バックアップ頼みますよ、緋音君!」
『わかったよ。私の新しい翼、バイパー‥‥。行けぇっ!』
 羽アリキメラに対して、ソードウィングで斬りかかるレイアーティ機を緋音機が短距離AAMで援護した。
 
 
●出撃、LAD!
 南米の消防署のような施設。
 そこに高速飛行艇が着陸し、4人の能力者が降りてきた。
「ULT所属のロジャーです、救助に参りました。‥‥お待たせしてすいません」
 ロジャー・ハイマン(ga7073)はキメラと戦うよりやり甲斐のありそうなことということで参加した。
「キャップだ。援護要請に答えてもらい感謝する」
 大柄の眼帯をつけた男はそう名乗り、ロジャーと握手をする。
「ライフジャケットなどはどうなっているでありやがるですか? 救急セットやエマージェンシーキットもあればいいでやがるですが」
「ジャケットはボートには乗員分あるのを確認した、こっちに来る人数分は用意できている。最悪を考えて救命できる人間も同席するぞ。残りはサヴァイヴに常備されている」
 シーヴ・フェルセン(ga5638)の問いかけにコックピッット以外に、キャビンを搭載した戦闘機形態の岩龍を指差し、キャップは答える。
「ホイストはあるんでしょうか‥‥」
「救出のラペリング時、足場の邪魔になるからウィンチがあるだけだ。その他聞きたいことは?」
 ライセンシー(gb0483)の問いかけにキャップは答えつつ、サヴァイヴに乗り込み発進準備をはじめた。
「あー、まってよー」
 救命救急士の資格を持つエイダという男性と共に久瀬 和羽(ga8330)がキャビンに乗り込む。
 残りのメンバーも乗り込み、サヴァイブが飛び上がった。
「ホバリングできるんだ、ちょっと感動。こんな改造うちの隊に欲しいかも‥‥」
「ヘリやVTOLに比べれば微々たる時間ですけどね。スポンサーがいてこそできていることですから‥‥しかし、女性ばかりとは腕がよくてもLADの隊員の増強にはなりそうもありませんね。キャップ」
『ごちゃごちゃうるさいぞ、エイダ。正規のダイバーは野郎だけで十分だ‥‥。揺れるぞ!』
 わざとなのか乱暴な運転をしながら、一同は海へとで出す。
 レイアーティからの連絡はちょうどそのときキャップに届いた。

●海より迫る影
 荒れる海、沖まで流されたボートでは、ライフジャケットをつけた20代前半の男女が振り落とされないようにお互いを捕まって耐えていた。
 彼らの顔は不安と疲労の色が濃い。
 怪我人は無いが、キメラがいるといわれている海域のため何が起こってもおかしくないと誰もが思っていた。
「おい、あれはなんだ!?」
 その中の一人が海面に浮かぶ背びれに気づいた。
 ゆっくりと、その背びれが迫る。
 そのとき、ボートが大きく揺れたかと思うとイカのような鋼の巨人がその姿を現し、両手でボートをつかんだ。
『大丈夫? みんなは絶対ボク達が助ける。だから落ち着いて行動してね‥‥ボクとの約束だよ!』
 搭乗者である潮彩 ろまん(ga3425)が拡声器ごしに元気に呼びかけた。
「ありがとう、あの背びれは‥‥」
『大丈夫、仲間がいるから!』
 近寄って来ていた背びれが一時海面かに沈む。
 煉条トヲイ(ga0236)、風羽・シン(ga8190)、水鏡・シメイ(ga0523)らの3人が動き出した証拠であった。
『もうすぐ、LADが来るみたいだからこの海域から少しでも移動するよ』
 ボートを掴みつつ、ろまんは移動をしだすと空中に岩龍の姿を見つける。
『こちらLADのキャップだ。救助に来た。負傷者の数は?』
『こちら、ろまんです。見た感じ負傷者はいません。ボートは支えますので回収をよろしくお願いします』
『了解した。頼んだぞ、援軍の能力者たち』
 キャビンの扉が開かれラペリングのロープが1本ボート内にたらされ、救助活動が始まった。

●キメラとの戦い
「よし、サメキメラ一体撃破だ」
 一撃をあたえおびき寄せたあと、シンはトヲイたちと協力して撃破に成功する。
『こちらも羽アリキメラを倒しています、酸攻撃が厄介ですが‥‥KVの装甲を溶かしてきますので』
「了解、ウィンドフェザーよりOWLへ。警戒行動に移る。キメラに落とされないよう気をつけろ」
『わかりました』
 レイアーティからの通信をうけつつ、シンは次の行動にうつった。
『ろまんがボートを海岸側へ少し戻しだして、救出作業が今始まったそうだ。警戒行動だな』
『影が見えないようなるべく深いところで回りましょう。その方が、サメキメラの腹を狙えるかもしれませんし』
 トヲイの確認を受け、シメイも続き、水中での戦闘機形態を取りつつボートを円周に回りつつ警戒行動をしだす。
 しばらくして、倒したサメキメラの血の匂いに惹かれてか、サメキメラが三体寄って来た。
『救助作業の邪魔にならないよう、さっさと倒してしまいましょう』
 キメラのため、それほど強くないと確かめたシメイが各自一体倒すことを提案する。
『そうだな、各自展開して迎撃するぞ』
 トヲイの声と共に三機のKVがサメキメラに各自ガウスガンや、ガドリング砲を撃ちつつ敵に向かった。
『一体、羽アリキメラがサヴァイヴの方に向かった。すまん、私がドジをした‥‥』
 サメキメラに向かうシン達に緋音がすまなそうに声をかけた。
「後は上で何とかしてもらうしかないか‥‥」
 シンはつぶやき、サメキメラに向かって加速する。
 ラペリングで救助しているメンバーを信じて‥‥。
 
