タイトル:【闘】マンティス退治マスター:橘真斗

シナリオ形態: ショート
難易度: 難しい
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2008/06/30 22:53

●オープニング本文


 『DEAD OR ALIVE』と薄汚れた看板がかかる寂れた酒場のようなところに一人の男がやってくる。
 黒い肌に黒い髪をし、UPC軍服を着た男は南米軍であるようだ。
 酒場のカウンターに座り、男は注文をしだす。
「今日は暑いうまい水をくれ」
「水が欲しいなら、蛇口をひねりな」
「あいにくと壊れている」
 マスターとそんなやり取りをしていると、レオノーラ・ハンビー(gz0067)が男の隣に座った。
「UPCの軍人さんが依頼に来るなんて、それは表でやればいいことじゃない?」
「多少事情がデリケートなのだ‥‥」
 そういって男は資料をレオノーラに差し出した。
「ダンデライオン財団会長のお坊ちゃん? パットリオ・クルース。この子も?」
「そう、経験を積みたいから参加したいということだ‥‥我々としては避けたいところだが、君であれば適任とおもった次第だ」
 写真を見たレオノーラはナヨナヨした少年の写真を見てため息をつく。
 経験のない人間をジャングルに放り込むのは危険極まりないことだ。
 さらに、その人間が医療慈善事業で名をうっている財団の子供であるなら慎重に成らざるをえない。
「新人講習なんて依頼はUPC軍でやってくれればいいのに‥‥」
「能力者の教官を頼める人間は少ない。それにこれはアフリカジャングルでの仕事だ、君なら『適任』だろ?」
 UPC軍としては、関知せず先輩傭兵からの実戦教習という形を取りたいと暗に示していた。
「わかったわ、とにかく一緒にやる新米と教える先輩も募集するわね」
 一度結果をだしてしまうと、面倒ごとが重なってしまう。
 ヤレヤレと思いながらも、募集ビラを店内の掲示板に貼り付けるレオノーラだった。

●参加者一覧

御影・朔夜(ga0240
17歳・♂・JG
ベル(ga0924
18歳・♂・JG
須佐 武流(ga1461
20歳・♂・PN
漸 王零(ga2930
20歳・♂・AA
緋室 神音(ga3576
18歳・♀・FT
リュス・リクス・リニク(ga6209
14歳・♀・SN
レティ・クリムゾン(ga8679
21歳・♀・GD
ユーリ・クルック(gb0255
22歳・♂・SN

●リプレイ本文

●出発前レクチャー
「私もまだ3ヶ月の初心者だ。最近仕事にも慣れてきた。ここいらで初心を忘れないよう頑張ろうと思う」
 出発前、高速移動艇待合室の1つにレティ・クリムゾン(ga8679)は簡単な挨拶を済ます。
「能力者となって日も浅いですが足手まといにならないようにがんばりますので、ご指導よろしくお願いします」
 ユーリ・クルック(gb0255)も折り目正しくビシッと決めた格好で入り、丁寧に先輩傭兵達に礼をした。
「集まってくれて何よりだわ。この人数なら2班で動けば何とかなるでしょう」
 傭兵が集まったことを確認し、レオノーラ・ハンビー(gz0067)がカールセルで武装した姿で銀髪のロングヘアをなびかせながら現れる。
 レオノーラの隣には気弱そうなサイズの合わないUPC軍服を着たパットリオ・クルースがチョコチョコとついて来ていた。
「それではレクチャーの前に今回同行する能力者のパットリオ・クルースよ。有名財団のお坊ちゃんではあるけれど1人の傭兵として接して頂戴ね?」
「え、っと‥‥パットリオ・クルースです。今回が初の依頼となりますので‥‥よ、よろしく、おねがいしまっしゅっ!」
 緊張していたのが最後に下を噛み、パットリオは顔を赤くしておろおろしだす。
「緊張しなくていいよ‥‥リニクはリニクっていうの‥‥よろしく」
 パットリオよりも年下ではあるが、経験を積んでいるリュス・リクス・リニク(ga6209)が微笑みながら手を伸ばし、自分の席に隣にパットリオを案内した。
「あ、ありがとう‥‥よ、よろしく」
 まだ緊張が取れないのかぎこちなくパットリオはリニクに微笑み返す。
「おいおい、リニクは俺のイイ人なんだから、口説くなよ」
 ポフポフと須佐 武流(ga1461)がパットリオの頭を叩きつつ釘を刺した。
「ほらほら、私語は謹んで。基本レクチャーいくわよ」
 ある程度肩の力が抜けた雰囲気を察したのかレオノーラがはじめだす。
「新人へのレクチャーか‥‥まぁ、やることに変わりはないか。要はキメラの倒し方を実演すればいいはずだろ?」
 漸 王零(ga2930)は椅子に座ってじっとしているのが耐えられないのか依頼に出発しようとしだした。
「実戦にかなう練習はないけれど、今回は戦闘だけじゃなくてジャングルでの捜索があるのよ。そのためにレクチャー時間をもうけたのを忘れないでね」
「そうだ、探索をするのならアイテムをいくつか申請したい」
 王零に話しているレオノーラに対して、レティが話を切り出す。
「たとえば、今レティがいったようなことね。装備を整えないで依頼に出ることは難しいわ。武器や防具以外でもそろえなきゃいけないものだってあるわ」
 レオノーラは王零に返し、その後レティに視線を向けた。
「それで、アイテムの方だけれど。とりあえずいって頂戴」
「ああ、リストを持ってきたので見てくれ」
 レティが示したのは以下のアイテムである。