●ただいま救助中
「他の人も今助けにいくから、もう大丈夫よ」
 すでに助けられた避難者へライセンシーは微笑みかけ、メキシコのお守りであるエスカプラリオにキスをしてボートへと降下していった。
 ボートに着地すると、残留している久瀬が警戒しつつ大柄の女性と男性をライセンシーに渡す。
「まずは女性から、それから男だよ。レディーファーストだから順番守って」
「順調ね‥‥それじゃあ、女性を担いであがるわ」
 ライセンシーが勇ましい久瀬を見て、微笑んだ。
「女はそれでおしまい。あとは男が3人だな」
 上がるライセンシーを見て、久瀬は一息つく。
『和羽。羽アリキメラが一体こっちに向かってやがるです。ボートから見えるでやがるですか? 警戒するよろし』
「了解! っと、どこだー」
『あっちだよ、岩龍の側面。回転はできないから岩龍じゃ迎撃できないね』
 ろまんのテンタクルスFXが羽アリキメラの位置を指差して伝えた。
「あっちだけど高いなぁ‥‥」
『ライセンシーさんを無事回収しました』
『飛んできているのはシーヴが打ち落とす‥‥‥‥です』
 次ぎのロープが降りているとき、シーヴが岩龍の中で覚醒する。
 右手甲にケン、左手甲にウルのルーンが、淡い光を帯び現れた。
 瞳の色がルヴィーレッドに変化。冷静さもましていく。
 シーヴの構えた小銃「S−01」が羽キメラの急所を狙い弾丸が撃ちこまれた。
 弾丸は羽アリキメラをばらばらにしたが、酸をためいた袋まで破いてしまう。
 下のボートに酸がかかり、穴が開いて、浸水次第しだした。
「うおっ、これはまずい。ライセンシ−、早く降りてきて!」
 ガクンと物音がして、ボートが斜めになる。
「こっち、こっちに固まって!」
 久瀬がろまんが支えている方に人を寄せた。
 上の岩龍もあわせて動く。
「いい? しっかり掴まって‥‥セクハラはだめよ?」
 ライセンシーが降りてきて男一人を救護し、セクハラまがいを笑顔で制して上がっていった。
「男ってのは皆そういうのなんだな」
 ヤレヤレといった表情で久瀬が呟いていると、ロジャーが降りてくる。
「男がどうかしましたか? この男性、火傷しています‥‥こんなことで人が死ぬのは‥‥見過ごせないからね」
 救出しようとした人が足を怪我していたため、ロジャーが手持ちの救急セットで酸による火傷なのか負傷している男性を手当を施した。
「久瀬さんは大丈夫ですか?」
 険しい目つきのロジャーが久瀬を見るが、大丈夫と返され上昇する。
「よーし、これで最後だ。おじさん、揺れるから俺にしっかり捕まってっ!」
 最後にロープが下ろされ、ハーネス等を確認するとボートを後に救助者と共に久瀬は上昇していった。
『ボートは海岸まで運んでおくね』
 ろまんはそういうとずりずりと引きずるかの用に人型で運び出す。
『俺も手伝おう』
 サメキメラを倒したトヲイが協力する。
『こちら、キャップだ。諸君らの協力に感謝する』
『こちら能力者のトヲイだ。サヴァイヴはいい機体だ。あんたの覚悟がよくわかる‥‥お互い生きていたら、また会おう』
 岩龍から拡声器を通して響く声に、トヲイはKF−14から拡声器を通して答えた。
 
●LADの謎
『こちら、レイアーティと緋音です。最後まで護衛をさせてもらいます』
 緋音をかばって酸攻撃で装甲の溶けたレイアーティのディアブロと、バイパーが共に岩龍の方へやってくる。
「うちのKVもサヴァイヴみたいな装備がつけれれば、もっと人助けできるかもなー」
 久瀬がやりきったという顔でキャビンの扉を締めると、岩龍『サヴァイヴ』は消防署のような基地へと進路を向けた。
「これもダンデライオン財団のお陰ですよ。いくら改造費用にかかっているのか予想もつきません」
 治療する人がでなくて安心半分、手持ち無沙汰半分のエイダが久瀬に答える。
「あの場所も提供してくれたのはダンデライオン財団ですし、本当にいい組織です」
「そういえば、LAD隊員の増強とか何かいってましたけれど‥‥」
 ロジャーが少し狭くなったキャビン内でエイダに声をかけた。
「LAD空挺救助隊員の条件がバンジージャンプができることと、男であることですから‥‥キャップの趣味ですが」
「バンジージャンプが入隊条件ですか‥‥」
 ロジャーが救出作業をやってみて、確かに相応の勇気がいる作業だろうと思い直す。
「男女差別は少しいただけませんが、とてもいい組織のようです」
 成功したことに祈りを捧げていたライセンシーは苦笑しつつ、外を眺めた。