 ・方位磁石
 ・トランシーバー
 ・救急セット
 ・時計
 ・雨具
 ・ジャングルブーツ

「方位磁石やトランシーバー、救急セットはこちらで用具するわ。ジャングルブーツに関してはULTショップで売っているものは買って頂戴ね?」
「時計や雨具もいいけれど、これはコンビニあたりで仕入れてくるわね。こんな具合にアイテムに応じて対応できないこともあるから気をつけてね」
 レオノーラはリストを見つつ、説明をした。
 依頼主の状況もあるが、事前に道具を申請しても作戦に必須でないものは手ごろな価格で買えるものに限られる。
 用意していないのだから、依頼前に時間をかけて仕入れても失敗してしまう可能性が高いからだ。
「基本は自分は武器や防具などを優先し、パーティ内で持ち物を分担するのが一番ね。全員所持する必要のあるもの、そうでないものを分けて‥‥無線機と救急セット程度はもっておくと楽ね」
 緋室 神音(ga3576)がレオノーラの説明を補足するようにレティやユーリ達に向かって話す。
「神音のいうように武器や防具にメインに資金を割いて余裕ができたら携帯品やSASウォッチなどのアクセサリーをそろえておくと安心できるわね」
「道具もいいが、戦闘の流れを説明しないとまずいだろ」
 レオノーラの説明をさえぎるように”悪評高き狼”御影・朔夜(ga0240)が前にでてきた。
「今回は5人の二班となるが、人数が多くても基本は変わらない。連携が前提だ。装備に応じて希望ポジションをだしたり、クラスに適した装備選びも重要だ」
 髪をかきあげつつ、熟練たる威風を漂わせて御影は必死にメモをとっていたパットリオを見る。
「メモをとるのもいいが、王零のいうように実戦を経験してイメージを掴むほうが早い。クルースの持つ装備の手配などはハンビーに任せる」
「え、あ、う、ごめんなさい。はい‥‥あの、よろしく、お、お願いしま‥‥す。足手まといにならないよう‥‥その、がんばります、から」
 御影に見られ、メモをとっていたことを怒られたと思ったのか小さい体をさらに小さくしてパットリオは礼をした。
 
●カマキリ退治
「後方警戒‥‥問題なしです」
 ベル(ga0924)はジャングルに入りつつ無線連絡を取った。
 高速移動艇が降り立ったところより約1時間ほど歩いたところのキメラの確認されている危険地帯へ入っている。
「視界が良くありませんね‥‥足元にも気をつけないと。リニクさん大丈夫ですか?」
 うっそうと茂った木々をユー二は刀で払い、ジャングル歩きに適していないブーツを履いているリニクのほうへ手を伸ばす。
「うん‥‥大丈夫‥‥ありがとう」
 その手を掴み、苔の生えた大地をリニクは乗り越えた。
「カマキリは元々待ち伏せをする習性があるわ。今までの経験でいけば、キメラは元々の長所を伸ばし、さらに弱点を補った形が多いわね」
 前方で警戒を続ける緋室も月読を構えながら、周囲を見る。
「気などに擬態している可能性もある‥‥先に見つけた!」
 王零も銀髪灼眼の覚醒状態で警戒をし、気配を見つけた。
 ソレは木の幹に張り付き、こちらを見ている。
 1m大ということでほとんど木の枝と遜色ない姿をしていた。
「アイテール‥‥限定解除、戦闘モードに移行‥‥」
 神音が覚醒をして虹の翼を生やし、あえて目立つ。
 一匹とは限らない、他にいるかもしれないのなら、受け止めて隙を作る動きに変えた。
「デヴァステイターで支援に回りましょう‥‥そこです!」
 ユーリが動き出した木のようになっていたカマキリに向かいデヴァステイターを唸らせる。
 サイズが大きいが、狙いづらい目をペイント弾で潰すよりはそのまま撃ったほうが早いし、ダメージをあてられるからだ。
「大きいなら、死角を狙う‥‥」
 ベルがフォルトゥナ・マヨールーによる重い一撃を『影撃ち』と共に放つ。
 その攻撃を受けたカマキリキメラの腕が吹き飛んだ。
「こちらB班‥‥敵と遭遇中‥‥以上」
『リニク、弓を使うなら強弾撃は控えろよ。連射できないと意味がない』
 リニクが須佐に連絡し、須佐からそんな意見が返ってくる。
「ありがとう‥‥タケル」
 心強さを感じ、リニクは弓を引いて敵を狙って撃った。
 リニクはすばやさが他より劣っているため、行動順位が遅い。目潰しよりはとどめに走る。
 一匹、二匹と能力者たちはカマキリキメラを倒していった。
 
●怪人カマキリ男現る?
「向こうは戦闘中のようね?」
「そうらしい、とにかく気をつけて戦ってくれればいいが‥‥」
 レオノーラが確認をとると、無線機を話した須佐が落ち着かない様子で答えた。
「別行動の面子を信じるのも必要なことだ」
 A班後衛の御影から落ち着きのない須佐に釘が刺される。
「定期連絡はできているけど、合流はしなくて大丈夫?」
「この辺のキメラは数がいるけれど、それほど強くないわ。確認済みだから大丈夫よ‥‥それに発見から戦闘までの流れもパットリオにがんばってもらわないとね」
 レティからの質問にレオノーラはハンドガンとイアリスを持ったパットリオを見つつ答えた。
「はふぅ‥‥あ、あついです‥‥」
 大き目のUPC軍服を着っぱなしでジャングルを歩くパットリオは汗を拭う。
 レオノーラがどんだけ言っても装備を代えようとしないかった。
 華奢な見た目に反して頑固な性格をしているようである。
「あぅ‥‥敵、前方に50m先にいます‥‥数は2です」
 エキスパートのスキル『探査の眼』が擬態している敵の姿を捕らえた。
「オーケイ、いいわよ。軽く戦闘しましょうか」
 覚醒をしてシエルクラインを構えるレオノーラに須佐とレティから同時に声がかかる。
「レオノーラさんは前衛で!」
「レオノーラさんはこのままで!」
「どっちなのよ。班分け整理をするのはいいけれど、打ち合わせはしっかりして頂戴ね」
 班分けの打ち合わせをしていたはずだが、二人が担当の違う指示を考えていたため、情報の齟齬が生じた。
「とにかく俺は責めるぜ、援護よろしくっ! オラッ!」
 須佐が『瞬天速』で駆け出し、さらに踏み込んで『急所狙い』を使ったコークスクリューパンチを叩き込む。
 ゴキャと甲殻が軋んで砕ける音がした。
「――ハ、おまけ程度の支援射撃で潰れてくれるなよ?」
 すばやい御影が射程ギリギリでの支援射撃を当てていく。
「援護射撃、まとめていくよ!」
 覚醒して性格が厳しくなったレオノーラはレティと共に周囲に潜んでいるだろう敵を銃を使って攻撃した。
 須佐の攻撃でひるんだ敵をそのまま弾丸の雨が貫いていく。
「こ、これが連携‥‥ぼ、僕だって!」
 弾丸の雨で貫かれ、弱った敵をパットリオは移動しつつハンドガンで止めをさした。
「いい感じだな。探査の眼も練力消費が激しいから早々に戻ろう」
 御影が提案し、撤収準備にかかった。
「はい‥‥。これが戦闘経験もできて‥‥よ、よかったです」
 一息ついてどういするパットリオの頭上に木の上から飛来する影が迫った
「危ない!」
 須佐がいち早く気づき、瞬天速でパットリオを突き飛ばして影の攻撃を受け止める。
 その影はカマキリのようにみえるが、二本の足で直立していた。
「カマキリ人間? こんなものがいるとは聞いていないよ。レオノーラさん」
 姿を見たレティがアメリカンキャップをかぶり直し、無線連絡をいれつつ聞く。
「私に聞かないで。トラブルは起きること、対処するだけよ‥‥」
 突き飛ばされたパットリオを保護しつつ、レオノーラは牽制射撃をした。
 だが、相手は飛翔して避ける。
「すばやいわね‥‥」
「面白い。だが“悪評高き狼”の爪牙を受けろ!」
 御影が動き『強撃弾』+『影撃ち』&『二連射』という最大火力を放った。
「スキルの攻撃強化の並列起動はAIが察知しないわ、無駄に練力を消費しないで!」
 レオノーラが御影の動きに突っ込みを入れる。強弾撃の最中に影撃ちを使っても、発動のエフェクトは起きるがAIは威力修正をかけるまで反応はできない。
「ちっ、だがこの一撃ならば‥‥何!?」
 実力のある御影の攻撃だがそれを受けてもカマキリ人間は衝撃を吸収した。
 二撃、三撃とスキルをこめた連射を御影は行うもカマキリ人間は吹き飛ばない。
「御影さん、やけになって撃ったら練力が‥‥」
 レティが注意したときにはすでに遅く、御影は練力を使いきったため覚醒が解除された。
「甲殻が堅いなら、関節を狙うまで! いくぜ、俺がすべてを越えてやる!」
 攻撃を受け止めた須佐が面白いといったように頬を緩ませ、『限界突破』で行動に攻撃に移る。
 『急所狙い』として腕を掴み関節へ刹那の爪による蹴りを叩き込んだ。
 昆虫ではありえないグニャっとした感覚が須佐の足に伝わる。
「こいつ内部がイカとかみたいになってやがる! 面白い相手だぜ」
「須佐さん、そんなこといっている場合じゃない」
 レティも援護射撃を行うも中々当たらない。
 その間にもカマキリ人間が動き、須佐と御影を体当たりで吹き飛ばしつつ攻撃を仕掛けた。
 覚醒のできない御影は防具も武器も使えず、強靭なカマキリ人間の攻撃を防ぐ手段はない。
「ぐっ!」
 激しく体を打ちつけ、苦悶の声を御影は上げた。
 須佐も斬りつけられるが表情は余裕である。
「応援‥‥来たよ」
 ベルが現れ射撃による支援を行い、カマキリ人間の動きを阻害していく。
「とにかく撃って、釘付けにするのが早い」
 レティも両手でスコーピオンを支えてとにかく叩き込んだ。
 堅い甲殻も軟体である肉も砕けていく。
「花弁の如く散れ――剣技・桜花幻影ッ!」
 援軍できた神音による『紅蓮衝撃』+『二段撃』、さらに肉を切る『急所狙い』のあわせ技で斬った。
 急所狙いは相手の弱点を見切るスキルのため重なる。
 そこまでの火力により、ようやくカマキリ人間は倒れた。
「こ、これが傭兵の‥‥戦闘‥‥」
 激戦の様子にただただ震えが止まらない様子のパットリオの肩をユーリが叩く。
「お疲れ様です。服や手が汚れていらっしゃる様子。洗って帰りましょう」
 一瞬びくッとなるパットリオだったが、ユーリの優しい言葉に肩の力を抜いてミネラルウォーターで手を洗い出した。
 
●『生か死か』にて
 依頼をおえ、『DEAD OR ALIVE』に戻ってきたレオノーラを迎えたのは依頼主の黒人だった。
「無事だったようでなによりだ」
 男はカウンターに陣取り、ビールを飲んでいる。
「私よりもお坊ちゃんの方でしょ? それより妙なカマキリ人間キメラが居たわ。あのあたりで何か起こっているというの?」
 カウンターに座り、マスターに飲み物を注文してレオノーラは飲みだした。
「こちらとしても噂程度だが、キメラ闘技場というものがあるらしい。そこでは新種のキメラが作られているとかそんな話もある」
「そんなネタがあるならはじめから出しなさいよ‥‥」
「お坊ちゃんの投入場所を決めたのは君だ。こちらの責任ではない」
 頬杖をついてレオノーラは男をにらむが軽くかわされる。
(「食えない男‥‥でも、キメラ闘技場は独自に動く必要があるかもしれないわね」)
 キメラ闘技場から抜け出してきたものだというが、食指の動く出来事に出会いレオノーラは内心微笑んだ。